平凡になりたかった俺と特別になりたかった君へ


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第6話


 

 

 

 

「…………新兵のアベル・フィリアです。団長はいますか」

 

「…入れ」

 

「失礼します」

 

俺はその後当然調査兵団に入り,入団式も終わり少し経つとあの時の約束通り団長の元へ訪ねていた。

そうして扉を開けると,そこには堂々と鎮座する調査兵団団長のエルヴィン・スミスがいた。

 

「まずは入団おめでとう…と言っておこう」

 

「……約束通り調査兵団に入って,団長の元まで来ました。それで重要な話って…?」

 

「……そう焦らず肩の力を抜いてくれ。結論から言うと君には極秘作戦に参加してもらいたい」

 

「……極秘作戦?」

 

なんだそれは?というより何故新兵である俺を……

 

「………私はこの壁の中に裏切り者がいると考えている…根拠としては……」

 

その後団長から裏切り者を裏付ける根拠を聞いたが……俺自身も思い当たる事が多く納得できるものだった。

……マルコの事もそうだが,すぐ最近あった被検体の巨人が殺された事件,エレン・イェーガーという巨人化できる存在,そして毎回現れては消える超大型巨人や鎧の巨人…そうだ。少し考えれば簡単に浮かぶことだ。

 

 

 

 

 

 

ーーー人類の中に…巨人化できる裏切り者がいる

 

 

 

 

 

「……理解は出来ました。ですが何故新兵である俺をそんな作戦に………?」

 

「……簡単な話だ。この作戦は5年前から共にいる信頼できる兵士たちにしか伝えていない。要するに裏切り者ではないと考えている人物にしか知らせていないということだ。その点君は初陣からトロスト区奪還作成での活躍,そして君に《敵とは何か》と聞いた時の返答を聞いて,裏切り者ではないと仮定した。」

 

「……それだけで,そんな大事な作戦を?」

 

「………聞いていれば分かると思うがこの極秘作戦はかなり少人数で実行することとなる。人手が足りない。少しでも信頼できる実力のある兵士が必要だ。それに…もし君が私の目を欺いた裏切り者だとしても…調査兵団には全てを託せるほど信頼できる兵士がいる。」

 

その言葉を聞いて真っ先に俺はあのトロスト区奪還作戦の日に見た………人類最強,リヴァイ兵士長を思い出した。なるほどね。最悪の自体が起きてもあの人なら何とかしてくれると考えてる訳か。

 

「……分かりました。俺もその作戦に協力します。ですが,具体的には何をすれば…?」

 

「………君には壁外調査中にエレンを狙ってくるであろう裏切り者の足止め,時間稼ぎをして欲しい。そして何としてもその裏切り者を巨大樹の森の捕獲ポイントまで誘導したい。」

 

「……なるほど?たしかに5年前から共にいる兵士にしかこの作戦を伝えていないという事は殆どが隊長クラスの人材だ。そんな人物を自由に動かすのは作戦に支障をきたす…だから新兵である俺がこの作戦を知りつつ,1番自由に動ける存在であり…………最悪俺が裏切り者でも被害を回避しつつ,壁外で野垂れ死んでくれればさらにラッキーって訳ですか。正に適材ですね」

 

「理解が早くて助かる。しかし何も君をそこまで疑っている訳では無い」

 

「あぁ分かってますよ。そりゃ団長の身からしたら最悪のリスクをケアするのは当然でしょう。別に怒ってる訳じゃないですよ。とにかく俺はその裏切り者の時間を稼ぎつつ,その捕獲ポイントまで誘導すればいいんですね?」

 

そうだ別にキレてるわけじゃねぇ…ただ意図を隠しつつ俺を殺す算段を作戦に組み込まれてるのが癪だったから意趣返しのつもりでそれを理解してることを伝えただけだ。

 

「……裏切り者の足止めということはかなりの危険が伴う役割になる。それでも受けてくれるか」

 

「………結局この作戦が失敗したら生きて帰れるかなんてわからないでしょ。なら結局リスクは変わりませんよ。自分の力で解決できる分こっちの方がマシまでありますね。俺がここで何もせず作戦ミスって全滅…ってオチが最悪です。」

