「幽霊事業」に消えた巨額の防災予算 災害大国フィリピンで何が

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マニラ=大部俊哉
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 「災害大国」と呼ばれるフィリピンで、防災事業をめぐる巨額の汚職疑惑が社会を揺るがしている。着工せずに事業費を取る「幽霊事業」が次々と明るみに出て、政府によると、経済的損失は3年間で最大1185億ペソ(約3千億円)に上るという。自然災害の頻発に悩む国民の不満は膨らみ、大規模な抗議デモに発展した。

 9月21日朝、首都マニラ中心部の大通り。プラカードを持った人たちが道を埋め尽くし、行進しながら「腐敗を終わらせろ!」「盗んだものを返せ」と声を上げた。地元メディアによると、この「反汚職デモ」には約5万人が参加した。

 主催団体「バヤン」のレナート・レイエス事務局長は取材に対し、「与党政治家らは数十年にわたり、政治を私物化し、いつでも金を引き出せるATMのように扱ってきた」と述べ、構造的な改革が必要だと訴えた。

 デモに参加した一部が大統領府近くで暴徒化し、警察官を含め130人以上が負傷。これまでに1人が死亡し、200人以上が逮捕された。

 抗議拡大の引き金となったのは、数十億ペソ規模に上るとされる、洪水対策の公共事業に絡む不正疑惑だ。

現場を視察した大統領「失望通り越し、激怒」

 「どうなっているんだ? 記録では工事が完了したはずなのに、ブロック一つ見当たらない。すぐそこで、洪水被害が続いているというのに」

 8月、マニラ首都圏近郊ブラ…

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この記事を書いた人
大部俊哉
マニラ支局長兼ハノイ支局長|東南アジア・太平洋担当
専門・関心分野
海洋安全保障、国際政治、貧困問題