高木渉たかぎわたる
声優・俳優
1966年生まれ、千葉県出身。1987年、テレビアニメ『ミスター味っ子』で声優デビュ-。その後、『名探偵コナン』や『GTO』、『はじめの一歩』など、多くのテレビアニメ、劇場アニメに出演。海外ドラマや映画の吹替えも多く、ジャック・ブラックやジェイミー・フォックスの声などを担当。NHKアニメでは、『忍たま乱太郎』や『はなかっぱ』など、人形劇では『連続人形活劇 新・三銃士』、『シャーロック ホームズ』に出演。一方で2016年には大河ドラマ『真田丸』でテレビドラマ初出演をはたし、俳優としても活躍。2019年から放送の4Kリマスター&新吹替え版『大草原の小さな家』では、アイゼア・エドワーズの声を務めている。
- 出身地
- 千葉県
“朝ドラ”出演が決まったのは大河ドラマのすぐあとだったので、驚きとともにまたチャンスをいただけるんだという喜びがありました。しかも『半分、青い。』の時代背景は僕の青春時代なので懐かしくもあり感慨深かったですね。セットの中に当時流行っていた花のおもちゃが置いてあって、セリフをしゃべる度にそれが動いてしまうんです。可笑しかったな…。
僕のファーストカットは、子どもの頃の鈴愛ちゃんがキャベツを持ってふくろう商店街を走っているところに、「鈴愛ちゃん、どこ行くんやー」と声をかけるシーンでした。「おしゃれ木田原」という洋品店店主の役なので、店前で洋服を直しながらのセリフでした。僕は普通それ着ないだろうという衣装ばかり着ていて、衣装合わせのときも着替えて出ていくたびにスタッフのみんなが笑うんですよ(笑)。僕も「これ、変~!」って言いながら楽しんで着ていましたね(笑)。
鈴愛のお父さん役の滝藤賢一さんと律のお父さん役の谷原章介さん、それに床屋の店主役のスマイリーキクチさんとのシーンが多かったですね。僕たち、飲んでいるシーンがけっこうあったんですが、あるときビールをついでから僕がコップを倒してこぼしてしまったんです。僕は慌てて立ち上がって、こりゃダメだ〜って思ったんですけど、谷原さんも滝藤さんも芝居を続けているんです。僕も慌てながらなんとか芝居を続けようとしたんですが、やっぱり高木渉になっちゃって、結局撮り直しに(笑)。滝藤さんも谷原さんも「今、よかったのにね」って言ってはくれたのですが…そのときに、容易にカメラは止まらないって学びましたね。スタートがかかったらカメラが止まるまではその中で生き続けなきゃなきゃ、ってあらためて思いました。
鈴愛ちゃんの就職祝いのパーティーの撮影では、鈴愛の祖父・仙吉役の中村雅俊さんがギターを弾いて、みんなで一緒に「あの素晴らしい愛をもう一度」を歌ったのがとても印象に残っています。みんなで歌っていたらテストのときから鈴愛役の永野芽郁ちゃんの目から涙が溢れてきて、僕もグッと胸が熱くなってしてしまいました。本番前にスタジオの前室で雅俊さんが練習がてらギターを弾いていると、自然と僕らも合唱してしまうんです。雅俊さんの伴奏で歌えるなんて、こんな幸せなこともないですが、歌はみんながひとつになれるから本当に素敵ですね。自然と一体感が生まれてとても温かい雰囲気の撮影でした。
僕は、身辺警護をする4号警備会社ガードキーパーズ警備部のリーダーの役でした。
撮影前には警備員指導の木本先生によるレクチャーがありました。車を乗り降りするときの誘導の仕方や、警護しながら歩いているときに視線をどこに持っていくか、人と対峙したときに胸元や手を見るなど、専門的なことをたくさん教えていただきました。主演の窪田正孝さんのキレがあるアクションが印象的でしたね。僕も犯人を押さえ込んで腕を背中に回すシーンがあって、やり方を教えていただいて撮影したのですが、なかなか動きがもたついてしまってね(笑)。やはり普段から体を鍛えてないといけないですね。
撮影は外でのロケが多かったのですが、とくに第1話のバスケットボールの試合の警備シーンは、実際のB.LEAGUE千葉ジェッツの試合中に身辺警護のシーンを撮っていたのでよく覚えています。試合を観戦している本当のお客さんが会場にたくさんいるなかで僕らは目くばせしながら歩いたり、お互い通信しながら警護をしていたので、すごい臨場感もあったし、なんだか自分が強くなった気分になりましたよ(笑)。
