平凡になりたかった俺と特別になりたかった君へ


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作:oir.1
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第2話


 

 

 

「あ!おはよう〜アベル」

 

「…アイリスか」

 

適性検査を合格できなかったヤツの最後のチャンスである今日の訓練に向かう途中,昨日俺の前で堂々と夢を語った女…アイリスが話しかけてきた。

 

「……本当に俺に着いてくるんだな」

 

「…そりゃあね!私の中で今のところ一番凄い人なんだから!」

 

「……俺は別に普通の人間だろ。わりぃがお前の夢に役立てるような人間じゃねぇよ」

 

「……うーん別に最初はただ私の夢のためにアベルに話しかけたけどさ。今は少し違うよ」

 

「…?」

 

俺は疑問符を浮かべた。この女が俺に夢以外の目的で関わる理由が見つけられなかったからだ。

 

「……だってアベルは私の夢を馬鹿にしなかったでしょ?今は…純粋にもっとアベルと仲良くなりたいと思ってるよ。たとえアベルが私が思ってるような凄い人じゃなくてもね 」

 

「………そーかい」

 

「あはは!もしかして照れた?」

 

「……うるせぇさっさと行くぞ」

 

少し首を傾け隣からこちらの顔を覗くように見るアイリスから目を逸らしながら急ぎ足で訓練へ向かう。…別に照れてはない。ただ俺の事をそんな風に好意的に捉える人間が初めてだっただけだ。

 

……いや俺の親は優しい…()()は。愛されて生きてきたはずだ。けど…前は…

 

「……ね………ル」

 

思い出したくもないこと思い出したな……最悪だ……

 

「……ね……ア……ル」

 

……だから俺は普通の人間なんだ

 

「ねぇ!アベル!」

 

「…!クリスタ…」

 

「……さっきからボーッとしてたけど大丈夫?」

 

いつの間にか会って,俺を見かけて話しかけていたであろうクリスタがどうしたの?とでも言いたげに首を傾げてこちらを見ていた。隣にいたアイリスも心配そうな目でボソッと俺に耳打ちしてきた。

 

「……おいおいクリスタの挨拶を無視するなんて随分じゃないか…アベル 」

 

「悪ぃなちょっと考え事があってボーッとしてた。クリスタもわりぃ 」

 

「うん別に大丈夫だよ!それより大丈夫?体調の方とか…」

 

「あぁ…別に問題ない」

 

「あと……そのアベルの隣の子は…」

 

あぁ…そういえばクリスタとユミルは知らないか。といっても俺がわざわざ説明すんのも面倒だな。第一なんて言えばいいんだ。

 

「私はアイリス・カルディア!昨日の夜からアベルと仲良くしてもらってるんだよろしくね?」

 

「うん!よろしくアイリス!私も仲良くなれたら嬉しいな!」

 

「うんうん!私もクリスタみたいな可愛い子とは仲良くなりたいな!」

 

「…そ……そんなことないよ…可愛いなんて…」

 

仲良さげに会話するクリスタとアイリスを片目にぼちぼち歩いているとそっとユミルが近づいてきて俺に話しかけてくる。

 

「いやぁ…照れてるクリスタも可愛いな……それよりアベル…」

 

「……なんだ?」

 

「お前…"昨日の夜から仲良くしてる"なんて中々やるじゃないか…その冷めた様子と違って意外と女好きか?」

 

「……随分とお花畑な想像だな。そんな甘い関係じゃねぇよ。ただ本当に昨日の夜あっちから話しかけられて縁が出来ただけだ」

 

「ほーん…まぁいいさ。でもアベル周り見てみろよ。真実がどうあれ…今のお前はクリスタに私,それにそのアイリスの女3人侍らせてる軽薄な男にしか見えないぜ?」

 

「……」

 

確かにさっきから妙に視線を感じると思ったが,そういうことか。別にそんな事実はないんだがな。特にクリスタの傍にいるってのもあって男からの射殺すような目線がすげぇ…あのライナー・ブラウンとかいう奴のが特にな。

 

「……男の友人も作るべきか」

 

「今のお前の状況を見て,そんな仲良くなれると思うか?」

 

「……」

 

「くっくっくっ……お前昨日から思ってたが見た目とその冷めた雰囲気に反して意外と面白い奴だな」

 

「……いい性格した女だ」

 

まだ訓練も始まってねぇのに妙に疲れた気がしながら俺は歩くのだった。

 

さて。適性検査だが,俺は昨日合格してるから特にやることは無い。皆が興味を持ってエレン・イェーガーの方を見ているが,問題なくクリアしたようだ。それに中々のバランス感覚で訓練兵の中でも十分上澄みの方だろう昨日馬鹿にしてたやつはバツが悪そうにしている。

