ヒーロー志望の透明幼馴染の見た目がめちゃくちゃ可愛い話


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作:エビチリ
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後編


評価、感想、誤字報告ありがとうございます!


 

 横たわった状態で周りを見渡せば、テレビのついた床頭台、白いシーツがかけてあるベッド、腕に巻いているリストバンドに、身に着けている病衣。つまり目を覚ましたら病院だった。

 

 

「知らない天井だ」

 

 

 こういう時は天井を向いてこうすれば良かったはず。

 近くに置いてある時計を見れば日付は昨日の敵からの逃亡劇を繰り広げた翌日の午前8時になっていた。⋯そういえば昨日も起きた時は知らないバーだったな。そろそろ家のベッドが恋しくなってきた。

 左腕に点滴がされてるだけで他には特に処置が施されている様子は無い。

 体に異変も特に⋯⋯⋯いや、寝起きだから視界がぼやけてるだけだと思ったけど確実に視力が落ちてる。とは言ってもこれは『千里眼』を使いすぎた反動で、慣れたものなので特に慌てる必要もない。

 

 

「懐かしいな。昔も葉隠のこと見失わないようにずっと個性使い続けてたら視力ガタ落ちしたんだよな」

 

 

 昔は酷くても半日後には治ったのだが今回はどのくらいかかるのやら。

 

 

 

▲▼

 

 

 俺が起きたことをどこから知ったのか色んな人が訪ねてきた。

 まずは俺の事を診てくれた、かなり有名なヒーローのリカバリーガールから何故病院にいるのかという事と、俺の体調について説明をされた。

 

 どうやらオールマイトがオール・フォー・ワンを倒した場面をみた直後に頭痛と発熱のダブルパンチに耐えかねてぶっ倒れたそうだ。そして、それを運んでくれたのが緑谷くん達らしい。今度会うことがあったらお礼を伝えておかないと。

 

 

「まずはあんたが話していた敵の親玉に連れ去られたあとの激痛と不快感の説明から入るとしようかね。単刀直入に言うと、これはあんたが個性を与えられた影響だね」

「えーっと⋯つまり身体にあってない個性を与えられたってことですか?」

「いいや、元々が無個性ならまだしも、個性がある身体に、無理やり別の個性を入れられたのにあんたが言ったような激痛と不快感だけで済んだのはある意味奇跡だよ。本来ならそこで死んでしまったり廃人になってたとしても全くおかしくは無いからね。むしろ激痛と不快感だけで済んだのならあんたとその個性の相性は決して悪くは無いはずだよ」

 

 

 死…廃人…マジか……。

 

 

「マジですか…」

「マジさね。次は頭痛と発熱について…これは単純に身体が慣れてない力を使いすぎたのと個性の副作用だね。個性は使えば使うほどに鍛えられるって話は聞いたことはあるかい?」

「はい」

 

 

 これは身に覚えがある。小さい頃に葉隠を見失わないようにずっと個性を使い続けていたらいつの間にか持続時間がかなり長くなっていたからだ。

 

 

「それと同じで『加速』を使ってれば体が慣れてくるから発熱の方は無くなるはずさね。…まあ、頭痛に関しては同系統の個性を使っていたヒーローが『副作用として脳の消耗が激しくなる』と言っているから大人しく個性の副作用として受け入れるしかないね」

「なるほど、ありがとうございます。」

 

 

 リカバリーガールとの話はこれに加えて精密検査の結果、問題がなければ明日には退院できるだろうという話で終わり、今度はリカバリーガールの後ろに控えていた二人の男性との話になった。一人は普通の成人男性といった見た目の人、もう一人は白いネズミ。

 

 

「初めまして、薙切千里くん。僕は塚内、警察の人間で敵連合に関する事件について担当していてね、色々と教えてもらいたいんだ」

 

 

 この塚内さんとは、いくつかの質問と『敵連合が雄英ヒーロー科の合宿を狙ってくるのがなぜ予測できたのか』、『敵連合の隠れ家で何があったのか』ということを主に話した。

 

 

「未来視は先日初めて発現したのかい?」

「あれが未来視だと自覚したからこそ分かりますが、今までも時々発動することはありました。ただ、その時は誰が、いつ、どこで、何をするのか、というのがほとんど分からなくて、未来視で見たものと同じ状況になっても『なんか似たような状況見たことあるかも』と思う程度で、ただの既視感だと思ってました。まともに使えるような未来が見えたのは合宿の敵が襲撃してくる時が初めてです」

