安全なはずの「通学路」での痛ましい事故があとを絶ちません。
登下校中に亡くなったり重傷のけがをした児童はこの5年間で900人を超えています。
通学路の事故をなくすために、私たちができることはないのでしょうか?
(千葉局 渡辺佑捺 徳島局 大橋夏菜子 ネットワーク報道部 松本裕樹)
去年6月、千葉県八街市で下校途中の小学生の列にトラックが突っ込み、子どもたち5人が死傷しました。
現場は国道の抜け道で、ガードレールはありませんでした。
この事故を受けて、国が全国の小学校の通学路を点検したところ…
ガードレールや歩道の整備が必要な危険な箇所は、7万2000にものぼりました。
また、警察庁によりますと、おととしまでまでの5年間で登下校中に亡くなったり、重傷を負ったりした小学生は908人にのぼっています。
通学路に潜む危険。どうすればなくせるのでしょうか?
住民の声を安全対策に
千葉県船橋市習志野台8丁目の町内会で事務局長を務める栗山正隆さんです。
近くに大型のショッピングセンターができることになり、交通量が増えることに危機感を持ちました。
習志野台8丁目町会 栗山正隆事務局長
「何とか安全な方策がないかという声も出始めて、じゃあみんなで一緒に考えようと」
日頃から 危険を感じている場所はないか。
およそ1700世帯すべてにアンケートを実施しました。
寄せられたアンケート
すると、「道幅が狭い」「横断歩道を設置してほしい」といった声が次々と寄せられました。
日本大学 小早川教授の調査(2016年)
さらに交通問題に詳しい大学教授を探し出し、交通量を調べてもらいました。
拡張した歩道
こうした情報を市役所に伝えたところ、歩道の拡張などおよそ20か所に対策がとられました。
住民自らが進めた取り組みを専門家も評価しています。
通学路の安全対策に詳しい 埼玉大学大学院 久保田尚教授
「住んでいなければわからない問題点とか、毎日歩いているからこそ気付く問題点は必ずありますので、それを一致した住民の意思として行政に届ければ、間違いなく次の対策に向かって進むことが期待できますね」
道路を一部盛り上げて速度を抑える「ハンプ」
また、久保田教授は通学路の安全対策を向上させるためにはこうした住民の取り組みに加えて、行政側も道路を一部盛り上げて速度を抑える「ハンプ」のような、スピードを出させない対策をとることが必要だと指摘しています。
子どもたちが危険箇所探す取り組みも
通学路を使う子どもたちに危険な場所を探してもらう取り組みもあります。 去年、徳島市の小学校で、夏休みの宿題のひとつとして実施されました。
子どもたちが集まって道路を見ていくと、歩道の白線が消えていました。
ここは、大きなバスやトラックも通る道。
危険な場所をしっかり意識して通学してもらうのが、目的のひとつです。
大人では危険に気付きにくい場所も見つかりました。
こどもの目線だと塀にさえぎられ、車が突然出てくるように見えるのです。
今ここや…危ない
夏休み明け。
警察や地域の人も参加して危険な場所を大きな地図にまとめました。
道幅が狭くカーブして見通しが悪い
こことここ!
ここに街灯の設置
だってめっちゃさ、街灯少ない!
子どもたちから気づいた危険箇所が次々と地図に落とし込まれていきました。
こうした子どもたちの声を受けて、警察は断歩道の白線を引き直すなど対策にのり出しています。
徳島県警 國見重人さん
毎日通っているだけあっていろいろな意見あるなというのが正直な感想で、おそらく我々が通っても気づかないことがようけあると思います。
子どもたちが、毎日通う「通学路」、ひとりひとりの声をいかして安全に。