生徒に死ぬドッキリを仕掛けたいんだよ!!-聖園ミカ編-
ミカすき。(テンプレ)
リクエスト作品かつ徹夜クオリティでしたが、公開許可頂いたので。
ミカが好きな先生は多いのではないでしょうか。
盲目的に求めてくれて、傷つきやすい彼女を支えてあげたくなりますよね。
人に対する態度は鏡になると同時に、自分が真に求めている態度なのでは??と僕は思います。
優しくしたから優しくされたい。
愛を与えたから愛されたい。
人間特有のエゴで、解放されたらラクになれるというのは分かります。
でもそれに支配されて躍らされるからこそ、人間臭い今の世界があるのではないでしょうか。
綺麗ごとを言っても相手がただテイカーになると不満を感じるように、元来自己中心的な性質こそが人間の本質だと思っています。
ミカは若さゆえ、純粋さゆえに周りに頼れず自分を責め続ける。
自罰的な中でも、どこかで救われたいと感じている。
その発露こそがアリウスを赦したあのシーンに繋がる…のでは。
まさしく人に対しての態度は鏡。
ミカの愛に答える時、私たちもミカと同じ沼に浸かっている、そんな気がしますね?しますね?(もう一度)
外伝的にワカモと先生のお話を投稿するつもりですが、次の生徒さんが決まっていません。
リクがあればメッセージによろしくお願いします。
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ミカっていいよなぁ。
シャーレの先生こと私は心の中で呟く。
エデン条約であんなことになり、最初は聖園ミカという生徒の行く先が心配になった。
彼女は確かに多くのことを間違い、それでも最後には自分の敵だった生徒へ祈りを捧げるという慈悲を、その心の中にある優しさを見せた。
そう、彼女はその軽薄な態度や煽るような口調に誤解されがちだが、本当は誰よりも優しい心を持っている。
「私はバカだからさ…あはは…」
そういって苦笑いする彼女が頭の中に浮かぶ。照れ隠しだ。
少女ゆえの残酷さも兼ね備えていたが、エデン条約以降はその陰もなりを潜め、ほんの少しだけ卑屈に、自罰的になったミカ。
例の件以来、私に依存しているのは明らかで、でもそんなところも可愛いと思ってしまう。
ああ…そんなミカを曇らせたいよなぁ。
激務に次ぐ激務で少しばかりおかしくなった先生は、積まれた書類から逃げるようにミカへのドッキリ内容を考え始める。
この前ヒナにやったようなドッキリをしてもつまらないし、下手したらミカは超人的な反射神経で銃弾止めそうだし…どうしよ。
あっ…これが良い。思いついてしまった。
鬼!悪魔!と生徒に言われてもかまわない。ストッパーの壊れた先生は、悪趣味なドッキリを思いつくのであった。
「アロナ。トリニティの高級プリン1ヶ月分でお願いしたいことがあるんだけど。」
あとはエンジニア部お手製の先生そっくり人形を、現場に設置するだけだ。
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おかしいとこ…はないよね?
トリニティの屋根裏部屋で、聖園ミカは鏡に向き合っていた。
今日はシャーレの当番。つまり先生に会える日だ。
先生は当番じゃなくてもいつでもおいで。って言ってくれたけど。
「うー…何もない日に会いにいくなんて…迷惑だよね…。」
自分のことながらめんどくさい。
四六時中あの人のことを考えているくせに、寂しくなったらモモトークを開いているくせに、
最後は臆病なのである。
根本にあるのは自信のなさ。
先生はいつも可愛い子に囲まれているし、誰にでも優しい。
噂では二人きりで温泉に入ったり、足を舐めたり…などといった情報は流れてくるが、先生は私にそんなことはしてくれない。
ずるい。ずるいよ先生。心がズキズキと痛む。
「はぁ……私も…。”先生、私と一緒にお風呂入らない?☆”…うわぁぁぁあ、言えないよぉぉぉぉ!!!!」
どこまでいってもそんなことは言えそうにない。
先生と出会う前の私なら軽口も、大口も叩けたのに。
恋する乙女は無敵に見えて、内面はだれよりも脆かった。
それでも時間は待ってくれない。
身支度を整え、うじうじした自分を奮い立たせるようにメイクをバッチリ決めた。
「うん…可愛いはず。昨日制服もクリーニングに出したし、完璧。いこう!」
少女は愛する人が待つシャーレへ向け、薄暗い部屋を飛び出した。
ちょっとだけ跳ねた髪には目を瞑る。
これくらい抜けてる方が可愛く見えるかなって、少し打算的になったのはナイショ。ね?
