「日本酒」とインバウンド①
こんにちは。Takusanです。
今回は「日本酒」を取り上げます。
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まず、どんな内容にしようかと考えました。
日本酒がどのように作られるかを解説する?
それとも、「外国人観光客がよく聞く日本酒の質問5選!ガイドとしてどう答える?」のようなキャッチーなタイトルと内容にする?
いえいえ。2024年に農林水産省が発表した資料「日本酒をめぐる状況」を一緒に読んでみましょう。(資料へのリンクは後で貼り付けます)
さて。難しいですよね。日本酒。
しかし訪日観光客相手のこのお仕事をしていると日本酒について質問されることもありますし、酒蔵を訪れることもあります。
しかし、日本酒の説明が得意なガイドばかりではないのも事実。
私は日本酒は好きですが、当然、苦手なトピックもあります。
建築やアートなど。。。 だれか教えてください🥹
本稿の目的は、資料を読むことで今日のインバウンド観光において日本酒の需要がどれほどあるのかを確認すると同時に、そのデータから通訳案内士としてなにが読み解けるか?という視点で、
① 私自身の考えや
② 個人的に好きなお酒の情報
も交えながらお話しします。
そして「やっぱり知っておかなければダメだよね」という結論に至りたいなと思っています。あまり固く考えず、気軽に読んでくださいね。
1. 「日本酒をめぐる状況」(農林水産省, 2024)の項目と要約
さて、早速ですが資料はこちらです。
「日本酒をめぐる状況」(農林水産省, 2024)
全7項目ですね。
📌 1. 酒類別の国内出荷量の推移
📌 2. 日本酒の国内出荷の状況
📌 3. 日本酒の輸出の状況
📌 4. 日本酒原料米の使用状況
📌 5. 酒造好適米の価格・生産の状況
📌 6. 酒造好適米の産地別・銘柄別生産状況
📌 7. 酒造好適米の需要に応じた生産について
以下が要約です。
📌 1. 酒類別の国内出荷量の推移
-日本酒を含むアルコール飲料全体の国内出荷量は減少傾向。
-日本酒、焼酎、ビールは減少、チューハイなどのリキュール類が増加。
📌 2. 日本酒の国内出荷の状況
-日本酒の国内出荷量は1973年の170万kℓをピークに減少。
-2023年の国内出荷量は約39万kℓ。
-特定名称酒(吟醸酒、純米酒など)も近年減少傾向。
-2024年(1-7月)のデータでは、日本酒全体で前年同期比▲3%の減少。
📌 3. 日本酒の輸出の状況
-日本酒の輸出は近年増加していたが、2023年はアメリカ・中国向けが減少し、数量▲19%、金額▲13%。
-2024年(1-7月)は輸出数量が前年同期比+2%と増加したが、金額は▲1%。
-日本酒の輸出先は75カ国、そのうちアメリカ、中国、韓国、台湾、香港で輸出量の7割以上を占める。
📌 4. 日本酒原料米の使用状況
-日本酒の原料米には主食用品種と酒造好適米がある。
-酒造好適米(山田錦、五百万石など)は主に契約栽培で取引される。
-2018年以降、日本酒の国内出荷量減少に伴い、使用量も18~23万トン程度に減少。
📌 5. 酒造好適米の価格・生産の状況
-酒造好適米は主食用米より栽培が難しく、取引価格も高い。
-2015年産をピークに生産量は減少傾向。
-2022年産は約7.9万トン、2023年産は約9.3万トンと増加。
📌 6. 酒造好適米の産地別・銘柄別生産状況
-2023年産の酒造好適米は約9.3万トン。
-産地別では、兵庫、新潟、岡山、長野、秋田の5県で約6割を占める。
-銘柄別では、「山田錦」「五百万石」が全生産量の5割以上。
📌 7. 酒造好適米の需要に応じた生産について
-需要と生産のバランス調整のため、情報交換会や需要量調査を実施。
-2024年の調査では、需要量は79~81千トン、令和7年は82~84千トンと推計。
-2023年産は生産量が需要量を12~14千トン上回るが、酒造メーカーと結びついており、過剰感は少ない。
2. 国内市場の縮小とインバウンド需要の拡大
