歩道を歩いているとき自転車にヒヤッとしたことはありませんか?  歩行者のすぐ横を通り抜けていったり、バランスを崩して、ぶつかりそうになったりする自転車を見かけたこともあるのではないでしょうか?

歩行者の安全が守られているはずの歩道。 実は、自転車と歩行者による事故の4割以上が歩道で起きているんです。

車道の左側通行が原則

自転車のルール、原則は「車道の左側通行」です。 自転車の歩道通行は

▽標識などで示されているとき
▽児童・幼児など車道通行が危険なとき
▽車道の状況に照らして安全のためやむをえないとき

など限られた場合のみです。 その際も、徐行などが求められています。

自転車の怖さを思い知った…

横浜市の事件現場

2020年10月、下校途中の小学生が歩道で自転車にひき逃げされる事件が起きました。

小学生が歩道橋を降りた直後に自転車にはねられ、転倒し、右腕の骨を折る大けがを負ったのです。

自転車にひき逃げされ大けがを負った小学生

母親は、歩道を走る自転車の怖さを感じたといいます。

小学生の母親

母親
「本当に車と同じで自転車も人の命を奪うかもしれない。とても危険だなあと思いました。今回の事故で特に危険性が身にしみました。」

今、コロナ禍で、通勤や通学などで自転車の利用を始める人も増えています。 自転車による事故をなくすには、どうすればいいのでしょうか?

自転車は“押し歩き”

全校生徒の約6割にあたる800人が自転車で通学する香川県高松市の英明高校では、生徒たちの取り組みが始まっています。

通学する生徒たち

生徒たちは学校の前の歩道を通勤する人たちの流れと逆方向に登校していました。 そこで学校の交通安全教室で学んだことを参考に4年前、生徒たちが「押し歩き」という独自のルールを決めました。

通学の時間帯に学校前の歩道を「押し歩きゾーン」に指定して、自転車を降りて歩くことにしました。

今では、すっかり定着していて、さらに登校の時以外でも歩行者を気遣うよう、意識が変わったといいます。

自転車通学の女子生徒
「最初は先輩を見てやらなければいといけないという気持ちでした。今は自然と押し歩きをすることで歩行者に気を遣うようになりました。」

自転車通学の男子生徒
安全を守るためには、すごく大事なことだと気づきました。これからもどんどん、こういうマナーは守ろうと思います

「ありがとう」を添えて

「自転車マナーの悪い商店街」

そんなイメージがあって、自転車の危険な通行に悩んでいた兵庫県尼崎市の三和本通商店街。

尼崎市の三和本通商店街

汚名を返上し、安心して買い物ができる商店街を目指して、自転車を利用する人への呼びかけを続けています。

活動を始めた商店街の女性たち

商店街の女性たちが始めたこの活動、「自転車降りてください」と声をかけていたところ、怒られたり、どなられたり、最初はうまくいかなかったそうです。

三和本通商店街 鶴留朋代さん
「『降りて降りて』っていう感じで声をかけていたんですが、上から目線に聞こえたのかもしれません。逆に『なんでやねん!!』とどなられることも多かったです。」

そこで、呼びかけ方を変えました。 キーワードは「ありがとう」 「自転車押してくださいね。ありがとうございます」 お願いするだけでなく、感謝の気持ちを添えて声をかけるように心がけました。

さらに商店街の看板も「自転車 押してくれて ありがとう!」に変更。

商店街で流れるアナウンスも同じように感謝の気持ちを伝えることにしました。 僅かな違いですが、この取り組みを始めたことで、多くの人が自転車を降りて歩いてくれるようになったそうです。

鶴留朋代さん
「活動を始める前は私も『まあいいか』と商店街の中を自転車に乗ったりしていました。自転車に乗っている人は、商店街からすれば『お客さん』でなかなか言いづらいことでもあります。でも、まず自分が変わらないといけないし、商店街の人たちも変わらないといけない。そういう点で、『ありがとう』という言葉は効果があるのではと思っています」

相手の立場に経った気遣いと思いやりを持った自転車の利用、それが歩道の安全と安心につながっていきます。

地方テレビ局記者を経て2009年入局。鳥取、広島、高松局、ネットワーク報道部、災害気象センターを経験した後、今は宮崎局で勤務しています。
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