キャストはみなさん仲が良くて、撮影の合間はお菓子を食べながら喋ったり、カードゲームなんかやったり…あれ誰が持ってきてたんだろう(笑)。警備部部長の片岡鶴太郎さんとは民放のドラマでも一度レギュラーでご一緒させていただいたのですが、撮影中いつも現場を和ませてくださるとても素敵な方です。北村一輝さんや窪田正孝さんと喋っていた時にアニメの話題になって、よく振り向く時に息を入れますね、なんて話になったんです。で、少し盛り上がって監督からもOKもらって映像でやろうってことになって…あまり目立ってないですけど、遠藤恵輔が振り向く時に「んはぁっ!」と言っているシーンがありますのでぜひ探してみてください(笑)。
『真田丸』は、僕の映像ドラマデビューの作品です。『シャーロック ホームズ』のプロデューサー吉川邦夫さんから、「三谷(幸喜)さんが今度、大河ドラマで『真田丸』を書くんだけど、渉さんにやってもらいたい役がある」と連絡をいただいたときはとても驚きました。大河ドラマといったら僕にとっては、ずっと映像のドラマ経験を積んできた俳優さんが出られる番組だと思っていたし、僕は舞台の経験はあっても映像はまるっきりやったことないのでとても自分では務らない、むしろ周りの皆さんに迷惑がかかると思って、最初は断ろうと思っていたんです。でも、この歳になってもう二度とこんなビッグチャンスはこないだろうし、自分の人生において成功しようが失敗しようが絶対にプラスになることだと思ったので、まずはやってみようと思って参加しました。
そしたら僕の演じる小山田茂誠の奥さん・松役が木村佳乃さんでびっくり!しかもものすごく仲のいい夫婦役。いきなり緊張度マックスです(笑)。これは是非とも初日の顔合わせの前にご挨拶したい、しなければ!と思って、乗馬の練習をする日にちを合わせて会いに行きました。佳乃さんはとても気さくで明るい方で、「今までにないようなおもしろい夫婦を作りましょうね」と言ってくれて、ふっと心の緊張が解けたのを覚えています。撮影を通してもずっとリードしてくださって本当にいろいろと助けてくださいました。
僕が演じる小山田茂誠は、真田信繁(堺雅人)の義兄なのですが、どういう人だったのかと自分なりに調べてみても、当時はなかなか情報が少なくて、三谷さんにも聞いてみたんです。すると「歴史を調べるのもいいですが、高木さんはドラマのなかで生き生きと芝居をしてくださればいいので、そのままでいてください」と言ってくださって。だから僕も脚本を読んで感じたままを演じることにしました。第一話で出てくる小山田茂誠はまさに僕の体当たりの役作りです。それが視聴者の皆さんの印象に残ることができたなんてとても嬉しいです。小山田家のお墓参りもさせていただいて、ご子孫の方々にもお会いしました。番組が終わった今でも親交があるんですよ。
収録に入って僕の初めての撮影シーンは、行方不明になっていた茂誠が崖の中からボロボロになって出てくるところでした。緊張していたのでセリフがなくてありがたかったです(笑)。現場には堺雅人さん、長澤まさみさん、藤本隆宏さんや黒木華さんがいて、ボロボロの格好をしていた僕に監督の「OK」という声がかかった瞬間、みなさん笑顔で拍手もしてくれて。ホント嬉しかったですね〜。撮影のあとはみなさんで一緒にご飯に行って親交も深められてとっても有意義な時間を過ごしました。キャストもスタッフの方々もみなさん温かくて、経験しながらいろいろなことを学び、一年半一緒に撮影できたことは大きな財産になりました。映像デビューが『真田丸』で本当に僕は幸せ者です。
歴史あるNHKの人形劇で三谷幸喜さんが脚本を書かれた作品です。井上文太さんによる各人形キャラクターの独特なデザインがとても印象的でした。人形の素材にもいろいろとこだわったと聞いています。僕はこの作品の前に『連続人形活劇 新・三銃士』(2009~2010年)でもポルトスという役で声をあてさせていただいているのですが、人形って顔に動きはないのに、人形を操る方による顔の傾き方や動き方、照明の具合ですごく表情が豊かになるんですよね。さらに橋を渡ったりとか空を飛んでしまったりと驚かされることばかりで、人形の魅力と可能性に引き込まれます。今では『銀河銭湯パンタくん』という番組で人形劇に関わらせていただいてますが毎回収録が楽しいです。