 

 

 

ーーーやっぱり装備の問題だったか

 

 

 

イェーガーはアルミン・アルレルトと一緒にベルトなどの点検項目外の部分も調べた結果やはりベルトに欠損が見つかったらしい。それを直ぐに教官に報告して装備を変えてもらった結果問題なくクリア…ということのようだ。

 

まぁ…これで適性検査は終了。これから訓練も本格的に始まっていくってことか。どうなることかねぇ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練によっては死んだり,開拓地行きになったりする奴もいると思うが……少なくとも縁が出来た奴らはそうなっては欲しくないなと…絶対に口には出さず心の中で思うのだった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「……アイリス」

 

「ふっ!やぁっ!なに!?」

 

「これ真面目にやる意味あんのか?」

 

「そりゃ訓練なんだから真面目にやるよ!それに強くなるためならこういうのも必要かもしれないしね!」

 

「…そーかい」

 

訓練兵になって少し経ち,過酷な訓練にも慣れ始めた頃…対人格闘術の訓練では俺はアイリスと組んでやっていた。

格闘術の訓練をして数回…何となく訓練兵達はこれは流してやる休憩タイムだーと考えて皆どこを見ても手を抜いてサボってるやつが大半だ。…成績にもそこまで加算されねぇしな。

 

「……もう!手抜いてるでしょ!アベル!」

 

「……抜いてない抜いてない本気だよ」

 

「……むー!そう言うなら私今日はミーナと組むから!ミーナは真面目だし!」

 

「おいおい…さすがにそれは困るな…相手がいないとなっちゃさすがに教官にどやされちまう…」

 

適当に手を抜いて時間を過ごしていたらアイリスが怒っちまった。さすがに相手がいなくなんのは不味い…どうしたもんか…

 

「……ならアニとやったら?丁度アニも今1人だよ」

 

「アニ?……あぁレオンハートか…嫌だなアイツ見るからに強ぇじゃねぇかイェーガーやブラウンがよくボコボコに投げ飛ばされてるだろ」

 

「真面目にやらないアベルが悪いもん!アニに蹴飛ばされて少しは改心するといいよ!」

 

「いやいやそんな…っておい!待て!…はぁ」

 

俺の呼びかけも虚しくアイリスはミーナと訓練しにいった。こりゃ本格的にレオンハートとやるしかねぇな。俺は渋々レオンハートと組みに向かう。

 

「……レオンハートいいか?」

 

「…なに?」

 

「……訓練の相手になってくれよ。手抜きでもいいぞ」

 

「……ふん…そういうことかい。相手がいないって訳?」

 

「……悪かったな」

 

レオンハートは俺の事情を察してスっと目の前に立つ……って待て待てコイツ真面目にやろうとしてないか?

 

「……俺の目には随分本気で構えてるように見えるのは気のせいか」

 

「……生憎私とやるなら手は抜かないよ。嫌なら別の相手を探すんだね。」

 

「…意外と真面目なんだなそれともイェーガーの影響か?」

 

「……っ…煩いよ」

 

こりゃ図星だなと思った。最近よくイェーガーとレオンハートが一緒に格闘術の訓練をしているのは見ている。今日は珍しくイェーガーがブラウンと訓練しているのもあってレオンハートは1人だったのだろう。

 

「……ふっ!!」

 

「おいおい…いきなりかよならず者の役を決めるんじゃねえのか?」

 

「……アンタ……… 」

 

いきなり足元に鋭い蹴り足飛んできて咄嗟にバックステップで回避する。…血の気の多い女だな

 

「……はっ!!」

 

「……聞く耳はない…と」

 

今度は鋭い回し蹴りが飛んできたからあえて真正面で受けた。

 

「……っ!!アンタ……今まで随分手を抜いてたね!」

 

「……そんなことはねーよ」

 

「……どんな体してんだい…まるで鋼を蹴ってるみたいだよ」

 

「……しけたパンとうっすいスープで出来た体だよお前も変わんねーだろ 」

 

レオンハートが驚いたように俺を睨みつけるが…気にしない。レオンハートもスイッチが入ったのかすげぇ連撃を仕掛けてくるが受け続ける。別に効かない。

 

「……はぁ…はぁ…アンタ私の事を舐めてるの?1回も反撃もせずにさ…!!」

 

「……女を殴るのは趣味じゃねぇんだ。第一この格闘術の訓練をそんなに本気でやる意味はねぇ」

 

「……ふん…随分優しいんだね…気に食わないよ…!!」

 

こいつ…だいぶ危ねぇ箇所も狙ってくるようになったな殺す気か?それにこんな派手にやりまくってるからか周りの視線もうるせぇ…そろそろ終わらすか…?

