表は政治、裏は虐め
「‥‥‥つまるところ。エデン条約というのは、『憎み合うのはもうやめよう』という条約。トリニティとゲヘナの間で、長きに渡って存在してきた、確執にも近い敵対関係。そこに終止符を打たんとするもの。」
現在スティーブは西洋風の建物のテラスから夜景を見ながらキツネ耳の少女に一方的に話しかけられていた。
ついさっきまでベッドで夜を越そうとしていたのに。
「互いが互いを信じられない故に、久遠に集積していくしかなかった憎悪を解消するため、それに代わって新たに信頼を築き始めようとするプロセス。より簡単に言おうか、つまりはゲヘナとトリニティの平和条約だ。」
さっそく話してきたのは近々結ばれるというエデン条約についてだ。
資料で読んだことがあるため何となくは知っていた。
お互いを牽制し合うための条約、確か軍事部とか大きめなコミュニティが似たようなのを結んでたっけ。
相互不可侵の条約というのは有効期限無制限にせずに有限にして、期限満了後に戦争をするための準備期間なんだよね、軍事部も大抵そうして戦争仕掛けまくってたし。*1
「物騒なことを考えているようだが、結局は連邦生徒会長の失踪をきっかけに、この条約は何の意味も持たなくなってしまった。」
「『エデン』‥‥‥それは太古の経典に出て来る楽園の名。そこにどんな意味を込めていたのかは分からないけれど、まぁ連邦生徒会長のいつもの悪趣味だろうね。キヴォトスの、『七つの古則』はご存じかい?」
スティーブは首を横に振る。
とうとうこの長たらしい話を聞くのを止めたいと思い始めスティーブは動き始めた。
「その5つ目は、正に『楽園』に関する質問だったね。『楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか』、他の古則もまたそうであるように、少々理解に困る言葉の羅列だ。ただ、一つの解釈としては、これを『楽園の存在証明に対するパラドックス』であると見ることが出来る。もし楽園と言うものが存在するならば、そこに辿り着いた者は、至上の満足と喜びを抱くが故に、永遠に楽園の外に出ることはない。もし楽園の外に出たのであれば、つまりそこは真の悦楽を得られるような『本当の楽園』ではなかったということだ。であるならば、楽園に到達した者が、楽園の外で観測されることは無い。存在を補足されうるはずがない。」
ポコッ ポコッ ポコッ ポコッ
「存在しない者の真実を照明することが出来るのか?つまるところ‥‥‥この5つ目の古則は、初めから証明することができないことに関する『不可解な問い』なのだよ。しかし、ここで同時に、思うことがある。証明できない真実は無価値だろうか?この冷笑にも近い攻撃を通じて、何か真に問いたいことがあるのではないだろうか?」
ポコッ ポコッ ポコッ ポコッ
「エデン‥‥‥経典に出てくる
カチッ
ゴオォォォォ‥‥‥
「‥‥‥先生、君は一体何を‥‥‥?そのゲートはいったい‥‥‥?」
<スティーブ>
「‥‥‥。」
<スティーブ>エデンっていうのは見つけるものじゃない、自分たちの手で
それだけ言うと、スティーブはネザーゲートに入って行った。
「‥‥‥自分たちの手で創るか‥‥。良いだろう、この先を見届けるとしようか。」
スティーブがネザーからバニラに戻ると、いつものキヴォトスの風景そのものだった。
<スティーブ>(あの服装は確かトリニティ、それも生徒会役員の…)
<スティーブ>強制的にディメンション移動をさせてくる生徒か、面倒な奴に絡まれたものだ。
そうして、スティーブは荷物をまとめて今回依頼があったトリニティに向かうのだった。
とっとと、あの少女に二度とディメンション移動させてくるなとでも言っておこう。
スティーブはトリニティに着いた。
トリニティ自治区、西洋風の建物が並び立ち、きちんとした整備がされている。
お金持ちの集まりどころなだけあって建物も人々も豪華だ。
いじめや差別などの陰湿な行為を平然と行う輩が居ることに目を瞑ればだが。
このトリニティというところは内面が良いだけで内面は最悪だ。