「年齢を重ねるにつれて個性が強まる…例がない訳では無いね。最後の質問に移るけど未来視が発現する前に未来を見れる可能性があるか考えたことは?」

「中学生の頃に考えたことはあります」

「良ければ内容を聞かせてもらってもいいかな?」

「幼い頃に医師から聞いた話ですが、俺の個性は父親と母親の個性の良いとこ取りをしたような個性だと聞きました。

 それも踏まえて自分なりに考えた結果、時間の流れを『見えないもの』と認識することさえ出来れば、父親譲りの『見えないものを見えるようにする』という個性の能力で時間を可視化、母親譲りの『遠くまで見える』という個性で時間の流れる先…つまり未来を見ることも可能だと考えました。両親にも話してみたんですけどその時は『少なくとも自分たちの個性だと出力が足りないけど千里なら分からない』って言われて…」

 

 

 俺の父さんの個性は『壁の透視や暗視、速くて見えないと思ったものが見えるようになる』というものでそれらをまとめて『見えないものが見える』という説明をされたそうだ。対して俺は、その『見えないもの』の範囲が広がり、父さんには見えない葉隠のような透明な人、物が見える。

 要は父さんよりも最大出力が高く、細かい調整も可能という訳だ。母さん由来の『遠くまで見える』というものも同様だ。

 

 

「ただ、その時は実際にできるとは思ってもいませんでしたし…」

「親から受け継いだ力がそのままの出力だとは限らない……うん、だいたい僕たちの推測と同じだね」

 

 

 そして最後に

 

 

「あのマスクをつけた敵に個性を与えられたことは部外秘で頼みたい。脳無…あの雄英や保須市に現れたタイプの敵も複数の個性を併せ持っていたことから、下手に情報を公開すれば君や君の家族が根も葉もない事を言われかねない」

「それはいいんですけど…その事を知っている人は今のところどのくらいいるんですか?」

「今のところは君も含めたここにいる四人、それから神野での戦闘に参加していたヒーローの中の一部。…それから君の幼馴染から君自身の個性のことを聞いていれば君が戦っている所を見ていた爆豪くんと爆豪くんを助けに来た雄英生の五人もだね。当然だが、これは君のご両親にも隠しておいて欲しい」

 

 

 と言われた。どうやら、病院の医師ではなくリカバリーガールが俺の事を診たのも情報の秘匿に関わることだからだそうだ。おまけに爆豪くんも検査のために入院中だと教えてもらった。

 ちなみにだが、()()()人を傷付けた訳では無いので公共の場での無許可で個性を使用した事に関してはお咎め無しらしい。流石に敵とは言っても、生死に関わるような致命傷を負わせていたら何か言われていたかもしれないが、そういったことも無いので特に問題は無いとこのこと。

 続けて白いネズミのような人…人?との話に入る。

 

 

「確か雄英の校長先生ですよね?」

「そう!ネズミなのか犬なのか熊なのか、かくしてその正体は…校長さ!」

 

 

 雄英の人が何故俺の病室に来たのだろうか。ひょっとしたら俺と爆豪くんが同室だと思ってるのかもしれない。そう思って口を開く。

 

 

「爆豪くんなら確かこの階の一番端っこの部屋ですけど」

「そんなことは分かっているさ。この後爆豪くんの方にもお見舞いに行くけど先に君に用があって来たんだ」

「用ですか?」

 

 

 話を聞けば、『俺を雄英のヒーロー科に転入させるべき』という声が一部で上がっているらしい。その理由が…

 

(ヴィラン)三人を相手に有利に立ち回れる戦闘能力と個性を持つ人間をヒーロー科がない高校の普通科に置いておくのは惜しいということ』

 

『AFOに狙われたことから、また敵連合にちょっかいをかけられる可能性があること』

 

『敵連合に狙われた際、セキュリティが強固だったり、プロヒーローがいたり、自衛の術を身につけられたりする雄英にいた方が何かと好都合。まだ公開してないが全寮制に移行するので、セキュリティ面は今までより強くなる』

 

『万が一、与えられた個性が暴走したりしてしまった場合、『抹消』の個性を持つ一年A組の担任が近くにいた方がいい』

 

 

 などなど、色々と話された。

 

 

「すいません、少し考えさせて貰えませんか?雄英のヒーロー科って言えば小学生でも知ってるような場所ですし…」

「全然問題ないのさ!僕たちは君の意思を尊重したいからね!…ただ急かすようで悪いけど出来れば早めに答えを出してもらえると助かるよ」

「はい。多分今日中には出せると思うので」

「それなら答えが出たらここに連絡するように。僕からは以上」

 

 

 そんな中、俺の出した答えは保留である。流石にこの場で即決するには大きすぎる。

 ちなみにオールマイトが突き破った我が家の窓ガラスは雄英が修理費を負担してくれるらしい。それから、退室する際にリカバリーガールが教えてくれたが、校長先生はネズミのような人ではなく、本物のネズミらしい。

 

 