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トリニティからシャーレから向かう途中、
紅茶のいい香りが鼻をくすぐる。
前回当番に向かうときには空き店舗だった店が紅茶専門店になっていた。
「んー!いい匂い!そういえば先生はいつもコーヒーばかりで、他の飲み物はあまり目にしないなぁ。
たまには気分転換も必要だよね…。」
目の下に隈をつくりながら優しく微笑む顔が浮かぶと同時に、お店に吸い込まれていた。
数分後…。
「ちょ…ちょっと…ううん、かなり高かったけど…これなら先生も満足してくれるかな。」
お店には沢山の種類の紅茶があって、正直どれがいいかなんて分からなかった。
色んな紅茶飲ませてもらったはずなのに、ティーパーティーとはなんだったのか。
ロールケーキの良し悪しならわかるんだけどな。
ナギちゃんに連絡して聞いてみようかと思ったけど、先生への贈り物に他の誰かが介入するのは嫌で、
「一番高いのをください!」
と上ずった声で店員さんにお願いしていた。
ティーパーティーで優雅に過ごしていたころの私ならなんともなかった金額でも、
今の私には結構な大金だった。それでも。
「先生が喜んでくれればいいな。…早く会いたい。待っててくれるかな?」
彼のためなら苦ではなかった。
それにナギちゃんもシャーレ当番の時は紅茶をごちそうしてるみたいだし。
友人とはいえ、負けるつもりはないじゃんね??
恋は病。脳を麻痺させる麻薬。
色んな表現がされるけど、どれも適切で、どれも適切じゃない。
あなたへの愛はそんな言葉で表すには少し陳腐すぎる。言葉にできないだけなんだけどね、ふふ。
純白の翼をはためかせ、愛する人の元へ向かう姿はまるで天使のようだった。
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シャーレの執務室の前にやっとたどり着いた。
汗臭く…はないよね?大丈夫、あとは呼吸を整えて。
「ふーっ…はぁー…よし。先生!!お手伝いしにきたよー☆」
大きな声であいさつし扉を開けると、先生が優しく迎えてくれた。
「おはようミカ。朝早いのにごめんね。」
少し申し訳なさそうな瞳の下には、大きな影をたたえている。
きっと今日も寝てないんだろうなぁ。何もしてあげられないのが辛い。
大切な人が苦しんでいる事実に胸がキュッと締め付けられているのを感じた。
…いや、ここで暗い顔しちゃったら気を遣わせちゃう。明るくいこう。
「おはよ!!先生元気なさそうだよ?さてはまた徹夜したんでしょー??
私には無理するなっていってるのに、先生が守れないのはダメなんじゃない?」
「あはは…めんぼくない…でもミカに会えたから眠気も疲れも吹っ飛んだよ。ありがとう」
私に会えたから。…他の誰でもない私に。
むー…そんなこと言われたら何も言えなくなりそう。
ずるい、ずるいよ先生。でも休むのも大事なんだよ??
「えいっ!」
「ミカっ!??」
辛そうな先生に耐えきれなかった私は、デスクを埋め尽くす書類を奪い取る。
「先生ごめんね、でもひどい顔してるから少し…少しでいいから休んで…お願い!」
「……そうだね、心配されるくらい酷い顔をしていたなんて情けないや。
少しだけ休ませてもらおうかな、ミカありがとう。」
少し逡巡した様子だったが、デスクの上を片付けて、先生がソファーへ倒れこむ。
「ふぅーっ…そういえばいつ寝たのかも覚えてないな…なんだか眠く…。」
ソファーに身体を預けてすぐに寝息を立て始める。
荒れ果てたシンクやゴミ箱を見る限り、どれだけ酷い生活をしているのかは想像がつく。
「…おやすみなさい、先生。寝顔も可愛い…私以外には見せちゃだめだよ…?さてと…」
スヤスヤとソファーで寝息を立てる彼を起こさないように、掃除を始める。
もし先生と結婚したら、こうやってお掃除して、ご飯を作って帰りを待つ。
帰ってきた彼は疲れているのに、私のご飯をおいしいおいしいって言ってくれる。
その後は…よ…夜に二人で一緒のベッドで寝たり?その先も…!!??
そんな未来を妄想しながら、真っ赤な顔でテキパキと掃除を進めていくのであった。
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「ん…あれ!?もう夕方!???」
ミカのドッキリを仕掛けるつもりが、ガチ寝していた。
仕事も終わらせてないし、また次にしようか…と思いながら身体を起こすと、
「あーっ!!先生やっと起きた!!寂しかったんだからね?
