透き通った世界観にElinの民をひとつまみ   作:無名さん

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セクシーセイアですまない

「忌憚なく述べるとするなら君は滅茶苦茶だ。理解が及ばないとも言う。アビドスでのカイザーとの大立ち回り然り、大きな蛇のような機械との戦い然り、挙句に死者蘇生などという神の御業とも言える行いをいとも容易く行ってしまった。――君に分かるかい?決まった未来を見続けて殻に籠っていた中で奇想天外な光景を唐突に見せられる気持ちが。ミカのあの直情的な性格も理解し難かったがよもやそれ以上に訳の分からないものを見せられるとは夢を見る私ですら夢にも思わなかったよ。機械に卵を産ませるというのは一体どういう理屈だい?いやもし理屈なんてあっては堪ったものではないから説明出来るとしても聞きたくはないがね。それと君に良心というものは存在しているのかい?いくら兵器と言えど何をどう思えば女の子に対して媚薬を投げつけた上で鞭を打つなんて発想が生まれるのか是非とも聞かせてもらいたいよ。七つの古則を知っているか?古則の二番目は理解できないものを通じて、私達は理解を得る事が出来るのか。というものがあってね、一見すると目的語が抜けているから分かりにくいと思うが、私は君を見て答えを得たよ。君という理解のできないものを通せば私達は理解を得る事が出来るだろうね」

 

 

 

 

 

藪から棒に誰だこの子は。

今私の目の前には金髪で袖口を大きく余らせた服装をしており、そして恐らくミフやネフと同じ種類の獣の耳と尻尾を持った小柄な少女がいた。何やら一方的に捲し立てられていたのだがあまりに唐突すぎて何を言ってるのかほとんど分からなかった。

 

寝る前にキヴォトスに来てから初めてかつおぶしを作って限界までスタミナと体力を削っていたのが悪かったのだろうか。おかげで久方ぶりに泥の様にベッドで眠ったはずなのだが目が覚めたと思ったらこの状況だ。しかも目覚めた場所が拠点ですらないよく分からない場所だ。私は一体いつ誘拐されたんだ?眠っていたとはいえそんな事があり得るのか?キヴォトスに来て一番の異常現象な気がする。中々面白い状況に出くわしてしまったものだ。

 

――鞄を漁るがアイテムはちゃんと持っている。ついでに聖なる盾を発動してみるが問題なく魔法も行使できるようだ。これならば戦闘に発展しても問題はないだろう。そして私は絞首台を取り出し狐の娘に一気に近付き拘束する。思いの外あっさりと出来てしまったがこれで生殺与奪はこちらが握ったので会話してやってもいいだろう。

 

「さて、君は一体誰だ?素直に答えたら私の睡眠の邪魔をしたお仕置きの度合いを緩めてあげてもいいぞ」

 

「ま、待て。一気に捲し立ててしまったのは謝る。私も少し興奮してしまっていてね。だがこの体勢はあまりに不味いと思うんだ。なんというか既視感がある。嫌な既視感がよぎって仕方がないんだ」

 

全くこの狐っ娘は。誰だと聞いているのに全然答えてくれないじゃないか。これはもう敵対の意思ありと見て実験にかこつける大チャンスじゃないか。全く仕方のない狐っ娘だ。まずはまだこちらで試していなかった産卵薬からだな。

 

「ま、待ってほしい!その手に持っている薬はなんだ?媚薬とは違うようだが無性に嫌な予感がしてならな――んぐっ!」

 

やかましい狐っ娘を無視して産卵薬を口に突っ込み飲ませる。

 

「んあっ♡――こ、これは……!?わ、私まで卵を産んでしまったのか!?卵を産ませるのは媚薬や鞭だけではなかったのか?何故こんなに無駄にバリエーションが多いんだ!」

 

ちなみに私が一番最初にした質問である君は誰だ?という問いに答えない限り実験を続ける予定である。しかし親切にこちらからもう一度聞き直したりはしてあげるつもりはない。実験を続ける大義名分を失ってしまう。

 

「というか夢の中のはずなのに産むとはどういう事だ?君は本当に理屈が通用しないな!しかも何故か君を見てると胸が高鳴ってくるんだが!?」

 

狐っ娘が一生動揺しててちょっと面白い。というか産卵薬って好意を高めるような効果あったか?

