アメリカ政府が閉鎖、7年ぶり 連邦議会で予算案可決されず

夜に撮影された米連邦議会議事堂のドーム部分の写真。ライトアップと屋内の照明で明るく見えている

画像提供, Reuters

ドノヴァン・スラック記者(BBCニュース、首都ワシントン)

アメリカ政府は1日午前0時(日本時間同午後1時)過ぎ、連邦議会で予算案が可決されなかったことを受け、約7年ぶりに閉鎖された。

これにより、数十万人規模の連邦職員が自宅待機や一時解雇となる可能性があるほか、国立公園や博物館が閉鎖されるなどの影響が予想される。過去の政府閉鎖では、職員不足により、航空便の運航などに支障が生じた例もある。

今後の見通しは不透明で、共和党と民主党は双方が、政府閉鎖の責任を相手側に押し付けている。9月30日の深夜まで続いた上院での交渉は、激しいやり取りにもかかわらず、政府予算の維持には至らなかった。

ドナルド・トランプ大統領は、民主党が重視しているとされる一部の連邦給付を削減し、大規模な解雇を行う可能性があると脅している。

政府予算案を可決するには上院で60票が必要であり、共和党が上下両院を掌握している現状でも、政府を再開するには民主党の支持が不可欠となる。

30日の上院では、共和党が提出した短期的な歳出案が最後まで十分な支持を得られず、民主党主導の提案も否決された。

共和党主導のつなぎ予算案が可決されれば、政府の予算は現行水準で一時的に維持されるはずだったが、採決の結果、賛成55、反対45で否決された。

健康保険制度への支出で対立

両党の間では、医療費支出をめぐる激しい対立が続いている。民主党は、年末に失効予定の健康保険補助金の延長を歳出法案に含めるべきだと主張している。

対する共和党の議員らは、補助金は高額すぎると批判している。一部の議員は、延長に先立って適格性の基準を厳格化することを提案している。

民主党のチャック・シューマー上院院内総務は以前、共和党が医療制度に関する交渉を拒否することで民主党を「脅そうとしている」と述べた。

一方トランプ大統領は、こうした対立の責任は民主党にあると非難。政府閉鎖が発生した場合には、民主党が重視しているとされる連邦職員の大規模解雇や政府プログラム・サービスの削減を実施すると脅した。

トランプ氏は30日、「我々が最も望まないのは政府閉鎖だ。しかし、閉鎖によって多くの良いことが起こり得る」、「我々が望まない多くのものを排除できる。それは民主党のものだ」と述べた。

トランプ氏は29日にシューマー氏と会談したが、膠着(こうちゃく)状態を打開するには至らなかった。シューマー氏は会談後、「大きな意見の相違が残っている」と述べた。

トランプ氏はまた、合意に至らなかった場合、「政府閉鎖中に、民主党にとって取り返しのつかない、悪影響の及ぶことをできる」とも述べた。ホワイトハウスは、政府閉鎖が「重要でない」と判断された連邦職員の恒久的な解雇につながる可能性があると示唆している。

「我々は多くの人員を解雇することになる」とトランプ氏は述べた。

ホワイトハウスの大統領執務室に置かれた演壇で記者会見するトランプ氏。背後には政府関係者などが並んでいる

画像提供, Reuters

画像説明, トランプ氏は30日、政府機関が閉鎖した場合、職員を大規模解雇すると示唆した

政府機関が閉鎖されている間、すべての政府機能が停止するわけではない。

国境警備、入院医療、法執行、航空管制などは、引き続き運営される見通しだ。

社会保障や健康保険制度「メディケア」の給付金も送付されるが、受給資格の確認やカードの発行は停止される可能性がある。

政府閉鎖時には、重要業務に従事する職員は通常通り勤務を続けるが、その一部は当面の間、無給で働くことになる。一方、重要でないと判断された政府職員は、一時的に無給の休暇に置かれる。過去には、こうした職員に対して後日、さかのぼって給与が支払われた例がある。

対立が長引き、無給の職員が出勤を停止した場合には、前回のトランプ政権下での政府閉鎖時と同様に、交通の遅延が発生する可能性もある。

アナリストらは、今回の政府閉鎖が2018年末の閉鎖よりも規模が大きくなる可能性があると予測している。今回は約40%の連邦職員、すなわち80万人以上が一時的な休職に置かれる見通しだ。

トランプ氏の大統領1期目には、政府閉鎖が3度発生しており、そのうち2018年に始まり2019年1月に終わった閉鎖は36日間と、史上最長となった。

こうした政府閉鎖は、アメリカの政治制度にほぼ特有のものであり、各政府機関が歳出計画に合意しなければ法案として成立しない仕組みに起因している。

1980年以降に米政府機関が閉鎖した月と、その日数を示したグラフ。1981年11月に2日間、1982年9月に1日間、1982年12月に3日間1983年11月に3日間、1984年9月に2日間、1984年10月に1日間、1986年10月に1日間、1987年12月に1日間、1990年10月に3日間、1995年11月に5日間、1995年12月に21日間、2013年9月に16日間、2018年1月に3日間、
2018年2月に1日間、2018年12月に35日間となっている。出典は米連邦議会調査サービス

政府閉鎖を目前に控えた最後の数時間、双方は互いに責任を押し付け合った。民主党のシューマー氏は、「共和党は深夜に向けて、我々を政府閉鎖へとまっすぐに導こうとしている」と述べた。

民主党のハキーム・ジェフリーズ下院院内総務は、「共和党は現時点で真剣ではない」、「彼らには誠意ある対話を行う意思がまったくない」と語った。

一方、共和党のジョン・スーン上院院内総務は、民主党が連邦職員を「人質に取っている」と非難した。

マイク・ジョンソン下院議長(共和党)はCNNに対し、「チャック・シューマー氏が下した決定は非常に無責任だ」と述べた。「彼らは癇癪(かんしゃく)を起こしている。党派的な主張ばかりだ」