僕はげきからマホイップと世界を巡る   作:三笠みくら

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激辛の紡ぐ友情

 

 

「はぅあっ!!危ない、辛いのと美味しいのが凄すぎて激辛天国に行ってた…」

 

「死んじゃったかと思ったよ…激辛天国ってなに?」

 

「それよりも!!アマネくん、これ美味しいよ!激辛とハンバーグがよく合ってる!これをもっとマイルドにしたら大衆受けするかも…手伝って!!」

 

 

それからの僕たちの動きは素早かった。ハンバーグのタネを作り、それに合う辛いソースを作る。でも僕たちには問題があって、即壁にぶち当たった。

 

 

「どうしよう…どの辛さも美味しいって思っちゃうからどれぐらいにすればいいのか分からない…!!」

 

「お母さんからは絶対僕の思う美味しい辛さを気軽に人に提供するなって言われてるからなぁ…常識的な味覚の人を呼ぶしかないかなぁ」

 

「それならタロせんぱ…いや、なんでもない」

 

「えっなに?タロさんっていう友達がいるの?」

 

「いやー、友達っていうか先輩っていうか……」

 

 

タロさんの話になった途端に顔を赤らめてしどろもどろになるアカマツくんを見て、僕は確信する。アカマツくん、タロさんの事好きなんだな。

 

 

「よし、そのタロさんを呼ぼう」

 

「え゛っ、でも忙しいかもしれないし…」

 

「ダメだったらその時は他の人を呼ぼう。アカマツくんが真っ先に名前を出す人なら大丈夫だって!」

 

「うぅ…ほんとに?」

 

「大丈夫!」

 

 

緊張で体がカチコチになったアカマツくんを励ましながら、タロさんに電話をかけさせる。

 

 

「あ、タロ先輩?もしもし…今、大丈夫?」

 

『アカマツくん!どうしたの?今ヒウンに来てるんだ〜』

 

「そうなんだ!いや、実は…今、さ。食堂の新メニューを開発してるところなんだけど、あんまり上手く行ってなくて…タロ先輩の協力が欲しいな〜、と思って…」

 

『そうなの?アカマツくんが困ってるなら協力するよ!今から行くから待っててね!』

 

「うん!!ありがとう、先輩!!うん、待ってる!!」

 

 

タロさんとの電話が切れると、アカマツくんははち切れんばかりの笑顔を向けてくる。よっぽど嬉しかったんだろうな。少しして、桃色の髪のかわいらしい女の子が入ってきた。

 

 

「失礼しま〜す…アカマツくん!来たよ!」

 

「タ、タロ先輩!ありがとう、来てくれて!こっち座って!」

 

「ありがと〜、あれ?アカマツくんのお友達?」

 

「初めまして、アマネです。アカマツくんとは辛いもの好き繋がりで仲良くなって、新メニューの開発を一緒にやってるところなんです」

 

「そうなんですね!初めまして、わたしはタロ!ブルーベリー学園の2年生です!それにしても…アマネくん、カワイイですね…」

 

「えっ?そうですか?」

 

「はい、まつげも長いしお目目もぱっちり…ふわふわの甘めなかわいさです!」

 

 

なんだろう、カワイイものについて語り始めたら急に目が鋭くなったぞ。もしかしてタロさんも大好きなものがあるとか言うあれかな。

 

 

「そうだ!試食!タロ先輩、さっそく試食して欲しいんだけど…」

 

「うん、いいよ!それで新メニューって?」

 

「辛めのソースを使ったハンバーグなんだけど…オレたち2人とも辛いもの好きだから、大衆向けの辛さがどれくらいか分からないんだ」

 

「なるほど、致命的だね。」

 

「とりあえずもう少しマイルドにしてみよっか。」

 

 

辛いソースをマイルドにして、ハンバーグにかける。そしてタロさんがひと口ぱくり。

 

 

ガッッッ

 

「今この世のものでない声が聞こえた」

 

「かっっらい!!辛すぎですよ!こういうのよくないと思います!!もうちょっと、いやもっとマイルドにしないと!!」

 

「よし!もっとマイルドに!やろう、アマネくん!!」

 

「うん!」

 

 

その後、タロさんにひと口味見してもらいながら調整を重ねた。アカマツくんの家が食堂で良かった、牛乳がいっぱいあったからね。タロさんは悶絶しながらもしっかり味見はしてくれる。やがて…

 

 

「…うん、美味しい!辛さもピリッとレベルでハンバーグの肉汁とよく合う!これくらいでいいと思うよ!」

 

「そうかな、もう少し辛くてもいいと思うけど…」

 

「仕方ないよ、僕たちの感覚を普通の人と一緒にしちゃいけないんだ」

 

 

こうして僕たちは辛口ソースのハンバーグを今度こそ完成させた。その後帰ってきたアカマツくんのご両親にも食べてもらって、正式にメニューになることが決まった。レシピもしっかり書いてあるので、問題なし!

