林氏が予想以上の伸び、小泉氏陣営には朗報? 総裁選の議員票の動向

 10月4日に投開票が迫る自民党総裁選は、国会議員の支持動向では小泉進次郎農林水産相(44)がトップに立ち、林芳正官房長官(64)、高市早苗前経済安全保障相(64)が続く展開となっている。小泉氏が幅広い支持を得ようと「守りの選挙」に徹し、高市氏は党員票での勢いを議員票の上積みにつなげようとする中、議員票で2番手につける林氏の存在が、全体の構図にも影響を与えそうだ。

小泉氏、党内融和を前面 持論は封印

 議員票で他の4候補を大きくリードしている小泉氏。最大の特徴は、党内実力者の多くから支持を得ていることだ。菅義偉元首相、菅政権で官房長官を務めた加藤勝信財務相、遠藤利明元総務会長、野田聖子元総務相といった顔ぶれが並ぶ。

 加えて、昨年の総裁選で争った候補者の支持層も取り込む。

 前回立候補した加藤氏は選対本部長に就き、河野太郎前デジタル相も陣営に加わった。このため、昨年の総裁選で両氏の陣営にいた議員らが、今年は小泉氏の支持に回っている。

 石破内閣の現職閣僚は、鈴木馨祐(けいすけ)法相や浅尾慶一郎環境相ら6人が小泉氏を支持。副大臣・政務官まで広げれば22人にのぼる。小泉氏は基本的に「石破内閣継承」の姿勢を示しており、首相支持の議員や党員からの支持も期待できる。

 小泉氏が今回、党内でこうした幅広い支持を得るために取った戦略が、党内融和を前面に押し出し持論を封印するという徹底した「守りの選挙」だった。前回、党内保守派の反発を招いた選択的夫婦別姓の導入や、解雇規制の緩和といった独自色のある主張は見送った。陣営に加わる衆院中堅は「小泉氏が自ら望んだわけではないが、『挙党一致での党の立て直し』がテーマになったため自分の主張を取り下げた」と語る。

 ただ、小泉氏は、討論会などで自身の発言を間違えまいと、事前に用意した応答要領を読み上げる場面も目立つ。日本記者クラブ主催の討論会ではベテラン記者から「他の候補はほとんど紙を見ないが、小泉氏は何度も紙に目を通す。どうしてそんなに慎重なのか」と突っ込まれ、「紙を読んだからといって、自分の言葉ではないということではない」と釈明した。

後半では、各候補者の旧派閥別の支持動向を一覧でまとめています

失速を懸念していたが…

 ミスをしないことを最重視し手堅い選挙を進めてきた小泉氏だが、ここに来て手痛い打撃を負った。小泉氏陣営幹部が陣営関係者らに対し、インターネット上の動画に他候補を念頭に中傷するコメントを書き込むよう依頼していた問題だ。小泉氏は陳謝したが、文案には「ビジネスエセ保守に負けるな」との文言もあり、小泉氏のクリーンなイメージが傷つく結果となった。

 選挙戦終盤に向かって失速を懸念していた小泉氏陣営だったが、明るいニュースもある。他陣営の予想以上に林氏が議員票を伸ばしていることだ。

 党内リベラル派の旧岸田派(宏池会)で幹部を務めた林氏。今回、小泉氏と同じように「石破内閣継承」を掲げ、旧岸田派メンバーに加え、中谷元・防衛相ら石破茂首相側近からも支援を受けている。一方、小泉氏とともに有力候補の高市氏は保守強硬的な主張で知られるため、小泉氏と高市氏が競う決選投票になれば「林氏の議員票が高市氏に流れることはないだろう」(政権幹部)との見方が党内では支配的だ。小泉氏陣営でも林氏が議員票を伸ばせば、決選投票で小泉氏が有利になるとの期待が広がる。

保守色を抑え「反高市」減らす戦略

 「後半は、国会議員の一人ひとりに私の思いが伝わるように努力をして参りたい。そこが思いっきり立ち遅れている」。高市氏は9月28日、記者団に危機感を示した。30日には、前回選で高市氏を支持し、党内唯一の派閥を率いる麻生太郎元首相と面会。あらためて支援を求めたとみられる。

 高市氏にとって、決選投票で影響力の大きい議員票は昨年の総裁選からの課題だ。前回は初回投票で20万人以上の党員・党友から支持を得て1位になったものの、決選投票で「反高市」の議員票が石破茂首相に流れ逆転負けした。首相になった際の靖国神社参拝を明言しないなど、保守色を抑えて「反高市」の議員票を少しでも減らす戦略で臨む。

 強みとする党員へのアピールでは、陣営は手応えを感じている。外国人観光客の一部が奈良公園のシカを「足で蹴り上げる」などと主張して波紋を呼んだ所見発表演説も「出だしで党員と世論をつかむために勝負に出た。ちまたでは評価する声もある」と解説した陣営の議員もいた。高市氏を支援するベテラン議員は「まったくダメージになっていない」と語る。

シカ発言「一部の右派しか喜ばない」

 一方で、シカ発言に眉をひそめた議員は少なくなかった。高市氏を支持していたベテランは「不安や怒りを扇動する手法だと感じた。ついていけない」とし、他候補に気持ちが移ったと明かした。麻生派の中堅議員も「あれでは一部の右派しか喜ばない」と突き放す。

 党内では、支持を表明した萩生田光一元政調会長ら旧安倍派を中心に支援を受けるが、支持の広がりは見通せていない。前回は支持した参院中堅も「この1年で仲間づくりをするべきだったが、それが見えない」と消極姿勢を見せた。

 高市氏陣営の若手は「勝つには、党員票で大勝ちするしかない。『党員の民意を無視するのか』という空気にしたい」と語る。党員票で他候補を圧倒し、地元の意向を議員が反映せざるを得なくさせる狙いだ。

 実際、「なぜ高市さんを支援しないのか」と事務所に支援者から電話がかかってくると明かす他候補陣営の議員もいる。高市氏を支援するベテラン議員は「党員票で大差をつけて決選に臨めば、勝ち馬に乗りたい連中はなびくだろう」と語った。

 小林鷹之元経済安保相(50)は中堅・若手の支持を集めるが、ある議員は世代交代の訴えを「党内的には失点」と話す。「年寄りは早く引退しろというメッセージになり、反感を持つ人もいる。こういう言葉ひとつで議員票は左右される」

 真っ先に立候補の意向を表明し、強い意欲と危機感を示した茂木敏充前幹事長(69)は、支持に広がりを欠き、旧茂木派の議員を中心に支援を受ける。

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