 

「……面倒だな。そんなに望むなら俺も少し反撃するか…」

 

「……!」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間。アニの視界がグルリと揺れ,視界が青色に染まった……空の色だ。

 

「……はい終わり。次はお前がならず者な」

 

「……う……く……」

 

正面から押し倒され,押さえつけられてナイフを首元に当てられている。しかも拘束する腕の力がまるで大きな熊に抑えられてるかのような圧力と力だ…どんな馬鹿げた力をしてるんだい…とアニは思う。

 

「………アンタ…何でそんなに手を抜いて生きるの…?その力…対人格闘術だけじゃない立体機動の訓練だってだいぶ手を抜いてるでしょ…」

 

「………………なんでだろうな。分からんが…俺は()()()()()だそれ以上でもそれ以下でもねーよ」

 

「………そうかい」

 

アニは何となくアベルに事情があることを察して引き下がった。恐らく触れられたくない部分なんだろう。

 

「……まぁ…折角この訓練兵団で楽しめそうな相手を見つけたんだ…まだ付き合ってもらうよ」

 

「……血気盛んなことで」

 

「…ふっ!!」

 

そうしてこちらに飛んでくるアニの蹴り足を見ながら今日の格闘術の訓練は終わっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「……おいアイリス大丈夫か」

 

「……う…うん…」

 

兵士にとって最も重要な技能…立体機動術の訓練中,アベルはいつもながら一緒にいるアイリスに心配の声をかけた。

 

「……気にすんな追いつこうと飛ばしすぎても事故って死ぬだけだ」

 

「……アベルは本当はもっと前に行けるでしょ?なら……」

 

「……買いかぶりすぎだ。俺にそこまでの才能はねーよよくて中位だろ」

 

アイリスはそこまで特質して成績が良いわけじゃねぇ…立体機動も対人格闘も馬術も座学も……

確かに自身の夢のために必死に女の身で努力を重ねて食らいついているが……それでようやく普通レベルだ。俺は口にはしていないが……恐らくアイリスに何も特別な才能がないことは明白だと思った。

 

「……はぁ…はぁ……くそ……なんで……!!」

 

「…………」

 

俺はずっと伝えられないでいた。『その夢は諦めろ』…恐らくアイリスにとって最も残酷な言葉を俺はずっと胸の内に秘めていた。このままじゃコイツはいつか…どこかで折れちまう…そう確信めいた予想を持って…

 

「………アイリス」

 

「…あはは……アベルごめんね。私のせいでアベルまで下の方になっちゃった。」

 

立体機動の訓練の結果は……真ん中よりも少し下…お世辞にも良い結果とは言えなかった。気丈に振舞ってるが,どこか落ち込んだ様子のアイリスを見て俺は……

 

「……なぁアイリス」

 

「…なに?アベル」

 

「今日の夜話したいことがある。教官の目がつかない所で会えないか」

 

「……あはは!大胆だねアベル!そんな夜のお誘いなんてさ」

 

「……」

 

「あはは……ごめんね分かった。じゃあ夕食後にね……」

 

空元気なアイリスを見送って俺は立ち尽くす……

…訓練兵に入ってだいぶ時間が過ぎたと思う。長いようにも感じるし短いようにも感じる。ただ少なくとも俺は…あのアイリス・カルディアという少女のことは嫌いじゃない。一緒に居ることが多ければそれとなくアイツの性格や本質だって見えてくる。

 

 

 

 

アイリスは…普通に笑って,楽しんで,喜んで…悲しんで…頑張って…そして苦しんで…どこまでも普通の女だった。

 

何よりアイツは…今の今まで俺について何か言及してくることもなかった。アイリスは気づいているはずだ。俺が明らかに手を抜いてることを何かを隠してることを。だがアイツはこんだけ一緒に居てもそれをわざわざ聞いてくることは無かった。

 

 

 

 

 

 

偶々出来ちまった奇妙な縁だが…俺はアイツと一緒にいるのは居心地が良かった。

そんなことをうっすらと頭の中で考えながら夕食時,クリスタに話しかけられた。

 

「……ねぇアベル。アイリス…元気なかったけど何か知ってる?」

 

「……さぁな俺にはさっぱりだ」

 

「おいおいあんだけ毎日ベタベタ一緒にいて何も知らないなんてことないだろ?それとも痴話喧嘩か?」

 

「俺とアイリスはそんな関係じゃねーよ。」

 

