「…………流石に疲れたな今日だけで何体巨人を殺したんだか……」
コイツらもキリがなさすぎて飽きてくるな……と思い一息つくアベルの周りには夥しい量の巨人の死骸が転がっていた。
「…………やろうと思えば割とガスに関しては使わなくても戦えんな」
俺のフィジカルなら足場があって装置で多少の機動力さえ得られれば自力で割と自由に動ける。
ーーーさてあの夢物語みてぇな作戦は成功したのかねぇ……
そうぼんやりと考えたアベルは一旦その場を離れるのだった。
ーーーー
「…………すげぇな本当にいけるもんなんだな」
俺の目の前には大きな岩で塞がれた穴があった。
巨人を殺しながら単独行動でここまで来ちまったが,まぁ怒られねぇだろそういうこと言う奴らも大方死んじまったろうし。
「…………あそこにいるのはイェーガー達か」
チラリと何やら一際蒸気が上がってる場所を見ると,アルミンとアッカーマンがイェーガーを巨人の体から取り出すのに苦戦しているらしい。
ーーーありゃやべぇな
巨人共が2匹群がってるな。アッカーマンがいるが今の状況じゃな……
ーーー俺がやるか
「…………よッと!!」
ドンッ!と近くにあった壁を蹴って加速し,巨人の肩付近まで行くとそのままその巨人を足場にして思いっきり脚力で上に大きく飛び上がってそのまま惰力でうなじを削いだ。やっぱりこれならガスを殆ど使わなくていいな。
「…………もう1匹……って……なんだ?」
もう1匹もやろうとしたら何故か目にも止まらねぇ速さでうなじが削がれて絶命しやがった。誰が……
「…………おいガキ共これはどういう状況だ。それとそこの馬鹿げた脚力してやがる新兵……てめぇはこれからこの壁の中に残った巨人の一掃に加わってもらうぞ」
「…………俺訓練兵なんすけど。もしかしたら仲間の死や巨人の脅威に怯えてるかもとか考えないんすか調査兵団さん」
「……巨人を殺すときに明らかにガスの消費を気にして極限まで消費を抑えた効率のいい戦闘をする冷静な頭があるやつがよく言うじゃねぇか……」
「…………はいはい分かりましたよ何より貴方には逆らわない方がよさそうだ」
あの巨人を殺した動き……微かに目視できたが,この人はただの調査兵じゃない。この人がもしや噂の…………
ーーー人類最強
〜〜〜〜
「…………お前がリヴァイ兵長が言ってた新兵か。俺たちに着いてきている辺り中々やるみたいだがなあんまりーーー」
「ちょっとオルオ!立体機動中にそんな話してたら舌噛むわよ?……あとそれ兵長の真似…?全然似てないんだけど……
君もあんまり気にしないでね?」
「…………はい大丈夫です」
確かこの2人が兵士長が言ってたオルオ・ボザドさんとペトラ・ラルさんか……立体機動の移動だけで分かる,駐屯兵とは明らかに違う練度の技術だ。
「…………前に10m級が1体!!」
「…………チッ…塞がれた壁の中に残った残党の一掃とはいえ妙に巨人が多いなこれで何体目だ……?」
「……そうね。君は援護だけしてくれればいいわ。無理はしないで……討伐は私達がするから」
「………………分かりました。あと多いのは多分俺のせいですね」
「え?」
「…………妙に俺は巨人を寄せ付けるんですよ原因は知りませんがね。今日の奪還作戦でもずっと俺に集まってきてましたよ。」
「そういや……駐屯兵に聞いたが,作戦中……思っていたより前線には巨人が集まってなくて運が良かったと言ってたな……」
やはり前線にはそこまで巨人は集まってなかったらしい。まぁあれだけ俺の所へ来ていたらそりゃそうだろうな。
「まぁいい……ペトラ…補佐を頼むぜ……俺がうなじを切る」
「了解」
「…………俺も援護にまわります」
その瞬間。ラルさんが10m級の足元に素早く飛んで行ったのを見て,俺は腕を削ぐ役だと判断した。
接敵して一足先に行ったラルさんに丁度巨人が標的を向けたのを見た刹那,絶妙なタイミングで俺もラルさんを狙おうとして宙に浮かせてたであろう腕の筋を削いで,そのまま俺がついさっき見た兵士長の動きを身体能力で無理やり真似し,回転しながらもう片方の腕を奪った。
…………ラルさんも上手く足を削いだようでこれでこの巨人の四肢を全て奪った。
ーーーフィジカルだけで無理やり真似したから腰が痛ぇ……あんまりやらないでおくか……てか兵士長はどうやってあんな動きやってんだ??センスと技術か……?
