スティーブは翌日、ナギサのいるテラスに来ていた。
「‥‥‥お待ちしておりました。ご無沙汰しています、スティーブ先生。あれからどうですか?裏切り者の調査の方はどうでしょうか?」
<スティーブ>名前は伏せるが容疑者は見つけた。今現在証拠集めに奔走している。
「もう、そこまで行ったのですね…。しかし、証拠集めですか?」
<スティーブ>いくらシャーレの権限が強大だからと言っても、無理やり退学させることはできないんでね。そのためにも、正当な理由付けで証拠を集めている。
「なるほど。」
ナギサが紅茶を啜る。
そして、話を切り出す。
「‥‥‥では、2次試験のこちらからの妨害についてなのですが、『テスト範囲の3倍』、『合格点は90点以上』、『会場はゲヘナ』、これはどうでしょうか?」
<スティーブ>んー、1つ目と2つ目の要求は呑める。3つ目は無理。
「理由をお伺いしても?」
<スティーブ>知ってると思うけど、我々マインクラフターはゲヘナと仲が良くない。前に戦争になりかけてたぐらいに。条約関連のアレコレで忙しい最中で「ティーパーティーの命令でゲヘナに行きました」とか補習授業部の誰かがゲヘナ側に言って外交問題にならないと思う?
「ああ、確かにそうでしたね‥‥‥分りました、では最初2つの妨害をいたしますね。」
<スティーブ>了解、去る前に2つほど助言を。1つ、疑う・疑心暗鬼になることにつては咎めないよ、ただし、疑いすぎた結果自分がどうなるのかは分かっておくように。2つ、民衆の意見は適度に取り入れた方が良い。いつか不満が積りに積もってクーデターを起こされかねないから。
「忠告感謝します‥‥‥。」
今の助言を分かりやすく言うと、前者が「疑うのは構わないが、ちょっとは人を信じろ。」、後者は「こんな横暴をやってると破滅するぞ。」という意味合いで言っている。
このトリニティを見てるとマインクラフターの嫌いな要素を集約させているように思えてくる。
そうして、スティーブは部屋から退出した。
「こんなことやってらんない!わかんない!つまんない!めんどくさい!」
先の会話から数日後。
ナギサからの妨害で結局一斉合格はできなかった。*1
まぁ、想定通りなのでマインクラフターたちは普通に勉強を教えていた。
<アレックス>This song [ ] more than any other song for these three weeks. これに入る単語は?*2
<スティーブ>『諸君!このたび、王国にアスタルテが舞い降りたことにより~~~』この辺りの会話はよくテストに出題されるから覚えるように。*3
<サニー>ATPは『アデノシン三リン酸』が3つ結合した高エネルギー化合物、ADPは『アデノシン二リン酸』が2つ結合した化合物です。他にも違いはありますが混同しないように。
<カイ>円の方程式はx,yをそれぞれ平方完成させるのが基本。例えばx^2+y^2-4x-6y+10=0。これは(x-2)^2と(y-3)^2の2つに分けて10に4と9を引くと円の中心が簡単に求められるから。
こいつら本当にマインクラフターなのだろうか。
普通の教員と同じぐらい勉強を教えている気がするが、
そうして、第3次試験が目前に迫ったある日の事。
「明日、私たちが試験を受ける予定の第19分館についてなのですが…かなりの数の正義実現委員会の委員が派遣されているようで‥‥‥。先生方はご存じでしたか?」
<4人>はぁ?
