米国では連邦議会での与野党対立から、予算審議が難航している。米東部時間9月30日午後12時(日本時間10月1日午後1時)に現在の予算が失効し、政府機関の閉鎖に突入する可能性が高まっている。
米国では1980年代以降でも10回以上、政府機関の閉鎖が起きている。
直近では第1次トランプ政権下で、2018年末から35日間の閉鎖が起きた。米国とメキシコ国境の壁建設費用を巡り、与党・共和党と野党・民主党が対立したのが原因だった。
数十万人の連邦政府職員が自宅待機を命じられたり、無給で働いたりした。一部の国立公園や首都ワシントンの観光名所の博物館といった施設も一時、閉鎖された。
政府閉鎖は民主党政権下でも起きている。クリントン政権期の95年末には、共和党主導の議会とホワイトハウスが財政赤字削減策を巡り対立し、計21日間の閉鎖が起きた。当時は年金給付や医療保険事務の遅延が生じ、国民生活にも不安が広がった。
13年のオバマ政権下では、野党・共和党が、医療保険加入率を高めるための医療保険制度改革法(オバマケア)への予算計上に反対し、16日間の閉鎖が続いた。国立公園や研究機関が一時閉鎖され、米メディアによると経済損失は推計240億ドル(現在の為替レートで約3兆6000億円)に達したとされる。
この時、オバマ大統領は財政問題への対応を優先させるため、予定していた東南アジア歴訪を取りやめ、外交にも影響が出た。
閉鎖は政府や議会の機能不全を象徴する出来事であり、国民の政府への不信感を高める心理的な側面も見逃せない。13年の閉鎖の際に米ギャラップが行った世論調査では、議会に対する支持率は19%から、10%ほどまで急落した。
繰り返される政府閉鎖に制度改正を求める声もある。米シンクタンク「ブルッキングス研究所」のシニアフェロー、ウィリアム・ゲール氏は19年に発表した論文で、「将来的な政府閉鎖を防ぐため、政府予算が可決されなかった場合でも自動的に予算が継続する仕組みを導入すべきだ」と提言している。【飯田憲】