どこもかしこも、エーテリアスばかりだ…(涙目) 作:bbbーb・bーbb
せっかくゼンゼロのクロスオーバー書いてるわけだし映画パロは多めになってくかも。許してくれ。知ってる映画自体が少ないんですけどね。
ラマニアンホロウ。精神侵食作用のある特殊な物質「ミアズマ」の埋め尽くす巨大なホロウ。衛非地区へと向かう道中にあるそれの中で、アキラは絶賛命の危機に陥っていた。
調査の為暫く
ゼェゼェと息を切らしながらも、生存本能に従い全力で走り続けるアキラ。その影を、数体のエーテリアスが踏みつけていく。
運動不足が災いし、石につまづきすっ転ぶ。その隙を逃すはずもなく、エーテリアスたちが飛びかかる。が、その瞬間、彼らは纏めて、アキラの前方から消滅した。
死を覚悟し思わず閉じた瞳を、しかし未だ肉を裂かれる激痛に襲われないことに疑問を抱きゆっくりと開くと、エーテリアスたちが何者かに排除されたことを理解した。
すぐ後ろで、物音。恐らくはこれをやった者、恩人であろう。状況を鑑みるに、儀玄だ。ゆっくりと、アキラは振り返った。
「有難う、師しょ──」
ひゅっ、と恐怖に縮み上がる呼吸と、
一方、ほぼ時を同じくして、これまたラマニアンホロウの一角。神秘主義者の術法道場「
ライカンの主でもあるメイフラワー市長からの要請でアキラ兄妹の力を引き出させる為、道場のある衛非地区へ行くことにしたのだが、墜落と同時にアキラとはぐれてしまった。リンはわけあってビデオ屋に居たので無事であった。
吉兆を感じる方向へ突き進んでいくと、遂にアキラを見つけた。恐ろしく息を切らしているが、エーテリアスにでも追われているのだろう。
だが、少し待ってみてもあの黒と緑の忌まわしい影が現れることはなく、代わりに顔面を真っ青にしたアキラが冷や汗でびっしょりと濡れながら縋り付いてきた。
「たたたたたたすたすたすけ」
「落ち着け。私に北斗神拳は扱えんぞ」
「助けてくれ、師匠!」
やはりか。こうなることは予想できていた。昨日の占いでとんでもない凶兆が出たのだ。瞑想中に危うく発狂しかける程の、である。引いたおみくじも「DEATH」が出た。「凶」すら入れて無いのに。
野盗かエーテリアス、もしやサクリファイスか。最悪の想定に息を飲み、しかし新しい弟子を安心させる為に飄々とした態度で、儀玄は何が起こったのかを聞いた。
「カ、カリフラワーの化け物が……っ!」
「なんだ、そんなも──カリフラワー……?」
3度見が炸裂した。白いブロッコリーと名高いあれであろうか。どう想像してみても「バカなB級ホラーかよ」以上の感想が湧かないが、エーテリアスやサクリファイス以外の人外という可能性に儀玄は震えた。
「カリフラワーっていうのは、あの……?」
「そうだとも儀玄師匠! 宇宙神秘カリフラワーが追いかけてくるんだ! しかもエーテリアスを殺して回りながら!」
宇宙神秘カリフラワー……!? もしやもうミアズマに脳をやられたのかと儀玄の瞳が心配の色を帯びる。
その時であった。目の前の街角から、バラバラのエーテリアスが飛び出してきた。ぴちゃり、ぴちゃりと音が滴る。それは、深海からの呪詛にも聞こえた。
「……ああ、ああ、師匠……助けてくれ……あいつが……おぞましい、醜い化け物がやってくる……」
ただ襲い来る恐怖と絶望のままに、アキラが震える。迫りくる圧倒的な「凶」のオーラに困惑する儀玄。明らかにブロッコリーの色違い如きに出せるそれではない。
「ああっ……呪われたカリフラワーが……赦してくれ……赦して……くれ……」
もう限界だ。儀玄が詳しく話の内容を聞き出そうとしたその時、遂にそれは姿を現した。
「お前さん、さっきから様子がおかしいぞ。だいたいなんだ、カリフラワーの化け物って──」
カリフラワーの化け物だ!! 見るなり顔を真っ青にし、一瞬にして怪物を墨汁針まみれにする儀玄。
それの着ている服が己の友人の愛用しているものと一致することにアキラが気づいた頃には、カリフラワーの化け物、もとい狩人はさながらウニの様になっていた。
