戸籍上の性別を変える際、変更後の性別の性器に似た外観を備えることを求めた性同一性障害特例法の規定(外観要件)について、「違憲・無効」と判断した家事審判の決定が少なくとも5件あることが最高裁への取材で判明した。うち2件は、札幌家裁が9月19日付で出した決定という。2024年1月以降に出た性別変更を求める全国各地の家事審判の決定を最高裁が調べた。
最高裁は外観要件について、合憲か違憲かの判断を示していない。判例がない状態で、違憲性を訴える家事審判が最高裁に特別抗告されれば統一判断を示す可能性がある。
性同一性障害特例法は議員立法で成立し、04年に施行された。性別変更のためには、①18歳以上②現在結婚していない③未成年の子がいない④生殖機能が無い(生殖不能手術要件)⑤変更後の性別の性器に似た外観を備える――の5要件をいずれも満たすことを規定している。
最高裁大法廷は23年10月の決定で、生殖不能手術要件は憲法13条が保障する「身体への侵襲を受けない自由」の過剰な制約にあたるとして、違憲で無効だと判断。手術を受けずに性別変更する道が開かれた。
一方で、外観要件については憲法判断を示さなかった。性別変更を希望する人はホルモン投与や手術などにより、変更後の性別の性器に近づけることは引き続き求められる状況にある。
生殖不能手術要件が違憲・無効とされた後も、国会の動きは鈍く、特例法はいまだに改正にいたっていない。特例法を所管する法務省は「関係省庁とともに必要な検討を行い、立法府とも十分に連携して適切に対応したい」と述べるにとどめており、具体的な動きは見えていない。【三上健太郎】
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