 次に俺の両親、二泊三日の予定だったのに一泊もしないで帰ってきたそうで申し訳なくなった。両親に泣きながら抱きしめられ『無事でよかった』と言われた時は俺も少し泣きそうになった。あとは、リカバリーガールから個性の使いすぎで視力が落ちていることを聞いたそうでメガネを持ってきてくれた。

 

 

「父さん母さん、心配かけてごめん」

「いいのよ…千里が無事に帰ってきたんだから」

「ああ、母さんの言う通りだ」

 

 

 三人揃って落ち着いてから、今度は俺から話を切り出した。

 

「そういえばさっき雄英の校長先生に雄英のヒーロー科に来ないかって言われたんだけど」

「それならあなたが目を覚ます前に私たちも聞いたわ」

「最終的にどうするかはお前が決めることだから俺たちは変に口出しはしない。なかなか決められないようなら相談しなさい。ただ、後悔だけはしないように」

「はい…!」

「それからもう一人お客さんが来てるから、きちんと話をするようにな」

 

 

 

 そんなことを最後に言って父さんと母さんは病室から出ていった。

 

 

 …そして父さんと母さんが病室から出た所で、誰かと何かを話してから最後の客人が来た。どうやらその話していた相手が最後の客人のようだ。

 

 コンコンと病室のドアがノックされたので声を出す。

 

 

「どうぞ」

 

 

 ドアを開けて無言で入ってきたのは周りから見れば服が浮いてるように見える幼馴染。かれこれ10年以上の付き合いなんだから顔が見えなくてもどんな表情をして何を考えてるのかは大体わかる。

 

 

「久しぶりって言うほどでも無いな。ついこの前通話したし直接会うのは…1ヶ月ぶりくらいか?」

「…」

 

 

 できる限り機嫌を損ねないように意識して声をかける。しかし返事は無い。

 

 

「これ、お見舞い。ここ置いとくね」

「あ、ありがとう…」

「………個性使ってないでしょ」

 

 

 暫しの沈黙の後、ようやく口を開いたと思ったらこれである。それにしてもよく分かったな。俺の個性は使ってても見た目に変化は無いから分からないはずなのだが。

 

 

「確かに使ってないけど…」

「じゃあ早く使って」

 

 

 そう言いながら、コツコツと足音を鳴らしながらこっちに近寄ってきて透明な腕に顔の向きを固定される。

 

 

「早く。私が今、どんな顔してるか、ちゃんと見て」

 

 

 どこか鬼気迫るような声に個性を発動すると、俺の顔を抑える腕と、パステルグリーンに所々ピンクが混ざった癖っ毛が特徴的なセミロングの髪、そしてまだあどけなさが残る顔立ちに濃緑色の瞳が視界に入ってきた。

 本人曰く、『楊貴妃とザビエルを足して2で割ったような見た目』とのこと。高いのか低いのかよく分からない自己評価だ。

 

 

「ねえ、今どんな顔してるか言ってみて」

「どんなって」

 

 

 いつもなら活発な性格に合わせて表情も基本的に明るいが、今日は違った。目に涙が浮かんでいて今にも泣き出しそうな顔をしている。

 何となく予想はしていたものの、幼稚園、小学校、中学校と一緒にいて、葉隠の泣き顔はほとんど見た事が無いため、自分で思っていたよりも衝撃が大きかった。

 

 

「…心配したんだよ」

「ああ」

「助けてもらったから…ありがとうって電話しようとしたけど繋がらなくってっ…!」

「ああ」

 

 

 声がどんどん嗚咽混じりになってくし顔もどんどん下に向いてく。

 

 

「ごめんっなさいっ!…ごめんなさいっ!」

「待てって、なんでお前が泣くんだよ」

「だってぇ…!」

 

 

 シーツに涙を垂らしながら葉隠はとうとう声を出して泣き始めた。…感情豊かなのも時には泣くのも別にいいとは思うけど…場所が悪い。家や誰もいない屋外なら問題ないとは思うが、個室とはいえさすがに病院で声を出して泣くのはよしてもらいたい。

 

 

「俺が連れ去られたのはお前のせいじゃないからな」

「違う〜!」

「違わないから。よくよく考えてみろ。あのマスクのやつはオールマイトに宿敵認定されてるような敵だぞ。そんなやつが未来視なんて便利な事ができる個性持ってるやつを見逃すわけないだろ。遅かれ早かれこうなってたよ」

「ひっく……」

 

 

 まだダメか。なら今度は別方向から慰めにいってみよう。

 

 

「それにお前のおかげで俺はこうして戻ってこれたんだよ」

 

 

 葉隠が呆然としてこちらを見てきた。よし、少しだけど効果はありそうだ。あとはこの調子で…。

 

 

「ぐすっ…私の?」

「ああ、お前が昔俺に笑いかけてくれたから。『信じてる』って言ってくれたから。…だから俺も『頑張ろう』って思えたんだ」

 

 