「…………うし!討伐数1追加だ!」
「…………君!凄いわね!とても新兵とは思えない動きだったわ。それに私との連携も合ってたし……あと少しだけ兵長みたいな動きでかっこよかったわよ!」
「……おいおいペトラ…俺への賞賛はないのか?」
「……だってオルオは私とこの新兵くんがあれだけ補佐すれば討伐するのは当たり前でしょう?それよりも凄いのはこの新兵くんよ。とても今回が初めての実戦とは思えない」
「……ありがとうございます」
「……新兵。まぁさっきの動きは悪くなかったが俺からするとまだまだ粗い部分も多いな…………だからペトラに甘やかされてるからってあまり調子に…………グェッ!?」
「……そのまま舌を噛み切って死ねばよかったのに」
変わった人たちだが,実力は間違いないみたいだな。……調査兵団ね。どうやら本当にただの死にたがり達の集団ではないらしい。
俺はそのまま調査兵団に着いていき,壁内に残った巨人の一掃に協力した。その際2体の巨人を捕縛したが,何やら眼鏡をかけた茶髪の女性?が狂喜乱舞していたのが目に入った。
その後。とうとう作戦の全てが一段落して壁上へ登ると何やら明らかに調査兵団の中でも偉い人達に声をかけられた。その中には先程見た狂喜乱舞してた眼鏡の女性もいた。
「………やぁやぁ!君が獅子奮迅の活躍してる新兵くんだね!私は分隊長をしているハンジ・ゾエ!さっきは悪かったね〜まさか巨人が2体も捕獲できると思ってなくてさ!君も討伐と捕獲の両作戦に凄く活躍を残しているんだってね!私からも感謝するよ〜」
「兵士として当然のことをしたまでです」
「あはは!そう固くなんないでよ〜」
「………………スンッ……スンッ…………!?」
「……(何だこの人。人の匂い嗅いで驚いた顔しやがって)」
「あぁごめんごめん。この大柄なのはミケって言ってね。これでも分隊長なんだよ?ただ初めて会う人の匂いを鼻で嗅いでは笑う癖があるんだけど…………どうしたの?ミケ」
「…………新兵。お前は一体今日で何体の巨人を殺した……?というか今までトロスト区に穴を空けられてからどれだけの時間戦い続けたんだ」
「…………数えてはないですね。ただ最初穴を空けられて作戦が開始したばかりの時前衛で沢山殺した,その後補給施設を奪還するまでにも沢山,穴を塞ぐ作戦を開始してからも沢山,成功後の残った巨人の一掃でも沢山…………殺しましたね」
この人はどうやら鼻がよく効くらしい。そのことから推測するに俺から夥しい量の巨人の返り血なりなんなりの匂いを感じ取ったんだろう。正直倒した数なんてもう億劫になるくらいの量殺してるし,冷静に考えるとよくここまで戦えたなと自身で感心した。
「…………そういえば君は戦闘能力の高さだけじゃなくて確か巨人を引き寄せる不思議体質を持ってるんだって?」
「……そうですね。原因は全く心当たりないですけど,この奪還作戦くらいから自覚しました。恐らく奇行種なんでしょうか」
「うーん。特定の個人に興味を寄せる奇行種……それもそれと同じ性質の奇行種がそんな大量にいるとは思えないけどね〜。」
「……まぁそのおかげで間接的に少し作戦が楽になった部分もあるらしいので俺が対処できる限りは今のところメリットしかありませんよ。」
「……それにしても改めてそんな性質持ってて,その巨人達を全部殺してるんだろ?君。本当に新兵?素直に感心するよ〜」
まぁたしかに他の新兵に比べれば,俺は動けてる方だろう。
「…なるほど君が」
「……?あなたは」
「あ。エルヴィン〜そうそうこの子が噂の新兵くんだよ」
長身金髪のどこか風格のある兵士が俺の元へやってきた。エルヴィン?もしやこの人が調査兵団団長の…
「………君には何が見えている。敵は…なんだと思う?」
ーーーエレン・イェーガー。巨人化できる存在。となると私の推測では…
「……?」「?」
何言ってんだこの人?というか眼鏡の人や嗅覚の人も首を傾げてるぞ。
「………………敵ですか」
俺にとっての敵は……
『私は物語の主人公みたいになりたいんだ』
「……未来に記された
「ほう…」
ーーー本当の敵という存在は遠い未来によって決められるということか……なるほど。少なくとも彼は私が考えているような裏切り者ではなさそうだ
「……君。希望所属は」
「……調査兵団です」
「…そうか。ぜひ歓迎しよう。それと調査兵団に入ってからは私の元へ来てくれ。君に重要な話がある。」
「?了解しました」
団長からそんな言葉をかけられ,結局その後すぐに俺は仲間たちの元へ帰った。重要な話って一体なんだ?