「こんにちは、スティーブ先生。こうしてお会いするのは初めましてですね。」
トリニティ総合学園に着いて案内役の生徒にこのテラスに連れてこられた。
持っている武器の預かりもあったが、
そうして、入るとついさっき見たテラスと羽を生やした生徒が2名のお出迎えだ。
「私はティーパーティーのホスト、桐藤ナギサと申します。そしてこちらは‥‥」
「同じくティーパーティーの聖園ミカだよ。よろしく、先生。」
「改めまして、お初にお目にかかります。私たちがトリニティの生徒会、ティーパーティーです。」
とりあえず、イスに
初対面の感想としてはナギサはこっちを警戒しているようだったし、ミカはやつれている?とまではいかないけど、ホシノを見た時の青ウパの悲壮感みたいなのがどことなく流れていると感じた。思い違いであればいいと、スティーブは思う。
「へぇ、これが噂の先生かー。見た目も四角くて結構違ってる。なるほどー、ふーん‥‥‥うん、私は結構いいと思う!!ナギちゃん的にはどう?」
「‥‥‥ミカさん、初対面でそう言った話はあまり礼儀がなっていませんよ。愛が溢れるのは結構ですが、時と場所は選びましょうね。」
「うぅっ、それはまぁ確かに‥‥‥。先生、ごめんね?まぁとりあえず、これからよろしくってことで!」
ここからは軽く世間話が続いた。
途中、ナギサがミカにロールケーキを突っ込んだり、スティーブが一瞬で紅茶を飲み干して2人を引かせたのは言うまでもない。
話の切り替えでトリニティの歴史についても話していた。どことなくだが、『キャメロン』*3に似ている。*4
それで、あの空席は狐耳の少女ってところか。ちょっくら探ってみよ。
<スティーブ>質問になるけど、サンクトゥム派の人間が代理すらいない理由を聞いても?
「セイアちゃんは今、トリニティにいないの。入院中で‥‥‥」
<スティーブ>なら、せめて代理を立てないと、三頭政治の意味がないぞ。
「そうしたいのは山々なのですが‥‥‥。」
嘘を隠すのが下手過ぎる。
そのトップのセイアはおそらく死亡してるとスティーブは察した。
しかし、あの狐耳の少女=セイアだとするとセイアは別ディメンションに居るだけで、生きている。
人狼ゲームみたく死を偽装しているのか?
それと、さっきのナギサの言い方から察するに疑心暗鬼にでも陥っているのか?俺を呼んだのはそれ関連っぽいな。
「先生には‥‥‥とある部活の顧問になっていただきたいのです」
渡された資料を見る。
部活名は補習授業部。成績不良の生徒の集まり。
メンバーの中には見覚えのある生徒もいるな。
成績の改善とかなんとか語ってるけど、軍事部よりかは低いがそこそこ政治のできる奴らだ、絶対に裏の目的があるな。
「いかかでしょう、先生?助けが必要な生徒たちに、手を差し伸べていただけませんか?」
<スティーブ>分かった。
「やった!ありがとー先生!」
<スティーブ>ただし、いくつか条件を付けてほしい。
「内容によりますが、お聞きしても?」
<スティーブ>まず、勉強方法についてだが、俺の"友人たち"と一緒に教えたい。というのも、俺が教えられる範囲にも限界がある。
「勉強方法につきましてはそちらに一任しますので問題ないですよ。」
<スティーブ>ありがとう。それと、何かしらそちらが妨害をしていた時点でこちらは勝手に動くのでそこんとこよろしく。
「‥‥‥!?え、えぇ、まぁ…はい。分かりました‥‥‥。」
今の反応で何かしら裏があるのは確定。
しかも妨害有りとなると政治ごとなのも確定。
面倒くさいな、と思いつつ話し合いは終わり、スティーブはまず1人目に会いに行くのであった。
<スティーブ>やぁ、ヒフミ。なぜ俺がここに来たか理由、分かる?
「あ、あはは‥‥‥こんにちは、スティーブ先生。あの、これはその、やむを得ない事情がありまして‥‥‥。」
<スティーブ>あのな、まだテスト当日にライブ見に行くのはまだ許容範囲。*5それで、何度もブラックマーケットに立ち寄るのはさすがにどうかな?せめてティーパーティーに逐一報告してくれる護衛ぐらい付けたらどうなんだ?
