ブルーアーカイブRTA 称号「崇高」獲得まで   作:ノートン68

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遅れて申し訳ない。
アリウスチームⅤのリーダー視点でお送りします。



チームⅤ

Vanitas vanitatum.Et omnia vanitas.

全ては虚しい。どこまで行っても、全てはただ虚しいものだ。

 

「明日よりあなた方には私の……取引先に向かって貰います。」

 

アリウス生徒会長のマダムからそう告げられた時、自らの命を悟った。

 

「『神秘の強化』……と言っても理解できませんか。要は人体実験です、拒否は認めません。」

 

私達チームⅤは生徒の中で1番戦力価値が低い。

戦力として使えないのであれば、リスク込みでも使い潰してやろうと。

 

薄々勘づいていた事だがこの女は我々を駒としか見ていないのだろう。

実質的な捨て駒扱い。

その事実に大して感情は動かなかった。

 

「安心しなさい、取引先からは重大な後遺症を残すような実験では無いと聞いているので」

「……了解しました。」

 

全てどうでもいい、自分の命さえも。

全てはただ虚しいものなのだから。

そう『彼』と出会うまでは。

 

「私が君たちの雇用主のホモだ。しがない研究者だが、よろしく頼む。」

 

ミレニアムの自治区を外れに少し歩いたところ、建物の前に骨が立っていた。

情報通りの姿、あれがマダムの取引先に間違いない。

 

感情が読めない骸骨の顔が相まって、マダムとは違った威圧感を感じる。

マダムと同じ大人か……。

 

「この度からここで実験を受けるアリウスチームⅤです。総員、敬礼。」

「小隊か……飲み物を出すから、とりあえず座るんだ。」

「……ありがとうございます。」

 

そう言い放つと彼はそそくさと建物の奥へ向かった。

他人の家に上がるのは何年ぶりだろうか。

内装は無駄なものが少なく、質素なものだった。

テーブルに椅子が引かれている、座れということか。

 

待っている時間にしては数分の事だ。

戦いの事を常に考えていたせいか、何も無いこの時間が長く感じる。

 

「悪いがこれしか今は無くてな……」

 

少しして茶色い液体の入ったティーカップを差し出された。

もう既に実験は始まっていて何か入っているのだろうか。

どうでも良いか。マスクを外して頂くとしよう。

 

……甘い。

おいメンバー2、がっつくな。取引先の前だぞ。

 

「飲みながらで良い。本題について話そうか。」

 

まず私たちの中に眠る『神秘』を強化する為、実験を行いたいという事。

そして実験材料と資金回収の為、暫くは彼の警護を行うこと。

次に研究資金と資源が貯まれば理論上、『神秘の強化』は可能だと言うこと。

最後に出来るだけ身体に負担のかかる実験はしないが、異常が起きた時は直ぐに言うように。

 

概ね理解した。

実験の前に『廃墟』とやらを引きずり回されるという事か。

お生憎様、以前からの訓練でこの手の作戦は慣れている。

せめて殴られない程度には働くとしようか。

 

仕事中

 

「今日はここまでだ、撤退する。」

「まだ日は暮れていませんが……」

「君達の実力を疑っている訳では無い、元々表層を探索したら撤退する予定だった。」

「……了解しました。」

 

帰宅後

 

「さぁ、食え。」

「あの、これは一体……」

「食事以外の何がある?……まさか、食えない物でもあったか?」

「いえ、お気遣いなく。私達は数日断食したところでパフォーマンスに支障h……」

「君達がここへ来た以上、生活管理は私が行う。分かったな?」

「はぁ、では頂きます。……メンバー2!!」

「あわわッ!?すみません!!」モガモガ

 

深夜00:00

 

「おい、何故まだ起きている。」

「全員で夜警を……」

「………。」

「何故頭を抱えるのですか?少なくともマダムと同じ大人なら、敵対勢力からの警戒は必要では?」

「……分かった、予定変更だ。ローテーションを組むぞ。」

 

 

思っていたのと違う!!……取り乱してしまった。

 

環境が思っていた物と違う。

1日3食は当たり前で(間食も付く)、

一日の休憩時間は長く(一日最低1時間)、

部屋の設備は使い放題で(シャワー、冷蔵庫など)

夜警を行うようになってからは、バランスよく2人で交代制。

 

わずか2日過ごしただけだが、何だこの優──ではなく弛んだ仕事環境は!!

