どこもかしこも、エーテリアスばかりだ…(涙目)   作:bbbーb・bーbb

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ネタとモチベが切れたのでビビアン編は今回で超雑に終わらせます。本当に申し訳ないです。


ファッキュー讃頌会

「ああっ、くそっ。腹が千切れそうだ」

 

 ソファーにて、狩人はいつも通り映画鑑賞を嗜んでいた。黒い炭酸ジュースにチップスを添えて。

 

 確かにRandom Playで一番のコメディ映画を頼んだのは私だが、まさかここまでとは。ソファーから転げ落ちそうになったところで踏ん張りながら、狩人は感心していた。

 

 それにしても、人形ちゃんがあれほど笑うとは。顔を真っ赤にして息を切らす人形ちゃんの顔を思い出し、狩人の顔も思わず綻んだ。

 

 未だ残る余韻で笑っていると、アキラからの電話。讃頌会の仮拠点、今回の事件の黒幕の居る場所を突き止めたので来てほしいとのことである。

 

 息切れを起こしながら了承した狩人であったが、現地につくなり、その宇宙恐怖的な笑顔も消えた。

 

 彼らを見るなり、狩人は腰を抜かした。ビビアン、アキラ、ライカン。見慣れた面々の隣にて挨拶を投げかけるのは──ヒューゴ。数週間前に、確かに殺した筈の男であった。

 

 かたかたと全身を震わせながら、同じく震える声、心からの恐怖をもって狩人が口を開く。

 

「馬鹿なっ。死人が、蘇るなど」

 

「貴公が言うかね」

 

「ありえんっ」

 

「貴公が言うかね」

 

 顔を右手で覆い呆れながらヒューゴが言うと、それもそうかと狩人は立ち上がった。早く讃頌会の連中を狩らねば。

 

 道中で、狩人はヒューゴが生きている理由を聞いた。ちょっとしたトリックとのことだ。詳しくは知らないが、どうもライカンと裏で協力し、アキラ達にこっそりと協力しながらちょっとした復讐を遂げていたそうだ。

 

 その復讐とは、ハルトマンを没落させること。命までは取らなかったそうだが、狩人にはもはやあまり関係のないことであった。今度出会ったら殺すつもりではあるが。

 

 暫くすると、二手に分かれる。実験体にされた人間を効率よく運び出すためである。

 

 ビビアンとアキラ、そして狩人の3人組で行動すること約2時間。背後から声がかけられる。振り返れば、トマトのような髪形と髪色をした小女が立っていた。隣には、銀髪の女。

 

 誰だ……? ビビアンと何やら言い合いを始めていたが、狩人にはよく分からなかった。

 

 尤も、それで怯む狩人でも無いのだが。文脈の分からない会話など、ヤーナムでは日常茶飯事である。聞いていれば分かる。この女を殺せば解決だ。きっとそうだ、絶対そうだ。

 

 そうっと散弾銃の撃鉄を起こすと、銀髪の女はホロウの裂け目へと突っ込んでいった。貴方を止めると、赤髪の小女に言い残して。

 

 続けて飛び込んだ赤髪の小女を追って裂け目へ潜ると、銀髪の女は既にエーテリアスに殺害されてしまっていた。

 

 今ならまだやり直せる。ビビアンによる必死の説得も虚しく、赤髪の小女、ディナは己の身体に薬剤を打ち込んだ。みるみる内に、彼女の身体がエーテリアスのそれへと変貌していく。

 

「ビビアン……私が居なければ、貴方はもっと……」

 

 それは、懺悔だったろうか。息を呑むアキラに、ビビアンが振り向く。

 

「手出しは無用なのです。彼女は私の最初の友だち。別れを言うのは、私でなければ──」

 

「B E A S T!!」

 

 四本腕のゴリラの様になったディナに、狩人は突っ込んだ。いつの間にかヤーナムの狩装束に着替えた狩人が聖剣擬き、鞘と合体したそれを振り下ろすのを前に、ビビアンが血相を変えてディナへと走る。

 

 あれはもう、人には戻らない。友人ならば、なおさら早く葬ってやるのが、せめてもの供養であろう。狩人の目には、確かな憐憫が浮かんでいた。獣呼ばわりしたのは癖である。

 

 放たれるビームを二人で躱すと、腰にエヴェリンを下げた狩人が右斜め前へのステップで距離を詰める。

 