「あうぅ‥‥‥。」
1人目はあのTNTキャノンで粉砕した銀行前で会ったヒフミだ。
当日テストをさぼったのが大きな理由だが、どうせブラックマーケットに何度も侵入したことが原因だろう。
聞けばスティーブのサポート役、それも補習授業部の部長と言う肩書だ。
そして、少し突っついてみた結果、おそらくナギサに本当の目的を言われてそうだなとスティーブは確信する。
チャットでの会話じゃないから人の感情から大体のことが分かる。
「とりあえず会いに行きましょうか。まずはみんなで、どうすれば落第せずに済むのか計画を立てないと‥‥‥。」
<スティーブ>りょうかい~
そうして辿り着いたのが正義実現委員会の教室の一つ、地下に独房がある部屋だ。
この手の内装も綺麗だと思いつつ、建築のネタにしようかとスティーブは考える。
「えっと、失礼します‥‥‥どなたかいらっしゃいますか?」
「‥‥‥何か用?」
さっそくドアを開けると出迎えたのは正義実現委員会の部員かな。
何となくだが叩けば面白い音が鳴りそうだ。
「あ、あう‥‥‥そ、その‥‥‥。あうぅ‥‥‥わ、私、何かしてしまったんでしょうか‥‥‥。」
<スティーブ>いや、多分無口な奴なだけ、チャットしないクラフターもいるし。それか人見知りか。
「‥‥‥だ、誰が人見知りよ!?た、単純に知らない相手だったから、警戒しているだけなんだけど!?」
<スティーブ>それを俗に人見知りと言う。警戒するのはいいが、わざわざ治安維持部組織の本拠地に凸るバカが居るか?*6
「うっ‥‥‥そ、それで、正義実現委員会に何の用?」
「え、えっと‥‥‥探してる方が居まして‥‥‥。」
「はぁ!?正義実現委員会に人探しを依頼しようってこと?私たちの事、ボランティア団体かなんかだと勘違いしてるわけ?そんなに暇じゃないんだけど?」
<スティーブ>じゃあ、聞くけど行方知らずのティーパーティーの役員を探して来いって依頼されたらどうするんだ?君らの上の人間だよな?その場合は?
「そ、それは‥‥‥。」
いかん、つい癖でチャットレスバをしてしまった。
それで、多分この子もメンバーの一人だな。
「こんにちは。もしかして、私の事をお探しでしたか?」
「!?!?」
「!?」
<スティーブ>珍しい、こんな水のない場所でそのスキンとは、
独房へつながる階段から水着のスキンを着た少女がやって来た。
「え、は、何で!?あ、あんたどうやって牢屋から抜け出してきたの!?ちゃんと鍵を閉めたのに!?」
「いえ、開いていましたよ?私の事を話されているような声が聞こえたので、こちらに来てみました。何か御用でしたか?」
<スティーブ>That`s right.君が浦和ハナコかな?
「ええ。あら、四角い方、ということは‥‥‥シャーレの先生、ですね。改めまして、こんにちは。なるほど、もしかして補習授業部の?」
<スティーブ>そこまで分てるなら話がはやい。とりあえず、2人目っと。
意外ともの分かりが良さそうな生徒であるハナコ、スキンのセンスはいまいちよく分からないが、まぁそういうセンスが独特なだけだろうとスティーブは思っている。
「ま、待って!!その格好で出歩かないでよ!?ちょっと!!ていうか先生はその姿を見て何とも思わないの!?」
<スティーブ>別に、そういうスキンとしか思ってないけど、
「へ?」
「あの、先生…(もしかして性的なことに無関心‥‥‥?)」
「何か問題でもありましたか、下江さん?」
「あるに決まってるでしょうが!?何で学校の中を水着徘徊するの!?」
「ですが、学校の敷地内であるプールでは、皆さん普通に水着になられてますよね?ここもあくまで学校の敷地内で‥‥‥あ、もしかして下江さんは、プールでは水着を着ないタイプですか?」
「え、は?それってどういう‥‥‥」
「そうでしたか、下江さんは全裸で泳ぐのがお好きなんですね。流石は正義実現委員会、そういった分野まで網羅されていたなんて。」
「ばっ、バカじゃないの!?着るに決まってるでしょ!?そ、そんなことするわけ‥‥‥!」
「それにしても裸こそが正義、とは…かなり前衛的ですね。あまり考えたことはありませんでした。試してみるのも一興‥‥‥」
「と、とにかく早く戻って、早く!もうすぐ先輩たちが来ちゃうから!」
「あら、でもこの方々は私に会いに━━」
「うるさーいッ!!、この公共破廉恥罪!!早く戻れ!!」
<スティーブ>wwwwwwwwww
「せ、先生、さすがに笑う事じゃ‥‥‥」
はっはっはっ、あー面白い。
