虚偽認めても謝らないのか 黒岩信忠(群馬県草津町長)

月刊正論2024年2月号より)

草津町議だった新井祥子氏という女性から「町長と白昼の町長室で肉体関係を持った」などと、ありもしない虚偽を吹聴されたことで、私は大変な災難を味わう羽目になりました。忌まわしい思いをし、心折れそうになる出来事もあるなかで、冤罪を晴らし、名誉を取り戻す取り組みを時間を掛けて積み重ねてきました。

私の思いは、本誌五年二月号「フェミニストらの横暴を許すな」で述べました。

草津町を「セカンドレイプの町」と呼んだフェミニストらの横暴を許すな 黒岩信忠

そして最近大きな出来事がありました。

令和五年十一月に新井氏がこれまで「事実」だと述べてきた自分の過去の言動を「虚偽」と認めたのです。まだ判決は出ていません。完全に身の潔白が証明されるまでにはなお時間がかかるでしょうが、潔白が示されることに手ごたえを感じました。

自分が出した証拠で墓穴

令和四年十月三十一日、前橋地検は新井氏を名誉毀損罪と虚偽告訴罪で前橋地裁に起訴しました。平成二十七年十一月十五日、私が「町長室で新井氏と肉体関係を持った」とする虚偽の電子書籍が出版されたのですが、その記述が私に対する名誉毀損にあたると刑事訴追したものです。電子書籍の著者も同罪で起訴されています。著者は私に謝罪文を送付し、新井氏の証言が虚偽で、電子書籍の記述が誤りだったと認め、謝罪しました。

自身の公判で著者は、自分が新井氏にだまされていたと主張し、自分が被害者だったことを強調していました。この公判は既に結審していますので、いずれ判決が出ると思います。

一方、新井氏に対する公判はまだ始まっていません。新たな証拠を提出するなどとして、一年経過した現在も公判前の整理手続きが続いています。

その一方で、私は電子書籍発売から約半月後に、著者と新井氏を相手取り、虚偽によって名誉が傷つけられたとして民事裁判(損害賠償請求訴訟)を起こし、それが前橋地裁で続いています。

冒頭で言及した令和五年十一月一日その裁判で大きな出来事がありました。

その日の裁判では新井氏への本人尋問が行われました。新井氏は、私と白昼の町長室で肉体関係を持ったとしたのは虚偽だったと法廷で明確に認めました。

新井氏は電子書籍が出版された後、著者と記者会見を開いています。そこでは「書籍に書かれていることは全て事実です」などと述べていました。本人尋問ではこれも虚偽だったと認めました。

さらに三年十二月、新井氏が私を強制わいせつ罪で刑事告訴しました。その後、記者会見を開いているのですが、会見で述べたことも「虚偽でした」と認めました。

新井氏は当初、「肉体関係を持った」と主張していました。それが「レイプされた」へ変わり、さらに今度は「私が後ろから押し倒し、下着をまくり上げて自分の陰部をこすり付けた」などと変遷し、強制わいせつ罪を持ち出して刑事告訴に及んだのです。もちろん、どれも虚偽です。私は平成二十七年一月八日に町長室で新井氏に会いましたが、指一本触れていません。

告訴後の記者会見で新井氏は面談時の音声データを公開しました。十五分に及ぶ町長と私とのやりとりを収めた音声データを記者らに聞かせ、証拠のごとく示したそうです。この音声データは、彼女が衣服にしのばせて隠し撮りしたものでした。

ですが、音声データはわずか十五分程度の短いものでした。中身も穏やかな会話が続いているだけで、私の犯罪を裏付けた、などといえるようなものでは到底ありません。記者からは新井氏の訴えが次々と変遷していることに加えて「なぜ音声データにはこのあとがないのか」などと矛盾を指摘されたそうです。新井氏は、町長が近づいてきたので録音を止めた(から犯罪の場面を録音した音声データはない)などと述べています。

新井氏が出した告訴は、前橋地検がわずか四日で嫌疑不十分と判断し、不起訴にしました。逆にこの告訴が虚偽告訴罪にあたると判断した前橋地検は、先に述べた名誉毀損罪とともに新井氏を起訴しました。

前橋地検は新井氏側への捜査で、音声データの全てを得たようで、「動かぬ証拠」を突きつけて訴追に踏み切ったらしい。彼女が自ら示した音声データこそが、告訴がでっちあげで、私の潔白を一目瞭然に物語る証拠となったのです。