 

こんな生活をしていてはチーム全体が腑抜けてしまう。

何とかスケジュールをもっと濃密に調整して貰わなければ。

 

「すみません、少々ご相談が。」

「何だ、言ってみろ。」

 

もう慣れた骸骨の姿。

既にメンバー全員が彼に意見する程には打ち解けていた。

 

「スケジュールに余裕がありすぎます。」

「自由時間は何をしてもいいと言っただろ。」

「それでも多すぎます。」

「家事までされては不服かもしれんが、実験を行うまで私は何もしてやれないのだ。それとも頼られてないと不安になったか?」

 

ぐぬぬ……。

待て、まさか彼に頼られない事に不満を抱いたとでも言うのか!?

そんな簡単に絆されたとでも………。

 

「君達は十分に働いている。資材が手に入るのは君たちのお陰なのだ。」

 

肩に乗せられた手に存在しないはずの温かみを感じた。

今まで彼を決まった呼び方をした事は無かったが……せめて敬意を込めてオーナーと呼ぶか。

 

 

 

その後、私達は捕らえた兎とともに『廃墟』の表層の下へと向かった。

この兎、メンバー2と3が捕獲現場を見ていたが、相当な暗号解析能力を持つらしい。

『白兎』の力、どれ程のものか見ものだな。

 

 

 

あの兎め。

最初にゲートのセキュリティを解除したところを見てやるなと思えば、時間制限を忘れて私達諸共閉じ込められそうになるとは。

1回殴るくらいならオーナーは許可してくれるだろうか。

 

私達が雑魚を間引き、先に扉へと到達する。

拾ったAL-1Sと言う少女、見た目に反して中々の身体能力だったが……

 

扉が閉まるまであと数十秒。

オーナーは間に合うな……兎は知らん。

扉が閉まる途中で、オーナーの動きが止まった。

そして次の瞬間に兎を放り投げ、オーナーは取り残された。

 

 

 

は?

突然の暴挙に頭が真っ白になった。

 

「オーナーッ!!」

 

何とかして扉を開けなければ……

扉をメンバー1と持ち上げようとするがビクともしない。

まて、そう言えばAL-1Sは?

辺りを見回すと近くのコンソールを触っていた。

 

「何をして……」

「これを、こうすれば───」

「何っ!?」

 

ガコッ!!と何かの外れるような音の後、扉が開いた。

なんでも、AL-1Sは記憶の無い状態だが、『廃墟』の機器操作は体が無意識に行ってくれるのだとか。

 

何とか『廃墟』を脱出し疫病神(白兎)を追い払った後、私はオーナーに聞いた。

 

「オーナー、何故あの兎を助けたのですか?」

 

Vanitas vanitatum.Et omnia vanitas.

全ては虚しい、その教えを元に私は生きてきたつもりだ。

だがオーナーの、先程の行動はそれとは真逆のものだった。

私は聞き出したかったのだ、本当にこの教えが正しいのかを。

 

「生憎、私はその問に対する答えを持ち合わせていない。何故なら体が勝手に動いたからだ。比喩では無いぞ。」

 

そんな事あるか。

と言えればよかったのだが、残念ながらこの人はその類の嘘は吐かない。

何日も一緒にいればそれくらいは分かる。

 

「ただ1つ私に分かることは、人間は生きている以上突拍子もなくらしくない行動を取るものだ。」

「貴方もそうだと……。」

「何だその顔は?私は人間のつもりだぞ、この成りだがな。」

「そういう訳では無いのですが。」

 

何となく分かったような、分からないような。

こちらの心情を知りながらはぐらかされた気もするが……

答えは自分で見つけるしかないようだ。

 