あのハナコって生徒、レスバと論点ずらしが上手い。
ホシノのような分かりやすいずらし方じゃなくてじわじわと論点をずらしていくタイプだ。
相手があれなのもあるけど、チャットレスバさせたら軍事部の連中とやり合えるぞ。
あれで、死刑判決とか職権乱用にもほどがあるぞ、下江コハル。
あの手のスキンの奴はサーバーでも見かけるから最初はドン引きしたがもう慣れてるからね。
「ただいま戻りました。」
「任務完了です!現行犯で白洲アズサさんを確保しました。」
喋ってたら前にメイスで荒らしを片付けてた時に一緒だったハスミ。
それと部下のマシロがやって来た。
「はい‥‥‥はいぃっ!?」
「あっ、ハスミ先輩にマシロ。」
「コハルさん、お疲れ様です。あれ‥‥‥?」
「スティーブ先生?」
<スティーブ>ドーモ、不良生徒の引き取り先デース。
「(シューッ、シューッ‥‥‥)」
ということで、連行されてきたのはガスマスクを付けた白洲アズサ。
3人目、実際は4人目なのかな。
ガスマスクを付けてる奴は軍事部でしか見たことないが‥‥‥あいつらみたいな奴だったらめんどくさいなー。
「‥‥‥惜しかった。弾丸さえ足りていれば、もう少し道連れにできたのに。もういい、好きにしろ。ただ、拷問に耐える訓練は受けてるから、私の口を割るのはそう簡単じゃない。」
‥‥‥終わったーー。
絶対軍事部の連中と同ベクトルでやべー奴じゃん。
ハスミにコイツが何やったのか聞くと、治安維持組織相手に大立ち回りした挙句、トラップやら爆発物でテロ未遂だって。
マインクラフター的には互いにダイヤフルで1VS7ぐらいに大立ち回りして相打ちってところかな。
「お話は理解しました。先生が、補習授業部の担任になられると。できればお手伝いをしたかったのですが。」
<スティーブ>ま、それはコハル君がやってくれると思うから。
「えっ!?何で私!?」
「コハル、聞いていませんでしたか?あなたも補習授業部に籍を置いてもらうと。」
「‥‥‥え、私!?」
<スティーブ>ということで、よろしくー。
「うそ‥‥‥でしょ‥‥‥。」
最後に、下江コハル。
こいつはシンプルに成績不良で補習授業部行きだ。
そうして、全員を集め終わり、
<スティーブ>ちょっと知り合いを呼んでくるから、先行っといて。
スティーブは友人を呼びに行くのであった。
さてと、本当の目的が何なのか探ってみようか。
さすがにエデン前半はマイクラ要素と絡めずらかったので苦肉の策で『アスタルテ』の要素を少し追加。先に言っておきますが、アスタルテ以外のマイクラ要素も前半に入れていますので。
用語解説:
アスタルテ…星めぐり氏という方が製作したJAVA版の昔(2015年)からある大規模なRPG/アドベンチャーマップ(続編の2もある)。ウガリット神話に登場する豊穣の女神であるアスタルテやアーサー王物語の円卓の騎士の要素をベースにした王道的なRPGとなっている。そのため(続編の2を含め)登場人物や場所の一部は円卓の騎士の登場人物やアーサー王が統治していた国などから由来していると思われる。昔のまだそこまで要素が無かった時代のマイクラにもかかわらず、大規模かつ高クオリティなマップだったため、赤髪のともさんやぴくとさん、28さんなどの有名実況者がプレイ動画を上げていた。
なお、本小説でのアスタルテの設定としては『コマンド班が作った最高傑作のRPGマップ』という設定になっている。
キャメロン…アスタルテでアーサー王が統治していた国。元ネタはアーサー王物語でアーサー王が統治していたキャメロット。wikiによれば実際キャメロットという場所はブリテン島にあったローマ人系の支配地域がフィクション化されたものだと思われる。
アスタルテの方のキャメロンはトリニティとは違って民衆は"責任を幼い少女に押し付けようとすること以外は"まともである。
主役は我々だ…マイクラの大型実況者グループ。結構なマイクラの古参勢で元はHearts of IronやCivilizationなどの戦略ゲームや戦争史などを取り扱っていたがその後マイクラがメインとなった。
企画力やエンタメ性も高く、マイクラ人狼や、マイクラ鬼ごっこ、TRPGなど様々なゲームで視聴者を盛り上がらせた。
現在はトラブルによって別の名義(主役は我々だとは無関係として)youtubeチャンネルで活動をしていたりする。
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