ところで十一月一日の民事法廷で新井氏は、面談時に「町長に身体や太ももを触られた」などと言いだしました。新たな嘘です。ですが、なぜ新井氏がこんな証言をしたか。これはある程度察しがつきます。電子書籍の記述や記者会見について、彼女は明確に虚偽と認めました。ですが、その延長で私を強制わいせつ罪で告訴したことまで虚偽だったと言うと、たとえ、民事法廷でも虚偽告訴罪を認めたことになってしまいます。

彼女は虚偽告訴罪を争いたく「身体や太ももを触られた」などと言い出したのでしょう。ですが告訴状ではそもそも私に押し倒されて後ろから私に陰部をこすり付けられたという話になっていました。それが「身体と太ももを触われた」になったのですから、事実関係ではかなり隔たりがあります。

それにこの告訴状に書かれた記述自体も疑問が尽きないもので、さきほども述べたように、新井氏は以前はレイプ、さらにさかのぼれば「肉体関係を持った」と述べていました。嘘に嘘を重ね、支離滅裂となっているようにしかみえません。私にとっては、いずれであれ、大変な人権侵害です。

セカンドレイプ

本稿でどうしても言っておきたいことがあります。新井氏に加担したフェミニストや人権団体の方々らが撒き散らした言説についてです。私は新井氏の主張が虚偽だと分かれば、私の潔白が示せると思っていました。ところが、彼らはそうは考えていないのです。


《【訂正しました】 こんなことがまかり通る現状に涙が出ます。リコール(新井氏に対する議員解職請求)は6日ですが新井議員の議員資格剥奪が決定されたとのこと。剥奪が必要なのはどっちですか⁉被害者を非難し、口を塞ごうとしたアメリカのミズーラのレイプ事件を彷彿とします。#セカンドレイプの町草津と名付けたい

【訂正内容】 私は、性被害者が被害を訴えても認められず、訴えたことで排斥されることを繰り返し見聞きしてきました。草津町で事実が明らかでない段階で、数の力で新井議員を失職させたと聞いた時に、また同じことが起こったと思い#レイプの町草津と表現しましたが、事実については明らかでない段階であるにも関わらず、言葉が過ぎたと思いますので、関係者にお詫びします。しかし、真偽不明の段階で裁判を待たず、数の力で失職させたことはセカンドレイプ(二次被害)だと考えています》


これは性暴力被害当事者が立ち上げた一般社団法人「Spring」の初代代表理事、山本潤氏が令和二年十二月四日にSNSに投稿し、のちに訂正した記載です。山本氏は法務省内に設置された「性犯罪に関する刑事法検討会」や法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会の委員で、令和五年六月の性犯罪規定見直しの原動力にもなった方です。

新井氏へのリコールを批判して山本氏は「#レイプの町草津」というタグを拡散させました。ですが批判が高まったことを受けて「#レイプの町草津と表現しましたが、事実については明らかでない段階であるにも関わらず、言葉が過ぎたと思いますので、関係者にお詫びします」と述べています。

一見謝罪したようにみえますが、「しかし、真偽不明の段階で裁判を待たず、数の力で失職させたことはセカンドレイプ(二次被害)だと考えています」と述べているのです。そして「#セカンドレイプの町草津と名付けたい」と訂正しています。結局、私や草津町が悪い、という話になっています。

令和四年二月、草津町が弁護士を通じ山本氏に質したところ「『セカンドレイプの町』と表現したことは正当だと思っています」と回答がありました。

新井氏が性被害の勇気ある告発をした。にもかかわらず、それを町議会で追及することや、事実が未確定なのにリコール(解職請求)で新井氏を失職させたのは被害者を追い詰める「セカンドレイプ」にほかならない|というのです。

こうした言説は山本氏だけでなく本当に多く聞かれます。新井氏の主張は虚偽だった、それは悪い。でも、リコールはセカンドレイプなのだから「私や草津町議会が悪いことに変わりはない」という理屈です。

ですが〝ファーストレイプ〟が一〇〇%虚偽なのですから「セカンドレイプ」の主張などそもそも成り立つはずがありません。責めは虚偽を述べた側に向けられるべきです。

疑義を挟み、信憑性を疑うことや応分の主張すら許さない。事実か否かを問うことさえ「セカンドレイプで許されない」ならば、女性の告発は無謬なものとして扱わなければならなくなるでしょう。

女性の権利保護に私は何の異論もありません。自分が受けた性被害を事実に基づき告発する。これも同じです。ですが、そのことと虚実を織り交ぜ、事実に根ざしてないまま、性被害をデタラメに告発することは全く違うことだと思っています。訴えはあくまで事実に根ざしたものでなければなりません。女性の告発なら虚偽も許される、などといった道理などあるはずがありません。それでは大変な人権侵害を招いてしまいます。

