DTP(注1)が発達した現代に生まれ落ちたからには,一度は「この手で立派な印刷物を作りたい!」と思うだろう。幸いにして,インターネット回線に繋がるPCと,WordやPagesなどのワープロソフトさえあれば,工夫次第でほとんどの印刷物は作れてしまうのだが,これは,フリーフォント(ネット上で無料配布されているフォント)の充実によるところが大きい。今回はその活用例として,フリーフォントを利用してお菓子のパッケージを医薬品風にしてみよう。
目標とするのはこんな感じの医療用医薬品の外装を再現することである。まずはよく本物を観察して特徴をつかもう。再現のポイントとなるのは,商品名に使われている,人工的で重厚な感じの書体だ。バーコード,メーカーのマーク,リサイクルマークも入れられればなお良い。
用意したお菓子はポイフルである。薬っぽい名前のお菓子の候補として他にもヨーグレット,チェルシー,シルベーヌなどが考えられたが,箱の大きさと形がちょうどよかったのでポイフルを選んだ。なぜ2つあるかというと1つは作業中につまむ用なのである。
「ポイフル」の文字に使うフリーフォントを物色する。和文フォントでもカタカナのみ・平仮名のみのフォントは文字数が少なく作りやすいため,デザイン学科の学生や物好きな人などがたくさん作っている。しばらく画像検索を繰り返し,こちらの「CitrusFruits」を使わせてもらうことにした。人工的な感じ,懐の広さ(注2)と安定感,直線の太さと曲線の先細りの比率など,薬の商品名に使えそうな特徴をいくつも備えている。
↓「CitrusFruits」
続いて,バーコードフォントとリサイクルマークフォントも見つけた。どちらも個人的に使うぶんには無料でダウンロードして使用できる。ちなみにリサイクルマークのフォントには,ワレモノ注意など別の場面でも役立ちそうなマークも収録されている。あとで使う機会があるかもしれない。
↓各種マークが入ったフリーフォント「CareMark」。
書体が揃ったところでいよいよ箱のデザインに取りかかる。まず箱の寸法を測って,それより一回り大きい箱の展開図を描く。このような展開図では向かい合う面の印刷は上下さかさまにする必要があるが,Wordには文字を180度回転させて逆さまにする機能がない(注3)ので,今回はPagesを使う。
展開図ができたら,手始めに「CitrusFruits」でポイフルと書いてみよう。
すばらしい。すでに薬っぽさがプンプンする。このフォントでいこう。本物の医薬品の箱の写真と見比べながら,必要事項を加えていく。商品名のあとに有効成分の含有量,カギカッコ付きで製造会社名を添え,商品名の左上にどんな薬なのかを簡潔に記載するとそれっぽい。明治のロゴなど,他にもいくつか適当に情報を加える。
うん,かなり薬の箱に見える。有効成分がコラーゲン35mgなのは,もともとのパッケージに「コラーゲン2100mg」と強調してあったからである。60粒で割ったらいい感じの数字になったのでこれを使ったのだが,コラーゲンを経口摂取してどんな効果が期待できるかについては触れないでおこう(注4)。
側面も作ろう。
「CareMark」が役に立つ。英語で書いてある面には何を書けばいいかわからなかったので,QRコード作成サイトで作ったQRコード(明治製菓のポイフルの商品紹介ページに飛ぶ)を貼って空白を埋めた。これで箱のデザインは完成だ。
箱のデザインができたら,PDFにして印刷する。実際に組み立ててポイフルが入る箱にしたいので,ある程度厚みのある紙に印刷したいところ。ここで役に立つのがコンビニのコピー機である。ファミリーマートやローソンに置いてあるシャープ製の複合機は,PDFの印刷をする際,コピー用紙と光沢紙のどちらかを選べるようになっていて,光沢紙を選ぶとやや厚みのあるしっかりした紙に印刷できるのだ(注5)。厚さは写真用紙より少し薄いくらいだろうか。綺麗に折り曲げることができるので,ペーパークラフトなどを印刷するときはこの光沢紙がオススメである。
線にそって切り抜く。
定規2枚で挟むようにして折りすじをつける。
開け口のミシン目を針で地道に作る。
ポイフルを入れて箱を閉じればでき上がりだ。
なんということでしょう。ポイポイたのしい元気のタネが立派に医薬品らしくなったではありませんか。恐るべし,フリーフォントの力!
(注1)Desktop publishing=コンピューターで作成したデータで印刷物を作ること。DTP以前は,印刷物の作成には原稿を元に印刷用の版を作ったり,印刷機を操作したりする技術者が必要で,素人が一人でできるものではなかった。
(注2)懐とは線と線の間の空間のこと。
(注3)ワードアート機能を使うとか,テキストボックスを切り取り,図として貼り付けてから回転させるとか,やってやれなくはないが面倒くさい。
(注4)コラーゲンは美容の観点から注目されているタンパク質だが,タンパク質なので消化管に入れるとアミノ酸に分解されてしまい意味がないとする説と,分解されずに皮膚や関節に届くのが一部あるから効果はあるとする説がある。そこでここでは腹の足しになるという意味での有効成分(?)ということにした。
(注5)写真用紙より少し薄いくらい。セブンイレブンが近くにないので,セブンイレブンのマルチコピー機についてはよく知らない。