 別に嘘は言ってないし言い方を変えてるわけでもない。正真正銘俺の本音だ。そして葉隠もこれが俺の本音だと分かるくらいには長い付き合いをしている。

 

 

「だからさ、笑えよ、ヒーロー。ヒーローがそんな顔してたら周りの人まで不安になるぞ。なあ、そうだろ?『ステルスヒーロー インビジブルガール』」

 

 

 職場体験の時に『ヒーローネーム決めた!』と連絡が来た時、そして小さい頃に『ヒーローネームはこれにする!』と言っていた時のものを思い出す。それはそれとして俺の方が言ってて恥ずかしくなってきた。今日のことは二度と思い出さないようにしよう。

 

 

「ほら、顔上げて涙拭いて」

「うぅ…お母さんみたい」

「誰がお母さんだ。次言ったらはっ倒すからな」

 

 

 何はともあれ泣き止んだようでなによりだ。そういえば葉隠が敵の襲撃でどうなったのか未だに聞いてなかったな。今この場に普通にいるのだからガスを吸って気絶なんてことは無かったと思うが。

 

 

「そういえば葉がく「ちょっと待って」…ん?」

「私たちってかれこれ10年以上の付き合いだよね?」

「そうだな」

「そろそろ私のこと『透』って呼んでくれてもいいと思うんだよね」

 

 

 ……そう来たか。確かに幼稚園の頃に葉隠と知り合って10年以上が経つが、俺は未だに葉隠を下の名前で呼んだことがない。特にこれといった理由は無く、幼稚園の頃に苗字で呼んでいたらいつの間にか定着しただけだ。

 

 

「透、これでいいか?」

 

 

 そう言ったら、葉がく「透」…しれっと人の心を読むな。透の心臓がある辺りから桃色の靄みたいなものが出たと思ったらすぐ消えた。なんだったんだあれ。…まあ、気のせいでいいか。

 

 

「うんうん。私は千里って呼んでるんだし千里も私のことは透って呼ばないとね。それでさっき何話そうとしたの?」

「別に大したことじゃないんだけどさ、林間合宿の時に通話しただろ?言ってなかったけどあの時に透のことも見えたんだよ」

 

 そこからは正直に話した。あの日の夜に未来視で見た内容を気絶してた透のことも含めて全て。

 

 

「全然そんなことなかったよ。途中で転んで擦り傷できたのとちょっとだけガス吸って一応検査の為に入院したけど問題なしだって」

 

 

 「ほら」と言いながらズボンを捲って膝に貼った絆創膏を見せてきた。そこで何かに気付いたのか裾を戻しながらこちらをじっと見つめてきた。

 

 

「そっちは?なにかあったんでしょ?」

「…え?」

「隠してるつもりかもしれないけど見ればわかるよ」

 

 

 …頭を開きながら笑って『なんで分かるんだよ。』とでも言えばいいのか。

 

 

「別に…ただちょっとショッキングな場面を見ただけだよ」

 

 

 流石に『人が死ぬ場所を見ました』なんて直球には言えないのでオブラートに包んだ表現をする。

 

 

「話くらいなら聞くよ?」

「……それならお言葉に甘えて」

「ささ、話してご覧なさい」

 

 

 妙に芝居がかった口調でそう言う透に促されて、口を開く。

 

 

「俺…さ、なんて言えばいいかな。今まで自分のことを観客だと思ってたんだ」

「観客?」

「そう。ヒーローたちが舞台の上の俳優で俺が観客。『俺は俺で観客らしく別の場所で働いて普通に暮らせばいいな〜』なんて…考えてさ。ヒーローと敵が戦ってるのもあまり見たことないから余計にそんなふうに思ってたんだ。だから透がヒーローになるって言った時もどこか別世界のことみたいに感じたんだ。

 でも違ったんだ。ヒーローも敵も舞台の上にいるんじゃなくてすぐ隣に居て…そして他の人も巻き込まれて……」

 

 

 本当にこんなに大切なことを巻き込まれるまで気付けなかった自分のことが嫌になる。

 

 

「俺の個性でも誰かを助けられるかな」

 

 

 困ってる人を見過ごせないとか平和のためになんて大層な理由じゃない。下手すれば命を失うようなところになんて行きたくもない。…でも、それ以上に二度と地獄絵図(あんなもの)を見たくないし、透や家族にあの中にいて欲しくない。

 現場に近付かなければいいだけの話だと思うかもしれないが、テレビやネットニュースで画像を見るだけで神野で見た光景がフラッシュバックしてもおかしくないくらいには頭に残ってる。

 だからこそ、未来視を上手く使って避難を促せれば、あの夜のような状況を完全に無くすことはできなくても見る機会を減らすことは出来るのではないか。…まあ、その為にはヒーローライセンスとそれに伴う個性の使用許可がいるわけだ。