寝てる間に出来る書類はやっておいたからね、後で撫でてほしいな…///」
ミカの甘える声が聞こえてきた。気づけばあれだけあった書類も残りは10枚にも満たない。
感謝してもしきれない…これからドッキリするのが申し訳なくなるくらいだ。
それでも私は先生だから、初志貫徹するよ。
終わった後はミカとお揃いのアクセサリーでも買いにいこう。
それで許してもらえるかはわからないけど。耐えるんだよ、ミカ…。
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「わかったよ、ほんとにありがとうねミカ!それくらいならお安い御用だよ、こっちにおいで…」
仕事があらかた片付いたことに安心したから?
ゆっくり寝ることができたから?
それとも…起きたときに私がいたから??
理由は分からないけど、先生の顔は仮眠するまでよりよっぽど元気そうで胸をなでおろす。
同時に、自分で撫でてほしいといったくせに撫でられる覚悟ができず、お茶を濁す。
「ううん、私にできることやっただけだし…でも先生が休めたなら良かった☆
ね、そういえば喉乾いてない??来る途中で茶葉を買ったから淹れてくるね。撫でるのはその後で!」
自分で言っておきながら、恥ずかしくて逃げてしまった。
これだからミカ、キミは…頭の中のセイアちゃんが馬鹿にしてくる。あとで一回小突いてやろう。
うだうだしている内にお湯が沸き、紅茶を注ぐと良い香りが広がる。
下手なものは出せないと少し味見してみたら、
「あ、おいしっ…!」
うん、これなら大丈夫だろう。
正直紅茶を入れるスキルがあるとは思えないけど、ナギちゃんが淹れた紅茶に負けない。
そう確信した。
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「せんせーー!!紅茶もってきたよ!起きたばっかりだけど飲める?」
「うん、匂いだけで飲みたくなってきた…ありがとう。」
先生の前にカップを置くと、火傷しないように冷ましながらゆっくり紅茶を味わっている。
ふぅ…と紅茶を飲んだ先生の顔はリラックスしているように見えた。
「ねぇミカ。ものすごく美味しいけど、これもしかして高いお茶なんじゃない??」
よかった…先生が美味しそうにしてて。
高いから美味しいのは当たり前なのだけど、それはそれで癪に障るから
「えー??それスーパーで買った安い茶葉なんだけどなー?
あ、もしかして私の愛情が入っているからかもね?☆ なんて、うそうそ…えっ?」
攻めたつもりが結局尻込みしてしまった。
誤魔化して煙にまくつもりが、先生が私を抱き寄せていた。
「せ、せんせいっ!?どどど、どうしたの!??」
「ミカ、気遣ってくれたんだよね。あ、何がっていうのは言わなくてもいいよ。
でもほんとにありがとう。優しいミカが私は大好きだよ…。」
…普段だったらしてくれないのに!?
唐突な先生の行動に頭が追い付かない。
「えっ!えっ!!だいすき!?」
あー、先生のことだから生徒の事が大好きってアレだろう。
特別になりたかったけど、ここでめんどくさいことをしちゃいけない。
分かってる…。
「えー?先生みんなにそんなこと言ってるんでしょ??ま、私も先生のこと好きだけどね?☆」
精一杯の強がりだ。いつもどおり笑えているといいのだけど。
「ミカだけだよ。さてと、じゃぁお礼にご飯でも行かない??」
…????
思考が追いつかないや。私だけ???
えっ、というかご飯??先生がキョトンとしてる!
「あ、あー…う、嬉しいよ!ご飯も一緒に食べたい…です//」
なんとか言葉を絞り出したけど変じゃなかったかな!?
これって夢じゃないよね??
「それならよかった。前から気になってたお店があって、ずっとミカと行ってみたかったんだ。」
嬉し過ぎて、高鳴る鼓動を隠すのに必死でそのあとなんて答えたのかは覚えていない。
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先生が連れてきてくれたのは、普段アンテナを張っている私ですら知らないトリニティの隠れ家レストランだった。
階段でビルの10階まで登らないと辿り着けない立地が原因なんだろう。
トリニティのお嬢様たちが階段を嫌ってわざわざ来ないのが目に浮かぶ。
天井にはプラネタリウムのような内装が施され、静かな音楽が流れる大人な空間。
星や宇宙をモチーフにした場所を選んだのは、先生曰く”ミカのヘイローみたいで綺麗だったから”とのこと。
余計に舞い上がってしまった私は、料理の味なんてほとんど覚えていなかった。
今日の先生はどうしちゃったんだろう。
考えたくないけど、普段は私と一定の距離を置くような感じなのにやけに積極的だ。
嬉しさと一抹の不安を押し殺しつつ、レストランを後にした。
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「ん〜、すごくオシャレで美味しかったよ!今日はありがとね、先生☆」
レストラン内では終始静かだったミカが笑いかけてきた。
ミカ検定1級の私にはわかる。今の彼女はうまく取り繕っているつもりだが、不安が隠しきれていない。
仕掛けるなら…いまだ!ごめんね、ごめんミカ!