「まさか、狩人……君なのかい?」
数分後、蘇った化け物を見るなり墨汁を喚び出した儀玄をなんとか諌めてアキラが話しかけると、それはその身体のカリフラワー部分、頭と思われる部位をぶんぶんともげそうな程高速で縦に振った。何度も。
頭を振るたび灰色に濁ったさらさらの冷たい神秘汁を辺りに撒き散らし、それをうっかり服に浴びてしまった儀玄は目に涙を浮かべて浴びた部分を拭き始めた。
狩人の方も中々に精神をやられていた。友人が襲われていたので助けると何故か逃げられ、また襲われたら危ないので追っていたところ突如現れたムチムチの女に瞬殺されたのである。それもウニみたいにされて。めっちゃ痛かった。
尤も、それもこれも全て狩人が気分転換に「苗床」のカレル文字を脳にぶち込み寄生虫両手に探索を行っていたからなのだが。口が無いので弁明には時間がかかった。
もう一度、アキラは狩人を見やった。口は無く、故に喋れず、代わりにこぽこぽと小さな白い泡を吹く縦方向の切れ込みのような隙間があるのみであった。
腕からは冒涜的に青白い触手が伸びており、狩人装束から露出している部分の、そのどこにも人間の面影が無かった。吐き気を抑え、ゆっくりとアキラはため息をついた。
そうしていざ脱出となった一行だったが、狩人には道中どころか強敵との戦いでも殆ど活躍の場は無かった。この儀玄とかいう女、あまりに強すぎるのだ。
大半のエーテリアスたちは近づくことすら叶わず、ただ凄まじい墨汁アタックの渦に飲み込まれていった。突如脳内に溢れ出した義手の忍びの存在しない記憶とトラウマに狩人は一瞬頭を痛めた。
それにしてもこの強さ、狩人同士だといって仲良くなった「虚狩り」こと雅と同等、あるいはそれ以上か。彼女が仲間であることが、少し惜しく感じた程である。アキラの敵でさえ居てくれれば、きっと楽しく殺し合えただろうに。
奇跡的に墨汁を躱しきった怪物たちが女体目掛けて腕を振るうも、儀玄は表情一つ崩すこともせず、ただ最小限の動きで身を守っては急所に一撃を叩き込む。瞬きをする間も無く、怪物どもは消し飛んでいった。
感嘆に神秘汁を噴き出す狩リフラワーであったが、儀玄は静かに彼、あるいはそれと呼ぶべきものへの警戒を強めていた。
アキラが言うには男である彼の強さは見る前から分かっていた。現に、彼の動きは明らかに戦い慣れした者のそれであった。
だがそれを加味しても流石に気持ち悪すぎた。あまりにもだ。
何メートルも伸ばした腕の触手を遠間からエーテリアスたちに叩きつけ、何か透明なワイヤーにでも腰を引っ張られているかのような気色の悪いステップで攻撃の嵐をすり抜けては、存在しない口元から吐き出した大量のナメクジを浴びせかける。
ホロウレイダーは彼を見るなり九割が裸足で逃げ出し、残りの一割はその場で発狂死した。
神秘汁といいナメクジといい、彼の身体から飛び出すもの全てが明らかにエーテルなど比べ物にならない程の危険物質であった。浴びせられただけでエーテリアスがバラバラになるナメクジなど見たことがない。何かを見ただけで死ぬ人間もだ。
幸い、どれも着地から数秒後にはエーテルに侵食され、きちんと分解までされているが。頭痛に額を押さえながら、儀玄は進んでいった。
遂にホロウから脱出した所で、狩人は突然消滅し、かと思いきやまたもや突然、人間の姿で現れた。儀玄はとても顔色が悪くなった。
場所は海。待つ暇もなくボートが通りかかり、全員無事に救助された。
ボート上にて、恐怖にうずくまる狩人をおいて、儀玄は助けてもらった漁師に感謝を伝えた。海は苦手なのだそうだ。
なんとか狩人も感謝の意を述べると、岸が近づいてきた。また、漁師が口を開いた。
「
「
理解不能な言葉に困惑するアキラ。この辺りの方言だと儀玄は伝えた。方言というには些か言語としての違いが大きすぎないかとアキラは首を捻ったが、最終的には渋々納得した様子を見せた。
「