 

 

「助けられるよ絶対に。

 ………知ってるでしょ?人から見られないって案外辛いんだよ。まあ、もう慣れたけどね。裸になってたらみんな私のこと見失うし、悲しくても身振り手振りとちょっと明るそうな声を出してれば、友達でもほとんど気付いてくれないからね……でも、千里は違った。いっつも近くにいてくれて何があっても見つけてくれて…細かいことにも気付いてくれた。ずっと昔から千里は私のヒーローで…だから絶対に助けられるよ」

 

 

 透がこういうことを言ってくれるのは嬉しい……嬉しいんだけど……

 

 

「お前、もしかして人前で全裸になってたの?」

「え?」

「え?」

「コスチュームで…って言ってなかったっけ?」

 

 

 確かに透の個性の『透明化』を活かすには全裸が一番都合がいいんだろうけど倫理的にどうなんだ…

 

 

「透、いくら透明人間でもそれだと露出狂と大して変わらな「ああああああああああああ!!!!ちが…やっぱりなし!今のなし!!えーっと…嘘!虚偽!!そう!合理的虚偽だから!!!!」

 

 

 顔を両手で覆いながら、「ゴーリテキキョギィィィ!!!」と叫びながら慌てて病室から出て行った。廊下で看護師さんに「お静かにお願いします。それから走らないように」と言われて謝っているのを聞きながら既にオレンジ色に染まっている窓の外を眺める。

 

 

「…………とりあえず今は転入どうするか言っとかないとな」

 

 

 床頭台の引き出しに入れておいた連絡先が書かれた紙とスマホを取り出した。答えはもう決まってる。というか最初に話を聞いた時からほとんど決まっていた。流石に『周りの人にも被害が及ぶかもね』なんて言われたら転入しない選択肢は無いだろう。

 …それに、まだヒーローや警察は俺を疑っててもおかしくは無い。そんな状況で下手に断れば余計に怪しまれかねない。

 

 数コールの後に電話口から声が聞こえてきた。

 

 

『はい、雄英高校ヒーロー科です。薙切千里くんよね?』

 

 

 雄英のヒーローで女性の声だから……ミッドナイトか。あまりヒーローに詳しくない俺でも知ってるような色々な意味で有名な人である。

 

 

「そうですけど…なんで俺の名前」

『あー…雄英って色々あったでしょ?今色んなところから電話かかりまくってて普通に連絡しようと思ったらほぼ確実に繋がらないのよ。それで校長先生が『薙切君からの連絡も繋がらなかったら元も子もないから』って言って君にだけ別の連絡先を教えたのよ』

「なるほど。それで俺がかけてきたって分かったんですね」

『ええ、そういう………ごめんなさい、担当者が『合理的じゃない』みたいな目でこっちを見てるから代わるわね。ちょっと待っててね』

 

 

 電話口から流れてくるクラシック音楽を聞きながら待つことほんの十数秒。

 

 

『お電話変わりました一年A組担任のイレイザーヘッドです』

「薙切千里です。校長先生に転入するかどうかの答えが決まったら連絡をするよう言われてまして」

『そうですか。なら早速ですがどうするか聞かせてもらって良いでしょうか』

「はい。色々と考えましたが雄英高校に転入させてもらうことにします。両親にも話はしてありますので」

『…なら一応外部の人間じゃあ無くなった訳だから普通に話させてもらうぞ』

 

 

 どうやらこれが素の喋り方らしい。

 

 

『本来なら転入試験やらがあるんだがな。今回は特例中の特例ということで免除だ。

 それから前の学校の定期考査の問題と解答は見せてもらった。各教科の担任と話し合った結果、必須科目の学力については十分…むしろクラスの中でも比較的上の方だという結論で一致した』

 

 

 一応俺が通ってた普通科は都内でも上から数えた方が早いくらいには偏差値が高いところだから授業の進みもかなり早い。それが幸いしてか必須科目の方は問題無いらしい。ありがとう、それから予習復習の度に『先生がどう思おうが、先生がハゲているかどうかは俺が決めることにするよ』とかバカにしてごめんなさい。特に数学の田中先生。

 

 

『でだ、問題は普通科では取らないヒーロー基礎学だが、これは夏休みの残りを使えば一学期の進度には充分追い付けるから気にするな。…まあ、地獄のようなスケジュールになるのは間違いないが我慢しろ』

「頭には少しだけ自信あるんで大丈夫です」

『それじゃあ全寮制に移行する話は聞いてるか?』

「はい、詳しいことは聞いてませんが全寮制になるということ自体は聞いてます」

『そうか。明日から他のクラスメイトも含めて家庭訪問に行く。その時に詳しいことの説明をさせてもらうついでに提出が必要な書類についても渡しておく。以上、何か不明な点は?』

