AERA 2025年9月29日号より
AERA 2025年9月29日号より

──自分の若い頃をふり返ってみて、SNS時代を生きる現代の若者に思うことがあるという。

 みんな寂しいし、かまってほしいし、「Look at me!」ばっかりなんじゃないの? 人のことが気になって仕方ないんじゃないか。可哀想だな、と思う。夢中で突進するものがあれば、そんな暇なんてない。

 先日、イチローさんと20年ぶりに会ったんですが、同じことを言ってましたよ。小学生の時からプロ野球選手になるという夢にまっしぐらに頑張ってたって。傍から見たら大変に見えたかもしれないけど、「楽しかった」。

ビートルズ聴いて雷

 僕も、中3のころ、ある日、ビートルズの「プリーズ・ミスター・ポストマン」をラジオで聴いて、雷が落ちたような気持ちになりました。「この音楽はなんじゃ?」って。それまでは板金工になって、一国一城の主になるという目標が僕なりにあったんですけどね、「これだ、ロックミュージシャンになろう」と思った。そこからはもう一直線にその夢に向かっていきました。いま振り返れば、中学生で夢に出会えた俺はラッキーでした。

 SNSで人のことをああだこうだ言う人は、つらいんだろうな。何かその人なりにスコーンとハマるものに会えたらいいよね、と思いますね。

 俺は若い頃はいい車に乗りたいし、いい家に住みたい。お金持ちになりたいし、モテたいから、テッペンまで行くぞと思っていました。公の場でいつも「俺、一番になるし、テッペンに行くからよろしく!」と言ってきた。矢沢の若いときって、鼻持ちならない男だったと思うよ。

 日本人はそんな雰囲気、あんまり好きじゃないじゃない。でも、嫌われても構わないと思った。「俺は有言実行だから見とけ」ってね。自分で言ったらやるしかない。行くか、「吹きまくった結果があれだよ」と言われるか。

 でも、いまの日本はそんなことすら言いたくない、言えない雰囲気なんだよね。大きいことを言うと叩かれるから、注目を浴びるのはヤバいみたいな。若い連中にこそスローガンが必要なんだよ。言い切っちゃえ。上に行ききっちゃえ、と思いますよ。

 俺は奥歯に物の挟まったような物言いが嫌いだから、誤解もたくさんされてきたと思う。でもね、20代30代は失うものなんてないんだ。何を守る必要がある?と思ってるんだ。

(構成/ライター・小松香里)

AERA 2025年9月29日号より抜粋

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