とうとうしびれを切らしたのか、ナギサはゴミ箱の中身を消去するつもりらしい。
よりによってこっちに一報入れないのはなんでやねん。報連相しっかりしろ。
こっちも怪しいとでも思って言わなかったのか?まぁ、裏切り者が誰か言わなかったから気持ちは分かるが。
もう、知ーらね。そっちが手を切って来たんだからこっちも抜けさせてもらうぞ。
丁度前日ネザライトブロックのない窓を作ったら、そこから合宿所を抜け出して透明化しているクラフターに尾行されているとも知らずに相手陣営と接触したアズサがやって来たことだし、ことを大きく進めてもらおうかな。
「‥‥‥ティーパーティーの桐藤ナギサが探している『トリニティの裏切り者』は、私だ。」
<スティーブ>うん、知ってた。
「知ってたのか…!?」
ようやくアズサが
「ちなみにいつから?」と聞いてきた際には「『転校』というワードに酷く驚いていたタイミングから」って言ったら、気恥ずかしいような顔をしてた。
アズサ本人もvanitasを言った辺りからマインクラフターたちの動きが変わったことで薄々勘づかれていることに気が付いていたとか。
語られるのは明日に襲撃が起きる事、そしてその罪をミカに着せるという事。ミカとアリウス、お互いにお互いを駒としか思ってないようだ。
<アレックス>勘違いしてるようだけど、裏切り者は聖園ミカ。ま、お互いがお互いの盤面で人形劇をやってるっぽいけど。
と、アレックスがアズサの言ったことに少し訂正をする。
アズサが驚いていたのを見るにミカがただの駒としか思われていなかったのかな。
そしてアズサがこの段階で言った時点で敵側に寝返る可能性はゼロになった。
さてと…ここからは荒事の始まりだ。
この疑心暗鬼に満ちたゲームに終止符を打とうかと、クラフターたちは動き出した。
さて、翌日となりいよいよ作戦開始となった。
ナギサの身柄はハナコとアズサが回収し、サポートにアレックスが回ったのだが…。
「あの…お二人とも、そのタンコブはどうしたんですか?」
「「‥‥‥。」」
<アレックス>言ったよね、ナギサに負担のかかることは言うなと。
とアレックスから拳骨を叩かれていた。
理由は本来は穏便にナギサを説得するか気絶させるかで身柄を確保する予定だったのだが、ハナコが暴走し偽のストーリーをでっち上げられ、ナギサのメンタルが崩壊しかけた。
やられたからやり返す、筋は通っているが、このタイミングでするなバカ。
ナギサが精神病んで自殺したらどうするんだよ。
「‥‥‥手こずらせてくれたじゃないか、白洲アz━━『パシッ』 …ウグッ!」
<サニー>6キル目、多分リーダーやった。
ピュンッ ピュンッ ピュンッ ピュンッ ピュンッ ピュンッ
ピュンッ ピュンッ ピュンッ ピュンッ ピュンッ ピュンッ
ピュンッ ピュンッ ピュンッ ピュンッ ピュンッ ピュンッ
「あ…矢が胸に‥‥‥」バタンッ
「痛…い…」バタンッ
<スティーブ>微残酷な描写
「言うの遅いと思いますが‥‥‥。」
体育館に追い詰められたと思わせたところで、ディスペンサーからの矢の雨に火打石と打ち金の火炎放射*4、背後から透明化で近づいてきたマインクラフターによって一方的にアリウスの部隊は蹴散らされていく。
「ぐっ、うっ‥‥‥!!」バタンッ!
「か、勝った‥‥‥?」
「全員戦闘不能。」
「あうぅ‥‥‥先生方の装置もあって、本当に助かりました‥‥‥。」
「‥‥‥はい。では難所をひとつ乗り越えたところで、次のフェーズに移りましょうか。」
「この後アリウスの増援部隊が到着するでしょう、でも私たちは時間を稼ぐだけで大丈夫です。正義実現委員会の部隊がここに到着するまでの間、それまで時間を稼げれば‥‥‥。」
「あ、ハスミ先輩には連絡しておいた!すぐ返事来るはず!」
「はい、ありがとうございます♡‥‥‥ティーパーティの命令下にある正義実現委員会が動けるとしたら、それはティーパーティの身辺に問題が生じた時だけ。定時連絡とかもあるでしょうし、きっと今頃ハスミさんたちはナギサさんとコハルちゃんの連絡を受けて向かっているはず。そう時間はかからないはずです。あとは、早く来てくれることを願うことばかりですが‥‥‥。」
<カイ>いや、ハナコ、多分正義実現委員会は来ない。
「それはどういう‥‥‥あっ!」(演技)
ハナコが大根役者さながらに演技をする。
目的?大物を釣り上げるためにわざと相手の策にハマったと思わせるためだ。
「‥‥‥数が多い、大隊単位だ。多分、アリウスの半数近くが‥‥‥。」
<サニー>何度来ても同じ。またスニーキングしますね。(透明化ポーションを飲む)
「あうぅ‥‥‥!こ、これだけたくさんの方、平然とトリニティの敷地内に‥‥‥!?」*5
「まだ正義実現委員会が動く気配が無い‥‥‥私としてたことが、見落としていました‥‥‥。」*6
その時、体育館の入り口から羽を生やした生徒がやって来た。
それはピンク髪の生徒、ミカエルの神秘を宿す少女だ。
「まあ簡単に言うと、黒幕登場☆ってところかな?」
<スティーブ>やっぱり、お前か聖園ミカ。
「わお、気づいてたんだ。ちなみにいつから?」
<スティーブ>釣りをしてた時から。ナギサにヘイト誘導を仕掛けてきたタイミングで確信になった
「あれでバレてたんだ‥‥‥。ま、私が
やはりミカだった。
「というわけで、ナギちゃんを渡してくれる?私も時間がなくってさ。まぁここにいる全員を吹っ飛ばしてから、ゆっくり探しても良いんだけど。それは面倒でしょ。」
<カイ>これをした理由はこの学園が拗らせてるゲヘナ嫌い?