 

「……感謝する。」

 

「……これで話は終わりですか」

 

「……あぁ終わりだ。わざわざここまでご苦労だった」

 

「…では失礼します」

 

そうして俺は此方をジッと見つめる団長を片目にそのまま振り返って部屋を出た。……裏切り者の足止めね。そう上手くいくもんなのか…………まぁなんだろうと関係ねえな。俺は生き残り続けるだけだ。この戦いの終わりを見届けるために

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

「………アベル?」

 

「…ん?どうしたクリスタ」

 

「最近ボーッとしてること増えたけど…大丈夫?」

 

「……別に大丈夫だ。お前はアイリスが死んでから随分と俺に気を使ってくれてるみてぇだけど俺はもう特に問題無い。最近ボーッとしてんのも別の理由だ」

 

「………無理しないでね?」

 

「……お前こそ入団式の日にあんな震えて泣きながら調査兵団選んでたくらいだ。もうそろそろ始まる壁外調査でチビんなよ」

 

「……もう!アベルったらいつもそうやって適当に……」

 

此方をいかにも怒ってますとでも言うような表情で凄むクリスタ(全然怖くない)を適当にやり過ごして俺は今日も考え事に耽る。考え事と言っても簡単な話,裏切り者の足止めを任された極秘任務の事だ。

俺はここ数日,壁外調査に必要な知識を叩き込む座学をそこそこに受けながら周りの兵士たちや調査兵団の現状を把握することに力を入れていた。理由は単純,裏切り者の目処をつけるためだ。

恐らく巨人の力を持った裏切り者は今のところ超大型,鎧が当てはまるだろう。そして次の壁外調査で此方を襲ってくる裏切り者は鎧が濃厚か。超大型では広い壁外だと目立ちすぎるうえに機動性が貧しいと考えるからだ。

 

 

 

 

ーーーといっても今のところ見当もつかねぇな

 

 

 

 

特に怪しいヤツはいない上に,妙な動きや探りをいれるヤツもいねぇ……あの団長の予想では恐らく俺ら新兵,もしくは調査兵団の若手辺りが臭いらしいが…

いや…1人…素性も知らねぇうえに怪しいヤツがいたな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーユミル

 

 

 

 

 

 

 

 

てめぇは何者なんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま……違ぇか」

 

「え?」

 

「あぁ……なんでもねぇよ。それより早くユミルの所行こうぜ。お前と2人きりなんて何されるか分かったもんじゃねぇ」

 

「私と2人きりだからって……何かあるの?」

 

「………………人生楽しそうで何よりだ」

 

クリスタ……こいつさっきから男どもに射殺すような目線で見られてる事に気づいてねぇのか?まぁ主に俺に対してだが。

まぁいい……ユミルの奴は分からねぇことが多いし,怪しいことに変わりはねぇが……

 

ま。俺にとってはいい性格した冷めた女でしかねぇ。特に私情は挟まず今まで一緒にいたアイツとして見るだけだ。だとしたら……アイツが裏切り者なんてことはねぇだろ。

信用してる訳じゃねぇ決してアイツを信用してる訳じゃ……って誰に言い訳してんだ……俺。

 

「……あ!あとアベルにお願いがあるんだけど……いいかな?」

 

「……なんだ?」

 

「……えっ……とその……私と2人でお出かけしない?」

 

無意識なのかわざとなのか知らねぇが妙に上目遣いで照れ臭そうにお願いしてくるクリスタ。多分日頃からコイツのことを可愛い可愛い言ってるブラウンやユミルだったら即答でついていったんだろうな。

 

「……クリスタ。さっき俺はお前と2人きりなんて何されるか分かったもんじゃねぇって言ったばっかだが……しかも2人で出かける??壁外調査に行く前に壁内で人間に殺されるぞ俺。」

 

「……どうして?」

 

「……………………まぁいいや。で?理由はなんだ。まさか本当に俺と2人で出かけたいなんて言う物好きじゃねぇだろ?」

 