ーーーーーー
「……全く。折角戦いが終わって一段落ついたってのに,今度は死体の撤去かい。少しは休ませて欲しいもんだ…なぁ?ジャン」
「……こんな惨状でいつもと変わらず飄々としてるてめぇが俺は1番怖ぇよ。」
「……ま。一歩間違えたらこの死体の山に仲間入りしてたかもしんねぇ場面が沢山あったしな。もうそこまで死に対しての感情はねぇさ」
「笑えねぇ冗談だな…ただあの巨人共の群れを殺して生還してきたてめぇは頼もしい限りだ。女好き野郎。俺はもうてめぇが俺ら同期の中で1番強いと確信してる。 」
「はっ…随分と高く買ってくれてるんだな」
にしても本当に死体だらけだな。人によっては失神しちまうんじゃねぇか?…さっさと終わらせて早く休みたいもんだ。団長の重要な話とやらも気になるしな。
「…………お前…」
「?どうしたジャン」
突然俺の前を歩いていたジャンが立ち止まったと思ったら,何か神妙なツラして何処か1点を見てる。一体何が……?
「……………マルコ…か…?」
「!」
その言葉を聞いて俺もジャンが見ていた方向を見るとそこには半身が噛み砕かれたマルコの死体があった。
「………一体…な…なんで…」
動揺するジャンの元に同じく死体撤去をしていた兵士の女性が死体の身元を確認するために何やら話しているが,俺はそんな事は頭に入らなかった。それよりも…………
ーーー立体機動装置がねぇ……
アイリスも最後に立体機動装置を俺に手放して死んだ…だからこそ何となく気づいてしまったのかもしれない。
…特に近くに立体機動装置が転がってる様子もなかった。巨人が立体機動装置を外す知能なんてあるはずもねぇ…何よりまさか自分から戦場で立体機動装置を手放すなんて馬鹿な真似をするはずがない。
アイリスのように誰かを生き残らせるために託した?いや…あれは状況が状況だからこそ起きた特殊例だ。このトロスト区奪還作戦でそんな事が起きるはずは無い。
ーーー誰かが……奪った…
それに死に方も不自然だ。まずマルコの死体は巨人に吐き出された死体じゃねぇ…綺麗に横たわっている。ということは捕食されている途中で手放されたってことだ。何より半身だけ噛み砕かれるなんてこと…有り得るか?普通ならそのまま丸ごと食われるか半身から噛んだということはそのまま首ごとヤラレててもおかしくはねぇ…明らかに捕食途中に助けられた様子がある。
だがそれだと矛盾が起きる。誰かに明らかな敵意を持って立体機動装置を奪われているのに,誰かに助けられている。
……あるとすれば
何故ならわざわざ立体機動装置を完全に外してまで確実な殺意を持ってマルコを殺した奴が,そんな誰かに助けられているのを見守っているような真似…するか?
「………アベル…」
「……ん?あぁ…身元の報告は終わったのかジャン」
「……あぁ…」
「…………この戦場じゃ誰が死んでもおかしくねぇ。それはマルコも例外じゃなかったってことだろう」
「………分かってる。誰もが劇的に死ねるわけじゃないなんてことは…… 」
「…………ならお前はどうするんだ」
「…………俺は…俺は……………………………!」
「………その返答は後で聞くとするか。今はとにかくこの死体撤去を終わらすぞ」
「………分かった」
お前も…
そうだ。誰しも劇的に死ねる訳じゃねぇ。この戦いで死んだ
………死んだ意味はあったのか。そいつの人生に何か意味があったのか……そんなの分かるわけがない。死んだら…全員等しく巨人の腹の中で惨たらしく消えちまうんだからな。
死骸に意味なんて無い
ーーーじゃあ
その死骸に生かされた俺達は…何の意味がある?
俺たちがやれることは……その死骸を背負って生き続けることだ。
自分が死ねば…その意味は無くし…また別のヤツにその意味を全て背負わせる。…それを繰り返して繰り返して…いつかこの戦いの結末に辿り着いた瞬間…今までの全ての死骸共とその時を生きる生者達に意味が宿る。
だから俺は生き続けてみせる。
いつか…この戦いの結末を見るまで生き延びて……その
ーーーそうすることで…俺がお前を
ーーーお前の人生に意味をつけてみせる。
ーーーこの
アイリス・カルディアを
だから待っててくれ…いつかこの戦いが終わる時まで