防衛省の設けた防衛力の抜本的強化に関する有識者会議が報告書を取りまとめた。潜水艦の長時間潜航に向け、原子力を念頭に、従来の例にとらわれることなく「次世代の動力」活用の検討を求めている。日本を取り巻く国際情勢が緊迫化する中、シーレーンを守るためにどのような備えが重要になるのか。

 次世代動力と慎重な表現を使っており、表向きには、全固体電池や燃料電池が想定されるが、ずばり狙いは原子力である。潜水艦において、原子力と通常動力の間では、月とスッポンほどの能力差がある。

 原潜の場合、エネルギーが事実上無尽蔵となり、水中での作戦行動に制約がない。通常動力型潜水艦の場合、バッテリーに限界があるので、それを意識した作戦行動しかとれず、高速移動にはおのずと限界がある。

 さらに、原潜は長距離・長期間で移動や潜行が可能で、スタンド・オフ防衛能力を具備させれば抑止力の大幅な強化につながる。

 筆者は、かわぐちかいじ氏の漫画「沈黙の艦隊」のファンである。このたび、映画版が公開されることになり、筆者は試写会に行った。北極海で高速移動の原潜同士の海戦が展開されるが、通常型潜水艦の出番はない。作中に登場する原潜「やまと」の最終兵器は核兵器である。

 その抑止力が世界平和につながるという筋書きで、37年前の漫画とは思えないリアリティーがある。「やまと」支持か否かで、総選挙が行われ、安全保障が国民の最大関心事になっている。今回の自民総裁選では、もっと安全保障が争点になっていいと思うが、やはり目の前の経済対策ばかり話題になるのは、少し残念である。

 技術の進展とともに、安全保障環境は大きく異なってきた。本コラムで、米国が開発した中距離ミサイル発射装置「タイフォン」が日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン25」において岩国で初公開されたのを紹介した。これは、中国の弱点を突く可能性がある。中国は早速、日米両国に対し、タイフォンの撤去を強く求めた。これは意味のあることをやっている証しだ。

 現行の防衛力整備計画は2027年度までの5年間の防衛費を43兆円としている。防衛省は改定前倒しを見据え、本格的な検討に入る。冒頭の報告書では、防衛装備品の輸出に関し、非戦闘目的の「5類型」のみを認める現行ルールの緩和も要請した。やっとまともな議論が行われることを期待したい。

(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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