「いえ、なにも」

 

 

 そこから更に少し話をして会話は終わった。とにかく仕事が早すぎる。さすが天下の雄英高校。

 

 

▲▼

 

 

 

─────千里が退院してから相澤とオールマイトと根津校長による家庭訪問があり、更にそこからはや数日。ハイツアライアンスの入寮日当日。

 

 ここは、まだ夏休み真っ只中の雄英高校ヒーロー科一年A組の教室。そんな場所に計七人の男女がいた。

 

 

「轟、切島、緑谷、八百万、飯田、爆豪、お前らには少し話があるから他の奴らよりも先に来てこの教室に集まってもらった」

「それって神野の…」

「それについては全員揃ってから話す。今からの話は別件だ。入ってこい」

 

 

 相澤がそう言うと、先日の神野の一件に深く関わっている六人と担任の相澤がいるA組の教室に一人の男子が入ってきた。

 

 

「轟くんと八百万さんは初めましてだけど緑谷くんたちは…ご無沙汰してます?でいいのかな」

「「「な!?」」」

「お前ら六人を呼んだのは他でもない、こいつについてだ。自己紹介しろ、とりあえず名前と個性だけでいい」

薙切(なきり)千里(ちさと)です。個性は『千里眼』、二学期からお世話になります」

 

 

 敵連合に拉致された挙句、個性を与えられた薙切千里その本人である。

 そして、千里は緑谷たちに向かって頭を下げる。相澤以外の全員が驚いて口を開けているが、それに一番早く反応したのは緑谷だった。

 

 

「『千里眼』?でもあの時はもっと別系統の…」

「俺がお前らを呼んだのはそこだ。脳無とその特性は覚えてるだろ?」

「そりゃ、まあ…」

 

 

 この場にいる全員にとって脳無は忘れ難い存在である。飯田、轟にとっては保須市で緑谷を連れ去ろうとしたり、八百万にとってはつい先日の林間合宿で殺されかけたり。そして、AFOと何十年にも渡って熾烈な争いを繰り広げてきたOFAの継承者である緑谷にとってはバックにAFOが付いていたという点からも特に忘れ難い存在だった。

 

 

「こいつは脳無が作られる時と似たようなことをされたらしい」

「それってつまり…!」

「ああ、複数の個性を持ったって事だ。薙切、改めて聞くが本来の個性は?」

「さっきも言った通り『千里眼』です」

「それじゃあ新しく持つことになった個性は?」

「『加速』です。自分で調べた感じでは数年前まで活動してた『超速ヒーロー オクロック』の個性にかなり似てるな、と」

「こんな感じで受け答えはしっかりしてて意識の混濁は見られない上に記憶の欠落もなしと来た。かといって一度、敵連合に攫われている以上、元いた普通科しかない高校に置いておくには危なすぎるから経過観察も兼ねて雄英の一年A組に転入することになった」

 

 

 そこで八百万が集められた意図を読み取って口に出した。

 

 

「なるほど、それで薙切さんの個性を隠す時の口裏を合わせる為に呼ばれたという訳ですね」

「本当にご迷惑おかけします…。それとひとつ聞きたいんですけど」

「うん、僕らで答えられる範囲ならなんでも」

「…自己紹介のコツってありますか?」

 

 

 

▲▼

 

 

 千里と一部の生徒との口裏合わせの少し後、ハイツアライアンスの玄関前に一年A組の全員が揃っていた。

 

 

「さっ、中に入るぞ。元気に行こう」

(((いや、待って…元気に行けないです……)))

「……おい、何してる。中に転入生が待ってるんだから早くしろ」

「えっ!?聞いてませんよ!?」

「言ってないからな。じゃあ、お前らに聞くが転入生のことを聞かされた後に今の話をされるか、今の話をしてから転入生のことを聞くのとどっちがいいと思う?」

「後者です」

 

 

 歩いていく相澤の後ろにA組の生徒はくっついていき、玄関を開けてリビングに入ると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カボチャのマスクをつけた人間がテレビを見てくつろいでいた。

 

 

「やっぱり平日のこの時間はあんまり面白いのやってな………あ」

 

 

 A組生徒が入ってきたことに気付いたカボチャを被った人物は、少し慌てた様子でテレビを消して、リモコンを元あった場所に戻して小走りでA組一同の前まで来て

 

 

「雄英高校一年A組各位に申し上げる。私は、マフティー・エリンだ」

 

 

 

 

 

▲▼

 

 

 

 

 他の人たちが来るのが想定したいたよりも早く、だらけきっていた所を見られてしまった。

 今の俺は、何故か家からの荷物に紛れていたハロウィン用のカボチャのマスクに緑のジャケット、そして黒いスキニーパンツを履いている。切島くんも『自己紹介する時は掴みはド派手に!』と言っていたのであの挨拶で大丈夫なはず。ちなみに個性を発動しているのでパーティ用のマスク特有の視界の悪さも問題は無い。