「んー、拗らせてるって言い方はあれだけど、大方合ってるよ。心から…心の底からゲヘナが嫌いなの。」
<アレックス>じゃあ聞くけど、ゲヘナのどこが嫌いなの?(どうせ、あの荒らし共の所業のせいなんだろうけど)
「えっと、何となくかな。好きなのに理由がいらないのと同じで、嫌いなのに理由が無いって感じかな。エデン条約を結んだところで絶対裏切られるに決まってるじゃんね?背中を見せたらすぐに刺されるよ。そんなこと、させるわけにはいかない。‥‥‥だから今こうしているんだよ。」
<スティーブ>随分、しょーもねー理由だ。
「‥‥‥は?」
スティーブはミカの理論を「しょうもない」の一言で一蹴する。
<スティーブ>外見差別とか今時しょもないぞ。我々ですらスキン差別はしなくなってるっていうのに。
<アレックス>ゲヘナを滅ぼしたがってるようだけど、ゲヘナを滅ぼした後は?
「後?」
<アレックス>戦争するってことは死人が必ず出る。ゲヘナに住んでた関係のない子たちが路頭に迷って餓死・事故死・衰弱死していくのを見たい?
「わ、私はそこまでは‥‥‥。」
<スティーブ>は?戦争仕掛けようって言っててよく言う。何で戦争に死者が出ないと思った?
<スティーブ>箱入り娘にもほどがある。
<アレックス>箱入り娘にもほどがある。
スティーブとアレックスのチャットが被る。
ミカの動揺から察するに、戦争を都合のいい言葉としか思っていなかったのだとクラフターたちは考察する。
戦争で死人が出ないと思ったら大間違いだ。マインクラフターの戦争でも死者は出る。まぁ復活するから罪悪感はほぼないのだが。
「‥‥‥セイアちゃんを殺った時点で、私は、もう戻れない‥‥‥。だから、まずはスティーブ先生、あなたを折るね。」カチャ
そうして、ミカは自身の獲物を構えそう言った。
<アレックス>(あーあ、よりによって一番厄介なのに喧嘩売ってるw)
<サニー>(スティーブと1vs1は無謀にも程がある)(しれっと透明化で敵の半数をぶっ倒す)
なお、この後ミカがどうなるのかを察しているためクラフターたちは内心笑っている。
「せ、先生。」
<スティーブ>相手が1vs1を所望なんだから付き合ってやるよ。お前らは残りの敵の始末を頼む。
<カイ>スティーブ、もしよかったあれ使って。
<スティーブ>ok、あれね。じゃあこれを装備してっと。
「「(あれ、あの剣どこかで‥‥‥)」」
スティーブはカイに預けていた有名な剣を一時的に返してもらった。
ハナコやミカなどのはこの剣にどこか見覚えがあるようだった。
そりゃそうだろう、あれはトリニティの歴史にも書かれている物のマイクラ
そして、スティーブはミカの正面に出る。
<スティーブ>さぁ、かかってこいよ。おてんば娘。
「ふーん、おてんば娘かどうかは今から見極めるべきじゃない?」
スティーブがそうチャットすると同時に(ほぼスティーブ側の一方的な蹂躙戦ともいえる)戦いの幕が下ろされた。
バババババババッ!
最初に行動したのはミカだった。
ミカは自身の獲物、
バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!
が、これもいつも通りかのように盾で防ぐ。
「ここまでは想定してる…!」
すると、ミカは接近して来た。
シュッ…ボゥッ
すかさず、スティーブはミカ*7に教えてもらったファイア*8を放つ。
ドオォンッ!!
召喚されたファイヤーチャージが等速直線運動をしながら地面に当たると同時に爆発を生み出す。
「見切ったよ!」
しかし、ミカは間一髪で避ける。
そして、さらにスティーブとの距離が縮まっていく。
そこでスティーブが選択するのは防御だ。
この距離なら銃床で殴ってくると判断したスティーブはオフハンドの盾で身構える。
そして、距離がゼロになった時、ミカから放たれたのは銃床による、一撃ではなく、
「はぁっ!」
拳だった。
バン! バリンッ!!
<スティーブ>(なっ!)
<アレックス>耐久値maxの盾を拳だけで破壊しやがった!?
<カイ>ラヴェジャー以上の力があるのか!?