……そういえば産卵薬一つ作るのに媚薬を二つ使うんだったな。だとすればもしかしたら媚薬単品よりも効果が強いかもしれないな。――まぁいいか。おかわりといこう。

 

「あ、あの!そろそろ返事とかしてもらえないだろうか!待て!その薬はもうだめだ!やめ――むぐぅ!」

 

お、有精卵が出た。

予言の大天使『百合園セイア』の有精卵ゲットだ!ワァオー。

 

なるほどセイアというのか。まぁそれはそれとして後三本ぐらい飲ませておこう。ここが彼女の言う通り夢の中なら好意を上げても現実には影響はないかもしれないし、あったとしても無駄にはならないだろう。

 

「あっ♡――つ、次は、何をさせる気だ……?♡もう好きにしてくれ……♡」

 

 

おぉ、それはありがたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、大体こんなところか」

 

「もういいのか……?もう少し続けたければ私は構わないが……」

 

「いや十分だよ。デバフ魔法を片っ端からかけたりしたが調子は大丈夫そうか?」

 

「あぁ、その後に君がかけてくれたバフ魔法とやらのおかげでむしろ調子は絶好調と言ってもいいかもしれない」

 

肉体復活やら英雄やら色々かけたおかげだろうな。とりあえず用は済んだので絞首台から降ろして会話を続けることにした。

 

「ここまで深い関係になって今更なんだが、私は百合園セイアだ。トリニティでティーパーティーのホストを務めていた。今はナギサに代役を任せているがね」

 

――思った以上に大物だった。内容からしてエデン条約を漕ぎつけたナギサと同等の立場の持ち主だ。もしかして産卵薬はやりすぎたか?

 

「なるほど。私の事は知っているようだから自己紹介は省くぞ」

 

「あぁ、構わないとも」

 

「それで、今のこの状況は一体なんだ?夢の中との事だがノースティリスでもこんな体験はした事無いんだが」

 

「これは私の持っている予知夢の能力のせいだね。明晰夢という形で過去や未来、時間に関係なく様々な事象を観測する事が出来るんだ」

 

――とんでもなさすぎる能力持ってるな?ヒナやホシノですらそういった特殊能力は持っていなかったはずだが、これも神秘とやらによるもので発現したのか?

 

「その能力のおかげで君の今までの行動をある程度知ったというわけさ。今こうして夢の中で話せているのも能力によるものだね」

 

「なるほどな……。とりあえずこれを飲んでもらえるか?」

 

そう言って遺伝子薬を飲ませた。これは貴重なので一本しか常備していないのだが、もし予知夢フィートなんてものがあれば是非とも欲しい。

 

「んっ♡――これは……なんだい?」

 

セイアから生まれ落ちた遺伝子を受け取りながら遺伝子薬の概要を話す。――残念ながら予知夢フィートのようなものは手に入れる事は出来なかった。いずれまた試させてもらおう。

 

「私の能力を複製して取り出す薬か。なるほど、君の世界にはそんなものもあるんだね」

 

「あぁ、残念ながら今回は手に入れる事は出来なかったな。この辺りは運だからどうしようもないな。また良ければ協力してくれ」

 

「無論構わないさ。――いや、あんな事されて何故私は怒りも文句の一つも浮かばないんだ?これでは洗脳されたようなものではなかろうか」

 

まぁノースティリスではよくある事だと受け入れてほしい。どうせ私は調教師らしいしな。

 

「ところでセイアはわざわざ私のところまで来て何か用があったのか?」

 

「私は予知夢の能力を持つ影響か体が弱くてね。ちょっと襲撃を受けて身を隠していたんだが、そのタイミングで君の事を知ってね。突然訳の分からないものを見させられて興味が湧いたから声をかけてみたらあっさりと君に手籠めにされたというわけさ」

 

なるほど。セイア程の立場の者が襲撃を受けるとなればこの時期だと候補は一つしか無さそうだが。

 

「アリウスか?しかし想像以上に直接的な手段で来たな。さすがに予想外だ」

 

「――アリウスの事を知っているのかい?あぁ、私は予知夢が見れるとはいえ、君の全てを知っているというわけではないので悪しからず」

 

「ゲヘナにもアリウスから接触があってな。幸運にも事前に知れた事からこちらは特に被害も無いが、君が狙われたのはやはりその能力か?」

 

というよりゲヘナは加害者側になるはずだった。

 

「そうだろうね。ヘイローを破壊する爆弾なんて物まで用意して私を排除しようとしていたから、よっぽど警戒していたのだろうね」

 

