極度緊張の当日
慣れないネイルに非常に時間を取られ、あやうく遅刻しそうになるものの、万博公園駅に到着。
ふたりの幸せそうな写真や、フユちゃんの好きなムーミンやトトロ…ゆっくり見たいけれど、どうしても目で追ってしまうのは出席者の面々です。
おばあちゃん・おじいちゃんから、ドレッドヘアの20代男性、3歳の女の子もいます。
同じく結婚式に招待されていた小学校からの友達・蘭ちゃんが、「唐沢、緊張しすぎちゃう・・・?」と心配してくれました。(最近蘭ちゃんは、生物ライターの平坂寛さんの追っかけをやっているそうです)
しばらくすると、
新郎新婦の誓いに会場も大盛り上がり。私もわー!っと感動する一方で、
おめでたい会場で命が絶えるなんて、一番の禁忌です。重ね言葉どころではありません。
こんな素敵な式が、私の卒倒なんかで台無しになったら・・・と思うと、唇がさらなる白さに。
フユちゃんと旦那さんが作ったビデオが披露宴のオープニングをかざります。運ばれてくるキラキラの料理!
テーブルには新郎新婦からそれぞれの出席者に直筆メッセージが。
うれしいなあと、フユちゃんからの手紙をひらくと、
司会の方が、「新婦のご友人の唐沢さんですよね」と、スピーチはどれくらいの長さなのか、マイクは手持ちなのか尋ねに来られました。
「あーこの軽い打ち合わせ、別の結婚式で他の人がやってるの見たことあるなー」と当事者感が増し、さらに緊張が高まりました。
そしてどうしても気になるのは、新郎ご友人のにぎやかそうなテーブルです。さっきのドレッドヘアの人がいます。
「聴いてくれる人がどんな人か意識して話す」のがスピーチの鉄則ですが、彼らと私の間に共通点が見当たりませんでした。どう意識すればいいのかわかりませんでした。
そういえば、おじいちゃんおばあちゃんのノリも、3歳児の気持ちもそんなに知りません。
下っ腹のうずきを抱えながら、「誰も私のことなんて気にしてないのに、しかも友人のおめでたい席なのに、この体の強張りは何!?」とじっと待ち・・・
「つづきまして、新婦の友人代表の唐沢むぎこさんのスピーチです」という声が響きわたりました。
ついに来ました。フワフワとした足取りのまま、新郎新婦席の隣に立ち・・・
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原田さん、フユさん、そしてご両家の皆様、本日はおめでとうございます。
ただいまご紹介に預かりました、フユさんの小学校からの友人の唐沢と申します。
こういった正式な場で恐縮でございますが、「フユさん」ではなく20年来の呼び方、「フユちゃん」と呼びたく存じます。
フユちゃんと出会ったのは小学2年生のときのことです。席替えでたまたま(註:無意識に重ね言葉を言っていた)隣になり、馬が合って即日仲良くなりました。
学校ではドッジボールやお笑い番組の話をして盛り上がり、放課後も家が近かったので暮れるまで遊びました。
ケンカをした記憶はなく、とにかくずっとふたりで考案したしょうもない遊びをしては笑って過ごしました。どこに出すわけでもないのに、オリジナルの歌を作詞作曲をしたり、ふたりで意味なく早朝5時に集合して特に大好きでもないドラゴンボールのスタンプラリーをやるためにコンビニのローソンを何件もはしごしたり....どれもかがやく思い出です。
お互い、違う部活に入り、進学、就職を経て離ればなれになっていったのですが、いまでもフユちゃんと会うと、昔と同じ気持ちで会話ができます。フユちゃんに友達が多いのは、いつでもかわらぬ気さくさで接してくれるからだと思います。
昨年、こんなことがありました。恥ずかしながら、私は大人になってもフユちゃんとやったような「しょうもない遊び」がやめられず、最近はGoogleレビューでわざわざ低評価の滝を探して巡る旅をしておりました。....普通なら怪訝に思われる行為ですが、それを聞いたフユちゃんはあの時のように、「たのしそう、一緒に行こうや」と面白がってくれたのです。フユちゃんの変わらぬ明るさ、包容力に度肝をぬかれました。
原田さん、フユちゃんと朝5時にローソンをはしごするだけであんなに楽しかったのですから、一緒に暮らしたらさらに楽しいことでしょう。
おふたりとも、末長くお幸せに。本日はおめでとうございます。
絶命することなく、お祝いの言葉までたどりつき、無事スピーチは終了。お、おわった~!
拍手をもらい、席に戻った私は、スピーチ前は控えていたお酒を飲みに飲んで、バイキング形式のデザートも食べられるだけ食べました。ああ安心して胃が拡張していく・・・!
披露宴の写真タイムで、フユちゃんが
「ほんま良いスピーチをしてくれてありがとう!!」
と言ってくれました。
「スピーチ頼んでごめん・・・」からのV字回復。あ~よかった〜
自分を追い込んで極度緊張したものの、フユちゃんの結婚式でスピーチができたのは、私にとっても大きい思い出になりました。