スティーブは想定外の事態に見舞われた。
耐久値がmaxだった盾がいきなり、ミカのパンチで壊れたのだから。
さすがのこれには他の見ていたマインクラフターも驚いた。
「じゃあこっちの番だね。」
そうしてミカはまた腕に神秘を込めて、殴りを放とうとしたが、
<スティーブ>(喰らえ広範囲ご都合サンダー)
ゴロゴロゴロ‥‥‥
「!?━━『パシッ パシッ パシッ』 っ!!」
さすがに歴戦の猛者相手にはまだまだ及ばない。
手札はいくらでもある。
スティーブはシャラ*9から教わったサンダー*10でミカに雷によるダメージと延焼によるダメージをたたき出す
ダメージを受けたミカはバックステップで下がるが、スティーブはダイヤ剣ともネザライト剣ともいえない紺色と金色が混ざったような色合いのエンチャントの施された『エクスカリバー』*11を装備していた。
パシッ パシッ パシッ
16ダメージ、ネザライトの剣以上のダメージを叩きだす。
ミカも自身の獲物や拳でダメージを与えようと試みるが、リーチ*12がスティーブの方が現在優位であるため攻撃できないでいた。
パシッ パシッ パシッ
パシッ パシッ パシッ
パシッ パシッ パシッ
パシッ パシッ パシッ
「うぅ‥‥‥。」バタッ!
いくらなんでも硬すぎだろ。
そう思いながらスティーブはエクスカリバーを連打しまくって、連打しまくって、連打しまくってようやく地に膝をつかせることが出来た。
そして、残りのアリウスの面々を処理したタイミングで、
「シスターフッド、これまでの慣習に反することではありますが‥‥‥ティーパーティーの内紛に、介入させていただきます。」
<サニー>もう、敵は全滅してます。遅いです。
「…はい!?」
ここでシスターフッドが参戦だ。
ハナコから戦力として聞いていたが、遅い、遅すぎるよ‥‥‥。
それと、静観云々する前に情報の報連相ぐらいしろ、茶会の連中、主にナギサが相当疑ってたぞ。
「‥‥‥何これ、洒落にならないなぁ。‥‥‥どうして?何を見誤ったのかな。」
そこからは長い長いミカの言い訳にも聞こえる独り言が始まった。*13
「‥‥‥結局はシャーレをみくびった…うん、そうだね。最初からシャーレの先生を連れてきた時点で私の負けだった。いやー‥‥‥ダメだな、私‥‥‥。」
<スティーブ>ゲームセットだ、ミカ。
スティーブがそう告げたと同時にハナコがセイアの生存報告をした。
やっぱ潜伏してたじゃねぇか。
茶会連中は信用できる情報を切り捨てて信用できない・嘘情報を鵜呑みにでもする奴しかいないのか。
と、ここでミカが安どのため息をつき、武器を下ろし降伏。
最後の最後でミカがアズサにvanitas構文を言ってきたときは思わず「くだらね。」とチャットをしたもんだ。
プールの時に真実を言ってたらとかほざいていたが‥‥‥
過去は過去、今は今だ。時は止められるかもだけど、過去は変えられない。*14
そして、スティーブたちは補習授業部の面々に移動速度増加Ⅱと再生Ⅱのバフを掛けて試験会場に連れて行くのであった。
えーまずは謝罪を。
ゲヘナ試験会場編を大幅カットした理由としましてはマイクラ要素と絡めずらい&ゲヘナとの関係値が悪いなどがあるためカットしました。
また、ミカなら盾を壊せるだろうというのは考えていたのですが、どうにもその前後の戦いがダンジョンズ要素も無いため見劣りするものになってしまうので、アスタルテという言っちゃえばマイクラ二次創作の要素を出したました。
これ以降(次回を除く)はアスタルテの要素は出さないのでご安心を。
温かいご感想を貰えると幸いです。励みになります。
用語解説:
ディスペンサー…別名発射装置、矢や花火などの投擲物をレッドストーン動力で発射できる機能ブロック。火打石と打ち金を入れるとディスペンサーの目の前(下にブロックがある場合)に火が付くのでゾンピグトラップやバグネザーポータル入手装置の一部として使われていた。小説版マインクラフト『はじまりの島』では主人公が終盤でディスペンサーを使って‥‥‥
透明化のポーション…使用すると透明化するポーション。透明化しているが特徴的なモヤが周囲に漂うため分かる人には透明化してるクラフターがどこにいるかバレる。キヴォトスではまだ透明化の対処法自体が知られていない(そもそも透明化を知らない)のでいとも簡単に透明化で無双することが出来てしまう。
アスタルテ系の魔法や剣はyoutubeの方で有名実況者さんたちが投稿している動画の方を見た方が早いです。なので、ここでは解説しません。(実際の理由:面倒くさい。)
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