性別変更の外観要件「違憲」 ホルモン療法なし認容、札幌家裁
性同一性障害の当事者が戸籍上の性別変更を求めた家事審判で、札幌家裁が、要件を定めた特例法のうち「変更後の性別の性器部分に似た外観を持つ」との規定について「違憲で無効」とする判断を示したことが23日、関係者への取材で分かった。
決定は19日付。ホルモン療法や乳房切除手術をしていない札幌市の申立人に対し、女性から男性への変更を認めた。
外観要件を巡っては、広島高裁が2024年7月、性別変更を求めた当事者の差し戻し家事審判で「違憲の疑いがある」とするなど、憲法13条が保障する「身体への侵襲を受けない自由」への過剰な制約だとして認めない判断が相次いでいる。
現行の性同一性障害特例法では、2人以上の医師から診断を受けた上で①18歳以上②婚姻していない③未成年の子がいない④生殖機能がない⑤変更後の性器部分に似た外観を持つ――を全て満たせば性別を変更できると規定する。
家裁の決定によると、申立人は①〜③の要件は満たしているが、ぜんそくの既往歴やアレルギーがありホルモン療法を受けられずにいた。
札幌家裁は決定理由で、法律制定後に医学的知見が進展しており「外観要件を課すことは合理的関連性を欠く」と指摘。憲法13条に違反すると判断した。
また、外観要件は公衆浴場などで混乱が起きる可能性を考慮しているとの解釈を示し「性同一性障害者の多くは、違和感を覚えた自己の体を他者に見られることに抵抗があり、浴場利用を控えていると考えられ、混乱の発生は極めてまれだ」とした。
近年は性的少数者の権利を尊重する司法判断が続く。最高裁は④の生殖能力要件に関し、19年に「現時点で合憲」としたが、23年10月に判断を変更。医療の進歩により、現在では手術の必要がない人にも手術をするか、性別変更断念かの過酷な二者択一を迫っているとし、憲法13条が保障する「意思に反して身体への侵襲を受けない自由」への制約は重大で違憲とした。
ただ、⑤の「外観要件」については判断せず、審理を広島高裁に差し戻した。これを受けた広島高裁は24年7月、外観要件は「違憲の疑いがあるといわざるを得ない」と指摘した。その上で、ホルモン療法で外性器の形状は変化するとし、性別変更を求めた申立人には「身体各部に女性化が認められる」と判断。「手術なし」で男性から女性への性別変更を認めた。
一方、②の「非婚要件」を巡っては、京都家裁が今年3月「直ちに憲法に反して無効と解することはできない」として性別変更を認めず、申立人が大阪高裁に即時抗告した。
最高裁の違憲判断を突きつけられた国会では、与野党が法改正を検討する動きも見せていたが、結論は出ていない。〔共同〕