!? 儀玄は一瞬身を震わせた。なんとか落ち着きを取り戻した狩人が、突然完璧な文法とイントネーションで衛非地区の方言を話し始めたのだ。
上手だなと漁師は笑い、何も分からないアキラをおいて話し始める。儀玄がたしなめると、アキラが狩人に驚きをもって話しかけた。
「狩人、君も方言を話せるのかい?」
「これでも上位者なのでな。言語なら何でも話せる筈だ」
ああ、それもそうか。軽く頷くアキラ。明らかに聞き捨てならない
一方、狩人は新たな発見、新たな土地に心を躍らせていた。異国情緒的な武器や、人形ちゃんの気に入ってくれそうな小物に思いを馳せる。
見上げると、勾配の激しい街並みが縦に伸びていた。老人の住みづらさならヤーナムと良い勝負ができるかもしれない。
謝謝、と漁師に告げ、港に両足を乗せる。良い漁師だ。ちゃんと人間の姿をしているし、なによりこちらを見ても銛で襲いかかってきたりしない。
迎えが来ているという儀玄の言葉通り、茶トラ猫のような小女が走り寄ってきた。全身黒尽くめのノコギリ男に少したじろいでいたが。
いつの間に弟子にされたのだろうと首を傾げながらも狩人が着いていくと、ロープウェイなるものに乗ることとなった。
「衛非地区は高低差が激しいので、こういう移動手段が多いんです!」
胸を張る福。ずいぶんとかわいらしいものであった。獣だというのに、近づかれても殺意が湧かないのだ。三人が乗り込むと、続いてもう二人。知らない老夫婦であった。
どうも方言しか話せないようだったので、軽い交流のあとはすぐにアキラ達とだけ話す事となった。遥か上空からの眺めは少し怖かったが、同時に心地よくもあった。*1
「アキラ、今回もまた『アレ』絡みのことか」
「『アレ』って……ああ、讃頌会のことかい? どうだろう、今回は違うはずだけど……」
「ああ、そうだ、讃頌会だ。なんにせよ、気をつけたまえよ。困ったのなら、いつでも呼ぶと良い。私も奴らには恨みがあるのだよ」
老夫婦の動きが一瞬止まったように見えたが、気の所為だと思い直し、狩人は言葉を続けた。今度は福にである。
「ところで、福。先程街中で聞いたが、近々花火大会をやるそうではないか」
「う〜ん、実は、結構先の話なんですよねえ……」
肩を落とす福。老夫婦は額に冷や汗を浮かべ互いに目配せをし始めていた。楽しみだと伝えると、すぐに元気を取り戻したが。
「今からでももう楽しみだな。衛非地区の花火はドカーンと綺麗なのだと住民が言っていたぞ」
「はい! はい! その通りです! お弟子ちゃんも、きっと気に入りますよ!」
ニコニコでハイタッチ。老夫婦は動悸を起こし始めていた。アキラが異変に気づくも、文字通りかけるべき言葉が分からない。思い出したように、狩人がアキラへ話しかけた。呆れるような、吐き出すような口調で、である。
「アキラ。今だから言えるが、あのヒューゴとかいう男とは付き合い方を考えた方が良い。あの時は演技だったとはいえ、仲間に刃を向けるような外道だぞ」
「ええと……君がそれを言うのかい? そっちは子供を人質に取ったそうじゃないか」
しかも肩撃ってたよな? アキラが蒼角を引き合いに出すと、狩人は黙りこんでしまった。老夫婦は目に涙を浮かべはじめ、互いの手を握りしめた。
「そうだ、アキラ。ついさっきガイドブックをもらっただろう。少し方言を学べる筈だ。数字くらいは読めた方が良いだろう」
アキラの取り出したそれには、確かに数字の発音が書かれていた。実際に読み上げてみるのが一番上達しやすいのだ。少し恥ずかしいかもしれないが、そんなことで怯んでいては言語など学べはしない。
「ああ、知らず知らずの内に爆弾発言などかましてみろ。その場で捕まりかねんぞ」
現地の言葉を知る大切さを説き、さあいくぞと合図をかけると、仕方が無いなとアキラは笑った。二人で数字を読み上げる。
「「十、九、八、七、六、五、四、三──」」
2時間後にようやく留置場から解放される狩人一行であった。
儀玄さんのエミュむずすぎる。