 

 

「雄英高校一年A組各位に申し上げる。私は、マフティー・エリンだ。しかし、今回の作戦は…」

「…薙切、お前家庭訪問の時も電話の時もそんなテンションじゃなかっただろ」

「知り合いに自己紹介のコツ聞いたら『掴みはド派手に、第一印象でインパクトを残せ』って言われたので」

 

 

 そこで最後尾にいた緑谷くんと轟くんが、肩を落としながら「違ぇ…そうじゃねえんだ…」と呟く切島くんの両肩を叩いていた。

 

 

「ちょっと待って!千里だよね!?なんでここにいるの!?」

「……透、その説明をする前に今の銀河の状況を理解する必要がある。少し長くな「薙切、後の予定がつかえてるからさっさとしろ」

「はい」

(((先生の言うことは普通に聞くんだ)))

 

 

 カボチャのマスクを取って、腕に抱えて改めて自己紹介をする。

 

 

「マフティー・エリン改め薙切千里です。個性は『千里眼』、ついでにそこにいる葉隠透の幼馴染です。これからよろしくお願いします」

「ちょっと!私聞いてないんだけど!?なんで言ってくれなかったの!!」

「俺が言う前にお前が病室から出てったからだろ。それに次の日に退院したらすぐに外出禁止になったし」

「確かにそうだけど!連絡とかは!?」

「なんかここまで来たら『当日のお楽しみです!』みたいな感じで言わなくていいかなって」

「良くないって!」

 

 

 そんなやり取りをしていると、相澤先生…の後ろで、こちらを血涙でも流し始めそうな形相で見ている小さな男子生徒がいた。

 

 

「後がつかえてるって言っただろ。合理的じゃないから同じことを二度言わせるな。分かったな、葉隠、薙切」

「「でも…」」

「『でも』じゃない。そういう訳で今日からA組に一人加わることになった。(ここ)は仲を深めるにはうってつけだろうし二学期が始まるまでにある程度交流しとけ」

 

 

▲▼

 

 

 その日の夜、部屋王決定戦なるものが開かれ、シフォンケーキを作ったことによる女子票で俺の隣の部屋の砂藤くんが『ケーキが美味しいから』という理由で優勝した。

 

 俺?俺の部屋は同じ階の人と順番に並べてみれば分かるが印象が弱すぎてダメだった。

 そんな俺の部屋のベッドに寝転がってスマホを構っている人間が一人。

 

 

「なんで入寮初日から俺の部屋に入り浸ってんだよ。俺、明日から補習受けなきゃいけないから早く寝たいんだけど」

 

 

 備え付けの勉強机で、とりあえず明日の補習分の内容に目を通し終えた所で透に声をかける。いくら幼馴染とはいえ異性のベッドで横になるのはどうなのか。

 

 

「まだ10時半なんだし寝ないでしょ?それに同じベッドで寝た仲じゃん」

「小学生の頃の話だろ。あと他の人…特に峰田くんが聞いたら絶対勘違いするから他の人がいる所では絶対言うなよ」

「ちぇー、もうちょっと照れればいいのに」

 

 

 峰田くんはやばい。どのくらいやばいかと言うと初対面の俺ですら数回話したら性欲の権化のような人間だと気付くくらいにはやばい。

 

 

「それに中学生の頃もよくお互いの部屋で遊んだじゃん」

 

 

 教科書をしまって本棚からマンガを取り出そうとしたところで、甘い匂いと背中に柔らかいものが当たる感触、それから重さを感じた。

 ……明らかにおかしい。確かに幼稚園や小学校低学年の頃はハグの一回や二回はしたし、恥ずかしげもなく『大人になったら千里と結婚する〜』なんてことも言ってきた。しかし、少なくとも中学校に入学してからはこんなことしてこなかったし、俺の部屋に遊びに来てもベッドでゴロゴロなんかしてなかった。こう…なんていうか無防備すぎる。

 

 

「のしかかるな、暑苦しい。あと重い」

 

 

 重いのは嘘だが暑いのは本当だ。まだ八月なのでエアコンをつけてても人がくっつけば暑い。

 

 

「重くないし」

「重いって」

「重くないって!!!」

「重いって!!!!」

 

 

 しまった。『実は色々当たってて恥ずかしいから離れて欲しくて重いって嘘吐きました』とか言うのは余計に恥ずかしいのでつい言い返してしまった。しかも離れない。どうしたものか。

 

 

「重くありません〜」

「そういう問題じゃないからな」

「じゃあどういう問題なのさ」

「そりゃあ……付き合ってもない男相手にこういうことするのはどうなんだって話だよ」

「こういうことって?もっと具体的に言ってくれないと分からないな」

 