何?ヘイローを破壊する爆弾だと?という事はアリウスにはゲマトリア、というよりゴルコンダとやらが関わっているという事になるのか。面倒だな。風紀委員会さえ巻き込まなければ見逃してやっても良かったが、調印式で襲撃の予定があり尚且つヘイローを破壊する爆弾の使用を躊躇わないのであれば、黒服には悪いが殺すしかないな。ヒナ達に使われては堪ったものではない。

 

「なるほどな。大体分かった。アリウスはゲマトリアと関わりがあるようだな」

 

「ゲマトリア……?」

 

「知らないのならそれでいい。アレらには深入りしない方がいい」

 

「むぅ……そう突き放されるとなんだか傷付くのだが」

 

そうは言っても実際生徒が相手をするには危険な相手だからな。

 

「ヘイローを破壊する爆弾なんて物を作り使用する手合いだ。実際襲撃もされているのだから深入りは避けた方がいい」

 

「なんだか釈然としないが……まぁ今は納得しておくよ」

 

「というか君の予知はどこまで見えているんだ?調印式での襲撃も見えているか?」

 

「――!?君はそこまで知っていたのか?だが、君の事は予知に映っていなかったはずだ」

 

「それはおかしな話だ。私は調印式には必ず出るつもりでいる。風紀委員会に犠牲を出すわけにはいかないからな。ヘイローを破壊する爆弾を使用さえしていなければ調印式の日は襲撃が来た段階でヒナ達をさっさと退却させるつもりでいた」

 

「まるでトリニティの被害は許容するような言い方だね……。私をこんな体にしておいてそれはちょっと無責任じゃないかい?」

 

セイアが少し責めるような目でこちらを見てくる。……まぁ確かにその通りだ。色々やってしまった以上は少しばかり気に掛ける必要があるだろう。イチカの安否も気になるしな。

 

「……そうだな、すまなかった。望み薄だと思って切り捨てていたが、先生に連絡を取ってトリニティへ向かってもらうか……」

 

「ふふっ、ちょっとした冗談さ。あれだけいじめてくれたんだから少しくらいやり返したってバチは当たらないだろう?それと、先生なら近くトリニティへ向かうはずさ。ナギサからの依頼を受けてね」

 

「そうなのか?だとすれば好都合だな。先生からトリニティに襲撃の事を話して信用して貰えれば調印式での迎撃も私の手間が減るだろうからな」

 

ゴルコンダの始末はともかく、私ではアリウスの制圧は近接で相手する必要がある以上手間がどうしてもかかる。不殺のエンチャントが魔法や遠隔武器に適用されないのが悔やまれる。ルーンモールドで抽出も出来ないしな。

 

「――ははっ」

 

そんな考え事をしていたらセイアが突然笑い出した。急にどうした?

 

「いやなに、私の知る予知では襲撃は予見されていなかったのだよ。式の最中に巡航ミサイルによる爆撃と共にアリウスが襲来し、ゲヘナもトリニティも重傷者が増え続け混乱の一途を辿る。それが今回のエデン条約における結末さ」

 

「だが君は予知で襲撃を知っていたはずだろう?他の者に伝える事はしなかったのか?」

 

「……あぁ、そうだね。私の予知の精度は高くてね。高すぎると言うべきかな。私の予知が覆った事はないんだ。どう動いたところで私の見た未来に収束してしまうのなら、足掻くだけ無駄だと思ってしまうのも、無理はないだろう?」

 

正直私には理解し難い感覚だ。私の、というよりノースティリスの特異性は理解しているが、とてもかなわないような相手であろうと自分を鍛え策を弄した上で障害を踏み潰してきた。もし私が予知が行えるようになったとして、絶望的な戦力差のある敵や出来事が見えようとも、踏み越えるための新たな目標くらいにしか感じられないだろう。

しかしセイアは定められた未来を見続けて疲弊してしまったというわけか。

 

「しかし君という存在が現れたおかげで私の予知はわずかでも覆った。これがどれだけ私にとって衝撃的な事か、君にはきっと想像出来ないだろう」

 

「……」

 

「そしてそんな君の過去を見て得た教訓もある」

 

「なんだ?」

 

「圧倒的な力さえあれば割と世の中どうとでもなるという事だ。君が世界を滅ぼす兵器を圧倒的力量と手練手管を持って手籠めにし、更には私の事も手籠めにしたようにね」

 

そこから教訓を得るのは切にやめてもらえないだろうか。

 

「もし君が居てもなお私の見た結末と変わらないのであればそれはもう運命だという事だろう。いっそ諦めも付くというものさ」

 

