運転手「ハンドル左なのに右へ」 総点検指示のEVバス、事故の瞬間
中国製の電気自動車(EV)バスを販売する「EVモーターズ・ジャパン」(北九州市、EVMJ)のEVバスに複数のトラブルが起きている。朝日新聞は、9月に起きた大阪メトロ(大阪市)のバスによる単独事故の動画を入手した。
大阪メトロによると、事故は9月1日、同社の子会社が運行するEVMJのバスで発生。回送中の予約制相乗りバスが大阪市内を走っていたところ、中央分離帯に乗り上げた。
メトロによると、50代の運転手は事故後、同社の聞き取りに対し、「衝突直前、ハンドルを左に切ったが、右に流れていくような感覚があった。車体をコントロールできなかった」と説明した。
原因についてメトロはEVMJから、車体の横滑り防止装置(ESC)が働き、右前輪がロックしたという趣旨の説明を受けたという。ただ、メトロは車体に不具合がなかったかどうか調査を続けている。
国土交通省はEVMJに販売したバスの総点検を指示。EVMJは朝日新聞の取材に対し、「速やかに安全を確保できるよう、全社をあげて全車両の総点検を実施している」とする一方、トラブルの詳細は総点検後に説明するとしている。
記事の後半で、事故発生時のドライブレコーダーの録画データとされ、進行方向と運転席がそれぞれ映っている動画をご覧いただけます。
激しく飛び散る窓ガラス
朝日新聞が入手したのは、ドライブレコーダーの録画データとされる動画。進行方向と運転席がそれぞれ映っている。
進行方向の動画をみると、緩やかな右カーブで右側の車線を走るバスが信号のある交差点を通過。右に寄ったまま進み、白い柵や橋脚がある中央分離帯に衝突し、縁石に乗り上げる様子が映っている。
運転席側の動画では、運転手が衝突の直前にハンドルを左に操作する様子が記録されていた。だが、バスが進む方向は変わらず、大きな衝撃とともに窓ガラスが割れて激しく飛び散り、運転手に降りかかっていた。
メトロの担当者は「衝突の前段階でハンドルを左に切っているが、事故を回避できなかったのはなぜか。EVMJの説明を受けたが、社としても調査を続けている」と話した。
EVMJは、中国メーカーに製造を委託したバスを輸入し、販売。大阪・関西万博をはじめ、各地のバス会社などが計数百台導入したが、複数のトラブルが起きている。
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