「それはよかった!ナギサとセイアに教えてもらってきたことがあるんだ。」
「えっ?ナギちゃんとセイアちゃんと…??」
見る見るうちにミカの表情が曇り、今にも涙を流してしまいそうだ。
さっきまでの元気さは見る影もなく、身体が震えている。
「そ、そうだよね!先生はみんなに優しくて、そんな先生が…わ、私は…」
ポロポロと涙を溢し、俯いてしまった。
心がいたぁぁぁぁぁい!でもここからだぞミカぁ!
「ご、ごめん先生!!私帰るねっ」
ミカが踵を返して階段を駆け降りていく。
「きゃっ!??」
と、その途中で急に躓き、階段の外に身体が投げ出される。
そう、私がアロナにお願いしたのは以下の4点。
1. 任意のタイミングでミカを転ばせて欲しいこと。
2. その後何が起きようとも私とミカをバリアで保護すること。
3. 着地と同時にミカを3分眠らせること。
さすがスーパーアロナちゃん、完璧なタイミングだ。
悪趣味なドッキリの時間がやってきた。
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「ん〜、すごくオシャレで美味しかったよ!今日はありがとね、先生☆」
思うところはあったけど、先生がこんなレストランに連れてきてくれたことが心底うれしかった。
私がいないところで、私のことを考えて選んでくれたってことでしょ。
離れていても、こんな私を気にかけてくれる先生が好きだ。
そんな思考はあっという間に砕かれることになった。
”「それはよかった!ナギサとセイアに教えてもらってきたことがあるんだ。」”
「えっ?ナギちゃんとセイアちゃんと…??」
え?じゃあ先生はナギちゃんとセイアちゃんと何度かきたことがあるの?
2人とも何も言ってくれなかったよ?
もしかして、私が必死で草むしりしていた時にみんなで一緒にご飯を食べていたってこと?
ずるい、ずるい。
私の先生なのに、抜け駆けするようなことをしたの?気持ちを知っているのに?
「そ、そうだよね!先生はみんなに優しくて、そんな先生が…わ、私は…」
感情がグチャグチャになって、今すぐにでも死にたいくらいだ。
ああ、でもこんな姿を見せたくない。
「ご、ごめん先生!!私帰るねっ」
先生から逃げるように、急いで階段を駆け降りる。
「きゃっ!?」
駆け降りたつもりが何かに躓いたのか、気づけばビル外の空中に放り出されていた。
ああ、忘れてた。
ここ10階だっけ…まともに受け身も取れないだろうけど、
きっと私の頑丈さじゃ少しケガするくらいかな。
ま…どうでもいいや。
きっと誰も私のことを大切にしてくれないから。
私も私を大切にしない。
「ミカァ!!!!」
え?
気づけば先生が私を空中で抱きしめていた。
なんで!??
私は軽い怪我で済むのに、放っておいてくれてよかったのに。
先生が守る価値なんてないのに!