「……物好きって…別にアベルは意外と女の子にモテてると思うよ……?あ,それでえっと理由はその……プレゼントをしたくて」

 

「("意外と"って言ってんじゃねぇか……)プレゼント?」

 

「その……ユミルに対して」

 

「なんでまた……?」

 

ユミルにプレゼント?特にアイツが誕生日だった覚えはねぇが……というかそもそもアイツの誕生日なんて知らねぇけど

 

「……あのね。アベルにこういう事言うのは……どうかなって思うんだけど……その……アイリスが死んじゃったでしょ?」

 

「……そうだな」

 

「…………全く私が知らない所でいつの間にか仲良かったアイリスが死んじゃって……その…私もいつかそうなっちゃうかも……って……」

 

「…………有り得ないことじゃねぇな。どっかの誰かさんが言うには誰もが劇的に死ねる訳じゃねぇらしい…誰にも見られることなく孤独に巨人に殺される……なんて全然有り得る話だ。」

 

「……壁外調査も近くなってさ。私もずっとユミルと一緒にいれるわけじゃないし……だからもしそうなった時の為に,何か贈り物でも渡そうかなって……その…私が死んじゃっても忘れないでほしいから……」

 

「…………へー」

 

一見大事な親友に対する健気な想いに見えるが……俺はそうは思わねぇ。随分と死に対して前向きな考え方だと思う。薄々思ってたがコイツはやっぱりマトモな天使様に見えてイカれた狂人だろう。

 

普通の人間なら死っていうのは最も遠ざけたい概念な筈だ。だがクリスタは常人のような死に怯える感情はあっても,死を遠ざけたいと思う心はねぇな。何処までも死に対して前向きな考え方を持っている。……不気味な女だ。

 

「……え……と?アベル?」

 

「……プレゼントだったか?まぁそれくらいならいいだろう。壁外調査始まる前の暇な時に行くか」

 

「うん!ありがとう!アベル!」

 

「……あぁあとクリスタ。」

 

「……うん?」

 

「……俺とお前の関係は良くて友達の友達くらいだろ」

 

「……え!?……そ……そんなことないよ!アベルとだって……」

 

そうだ。俺とクリスタの関係なんてたまたま共通の関わり(ユミルとアイリス)があったからここまで話すようになっただけで俺たち2人だけならそこまでの関係値は無い。

 

「…………けど俺はお前がもし死んでも忘れねーよ。贈り物なんて無くても絶対にな。」

 

「……え?」

 

「……訓練兵で過ごした時間。色々なことがあったが,俺は楽しかった。ユミルとの時間も…………アイリスとの時間も,勿論お前との時間も……全部楽しかった。」

 

「…………」

 

「お前がどう思ってるかは知らねぇけど。俺にとっちゃあの時間は俺の人生で忘れられない時間だ。だからお前の事は忘れない。……お前がどんな本心を抱えてるかなんて知らねーけどな」

 

「……!アベル…………」

 

「……そもそも死なせねーよ。もう誰も。俺の手が届く範囲では絶対に……。だからお前は俺の届く範囲にいてくれ……クリスタ。…………じゃあ先行ってんぞ。」

 

……慣れねぇことするもんじゃねぇな。アイツの本心は知らねーし知りたいとも思わねぇけど。あの時間が俺にとって特別なものだったことに変わりはねぇ。

 

「……アベル!」

 

「……」

 

「…………私も楽しかったよ。あの時間は…何もかも忘れちゃうくらい」

 

 

 

 

 

 

 

 

それは紛れもなく。()()の本心な気がした。

 

 

 

……俺はそのいつもの明るさが無い,少し暗めな彼女の声を聞きつつその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーなんだ。そっちの方がいいじゃねえか。いつもと違って不気味じゃねぇしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「…………いつから分かってたんだろ」

 

アベル・フィリア。とっても不思議な男の子。ユミルやアイリスと仲がよくて,自然と他の男の子と比べて関わることが多かった人。

友達の友達……()()()()()()だから気を使って否定したけど,本音を言えば確かに私とアベルにピッタリの関係だと思う。

 

「…………アベルも私を死なせてくれないんだ」

 

ユミルとはまた違う感じだけど。アベルも私の事を死なせてくれないらしい。……いつからアベルは私が自分を偽ってるって察したんだろう?