 力任せに下ろされる腕を躱すと、全身の力を込めた一文字斬り。腕を飛ばされ怯んだ隙に、ビビアンの槍傘が炸裂した。

 

 圧倒的な質量による力任せな重たい一撃で、相手の行動を無視して無理やり怯ませる。この武器の最も得意とするところであった。

 

「ビビアン。彼女は貴公の友人なのであろう。とどめは貴公のものだ」

 

 狩人はただ、怪物の動きを止めることに注力していた。少し距離が離れれば、ルドウイークの長銃が火を吹いた。これもまた、ただ動きの抑制に特化した一品である。

 

 私の助けが無くとも、彼女はきっと勝てていただろう。数分後、ついに倒れ伏した怪物を前に、狩人が思案したことである。とどめはしっかりビビアンに譲った。狩りの主(ホスト)には、活躍の場を用意してやるものであろう。

 

 最初の友人。かつて救おうとし、しかし己の手で殺すこととなった彼女に一筋の涙を捧げるビビアン。狩人と共に踵を返したその時。

 

「ビビアンっ!」

 

 アキラが叫ぶ。怪物は、まだ死んではいなかった。振り向いた時には、既にこちらへビームを放っていた。狩人が地を蹴ると同時に、ビビアンが傘を開く。

 

 避けきれず、両足を消し飛ばされる狩人。手が血濡れているがために、輸血液の瓶が滑りなかなか掴めない。ビビアンの方も、傘でビームを止めるには限界があった。その時。

 

「アキラ──」

 

 ビビアンは思い切り声を張り上げると、隠し持っていた薬剤を己の腕へと突き刺した。

 瞬間、絶叫。地面から大量の巨大なエーテル結晶を生やし、一瞬にして怪物を串刺しにしたのだ。

 

 大した女である。せめてアキラだけでも無事だと良いのだが。失血により薄れゆく意識の中、狩人は近くのランタンからここまでの道を思い出していた。

 

 蘇った狩人が駆けつけると、倒れるビビアンと、それに抱きつくアキラを見つけた。彼女の身体には青や紫に似た線が幾つも走っており、そのエーテル侵食が致命的なもの、助かりようのないものだと静かに語っていた。

 

「お見苦しい、ですよね……」

 

「ビビアン、ビビアン! 駄目だっ、起きてくれっ!」

 

 涙を浮かべビビアンの身体を揺するアキラ。その視界に、一筋の光、隕鉄の反射が走る。

 

「どけ、アキラ。彼女はもうじき成れ果てるだろう。介錯をする」

 

 ふざけるな。一瞬の静寂の後、アキラの怒鳴り声が響き渡る。こんなところで、死なせてたまるか。狩人ですら身体を強張らせる程の、力強い言葉であった。

 

 仕方が無い、成れ果ててから狩るか。大鎌をしまう狩人の前で、ビビアンが安らかに目を閉じる。アキラの瞳が、青い輝きを帯び始めた。

 

「これは、一体……」

 

「こんな結末、僕は認めない!」

 

 喉が張り裂けるような叫びを上げもう一度アキラがビビアンを抱きしめると、二人の身体から凄まじい光が溢れ出した。眩しさに思わず目を覆う狩人。

 

 目を慣らしよく見てみれば、ビビアンの身体にあった悍ましいエーテルの線が消えていた。ついにビビアンの瞼が動いたその時、二人とも気を失った。

 

 まずい。せめてアキラだけでも助けなければ。狩人が一瞬にして命を選別するのと同時に、ヒューゴ達が駆けつけた。

 

 数日後、ようやくアキラは目を覚ました。見慣れた天井を、愛する妹の顔が覆う。

 

「お兄ちゃん、お兄ちゃん!起きたんだね……!良かった……」

 

 ぼろぼろと泣き始めるリンに抱きつかれると、ちょうど時を同じくして、ライカンとヒューゴが部屋へと入る。一瞬遅れて、狩人とビビアン。生きていたのである。

 

 聞くところによると、アキラ兄妹にはエーテルの流れを操る力があるのだという。それを無意識のうちに発現させ、ビビアンを救ったそうだ。

 

 市長閣下。狩人の知らぬ間にアキラ達が協力関係を結んだ、ライカンの主。彼からの感謝の気持ちとして、要請さえあれば皆に「無期限」の間「無制限」に「できる限り」の支援を行うとライカンを通じて宣言された。

