占星術殺人事件とは、小説家・島田荘司のデビュー作であり、また彼の代表作のひとつである。御手洗潔シリーズの第1作。
概要
舞台は昭和54年。風変わりな占星術師の御手洗潔は、40年前に起き、日本中の好事家達の推理をはねつけ迷宮入りとなった女性のバラバラ殺人事件の解決に乗り出す。
「占星術のマジック」のタイトルで、1980年の第26回江戸川乱歩賞に投稿され最終選考まで残ったが、井沢元彦『猿丸幻視行』に敗れ受賞を逃した。当時の選評では「あまりにもリアリティに欠けるのが難」(海渡英祐)、「残念ながら、動機とか社会性の問題で損をした」(斎藤栄)、「動機が充分説明されていない。その死体切断及びその直後処理の説明も全くないのはおかしい」(南條範夫)等のコメントが見られる。その後、改題改稿の上、1981年に講談社から『占星術殺人事件』のタイトルで刊行された。
オカルトの衣裳をまとった怪奇的な謎、エキセントリックな名探偵、2度にわたる読者への挑戦状の挿入、そして日本のミステリ史に燦然と輝く衝撃のトリックと、発表された1981年当時には絶滅しかかっていた古典的で遊戯的な本格ミステリの傑作である本作は、当時そういった作品に飢えていたミステリファンを狂喜乱舞させ、絶大なインパクトを残した。
ミステリーにおいては、1987年の綾辻行人のデビューから「新本格」「第三の波」といわれる古典的な本格ミステリの復興運動が起こり、島田荘司はその仕掛け人のひとりであるが、この作品が若い世代の本格ファンに与えた影響は計り知れず、新本格の下地・源流を作った作品と言える。2012年の週刊文春によるオールタイムベスト投票では横溝正史『獄門島』、中井英夫『虚無への供物』に次ぐ第3位に輝いた。
講談社ノベルス版(1985年)、講談社文庫版(1987年)、光文社文庫版(1990年)、南雲堂の島田荘司全集版(2006年)などがあるが、現在は講談社文庫の改訂完全版(2013年)が入手可能。
なお、著者本人の意向もあって現在に至るまで一度も映像化などのメディアミックスはされていない。
金田一少年の事件簿との関連性
漫画「金田一少年の事件簿」において、ある事件のメインの謎ではない部分で本作のトリックが盗用されている。また、それとは別の事件では島田荘司氏の別の小説と舞台設定もトリックもほとんど同じという物がある。
ミステリー作品において、トリック(アイデア)自体に著作権はなく、また密室トリックなどジャンルによってはアイデアが出尽くされた感もあることから、「もともとあるトリックは上手くアレンジしてナンボ」という風潮があるのは否定できない事実と言える。
しかし、今回のケースはさすがに問題視され、島田荘司氏は抗議を送っている。後にコンビニで発売されたその事件の巻では、その旨の注意書きがされ、ドラマ版はパッケージメディアでは欠番になっている。
関連項目
親記事
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兄弟記事
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- 2
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