阪神「奇跡の男」 原口文仁が今季限りで現役引退 19年大腸がんを克服し23年日本一貢献

[ 2025年9月29日 01:30 ]

<(ウ)神・オ>シーズン最終戦を終えベンチに戻る原口(撮影・後藤 正志)
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 阪神の原口文仁内野手(33)が、今シーズン限りで現役引退することが28日、分かった。2019年に大腸がんを克服して復帰を果たし、以降は主に代打の切り札として23年のリーグ優勝、日本一にも貢献。だが16年目の今季は出場15試合で1安打にとどまっていた。近日中に引退会見を開き、今季レギュラーシーズン最終戦となる10月2日ヤクルト戦(甲子園)で引退セレモニーが行われる。 

 奇跡の男が、今季限りでユニホームを脱ぐ決断をした。16年目シーズンは開幕から代打の切り札としてベンチ入りしたが、貢献できず。リーグ優勝を決めた7日まで無安打で、胴上げにも呼ばれなかった。13日の巨人戦で、ようやく投手強襲の内野安打。執念のヘッドスライディングで今季初安打を記録しながら、19日には今季4度目の出場選手登録抹消となっていた。

 帝京(東京)から2009年ドラフト6位で入団。強打の捕手として期待されたが、タテジマ一筋で歩んだ16年間は、決して平たんな道のりではなかった。

 度重なる故障、そして大病に苦しめられた。12年シーズン後には椎間板性の腰痛のため、育成契約に降格。16年に支配下復帰後は右肩の負傷もあり、登録ポジションは捕手から内野手、内野手から捕手への変更を繰り返した。さらに19年1月には大腸がんを公表。不屈の闘志で手術、闘病、リハビリを乗り越えて同年6月に実戦復帰を果たした。以降は主に“代打の神様”として23年のリーグ優勝に貢献。昨年オフには出場機会を求めてフリーエージェント(FA)宣言したが、結果的に阪神残留となった。

 引き際には、原口の生きざまが詰まっている。今季限りの引退を決断したが、まだ終わりではない。最後の最後まで戦いたい――思いを球団に伝えた。日本一を目指すポストシーズンでのベンチ入り、出場を目指す。もしかしたら出番がないまま、ベンチ入りすらかなわないまま終わるかもしれないが、可能性がある限りチャレンジする。最後の1試合、1プレー、1球まで貫く。だから練習もやめない。まだ16年間の感傷に浸るには、早い。日本一を目指すチームに戦力として加わる。
 9月17、18日の広島2連戦(マツダスタジアム)に代打出場し、2打席凡退。試合後に2軍降格を告げられたが、折れそうになる気持ちを奮い立たせて、翌19日には福岡・筑後で2軍に合流。この日のウエスタン・リーグのオリックス戦(SGL)にも「4番・DH」で先発出場し、2打数無安打だった。

 近日中に引退会見に臨む。球団はレギュラーシーズン最終戦となる10月2日のヤクルト戦(甲子園)での引退セレモニーを用意してくれているが、あくまでゴールは最高の舞台で、甲子園で、最後にもう1打席に立つこと。だから原口は、まだ全力疾走も100%のスイングもやめない。

 ◇原口 文仁(はらぐち・ふみひと)1992年(平4)3月3日生まれ、埼玉県出身の33歳。帝京高から09年ドラフト6位で捕手として阪神入団。腰痛の影響などで13年から育成契約となり、16年4月に支配下復帰。同年5月は打率.380で月間MVP。18年は代打で球団記録に並ぶシーズン23安打。22年から内野手登録。19年1月に大腸がんを公表。治療しながらプレーを続け、24年1月に完治を報告。同年オフに国内FA権を行使して残留。1メートル82、97キロ。右投げ右打ち。

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