農林水産省の資料の前半を踏まえると、日本酒の国内消費は長年にわたり減少傾向にあります。しかし、その一方で海外市場は拡大し、日本酒業界の成長を支える存在になる可能性があることが分かります。
実際に日々訪日外国人を案内していると、日本酒だけでなく、和食全体の認知度が確実に上がっていると感じます。私の場合、通訳案内士になってから10年以上が経っていますが10年前と比べるとゲストの皆さんの箸の使い方が格段に上達しているのです。
これは、日本食文化や、箸を使うアジアの食事が世界的に広まっていることの証拠だと私は考えています。そして、実際に目の前のゲストに尋ねてみると「確実にそうだと思うよ」と回答が返ってきます。
日本酒の認知度向上に伴って日本酒も世界中で注目を集めるようになっています。「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」という世界最大級のワイン品評会をご存知でしょうか。IWCとは、イギリス・ロンドンで毎年開催される国際的なワインコンペティションで、厳格な審査基準を持つことで知られています。
このIWCにおいて、現在では日本酒部門が設けられ、多くの日本酒が高評価を受けています。
「About The SAKE Competition (SAKE部門の審査について)」(IWCウェブサイト, 2025年3月参照)
私が仕事を介して訪れた酒蔵さんの日本酒では、兵庫県の「龍力米のささやきYK-35」(株式会社本田商店, 兵庫県姫路市)や「葵鶴大吟古酒」(稲見酒造, 兵庫県三木市)が受賞歴を持っています。
龍力(株式会社本田商店)は、兵庫県姫路市の酒蔵で、特に「テロワール(Terroir)」という概念を日本酒造りに取り入れています。「テロワール」とは、本来ワインの世界で使われる言葉で、ブドウが育つ土壌や気候などの環境が味わいに影響を与えるという考え方です。龍力では、酒米の王様とも称される 「山田錦」 が育つ土壌に着目し、「兵庫県の山田錦が最高の日本酒を生む」という信念のもと、酒造りを行っています。
龍力が使用する山田錦は、兵庫県の特定の地区(特A地区)で育てられたもので、ミネラルを豊富に含む土壌と適度な水はけの良さが、酒米に理想的な成分バランスをもたらします。このこだわりが生み出す日本酒は、骨格がしっかりとしながらも繊細な味わいを持ち、ワインのように「土地の個性」が感じられる仕上がりとなります。
その結果、龍力の代表作のひとつである 「大吟醸 米のささやき YK-35」 は、IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)においてゴールドメダルを受賞。国際的な専門家からも「日本酒のテロワールを体現する一本」として高く評価されました。龍力の取り組みは、単なる酒造りではなく、「土壌・水・米・気候」という地域の力を最大限に活かすことで、世界に誇れる日本酒を生み出しているのです。
稲見酒造は1876年(明治9年)創業の酒蔵です。昨年、直接稲見代表取締役からお話を伺う機会がありましたが、長期熟成酒への大変な熱意を感じました。IWCにおいては2022年および2023年に「葵鶴 大吟古酒」が2年連続でシルバーメダルを受賞しています。
「葵鶴 純米大吟醸 酒壺」も試飲させてもらいました。酒壺と書いて「みき」と読みます。なぜそのように読むのか気になった方はご自身で調べてみてくださいね。こちらは昨年2024年に「Kura Master」において純米大吟醸酒部門プラチナ賞を受賞したお酒です。
稲見酒造さんもやはりお酒を醸すお米にはこだわりを持っていて、契約農家さんが育てた兵庫県特A地区の山田錦を使用していると仰っていました。特A地区とは、兵庫県内でも特に優れた品質の山田錦が生産される地域を指し、三木市吉川町や加東市東条町などが含まれます。
3. 「一般酒」 「特定名称酒」 「吟醸酒」 「本醸造酒」など
資料の2ページには「一般酒」「特定名称酒」「吟醸酒」「純米吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」という言葉が出てきますね。みなさんはそれぞれを説明できますか?