私も公人です。新井氏も公人でした。公務時間に公務室で公人同士がいかがわしい行為をしたと言い出したのです。議会が放置することはあり得ません。まず事実を確認し、特定しなければなりませんし、そのために新井氏に説明を求め、疑問は質されます。それは当然の手続きです。セカンドレイプではありません。

不可解なリコール批判

なぜ、新井氏に対するリコールが実施に至ったのかも町の名誉のために説明しましょう。

リコールとは町民の発意で行うものです。私の発意ではありません。三分の一の町の有権者がリコールを希望しなければできません。リコールの是非判断にあたっては新井氏の立場や見解も町民にちゃんと知らされて判断を仰ぐ。これが原則です。

町民の多くは新井氏の訴えにはじめから荒唐無稽なものを感じていました。新井氏は、私から性被害を受けた、と訴えました。ですが一向に被害回復などの裁判を起こすことなどをしませんでした。警察に被害届を出すこともありません。「警察は信用できないから」が理由だそうで、その気もなかったようです。町議会での追及もはぐらかし、証拠も示さない。

一方で、彼女は女性活動家と連携し草津町議の肩書で自分が性被害者だと発信を強めていきます。彼女は自分の訴えを拡散させることを重視し、事実関係の確定に熱心ではありませんでした。

掛けられた疑惑を晴らし、潔白を証明するのは「悪魔の証明」と言われます。私も町も「悪魔の証明」を背負わされました。私や町はますます貶められて窮地に陥っていましたが、そうした理不尽さ、危機感により町民からリコール機運が生まれ、広がったのだと私は思っています。

私自身は仮に新井氏が民事でも刑事でもいいから、裁判を自分で起こしていたならば、リコールはすべきでないと思っていました。彼女が訴えれば私も応じます。そこでいずれ事実が明らかになります。それを待ってリコールが行われても遅くはないと考えていました。

ですが、新井氏は一向に裁判を起こしません。私への罵詈雑言に加えて「レイプの町草津」などといった町を傷つける発信も拡散していました。傍観は許されません。そこで私から令和元年十二月三日、新井氏らを名誉毀損罪で刑事告訴し、民事裁判も提起した。これが経緯です。

町長から性被害を受けた、許せないとして仮に新井氏が裁判を起こし、係争中にリコールを推進したとする。そこで真実の究明が先だ、という批判ならまだ筋が通っていると私は理解します。ですが、実際はそうではありませんでした。「裁判中にかかわらず、リコールをするのは問題」という批判自体がおかしいのです。

町民が選挙で選んだ新井氏です。だからもう一度、選んだ町民が、議員にふさわしいかどうか決める。それが一番民主的なやり方だと思います。もし仮に、裁判中にはリコールはできないなんて話になってしまうと、リコールをされそうになって裁判を起こせばリコールを免れることが可能になる。それはおかしなことです。

ちなみに草津町には十一人の町議がおり、共産党の町議もいます。共産党機関紙「しんぶん赤旗」からは新井氏の虚偽をもとに私や草津町は散々批判されました。共産党関係者がデモや抗議で押しかけてきたこともあります。この町議とは町政をめぐり、いろいろな場面でしばしば対決しますが、この一件では、はじめから新井氏の虚偽を見抜き「濡れ衣を着せるのはおかしい」といってリコールにも積極的に協力しました。デモなども身を引いていたそうです。そのために組織から咎めを受けたという話も耳にしました。ですが草津町に実際に住んでいる人は、そのほとんどが新井氏の話をはじめから「おかしい」と思っていました。

謝罪団体の弁

これは前述した山本氏が代表を務めていた「Spring」が令和五年十二月五日付で公表した「草津町フラワーデモに関する当団体の見解について」という文書です。

《当団体は、二〇二〇年十二月十一日に行われた、性被害を訴えた元草津町町議の女性がリコールされたことに抗議した「草津町フラワーデモ」に関して、同日、当団体のSNSにおいて「草津町フラワーデモに連帯します」と表明したことがあります。それについて団体としてここに見解を発表します。

現在、二〇二三年十一月十五日の報道によれば、草津町町長によるレイプ被害を訴えた元草津町町議の女性自身がレイプ被害の訴えが虚偽であったことを認めるに至っており、虚偽のレイプ加害を訴えられた草津町町長黒岩信忠様におかれましては、この間の心労・苦痛はいかばかりであったかと存じます。性暴力の虚偽の訴えは、名指しされた方の人生を大きく狂わせる人権侵害であり、そのような人権侵害行為を行った元町議の女性に、当団体が連帯の意思を表明したことについて、ここに撤回し、ご迷惑をおかけした皆様に、お詫び申し上げます。

