トランプ米大統領は台湾とウクライナを同じようにみているのではないか。さらに、台湾には中国問題が影を落としているかもしれない。

 米紙ワシントン・ポストが今月中旬、トランプ氏が台湾への4億ドル(約590億円)の軍事支援パッケージを承認しなかったと報じた。

 同紙によれば、トランプ氏は「対価なしに武器を供与することに賛成していない。ウクライナに対しても同様の姿勢を示している」という。バイデン前大統領は、台湾への20億ドル(約2950億円)以上の軍事支援パッケージを承認していた。

 一方、同紙によれば、米台防衛当局者は8月に米アラスカ州アンカレジで会談し、「総額数十億ドル規模になる可能性のある一連の武器売却について協議した」という。要するに、トランプ政権は軍事支援はしないが、武器購入は歓迎ということだ。

 そもそも米国の対台湾貿易赤字は大きい。昨年の貿易赤字は740億ドルに達しており、米国にとって6番目に大きな赤字相手だ。しかも、最近、中国を巡る貿易赤字構造が変化している。

 米商務省が8月に発表した貿易統計によると、6月は対中国の貿易赤字がおよそ21年ぶりの低水準となった。一方で、ベトナムや台湾に対する赤字額は過去最大となり、それぞれ中国を上回った。中国がベトナムと台湾を使って迂回(うかい)輸出していることが考えられる。

 「赤字国は武器を買え」がトランプ氏の基本だが、対中国の抜け穴は許さない。台湾に対し、警告を発した可能性がある。米政府は台湾の頼清徳総統が8月に米ニューヨークに立ち寄るのも拒んだ。

 さらに、トランプ氏は19日、中国の習近平国家主席と電話会談した。両国は、関税に関する妥協点を探り、中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を米系資本が買収する方向で調整中だ。

 米国は1970年代後半に台湾と断交し、中国に外交関係を切り替えた。ただ、79年制定の台湾関係法に基づき、米国が台湾の自衛力維持を支援し、台湾にとって最も重要な支援国かつ最大の軍事支援提供国であり続けている。台湾関係法があるので、ウクライナとは違うはずだが、トランプ氏にはそこが見えていないようだ。

 安倍晋三元首相が存命であれば、そうした誤りを正していただろう。台湾の安全保障を損なっても、トランプ氏は中国との関税交渉に臨んでいる。

(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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