大学授業料無償化に「3浪の壁」、おかしくない?…「若者が挑戦する機会奪う恐れがある」との指摘も
「大学授業料の無償化」は、3浪以上している学生は対象外になる。このルール、おかしくないでしょうか――。 そんな意見が社会部に寄せられました。制度は今年度から支援が拡充され、原則として、兄弟や姉妹が多い学生は親の所得にかかわらず利用できるようになりました。LINEを送ってくれた関西在住の50歳代女性に電話で話を聞きました。 女性の長男は医療系の学部で学ぶ5年生。学費が抑えられ、自宅から通えると地元の国立大に4浪して入学しました。女性には大学生の娘も2人います。今春の制度改正で、「同時に扶養する子どもが3人」いれば所得制限がかからなくなったことを受けて支援を申し込んだところ、7月に却下の通知が大学から長男にメールで届いたそうです。 【写真】文部科学省
大学や短大、高専などに通う学生の授業料を国が支援するこの制度は、教育費の軽減という少子化対策の狙いもあり、2020年度に始まりました。 多子世帯への所得条件が廃止された今年度は、対象が約34万人(23年度)から約84万人(推計)に増えました。国公立大生は入学金28万円と授業料年54万円までが減免され、家計負担は実質ゼロに。私立大生も入学金26万円と授業料が年70万円まで減免となり、負担が大幅に減りました。
女性の娘2人は申請が認められたため、長男がなぜ駄目だったのかと、日本学生支援機構のサイトを読むと「高校卒業の翌年度の末日から大学入学日まで2年を経過していない人」との規定がありました。高卒から3年たったら対象外という意味です。 女性は「息子は浪人時代、高熱で入院した時も勉強道具を持って行きました」と話し、「申請却下は、念願をかなえた本人の努力が否定されたように思えてつらかった」と打ち明けました。
文部科学省に、3浪以上が対象外となる理由を尋ねると、担当者は「高卒で専門学校に進学する場合は2年で社会に出ることを参考にした」と説明しました。就職で親の扶養から外れる時期を踏まえた判断ということでしょう。 統計から推計すると、大学進学者のうち、3浪以上は現在1%程度(約6000人)。あくまで単純計算ですが、全員が国公立大生で支援対象になったと仮定すると、授業料だけで年約32億4000万円の追加費用が必要になります。「予算には限りがあり、どこかで区切る必要がある」と文科省の担当者。その理屈は分かる気もします。
高卒者のキャリア設計に詳しい進路アドバイザーの倉部 史記しき さんに意見を聞いたところ、「3年の壁」のルールには懐疑的でした。「高校を出てすぐ大学に入るという画一的な考え方が前提になっており、制限は若者が挑戦する機会を奪う恐れがある」というのが理由でした。確かに、回り道をしてからでも大学の門をたたきやすければ、人材育成を通して社会の活力につながることでしょう。
読売新聞社
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