 

 

「いや〜、ありがとうねアマネくん!おかげで新メニューが完成したよ!本当にありがとう!」

 

「ううん、こちらこそ!辛い料理の誕生に立ち会えて光栄だよ。」

 

「タロ先輩もありがとう!味見いっぱいしてもらっちゃって…」

 

「いいの!確かにすごい辛かったけど、アカマツくんたちが頑張ってるのはすごく伝わってきたから!」

 

 

3人で盛り上がっていると、アカマツくんのお母さんがキッチンから声をかけてきた。

 

 

「2人とも!良かったらご飯食べていくかい?お礼と言っちゃなんだけど、腕を振るった料理を作るよ!」

 

「いいんですか?」

 

「あ、わたしはそろそろ帰らないと…パパ、過保護なんだよね」

 

「そうなんだ…ありがとう、タロ先輩!」

 

「それじゃあ!アマネくん、また会いましょうね?」

 

「あ、はい…」

 

 

なんか目が怖かったぞ。声もなんか低かったし。結局僕はアカマツくんの家でご飯をご馳走になることになった。が、アカマツくんの家の料理は、逆詐欺だった。小盛りのチャーハンを頼んだら、どう見たって大盛りのチャーハンが出てきたし、たまごスープを頼んだらやたらでかい器に盛られてやってきた。

 

 

「美味しいけど、ちょっと多いな…アカマツくん、僕のポケモンも出していい?」

 

「いいよ!アマネくんのポケモン、気になる!」

 

「それじゃあ…フラン、出ておいで」

 

「ほみー!」

 

「わあ、かわいい!マホイップだよね!でもなんか赤くない?」

 

「あー…それは…」

 

 

僕はアカマツくんに、辛いものの食べ過ぎでフランとサビナが新たな姿を手に入れたことを教えた。まあアカマツくんなら下手に言いふらしたりしないだろうから大丈夫だと思うけど。

 

 

「なにそれ……すっげーー!!辛いものってやっぱりすごいんだ!!アマネくん…いや師匠!!師匠って呼ばせて!!」

 

「師匠!?なんで!?アカマツくん、落ち着いて…」

 

「だってそうじゃん!辛いもの食べてポケモンが進化するなんて!うわー、興奮が止まらない!!」

 

 

アカマツくんから勝手に師匠認定されてしまった。まあ上下関係なんてものは作る気ないから名前だけのものだろうけど。

 

 

「そういえばアマネくん、ホテルとか大丈夫なの?もう暗いよ?」

 

「ああ、大丈夫!キャンプするつもりだから!」

 

「……え?」

 

 

僕はアカマツくんに、ポケモンに乗って旅をしていること、お金などはバイトで稼ぐつもりであることを話した。そしたら、アカマツくんとそのご両親がすごい勢いで捲し立ててきた。

 

 

「なに言ってんの!!こんな世の中で子供が1人キャンプなんて!!」

 

「そうだ!うちに泊まっていきなさい!部屋ならある!!」

 

「お金ならうちでバイトすればいいじゃん!危ない仕事があるかもしれないでしょ!?友達をそんな危険な目に遭わせられないよ!!」

 

 

アカマツくん一家に押し切られ、僕はアカマツくんの家にお世話になることになりました。結局その日はアカマツくん一家と一緒にご飯を食べて、お風呂に入って。客人用のお布団を借りて空き部屋で寝ようとしたら、アカマツくんから一緒に寝よう、と誘われたのでアカマツくんの部屋で横に並んで寝ることになった。

 

 

「いや〜、オレ弟が欲しかったんだよね!なんかこういうの憧れてたんだ!」

 

「弟か…僕師匠じゃないの?」

 

「アマネくんはどう見ても弟って顔でしょ〜」

 

 

なんて軽口を叩き合いながら、僕とアカマツくんは楽しい夜を過ごした。夜中に2人ともお腹が空いちゃって辛いカップ麺を食べたりもした。

 

 

友達って…いいなあ!!




アカマツ両親
熱血で優しい両親。アカマツ母はブーバーン、アカマツ父はダルマッカを手持ちにしている。アカマツの価値観は両親から色濃く受け継がれたもの。ちなみにアカマツ母の方がバトルは強い。
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