二〇二〇年十二月当時、当団体の初代代表理事が「レイプの町草津」と表現しましたが、これについては初代代表理事自身が表現が行き過ぎていたとしてお詫びするとともに「セカンドレイプの町草津」と訂正しました。

しかし、元町議の女性がレイプ被害は虚偽申告であったことを表明するに至った現在では、「セカンドレイプの町草津」との表現についても行き過ぎた表現であり、草津町に住まわれる方だけでなく関係する多くの方を傷つける表現であったことを、当団体として率直に認め、これについて連帯の意思を表明したことについて撤回し、草津町町長黒岩信忠様及び草津町並びに関係者の皆様に対し、重ねてお詫び申し上げます。

上記認識に基づき、過去に行き過ぎた表現が示された画像などSNS等で当団体が行った投稿につきましては、それを目にした方に重ねて不快な思いをさせてしまうことを避けるために、全て削除することと致しました。

性暴力の虚偽の訴えは、冒頭で述べました通り名指しされた方に対する著しい人権侵害行為であると同時に、実際に性被害に遭われて勇気を出して訴えた方々に、社会から「嘘つき」のレッテルが貼られ、実際の性被害の訴えが封じ込められてしまうことにつながる、絶対に許されない行為です。

私達はこのような事態になったことを深く反省し、引き続き性被害当事者が生きやすい社会を目指して、一歩一歩取り組みをすすめてまいります》

ようやくここまで来たか、と思います。ただ、この見解はあくまで「Spring」という団体の見解で山本氏本人の見解は示されていません。

実害よりも許せない

騒動によって被った実害で深刻だったのは、リコール成立直後の令和二年十二月十日に町内の学校が休校を余儀なくされたことでした。新井氏のウソによってインターネット上には「草津町に『行くのをやめよう』キャンペーン」「いつレイプされるかわからない」といった風説が乱れ飛んでいました。そうした中、日時を設定して町の施設への攻撃、リコールに賛成した者の射殺を〝宣言〟したものが見つかったため、大事を取って生徒を自宅待機にしました。

町役場には連日、抗議電話が止まなかった時期があり、対応に苦しめられました。確かに抗議の電話は私の自宅にも掛かってきました。一時は私への抗議で役場に直接街宣をかけられたこともありました。警察に相談して大事には至りませんでした。

懸念された温泉客の激減などの風説被害はそれほどではありませんでした。むしろ、そうしたことが起こらないようにと、私も町内の関係業者も一丸となって顧客が離れていかないように手を尽くしたからだと言った方が正確です。

私たちが今回の騒動で最も苦しんだものは何か。これは私もそうですし、多くの町民もそうでしょうが、個人の人権、名誉や経済的な損害といった問題以上に「草津」が傷つけられたことです。これが何よりも堪えましたし、許せません。私が一番、印象に残っているのは、次のような話を聞いた時でした。

「草津町から移り住んで東京で暮らすようになってからも、出会った人に自己紹介する時に、『草津町の出身です』といえば、『羨ましい』『いいなあ』といった答えが返ってくる。それが今までは少し誇らしかった。だけど『レイプの町草津』とか『行くのをやめよう』などとふるさとがけなされている書き込みがネットを通じて世界中に広がっている。哀しくなったし、草津の出身であることを口にできなくなった」

町民の多くも私や草津町があしざまにされ、肩身の狭い思いを味わったようです。こうした話を聞くたびに申し訳ない思いとともに、「何とかしなければ」と奮い立ちます。

ふだんは人権を口にしている面々が平気で「草津」を踏みにじってもてあそんではばからないことに「許せない」という思いがこみ上げてきます。

ネットで叩かれ、世界中に拡散された忌まわしい言説はあまりに多過ぎます。「レイプの町草津」「草津に来ればレイプされる」と一方的に言われたまま、それを打ち消し、払拭できずにいる。即座に全世界に伝播したものに逐一反論し、被害回復を図ることなど不可能です。何もしていないのに、いきなり世界中に「性的暴行を常習的に繰り返す日本の政治家」だの「日本の町」などとアナウンスされてしまったのです。そのことに計り知れない恐怖と口惜しさ、心の痛みを感じています。

月刊正論2024年2月号より)

くろいわ・のぶただ

昭和二十二年生まれ。中学卒業後、電気工を経て、燃料販売会社を起業し、五十八年、草津町議に。平成二十二年から草津町長を続ける。

草津町を「セカンドレイプの町」と呼んだフェミニストらの横暴を許すな 黒岩信忠(群馬県草津町長)

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