 

 更に体重をかけてきた。…こいつ絶対分かっててやってるな。

 

 

「だから、色々当たってるし。それに、そもそもこういうのって好きな相手に「じゃあ問題ないね」

「…………………は?」

「だって好きなら問題ないんでしょ?」

 

 

 落ち着け。

 あいつ今なんて言った?勘違いじゃなければ…

 

 

「…」

「…」

 

 

 なんだこの妙な間は。めちゃくちゃ気まずい。しかもいつの間にか個性発動して透の腕とか見えてるし。

 

 

「えっと、その…いつから?」

「気付いたのは最近だけど、多分ずっと前から。『拉致された』って聞いてもう会えなくなるんじゃないかって思ったら…」

 

 

 透が背中から離れたので振り向くと、真剣な表情でこちらを見ていた。

 

 

「千里は私のことどう思ってるの?」

「俺も…俺もお前のことが好きだ。だからっ…!」

「『だから』?」

 

 

 正直に言うと怖かった。『もしも透はそんなこと思ってなくて今の関係が無くなったら』、そんなふうに思って蓋をしていた本心を吐き出す。

 

 

「俺と付き合ってください」

「はい、喜んで…!」

 

 

 泣き笑いをうかべたその顔は、今まで見てきたどんな表情よりも綺麗で……気付いたら見惚れていた。

 

 

▲▼

 

 

 

 あの後は特に何もすることがなく、時間だけがすぎて、自然とお開きの流れになった。

 

 

「それじゃあまた明日!おやすみ!」

「おやすみ」

「あっ、忘れてた!ちょっと待って!」

 

 

 そう言ってこちらに駆け寄ってきたかと思ったら、右の頬に少し湿った柔らかいものが触れた。突然のことに呆然としていると、透が耳元に口を近づけてきた。

 

 

「ありがとう、嬉しかったよ。それと……大好きだよ」

 

 

 そう囁いてから、小走りで部屋の入り口まで戻って再びこちらに振り向いてきた。

 

 

「……今度こそ本当におやすみ!」

 

 

 そう言った透の顔は、少し赤くなっていながら微笑んでいた。

 

 

「それはズルいだろ…」

 

 

 まだ感触が残っている右の頬に触れながらそんなことを呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 うん。なんというか()()だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっぱり幼馴染が一番可愛い。 




薙切千里→敵連合のアジトから五体満足で帰って来れたのとアドバイスを曲解した結果、第一印象で斜め上の印象を残した男。
 病院でのことは黒歴史。心を読めたことには気付いてない。感情の起伏で個性のコントロールがガバる男。
 全面戦争編で、死柄木弔の覚醒による街の崩壊とギガントマキアの縦断を予知して、急いで通信を使ってヒーローたちに避難を促す。原作に比べれば人的被害は明らかに減ったが、それでも地獄絵図なことには変わりないので折れかける。
 その後も雄英高校が避難場所になるけどどっかから個性複数所持だってことが漏れて避難してきた人達に『脳無は出てけ』とか色々言われて折れる。
 他の人の連絡先を消して、スマホとカセットコンロと調味料だけで旅を始める。暇だったのでYou〇ubeに、『【音を置き去りにするまで】一日一万回、感謝の正拳突き』といったネタに振り切った動画を上げ始める。なんやかんやあってA組に見つけられて雄英に戻って総力戦にも参加する。居場所がバレた理由が、クラス一のオールマイトオタクが、正拳突きの動画を撮っていた滝が、かつてオールマイトが密着番組で溺れた観光客を助けていた滝だったことに気付いたからだということは知らない。
 AFOに個性を植え付けられた時点でろくな未来がなくなった男。


葉隠透→ほんの少しだけガスを吸ったため、万が一のために入院。相澤先生が『多分無いとは思うが錯乱でもされたら困るから葉隠に幼馴染拉致られたこと言うなよ』とA組の他の面々に口止めしたため、同室の耳郎と共に帰りの新幹線に乗るまで幼馴染が拉致られたことは知らされなかった。
スマホ『お前の幼馴染拉致られてまっせ』
葉隠「何これ?は?チョットマッテチョットマッテ……(←キレてる)」
 多分露出癖がある。


切島鋭児郎→ド派手にってそういう事じゃねぇんだよ…


根津校長と塚内→状況や爆豪の証言から千里のことはほとんど白だと思ってる。雄英に誘った時に言ったことは本音。ただ、万が一、AFOの手下だった時に迅速に拘束及び尋問するためでもあることは言ってない。


数学の田中先生→千里が前まで通ってた高校の数学の教科担任。ハゲて来てることを気にしてる。



くぅ疲w
何とか最初に考えてたところまでは書き終えました。あとは気が向いたら番外編として続き書いたりいちゃつかせます。
3/4 



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