 

 

 

 

 

……アベルは一体どんな人なんだろう

 

 

 

 

 

私が知ってるのはアイリスと仲が良くて……多分両思いだってくらいで。でもそのアイリスが死んじゃって……きっと,アベルは変わった。

 

アベルがあんな強いなんて知らなかったし,その強さの秘密だって知らない。……というかジャンやユミルがミカサよりも強いなんて言ってたけど本当に何でそんなに力を隠してたんだろ?

 

それに頭だっていいし……最近なんか考え事をしてるのも,何か壁外調査についてなんだろうか?本当に謎が多い男の子。

 

 

 

 

ーーー分からない

 

 

 

ーーー分からない

 

 

 

ーーー分からない

 

 

 

分からないけど……前にユミル言ってた意外と人情深くて,寂しがりで,優男だっていうのは事実な気がした。

人柄は分かったけど……それでもやっぱり分からないことだらけ…………

 

 

 

 

 

 

どうしてだろう何となく……もっとアベルの事を知りたいなって今は思ってる。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーやっと友達の友達じゃなくてアベルと本当に友達になれる気がする。今更……かもしれないけど。

 

 

 

 

「…………アベル・フィリア」

 

「……どうしたんだクリスタ?ボーッとしてたと思ったら急にあの優男の名前を呟いて……」

 

「わっ……!ゆ……ユミル!?いつの間に!?」

 

「…………お前まさかアベルの奴になんかされたのか?」

 

「……な…何もない……何もないから!!本当だから!!」

 

「…………」

 

「……ユ……ユミル?」

 

 

 

 

 

ーーー妙に焦って,顔も少し赤い……しかもどことなくボソッと真剣そうに熱っぽくアベルの名前を言っていた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

……恐らくユミルの勘違いである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あの野郎まさか」

 

「…………え?」

 

「……待ってろクリスタ。今ちょん切ってきてやる

 

「え!?な……なにを!?」

 

「絶対に許さねぇぞ!!あのスケコマシ野郎!!アイリスに飽き足らず私のクリスタにまで……!!」

 

「……ちょ…ちょっと落ち着いて!?た…多分勘違いしてるよ!ユミル!!そういうのじゃないから!!ただアベルと友達として仲良くなれる気がしたってだけで!」

 

「いーや!!あの野郎の事だ!!友達として仲良くなった後に何するか分かったもんじゃねぇ!!そうなる前に私がちょん切る!!」

 

「だからなにを!?」

 

 

 

 

しばらくの間,暴れるユミルとそれを抑えようと必死のクリスタが目撃された。

尚。その後ユミルによる謎の襲撃にあったアベルだが,その殺意から本気で対応して制圧した後,無事に誤解(?)を解いてちょん切られることはなかったらしい。一件落着である。

 

 

 

 

 








あとがき




〇クリスタ急にプレゼントってどしたん?
→アイリスっていう原作にはいない仲良しの存在の死で孤独な自分の死を明確にイメージするようになった。クリスタは死にたいとは思ってるけど死への恐怖は持ってる子だと思うので現状1番大切な存在のユミルに何かを残したかった。




〇なんでアベルくんを誘ったの?
→唯一仲良い男の子且つユミルを誘うとからかわれそうで気恥ずかしかったから。良くも悪くもアベルとはそこまで深くもないし浅くもない関係値だからちょうどよく誘えた。





〇これクリスタヒロインフラグ?
→特にそこまで考えてなくて,現状ただ関係値が深まって個人間の友人関係として仲良くなれそうなくらい







〇謎の襲撃にあったアベルくん
→やっぱりクリスタと2人きりでいるのは危険だと改めて思った(ガチ)





〇アベルくんのアベルくん
→死の気配を感じた



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