しかも変な方向に開き直ってる気がする。まぁある意味でも前向きになっているのだし良しとするか。私の調教は正しかったという証明が為された。

 

「私も個人的に気になっている事があるからね。次に目覚めた時はとりあえずミカをぶん殴りにいってみようと思う。今の私ならきっと無敵だからね」

 

そう言って元気良く拳の素振りを始めるセイア。バフ魔法のおかげで体の調子が良いのかもしれないが、流石に私のバフ魔法と言えどそこまで効果の長いものではないのだが大丈夫だろうか。ミカという子にどんな恨みがあるのかは知らないがとりあえずその子がセイアにケガをさせない事を祈るしかないな。

 

「そ、そうか。とりあえず目覚める事が出来たらトリニティへ向かうという先生に協力してあげてくれ。如何なあの人でもトリニティで信用を得るのは難しいかもしれないからな」

 

「分かった。君がそう言うなら出来る限りやってみるよ」

 

よし、先生がトリニティに到着したらモモトークを送って私の知る情報を送っておこう。後は向こうが先生を信じて調印式でゲヘナと上手く防衛網を張る事が出来れば被害も最小限に抑える事が出来るはずだ。というかそれ以前にアリウスもこちらに情報が洩れて警備が万全である事を察すれば流石に襲撃を諦めるだろう。

 

「最後に一つ良いかい?聞いてみたい事があるんだ」

 

「ん?なんだ?」

 

「キヴォトスに伝わる七つの古則の五つ目にはこんな物があってね」

 

楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか。

もし楽園が本当に存在するのならばそこに踏み入った者は二度とそこから出ていく事はない。もし楽園から出ていったのならば、そこは楽園では無かったという事になる。

であるならば楽園の存在を外から観測する事は不可能であるという、矛盾を孕んだ質問だった。

 

「君ならどう考える?どのような回答を出すのか聞いてみたい」

 

あんまり難しい事を考えるのは苦手なのだが……こちとらただの冒険者ぞ。

 

「所感だが、これは信仰の問題ではなかろうか」

 

トリニティにはシスターフッドと呼ばれる信奉者が集まる組織がある。キヴォトスにも信心深い者がいるのだなと感心しつつ調べた事があるのだが、なんと驚いた事に神は実在しているかどうかも分からないらしい。正確には解釈が分かれているというべきか。ノースティリスでは神は実在しており今は神々の御姿を拝謁出来る機会は殆ど無いが、その威光と御声は今でも信者に届く。なので正直キヴォトスの信仰は意味が分からないのだが、キヴォトスの信仰とはとにかくそういう感じらしい。

 

それに当てはめて考えるならば、楽園を信じたい者は信じる。信じない者は信じないで話は終わる。端的に言えば証明する必要性が無い。更にあえて言うならば、信じている者達が集い共に作り上げた居場所が楽園と言えるのではないだろうか。

 

「結論を言えば、証明する必要は無いし信じたい者は勝手に信じればいい。というのが私の考えだ」

 

「……なるほど。ある意味君らしい回答なのかもしれない。二択の問題に対して知った事かとばかりに問題自体を一蹴してしまうその姿勢。やはり見習うべきところなのだろうね」

 

それほど滅茶苦茶だからこそ私の予知を覆せたのかな、と納得の表情を浮かべるセイア。

これ遠回しに身勝手な人間だと揶揄されてないか?せっかく考えたのになんて感想を浮かべるんだこの子は。

 

「いやすまない。だが君のおかげで答えを見出せたよ。やはり、必要なのは力だね」

 

なんで?

 

「私も君のような滅茶苦茶な存在になれるだろうか。良ければ手取り足取り私を育ててみないかい?」

 

……正直予知夢持ちのペットとかレアものすぎるし興味があるのは間違いない。

 

でもどうしてだろう。なんだか納得いかない。

 

「ふふ、逃がしはしないよ。責任は取ってもらわねばね」




アリウスストーリーを見たりエデン条約をどうするか考えていたら投稿が遅れてしまいました。まずはセイアから汚染する事にしました。
Elinの安定版も来たのでこれからは2日~3日の投稿頻度にするかもしれません。

例の2人組も早速にペットにしました。あいつ範囲脆弱持ってるの優秀でいいっすね。
難解の特性思ったよりやばいっすね。暗記500↑でストック3~6程度しか得られないのいかれてらぁ!

スバルをティリス民の前でハーモニカ吹かせて投石したい…したくない?
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