今更体勢を変えることもできず、数秒後には地面に叩きつけられていた。
思えばクッションの上に落ちたように、衝撃がなかったことに気づけばあんなことにはならなかったのだけど。
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10階分の高さを落ちたことがなかったけど、痛みはない。
垂直抗力を失ったせいか分からない…頭がぼーっとする
しばらくして意識がはっきりしてきた。
「先生!先生は!?????」
そうだ、私は無事でも先生はこの高さじゃ…
「あ。」
目に入らないようにしていたのかな。
見る影も無くなった先生が、足元に倒れ伏していた。
腕はあらぬ方向に曲がり、至る所から大量に血を流している。
まるで風船に穴が空いて空気が漏れるように、とめどなく周囲に広がって…。
「ッ…やだ!やだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「待って、待ってよ先生!!!!ダメぇ!!」
もう助からないのは頭でわかりきっている。
それでも先生の一部がどこかにいくのが悲しくて、必死で血を、先生だったモノをかき集める。
血にまみれ、ケープも顔も真っ赤に染まる。
通りのガラスに反射した自分の姿を見て、まるで…私は
”魔女”
だと思ってしまった。
そう。先生すら巻き込んで、皆を不幸にするのが祝福されない私には相応しいのかもね。
自嘲気味に動かない先生の身体をギュッと抱きしめると、胸元から一片の紙がこぼれ落ちる。
そこに書かれていたのは、
”ミカへ。レストランに急に連れて行ってごめんね。
私はこういうことに疎いから、ナギサとセイアに協力してもらって何度もエスコートの練習を重ねました。
あんまりうまくいかなかったかもしれないけど、楽しませられたことを期待して今手紙を書いています。
先生としてはいけないのかもしれないけど、あなたを心から大切に思っています。
ミカはいつだって私のお姫様だよ。特別です。
もしよければまた一緒にご飯食べにいこうね。 先生より”
「あ…ぁあああ…あ”あああああぁ!」
私はなんてバカだったんだろう。
先生は私のことを想ってしてくれたのに勝手に一人で不安になって、暴走して。
エデン条約の時から何も成長していない。
あんなによくしてくれたナギちゃんやセイアちゃんに嫉妬して。
大好きな先生のことすら信じきれず疑心暗鬼になって。
あの日から変わったつもりだったのに、みんなの愛情を沢山もらっていたのに意固地になっていたのは私だ。
これは自分で招いた結果だ。
自責を装いながら、他人に責任の所在を求めてしまう私の怠惰が、傲慢が、堕落が招いたんだ。
そうだよ。
やっぱり私はもう許されない、この世界にいてはいけないんだ。
みんなごめんなさい。先生ごめんなさい。
何を思いあがっていたんだろう。
私は、聖園ミカは暴走して周りに不幸を振りまき、依存しては被害妄想をまき散らす。
なんて勝手ないきものなんだろう…でも。
「でも、やっぱり寂しいよ…やっと先生が私を求めてくれたのに、こんな終わりなんて…。うっ…グスっ…」
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「ミカぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
誰だろう。
遠くから失意の底に沈む私を呼ぶ声がする。
先生だったらいいな。でも先生は私が殺したも同然なのに。
「…もう一度お姫様って呼んでよ、私の…わたしだけの王子様。」
虚空に投げかけたそんな言葉はちゅうぶらりんに消えるはずだったのに、返ってきたのは優しいぬくもりだった。
「ミカ…泣かせちゃって本当にごめんね、私のお姫様。」ギュッ
先生に抱きしめられてる?夢??
それでもいいや、今は少しだけ逃げちゃおう。
夢から覚めるまで幸せなのはお姫様の特権、そうでしょ??
そうして私は意識を手放した。
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「ん…ってぇぇぇぇぇ!!!??先生!???」
そりゃびっくりするじゃんね?
目を開けたら死んだはずの先生の顔。
それもまるで眠り姫をキスして起こす王子様、その寸前のように見えたんだもの。
「あはは…おはよう、お姫様。今度こそきちんとあやまるよ、本当にごめんね。」
……その後、先生に事の顛末を伝えられたけど、あんまり内容は頭に入ってこなかった。
先生が生きている、それだけで…うそうそ。
もう一度お姫さまって呼んでもらえただけで、心が舞い上がってしまったのだから。
んー。でもやっぱり先生にはどうやって責任とってもらおうか。
一緒にトリニティでも中々入れないアフタヌーンティーに付き合ってもらおうかな?
覚悟しててね、王子様??
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後日。
今日は待ちに待った先生とのデートの日だ。
いつも以上に恰好に気を付けたし、メイクは今の私ではなかなか買えないハイブランドのものを使った。
お財布は傷んだけど、好きな人の目の前ではかわいくありたいもんね。
それにしても待ち合わせの時間から10分すぎてるけど、大丈夫かな。
もしかして、また何かに巻き込まれていなければいいけど…
「おーい!!!待たせてごめんね、ミカ!」
!杞憂だったみたい、遅れてきた罰に今日は何かワガママ言っちゃおうかな??
「ふふ、先生おそい……よ?」
思わず言葉に詰まってしまった。
焦って走ってきただけじゃない、一週間以上寝ていないような深いクマ。
疲れ切り、こけた頬。
シャーレの制服から覗くその腕は、青ざめて栄養が生きわたっていないことを伺わせる。
ねえ、先生。
この前のドッキリは本当にドッキリだったのかな。
あれは先生の…ホントの願望を……
…この後のデートは楽しかった。
でもそれ以上に、何か嫌な予感がべっとりと背中に張り付いてやまない。
そんな一日だった。
先生、、、まさか、、、(察)