 

「『無制限』って……それなら、まさか『パエトーン』様とも……!」

 

「そちらの方も、既に準備が完了しております」

 

 ……準備? パエトーン? 全身に悪寒が走るのを感じながらも、狩人は大人しく聞いてみることにした。

 

「あとは双方のサインさえあれば、いつでも婚姻関係を結んでいただく事が可能です。結婚式諸々の費用は、全て市長閣下が負担するとのことです」

 

 狩人は静かに左手をポケットへ突っ込みエヴェリンを握った。

 この女に「パエトーン」との結婚の権利だと? 正気か? 

 

 現にビビアンは溢れる興奮にその場で飛び跳ねんとするのを必死で我慢していた。瞳孔も蕩け始めている。

 結局2秒後にはビビアンは傘を投げ捨てアキラに飛びかかり、銃を抜いた狩人をヒューゴが慌てて止めることとなったのだが。

 

「『パエトーン』様! 『パエトーン』様! 聞いたのですか!? 聞いたのですね!!!!」

 

「ヒッ……」

 

 押し倒されるや否や、あまりの気迫に顔を青くするアキラ。恐怖にうっすらと涙を浮かべている。お兄ちゃんから離れてとリンがビビアンの肩を掴むも、獣が如き膂力によりびくともしない。

 

「さあ、『パエトーン』様! 共に舌を噛み、語り明かすのです! 新しい思索、超次元を!」

 

 但し、と、怒号にも似たライカンの声がビデオ屋に響き渡る。婚姻においての注意事項についてのことである。

 

 曰く、婚姻は双方の自発的な同意によってのみ認められ、監禁、拷問、及びその他の状況下、片方の意識が混濁している場合は認められないのだという。

 

「わ、私が『パエトーン』様にそのようなこと……するはずないではありませんか!」

 

 今一瞬詰まったな? ヒューゴに抑えられた両腕に力が籠もる。立ち上がったビビアンが、言葉を続ける。

 

「まあ、無いに越したことはない、という意味ですけれど……少なくとも、今日はないのです」

 

「ビビアン……?」

 

 凄まじい爆弾発言にヒューゴまで恐怖してしまった。ほんのり開けた口から出た声は震えており、元から青白い顔を更に蒼白にしている。哀れな事である。

 

 なんにせよ、今のところはアキラがビビアンに結婚を強要されることはなさそうである。今のところは。ヒューゴから解放された狩人はほっと胸を撫で下ろした。アキラは少しトラウマを負ったようだが。

 

 貴公に「パエトーン」様は釣り合わなかろうとなんとなくで挑発してみたところ、突如どこからともなく車輪と黄金三角兜を取り出したビビアンを皆で取り押さえる事となった。狩人は死んだ。

 

 狩人には支援は無かった。市長には殆ど認知すらされていないのだから当然である。アキラを通して頼み事をすれば良いだけなのだが、やはり気が引けた。元より大した頼み事もないのだが。

 

 市長によると、兄妹本人たちさえ望むならば、アキラが数日前に出会った凄腕の調査員、儀玄(イーシェン)の元でエーテルを操る修行を受けられるのだという。

 

 衛非地区なる場所に住む神秘主義者の集団。その頭領でもある彼女なら、きっとアキラ兄妹の力を引き出す事ができると。

 

 神秘か。新しい秘技を会得できるかも知れないと、狩人はもう心を躍らせていた。新しい場所には、新しい発見が待っているものなのだ。まだ見ぬ強敵、血肉湧き踊る死闘もである。

 

 神秘主義者の集団と聞くといい思い出がないが、問題があればそのときはそのとき、ヤーナム(皆殺しに)すれば良いであろう。

 

 やりたいことリストにかりかりと新しい項目を書き足していく狩人であった。




本当に雑ですまない……すまない……敵があんな重い奴だとは思わなくて……シリアスは書けないんだ……赦してくれ……赦して……くれ……導きの「パエトーン」様って言わせたかったのに……

衛非地区編は頑張ります。ちゃんと履修しきってから書くので大丈夫(なはず)。神秘主義者集団と狩人(神秘の塊)はきっと相性が良い。それが終わったらカリンちゃんとのおまけ挟んでアリス編です。
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