僕はげきからマホイップと世界を巡る   作:三笠みくら

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ダンデ捜索隊・結成

 

 

防寒具を譲ってもらって、僕とレッドさんはカンムリ雪原に降り立った。あたり一面は雪で、息も白い。ガラルは寒いけど、ここまで雪が降ることはないからなあ。

 

 

「とりあえず…目撃証言を提供してくれたピオニーさんって人のところに行きましょうか。フリーズ村に行きましょ」

 

「………(コクリ)」

 

 

レッドさんと一緒に、僕は雪原を歩いた。ブーツを履いているからか、ざくざくと音が鳴って気持ちいい。シンオウにもこういう場所があるって、シロナさん言ってたっけ。

 

 

「着いた!フリーズ村!なんだかゲームに出てきそうな感じですね」

 

「………(コクコク)」

 

 

フリーズ村を歩いていると、何やら見覚えのある人が民家から出てきた。

 

 

「…アオイちゃん?」

 

「え?アマネくん!!」

 

 

僕を見た瞬間、アオイちゃんは飛びついてきた。おうふ、倒れちゃった。よく見るとボタンちゃんもいる。そういえばボタンちゃんはガラル出身って聞いたような。

 

 

「アマネくん!うわあ、本物のアマネくんだー!嬉しいなー、ここでも会えちゃった!」

 

「とりあえずどいてあげたら?ただでさえ防寒具着てるから重いだろうし」

 

「そっかそっか、ごめんねアマネくん!それに、その人は…」

 

「………」

 

「レッドさんです、僕にバトルを教えてくれた恩人です」

 

「そうなんですね…」

 

 

何やらレッドさんがアオイちゃんを見ている。もしかしてあれかな、強者の嗅覚ってやつ。

 

 

「ボタちゃん!!忘れ物…なんだあ!?友達かあ!?」

 

「げ、親父…」

 

 

民家から、ローズさんによく似た男の人が豪快に現れた。でも似てるのは…顔だけだな。なんかもう雰囲気とか全てが違うもの。

 

 

「あの…もしかしてピオニーさんですか?」

 

「ん?おう、そうだぜ!!鋼の大将とは俺のことよ!」

 

「良かった…あの、僕ユウリさんに頼まれてダンデさんを探しに来たんですけど」

 

「ああ、隊長が言ってたのはお前さんか!よし、とりあえず話をしようぜ!ボタちゃんも!」

 

「なんで…」

 

 

などと言いつつも、アオイちゃんに引っ張られてボタンちゃんもついてきた。民家に入って椅子に座ると、早速ピオニーさんは話し出してくれた。

 

 

「それで、ダン坊の話だが」

 

「ダン坊」

 

「俺が夜に目が覚めちまってよ。かる〜く歩いてたんだが…その時にダン坊がフラフラと雪原を歩いてるのを見たんだよ。しかもリーグ委員長の服のままだぜ!?俺ぁド・ビックリしちまってよ!すぐに声をかけようと思ったんだが…ふっと消えちまってよ。ありゃ幻だったと思うがねえ…」

 

「う〜ん、そうですか…」

 

「え、なあに?何かあったの?」

 

 

僕はアオイちゃんにガラルのリーグ委員長・ダンデさんが先日突然行方不明になったこと、そして僕たちがダンデさんを探しにカンムリ雪原に来たことを話した。

 

 

「そうだったんだ…だったらわたしも手伝う!アマネくんの手助けしたいもん!」

 

「本音は?」

 

「このチャンスに距離を…」

 

「欲望乙。でもガラルのネットでは全然そういうのないけど…情報規制されてる?」

 

「うん、トーナメントも控えてるしまだジムチャレンジ期間中だから下手に混乱させられないって…臨時的にキバナさんが指示したんだ。」

 

「なるほどなあ…よし!なら俺たちゃ今からダン坊の捜索隊だ!隊長は俺!そして捜索隊長はアマネ、お前だ!」

 

「え、僕ですか?」

 

「おうよ!俺がド・がっしり構えてるからよ!お前はダン坊を探してきな!!」

 

「親父…それサボってるだけじゃ」

 

「ボタちゃん!分かってねえなあ。俺みたいな大人が後方でがっしり構えてる方がみんな安心できるだろ?そういうこった!」

 

 

ピオニーさんを冷ややかな目で見つめるボタンちゃん。これが親子か。ともかく協力してくれる人が増えるのはありがたい。

 

 

「それじゃあわたしたち捜索隊、さっそく始動だー!えいえいおー!」

 

 

ひとまずアオイちゃんが締めて、僕たちダンデさん捜索隊は始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________

 

暗い場所で、ダンデは目を覚ました。ここ数日の記憶がない。頭もぼんやりしていて、まるで酔っているようだった。

 

 

「ここは…?」

 

 

無理やり体を起こして周囲を見回す。そこは冷たい空気の張り付いた室内だった。ポケモンたちを出そうとするが、すぐに異変に気づいた。

 

 

「な……ポケモンがいない!?」

 

 

ダンデが持っていたはずのモンスターボールが、1つ残らず消えていた。ポケモンもいないとなると、自力で脱出するしかない。そう思って壁を叩くが。

 

 

「これは…」

 

 

かなり頑丈な壁のようだ。おまけに見回しても出口もないように思える。どうしたものかとダンデが思案していると。

 

 

「待っていたよ、ダンデ」

 

「誰だ!」

 

 

声に振り向いて、ダンデは固まった。それは、決してあり得ない————

 

 

 

そこで、ダンデの意識は途絶えた。




アオイ・ボタン
アカデミーも休暇になったのでガラルに。ネモは家の用事・ペパーは補習でパルデアに残っていた。ボタンは普通にガラル本土にいたかったが、ピオニーがカンムリ雪原に来てくれと泣きついたので渋々。シャクヤは現在ガラルでジムチャレンジ中。アマネとは面識あり。
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