日本酒にはさまざまな種類があり、それぞれ製法や原料の違いによって分類されています。まず、日本酒は大きく 「一般酒」 と 「特定名称酒」 に分かれます。「一般酒」と「特定名称酒」はどう違うでしょう。読み進める前に一度、考えてみてください。
🍶「特定名称酒」
特定名称酒は、酒税法および国税庁の告示に基づき、以下の3つの基準を満たしたものだけが名乗ることができます。
1. 原料の規定
米、米麹、水を主な原料とし、一部の種類では醸造アルコールの添加が認められる。醸造アルコールを添加しないものは「純米酒」として分類。
2. 精米歩合の規定
精米歩合(米を削る割合)の上限が定められている。ここでいう 「上限」 とは、「精米歩合の最大値(%)」を超えてはいけない という意味です。例えば、純米大吟醸酒・大吟醸酒は精米歩合50%以下でなければなりません。50%以上(米を削る割合が50%未満)のものは、大吟醸を名乗れないです。純米吟醸酒・吟醸酒であれば精米歩合60%以下なので60%以上(米を削る割合が40%未満)のものは、吟醸を名乗れません。
3. 製造方法の規定
特定名称酒は、吟醸造りや本醸造造りなどの決められた製法で造らなければならない。吟醸造りを行わなければ、「吟醸酒」や「大吟醸酒」とは名乗れず、本醸造造りをしなければ、「本醸造酒」「特別本醸造酒」とは名乗れません。「特定名称酒」として認められるには、原料や精米歩合の基準だけでなく、製造方法のルールも守らなければならないということです。
🍶「一般酒」
先ほど「特定名称酒」で紹介した特定の製法や規定がありません。醸造アルコールや糖類が添加されることが多く、大量生産向きで、スーパーやコンビニでもよく見かけます。例えば価格が手ごろなカップ酒がこれに該当します。
分かりやすく表にしてみました。
インバウンド対応をしていると、甘めのフルーティーなお酒が好きな方には大吟醸、お酒の強さも感じたい方へは吟醸酒という傾向がある気がします。ただ、私はお酒の専門家ではないので、この点に関してお酒の販売やペアリングをお仕事にしている方がいらっしゃればコメントを頂けますと嬉しいです。
4. おすすめを聞かれたときの英語でのガイディング例
英語でのガイディングを想定してみました。
登場人物:私(通訳案内士)とお客さん(訪日観光客)
場所:酒蔵のショップ
シチュエーション:お客さんの一人がお酒を一本買いたがっている
Guest: Takusan, which sake do you recommend?
Takusan: I personally like Junmai Ginjo!
Sake is made from rice, but before brewing, the rice is polished to remove the outer layers. For example, some sake uses rice that’s been polished down by 30%, while others remove 50%, leaving only the inner core.
Junmai Ginjo is brewed using rice that’s been polished by at least 40%, so only the best part of the grain is used. This gives it a nice balance—smooth, a bit rich, and great with food.
If the rice is polished even more—by at least 50%—it becomes Daiginjo. This type is even more refined and has a fruity, aromatic flavor.
But since I usually drink whisky, I find Daiginjo a bit too sweet for my taste. That’s why I prefer Ginjo—it has a nice balance of aroma and dryness!
おおよそこのようなやり取りをしています。
ゲストに何かを聞かれたとき、①悩まずに即答し、②なぜそれをおすすめするのか理由を説明し、③他の商品との違いを明確にしています。
そのショップにある一番いいものを推す必要はないですしね。私たちもどこかへ旅行へ行ったとき、ガイドさん(地元の人)がおすすめするものを買いたい食べたい飲みたいじゃないですか :)
5. 「量より質」が進む国内需要
この記事は少し長くなったので、続きは次回の記事でご紹介します。
次回は以下のトピックについて掘り下げていきます。
📌5. 「量より質」が進む国内需要
📌6. 資料後半「酒造好適米」について
📌7. Takusanおすすめの酒蔵と日本酒
📌8. Takusanおすすめの日本酒に関する参考図書
引き続き、農林水産省の資料を読みながらと通訳案内士の視点からの考察をお届けするので、公開まで楽しみにお待ちください!
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