普通のアニメーションとは違い、人形劇は僕らキャストの声を録ってから、後日操演の方々が声に合わせて人形を動かすという収録方法を取っています。どうしても声と人形の動きがうまくいかないときは、あとでアフレコをすることもありますが、基本的にセリフはラジオドラマのように録るので、僕たちも想像を膨らませて収録に臨みますね。こんな動きできるかな、なんて(笑)。
放送で初めて人形と声が合わさっている映像を見たときは感動ですね。「自分の芝居が人形によってこんなに助けられるんだな」って思ったり、「こういう絵になるならもうちょっと違う芝居をすべきだったかな」と思うこともあります。一緒に収録はできないけど同じキャラクターを担当している同士として、操演の収録を見学しに行くことも何度かありました。そのおかげで操演のみなさんとも交流が生まれましたね。実際に人形を持って仕組みを教えていただいたり…あと人形劇のセットを見たときは驚きましたね。ここに住みた〜いって思うくらい壮大なセットがあるなかで、一口、二口、三口とそれぞれかじった跡が細かく作り込まれてある小さなりんごなんかも並んで置いてあったりするんです。もう、そのリアリティに感動してしまいます。
声の収録は、僕ら限られた役者でいろいろな役を演じ分けてやっています。ひとつの作品で複数の役を演じるのは大変ですが、声優としてもすごくやりがいがあることです。ただシャーロック役の山寺宏一さんが猿や犬、動物関係全部を演じているのを見たときは、こりゃ敵わんわと思いましたけどね(笑)。山寺さんは本当にすごい人です!
歴史あるNHKの人形劇は、ずっと残していってほしい文化ですよね。これからもいろいろな作品を作り続けてほしいです。
声優デビューから5年ほどたったときに、しんべヱ役でオーディションに行ったことを覚えています。でも、しんべヱ役ではなく、大木雅之助役と滝夜叉丸役が決まって、そのあと、滝夜叉丸メインで演じることになりました。あれからもう26年もたつんですね。すごく長く演じさせていただいているキャラクターです。
滝夜叉丸は見ている皆さんに、いい意味でうざったいキャラと思っていただけたらいいなと思いながら自由に演じています。僕は、通常お芝居をするときは会話でもバランスを考えたりするのですが、滝夜叉丸の場合はうぬぼれ屋さんでナルシスト、自分勝手が許されるようなキャラクターなので、周りのキャラクターとかみ合っていなくてもいいのかなと、逆にそこに面白さを求めてスタジオでも思いっきり自分勝手に演じています(笑)。でも、そう見えていながら滝夜叉丸はとても真面目なんですよ。そんな彼を応援してもらえると僕もうれしいです。
アニメーションのアフレコは、まだ絵の方も作っている最中なので、線画だったり “吹き出し”という役名が書かれたボードが出ている間に喋るといった収録になることが今や普通になっているのですが、『忍たま乱太郎』のアフレコのときはオールカラーで絵が出来上がっていることが多かった印象があります。本来あるべき理想のアフレコ環境ですね。出演している声優も若手からベテランまで層が厚くて、とても賑やかな現場です。乱太郎役の高山みなみさんとは、『名探偵コナン』や『ドラえもん』でも共演していて、みなみさんと僕が共演すると長寿番組になることが多いんですよ(笑)。だからこれからも『忍たま乱太郎』はこのままずっと続いていってほしいですね。
『忍たま乱太郎』は、子ども向けアニメですが、大人が見てもすごく楽しめます。アニメから派生してミュージカルや実写映画になるくらい人気があるのは、どんなときも前向きになれる話ばかりで、見ていると癒やされるし、嫌なことを忘れられるからだと思います。気分がブルーになったら『忍たま乱太郎』をぜひ見てほしいです。










