以前、こんなツイートが話題になりました。
外見ではわかりにくい病気や障害がある人たちにとって、外出する際の「お守り」にもなっているヘルプマーク。だからこそ、もっと多くの人に理解を深めてほしいのです。
ヘルプマークを“お守り”に外出
ツイートをした本人に話を伺いました。四国地方に住む50代の女性で、うつやパニック障害の症状があります。
パニック障害とは、電車に乗っているときや人混みの中を歩いているときなどに、突然強い不安に襲われ、動悸がしたり息苦しくなったりするもので、お話を聞いた女性も突然めまいに襲われ、座り込んでしまうことがあるといいます。
写真はイメージです
女性が住む地域でも、ことし7月からヘルプマークの配布が始まり、さっそく福祉事務所で受け取りました。
ふだんは買い物などの外出は夫が休みのときに付き添ってもらっていたという女性は、ヘルプマークを「お守り」代わりに、1人で買い物に出かけたのです。
「近寄っちゃだめよ」
その一言を聞いたのは、スーパーの駐車場を歩いている時でした。
向こうからやってきた幼い子どもを連れた若い母親が、すれ違いざまに言ったのです。
この言葉に、女性は頭の中が混乱し、声が出なくなってしまいました。
買い物に出かけたのにそのまま帰り、やっとの思いで家に着いたら、涙があふれてきました。
家族には「何で1人で出かけたんだ」と心配されてしまうので、そんな出来事があったことを誰にも言えませんでした。
自分の中で気持ちの整理がなかなかつかなくて、翌日あのツイートをしました。
“悲しまないで” “同情されたいの”
ツイートには多くの声が寄せられました。
なぐさめ、はげます声。
同じような体験や課題を指摘する声も相次ぎました。
障害者も「知らない」が53%
ヘルプマークは、2012年に東京都が作りました。外見では分かりにくい病気や障害がある人たちが、周りの人から理解や援助を求めやすくするためです。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて全国に広めようと、去年7月にはJIS=日本工業規格の「案内用図記号」として登録されました。
都によりますと、ことし9月末現在で32の都道府県に広がり、希望者には無料で配布されているほか、ポスターやパンフレットによるPR活動が行われています。
一方で気になる調査結果もあります。
去年7月、障害者の就労支援などを行っている民間企業が全国の障害がある人379人を対象にアンケート調査を行ったところ、「ヘルプマークを知っている」と答えた人が47%だったのに対して、「知らない」は53%に上りました。
地域別に見ると…
首都圏では「知っている」が55%と半数を超えましたが、その他の地域で「知っている」は38%にとどまっています。
さらに、ヘルプマークを知っている人の中でも実際に利用したことがあるという人は22%、首都圏以外の地域ではわずか11%にとどまっています。
つけるのをためらう人も
利用したくない理由も聞いています。
最も多いのは「利用時の周囲の反応が気になるから」で35%、次いで「認知不足により役に立たないと思うから」が33%でした。
ヘルプマークは広まりつつあるとはいえ知名度はまだまだで、必要な人が気兼ねなく利用できるよう、社会全体が理解を深める必要があるのです。
泣いたのは自分が歯がゆかったから
ヘルプマークを付けて外出して心ない言葉を投げかけられた女性は、嫌な思いをしたあともマークを外すことなく、1人での外出を続けています。
写真はイメージです
女性
「ツイートしたときは、まだ気持ちの整理ができていませんでした。でも、その時の事をよくよく振り返ってみたら、悲しさよりも、ヘルプマークについて説明できなかった自分への歯がゆさ、悔しさのほうが大きくて、涙が出たことに気づきました」
「ヘルプマークを1人でも多くの人に知ってほしいから、今度は説明できるようにしたいと思って、どう説明しようかなと頭の中で組み立ててみたりしています」
「ヘルプマークをつけているからといって、いつも配慮するよう周囲のみなさんに求めているのではないのです。逆に何でもないときに配慮していただいたら、申し訳ない気持ちになってしまいます。ふだんは何事もなくすれ違ってもらえればいいんです。
でも、もし困っているようだったら、一声かけてくれるとありがたい。マークがそういう気負いのないものになってほしいと思っています」
女性はさらに、最近うれしかったことを教えてくれました。
「あの出来事で落ち込んだあとに地元の動物園に行ったのですが、そのときヘルプマークをつけていたら『それは何ですか?』と何人かの方に声をかけられ、説明したら『今後は見かけたら気にかけるようにしますね』と言ってもらえたんです」
ヘルプマークをつけて外に出よう
女性は、冒頭のツイートに寄せられたさまざまな励ましや悩みに、返事を書いています。
その1つを紹介します。
「所持してください。傷つく言葉を言われるかも知れません。けど世の中の人に知ってもらうには、自分が立ち向かうしかないんだと思いました。一緒に負けずに立ち上がりませんか?」
もちろん、ヘルプマークの知名度向上は、社会全体が取り組む課題です。ヘルプマークをより多くの人に知ってほしい、そしてヘルプマークと一緒に外出できる自由を、多くの人たちが手に入れてほしいと願い、この記事を書きました。
みなさんの考えも、聞かせてください。
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