 

そして1ヶ月半が過ぎた頃。

十分な資材を集め終えた私達はいよいよ実験を受ける事になった。

と言っても手術のような事はせず、渡されたこの『神名のカケラ』を飲み込むだけ。

何の憂いもなく私達はそれを飲み込んだ。

次の瞬間に体の内から湧く不思議な力。

()()()()()()()()()()()()()()()万能感だ、体が軽い。

 

「力が湧いてくるような……、外見に現れはしないようですがとても強くなった気がします。」

「それで体調はどうだ?痛みは?」

「解放感と言うべきなのでしょうか、むしろ気分はすこぶる良好です。」

「あの、つまりこれは……。」

「実験成功だ。」

素直に喜べない自分がいた。他のメンバーもそうだろう。

実験が成功したということは、もう此処には居られないという事実を理解していた。

 

正直に言おう。心地よかったのだ、楽しかったのだ。

これまでの生活が嘘のように、くぐもっていた世界が鮮明に見えたのだ。

それを手放すことが、こんなにも虚しいとは考えもしなかったのだ。

だが、潔く諦めよう、私達は元いた場所へ戻るだけなのだから。

 

「マダムへ報告に向かうので、一旦帰還します。」

「そうか、ではまたな。」

 

───さようなら、オーナー。

全て虚しいものだとしても、せめて成果を認められるように戦果を捧げます。

 

 

 

そしてアリウス自治区に帰ってきたのだが。

実験の成果を見る為に、模擬戦を行うことになった。

 

相手はチームⅠ、スクワッドを除けば当時1番強い部隊だった。

いつかの敗北の記憶がチラつくが、気にする余裕はない。

せめて、成果を示すと決めたのだから。

 

取る作戦はシンプル。

 

メンバー2が前で撹乱してるうちに、

メンバー1とメンバー3による絨毯爆撃を放ち、

私が周りを見つつ火力を補う。

 

こんなものは、戦略なんてものはない。

ただの火力によるゴリ押しだ。

その模擬戦は、わずか数十秒で決着が付いた。

 

「勝てた……」

 

相手は死屍累々と言うべきか、煤だらけになってひとつも動かない。

死んではいないはず……。

着弾地点にいたはずのメンバー2は何故か無傷だ。

 

これが『神秘の強化』の成果……。

試合の直前に分かったが武器も大分性能が良くなっている?

そうだ、オーナーから手紙を預かっていたのだった。

勝てたという事実に戸惑ってしまった。

 

「マダム、少しよろしいですか?」

「何です一体。」

「これをオー……取引先から結果が出たら渡すようにと。」

「どれ……………ギリッ!!」

 

手紙を見た瞬間、マダムの機嫌が悪くなったのを見逃さなかった。

何を書いたんですか、オーナー?

 

だがこれで成果は示した、これで心置き無く元いた場所に戻れる。

ありがとうございました、オーナー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では各自、取引先の元へ戻りなさい。」

「…………、えっ?」

 

 

 

 

結局戻って来てしまった。

なんでも、これからも専属の実験体として世話になるらしい。

 

「覚悟したつもりが、笑ってしまうな。」

「リーダー………。」

 

Vanitas vanitatum.Et omnia vanitas.

 

そうだ、全ては虚しいもの。

努力は無意味、人生は虚無で、世界は理不尽だ。

 

だからこそ、生きる意味を見出すのだ。

 

例え全てが虚しくなっても、この献身が報われなくても良い、私は私の思うままに世界を生きてみせる。

 

「私はあの人を信じる、これでダメならそれで良い。」

「どうせ向こうに戻っても良くて捨て駒扱いだしな。」

「ご飯が美味しいので、ここが良いです……」

「辿る結末が同じなら、私は断然ここに居たいですね。」

 

虚しさはもう感じない。

私達はガスマスクを外しオーナーにこう話しかけた。

 

「ただいま、戻りました。」

 




Kyrie eleison.
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