やっぱりいました!仲間たち。

前回の「私のファーストペンギン日記」で、エスカレーターの2列乗りを試した日々を報告し、みなさまの体験も募集したところ、たくさんのメッセージをいただきました。

日本各地にファーストペンギンがいただけでなく、好みの「生息地」やさまざまな「生態」があり、多彩な「種」がいるようでした。一方で「ペンギン迷惑!」というお叱りの声もありました。ここでみなさんと共有したいと思います。

(取材:藤目琴実記者 イラスト:ヨシダリュウタ)

(1)買い物ペンギン

まずは、こちら。急ぐ人がいないデパートやショッピングセンターのエスカレーターに出没する買い物ペンギンです。全国各地に生息しているようです。

20~30男性
私もエスカレーターの2列乗りは大賛成です。とくにデパートやショッピングモール。買い物客しかいない空間で、片側空ける必要ありますか?私はひとりで2列で乗る運動をしています。もし可能なら、土日だけでも構いません。館内放送や係の人が呼びかけてくれたら、安心して2列に並んで乗ることができます(20代)

さらに、特定の時間を好むペンギンもいるようです。

私も筆者さんと同じようなファーストペンギンをしています。周囲やタイミングを見て飛び込んでいく楽しさがありますよね。私たちの地元は田舎で、エスカレーターがあるのはショッピングモール程度。平日の10時~16時など、明らかにラッシュから外れている時間帯を「2列乗りの時間」として習慣化し、次第に時間を広げていくのはどうだろうと思いました。(20代)
20~30女性

(2)出張ペンギン

エスカレーターの乗り方の習慣は、東京と大阪など地域によって違いますよね。出張した時に「アウェイなら」とちゃっかり現れるペンギンもいました。

40~60女性
私は月に1度東京に出張に行きます。関西人ということもあるので、わざと右側に乗ります。羽田空港からモノレールも、そして浜松町。私はまだ嫌みを言われたりしていません。何か言われたら言い返してやって~ 関西弁で応援に行きますよ。(40代)

(3)ファミリーペンギン

現在、エスカレーターに現れるペンギンの中で最も多く生息していると思われる種です。小さいお子さんと手をつないで乗ると、どうしても2列乗りになりますよね。

20~30女性
3人目が誕生して、だっこひも卒業して、やっとファーストペンギンやりました!子連れエスカレーターで1列は本当つらい。それも隣を歩く人がいると思うと、なおさら手をつながなければいけない。ちょっとの衝撃でふらつく幼児。
ファーストペンギン、子どもが遊び疲れた帰りの夕方、東京駅でやりました。一番下の子は夫に任せ、上2人を両手でつなぎました。運悪く、降りたあとに後ろにいた若い男性ににらまれました。まぁどなられなかっただけマシかなと自分を励ますことに。一歩でも歩いたらダメって強制するものではなく、誰もいなければ歩いちゃうこともあるけど、基本は歩かず乗ろうね、ぐらいのマナーが浸透することを願っています。(30代)

比較的安心と思われるファミリーペンギン。でも、こんなケースもあったそうです。

平日の10時すぎ、混雑も少し落ち着いた京葉線のホームに降りるエスカレーター。あと5分ほど電車が来ないこともあり、2歳の子どもと手をつないで乗っていました。すると、子どものさらに右側を通ろうという人がいて「危ないのでごめんなさい。あと少しだけなので」と声をかけると、舌打ちと「急いでるんだよ」と怒り声。実際、降りるまで1分もかからず、その方も3分ほど待って同じ電車に乗りました。後ろの方が「子どもの横をすり抜けてまで歩いて降りるかね?」と言って下さったのが救いです。子ども連れで暴力などに出られると対応も難しいので、泣き寝入りすることが多いので、この問題続けてほしいです。(30代)
20~30女性

(4)行列嫌いペンギン

自然界に暮らすペンギンはいつも列になって歩くイメージですが、都市のペンギンの中には行列が嫌いな種がいるようです。特にエスカレーターを歩く人のスペースを空けるために、片側だけに出来るあの行列です。

20~30男性
私も1列でずら~っと行列作っているエスカレーターが嫌いです。初めから2列で乗っていればこんな行列作らなくて済むんだから、急いで駆け上ったり降りたりする人も減るんじゃない?(20代)

(5)市松ペンギン

その行列嫌いペンギンの中に、ユニークなアイデアを提案するペンギンもいました。

エスカレーター下の、長い行列とぽっかり空いた右側。行列を横目に右側に乗ってしまいます。歩いてくる人がいたら、左側に避けて先に通しています。歩きたい人に不快感を表明されたことはありませんが、左側に乗っている人がギョッとしている時はあります。なので段違いになるよう、一段下に止まるようにしています。(30代)
20~30男性

これ、「市松ペンギン」と名付けさせていただきました。2列乗りをするとき、真横に並ぶのではなく、市松模様のように互い違いに乗ればいいんですね。思い返してみたら、前回、男性に怒られた時は、私も真横に立ってしまっていました。だから余計に不快にさせてしまったのかもしれません。おじさん、今さらだけどごめんなさい。

ファーストペンギンに反対!

続いては「ファーストペンギンには反対だ」という声を紹介します。

2列乗りキャンペーン、正直やめてほしいです。今まで普通に生活してきたつもりが突然「あなたは社会に悪影響を及ぼしています」と一方的に通告され、社会から攻撃される口実をつくらされていると感じます。「階段を使えばいいじゃない」だったら、全てのエスカレーターの横に階段を作って下さい。キャンペーンを実践できる環境も整わないうちに、悪者扱いしないで下さい。(20代)
現状のルールを守り、注意をしてくれたおじさんと言い争いになっている。無駄な波風を立ててまで自説を押し通そうとする姿勢に違和感を覚える。おじさんも嫌な思いしたと思うよ。(30代)
正直なところ「ヒーロー気取りですか?」と思ってしまいました。どんなに2列乗りの方が効率的とか安全だとか言っても、それが暗黙のルールになっていたら「郷に入っては郷に従え」。そう生きた方が世の中スムーズに流れますよ。(20代)

反対やお叱りの声もひとつひとつ読ませていただきました。いずれも丁寧に理由を書いてくださっていて、ずっしりと受け止めるとともに、少し落ち込みました。

前回の日記でも告白しましたが、ファーストペンギンになってみたのは、いろんな意見にどう折り合いをつけられるのかを探るためです。飛び込んだのは「対話の海」のつもりです。誰かを悪者にしたり、むやみに対立を引き起こしたりしようと思っている訳では決してありません。

日本では、エスカレーターは大正時代に百貨店で娯楽的な施設として導入されたのが始まりとされ、当時は誰もが止まって乗っていたそうです。ところが、昭和の高度経済成長期に、急ぐ人を優先する習慣が始まりました。

そして現代。超高齢化が進む中、障害者だけでなくお年寄りや子ども連れなど、安全にエスカレーターを利用したい人が増えた上に、施設を管理する企業や専門家が「効率性や安全性を保てるのが2列乗り」と考える中で、時代に合った新たなマナーを作り出せないのだろうか、と思うのです。

お互いに快適な環境をどうしたら作っていけるのか。皆さんのご意見を頂きながら、今少しファーストペンギンの模索を続けていきたいと思います。

あなたの「ファーストペンギン日記」やご意見、引き続きお待ちしています。

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