僕はげきからマホイップと世界を巡る   作:三笠みくら

45 / 56
最終章でごわす。全部の地方を周るのは流石に無理ンゴ

ホラー要素ここから軽くあります。注意してね


アローラ編
アローラ上陸


 

 

ガラルからアローラへの飛行機。割と寒冷なガラルとアローラは離れていたから時間があったけど、その分覚悟を固めることができた。ルセちゃんが何をしてくるのか知らないが、僕とポケモンたちなら乗り越えられるだろう。あとユウリさんもいるし。

 

 

やがて飛行機は着陸し、僕たちはアローラの大地に足を踏み入れた。

 

 

「ここがアローラ…日差しすごいね」

 

「本当ですね…麦わら帽子買っといてよかった」

 

 

メレメレ島に着いた僕たちは、ひとまずホテルへと歩き出した。けれどその道中。僕は形容し難い違和感に襲われた。

 

 

「…ユウリさん、なんか変じゃないですか?」

 

「え、何が?」

 

「なんて言えばいいのかな…皆、こう無気力な感じがして…」

 

「そう?確かに観光地だからみんな明るいって思っちゃってたのかな。まあ大丈夫じゃない?」

 

 

そうは言うものの、街ゆく人はどこかぼんやりしていて、道端にはぼうっと空を見上げているだけの人もいる。こんなものだろうか?アローラはもっと活気があると…アローラじゃなくてももう少し生き生きしていてもいいはずなんだけど。

 

僕とユウリさんがホテルのエントランスに入ると、そこには見慣れた顔があった。

 

 

「あれ?アオイちゃん?」

 

「え…?あ、アマネくん!?」

 

「アマネくんっ!?…ぐふっ」

 

 

アカマツくんとタロさんもいた。タロさんは僕を見て倒れかけた。あとゼイユさんとスグリくんもいる。どうしたのかな?

 

 

「アマネじゃん!久しぶりー!え、アマネもアローラ旅行!?」

 

「アカマツくん!!会えて嬉しい、でも旅行とは違うかな…」

 

「あ、アマネくんの半袖姿…なんてレア」

 

 

タロさんは胸を押さえながらもスマホで写真を撮っている。さすが僕のファンを自称するだけある。けれどアオイちゃんとユウリさんは、無言で見つめあっている。

 

 

「…初めまして、アマネくんの友達のアオイです」

 

「初めまして、アマネくんと“一緒に”アローラに来ました、ユウリです」

 

「………」

 

「………」

 

 

なんだろう。これがプレッシャーというものだろうか。2人の間にはバチバチと緊張感のある空気が満ちていた。

 

 

「ちょっと、うるさいわよ。部屋ならともかくエントランスでは……」

 

 

そう注意しようとしたゼイユさんが、ヒュッ、と息を呑んで固まる。ゼイユさんの見た方を見ると…

 

 

 

じいっ

 

 

 

エントランスにいる人々が、何も言わず、眉ひとつ動かさず。ただじいっと、僕たちのことを見つめている。なんだ……?こんな異様な光景、見たことがない。不気味すぎる。僕たちは逃げるようにそれぞれの部屋に入った。そのあと1番広い僕の部屋に集まることにした。

 

 

「なんなのアレ…気持ち悪い」

 

「わや怖かった…注意されると思ったのに、もっと怖かったべ」

 

「なんていうか…人形が並んでるみたいだった」

 

 

その言葉に、僕たちは同意する。あれは意思のある人間のやることではない。目も虚ろだった。そんなことを考えていると、僕のスマホロトムに電話がかかってきた。非通知。心臓がうるさいが、出ることにした。

 

 

『アマネ、いらっしゃい』

 

 

背筋が凍る。ルセちゃんの声だ。でもどうして?僕はルセちゃんのことを見ていないはず。それとも遠くから見られていた?色々な可能性が頭の中を巡る。

 

 

『あはは、びっくりした?ごめんねー、驚かせちゃって』

 

「………」

 

『まあいいや、アマネ』

 

「なあに」

 

『わたしに会いに来てくれたんでしょ?嬉しい』

 

「行かなかったらどうするつもりだったの?」

 

『ふふふ……アマネ、やっぱりわたしのこと分かってるね』

 

「………」

 

『アマネ…』

 

 

頭にこびりつく、甘い声。けれどそれは這い回る蛇のような悍ましいもの。

 

 

 

『楽しみに しててね』

 

 

 

ぷつん。電話は切れた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。