「ならなんであんな毎日2人で付きっきりなんだよ。知ってるか?お前ら訓練兵の中じゃ付き合ってるってもう確信されてんだぞ」

 

そりゃ初耳だな。いやまぁ本人たちにわざわざ言うわけねぇか。俺はユミルの話を適当に聞きながら返した。

 

「…俺とアイリスが一緒にいるのは……」

 

「…なんだよ?」

 

「……」

 

口に出したことはなかった。何となく照れ臭くて。あいつから話しかけられて始まった縁で,普段だってあいつが俺に着いてくるから一緒にいることが多かっただけだ…でも今は

 

「……何となく居心地がいいからだ。」

 

「……なんだ何を言うかと思ったら惚気かよ。お前も初めに会った頃と随分と変わったもんだな」

 

「…違ぇよ」

 

「…わぁ…でも私とっても素敵だと思うな!」

 

「クリスタも勘違いすんな…」

 

……失敗したなクリスタはすげぇキラキラした目を向けてくるようになったし,ユミルのやつはくそムカつくニヤケ顔を向けてきてやがる言うんじゃなかった…

 

まぁいいそれよりさっさと飯を食ってあいつと話をしねぇとな……

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

私にはとっても興味を持ってる1人の男の子がいる。名前はアベル・フィリア。白い髪に薄い紫色の瞳…顔立ちはちょっと初めてみると怖いかもしれないけど…カッコイイと…思う。

 

出会いは何となくだった。姿勢制御はトップとは行かなくてもまぁ上手な方だったし,何より一番興味深かったのはその後の姿勢制御を失敗したエレンへの論理的で的確な指摘とミカサを簡単に退けた力だ。

…何となく本当に勘だけどこの人は凄い特別な人なんだって思った。きっと頭もキレるし腕だって立つそんな凄い人なんだと思ったんだ。だから私の夢…物語の主人公みたいな何か特別な凄い人間になりたいって夢にこの人と関われば何か近づけるんじゃないかと考えた。

 

そこからすぐに話しかけにいって私とアベルの縁は始まった。

なるべく一緒にいることを多くして…共に訓練を受けていった。私は正直必死だったけどアベルはいつも涼しい顔をしていた。…でも彼は多分意図的に手を抜いてる。アベルの成績はどれも大体丁度真ん中くらいに調整しているように感じた。

 

最初は…腹が立った。だって私は自分で分かっていたんだ私は…何も特別な才能が無い人間なんだって。だから必死に努力して上位に行くために死にものぐるいで頑張った…でも結果はいつも平均程度……だからきっと凄い才能があるのにわざと手を抜くアベルに苛立ってしまった。

 

でも何となく…ずっと一緒にいるとその人の性格や本質が分かってくるんだ。アベルは思ったよりも子供っぽいところがあるし,意外とノリだっていい。それに見た目に反して割と面白い人だし,想像より人を見てる。

 

何よりアベルは私の夢を馬鹿にしなかったように意外と芯があってとっても優しい人だった。……けど時折何か寂しそうな表情をする。多分だけとアベルは何か隠してることがある。そしてきっとそれが理由で何か事情があって手を抜いているんだと思った。

 

私はそれをわざわざ彼に聞かない…きっと触れられたくない部分なんだって分かってるから…こう考えてからは彼に苛立ちは無くなって…ただ1人の友人として……何より…私にとっての……

 

 

今日アベルに夜に話がしたいって呼ばれた。私は教官の見回りが来ないと噂の場所でアベルを待つ。すると……夜の暗闇から彼が歩いてきた。

 

「……待ったか?アイリス」

 

「ううん…大丈夫だよ」

 

彼が…アベルが来た。何を…言われるんだろうか…多分今日の立体機動術で落ち込んでたことに関してだと思うけど…

 

「………なぁアイリス。お前は俺に夢を話してくれたろ」

 

「……?うん」

 

「……俺もさお前に…俺自身のことを話そうと思うんだ」

 

「…え?」

 

「お前は俺に色々話してくれるけどよ…俺は一回も自分のことをお前に話したこと…ないだろ」

 

そう言われるとそうだ。アベルは一度も自分のことを話したことがない。何となく触れて欲しくなさそうだから聞かなかったこともあるけど…

 

「……俺は偶然できたお前との縁だが…いつの間にかお前と一緒にいるのが居心地が良く思ってた。」

 

「……そう…なの?」

 

「…だから俺自身の話を…お前に聞いて欲しい。お前の…友人として…しっかり話そうと思う。」

 

意外だった。アベルが私と一緒にいるのを良く思ってたなんて…だって私が無理やり傍にいるだけなんだって自分では思ってたから

 

「………俺は馬鹿みてぇな力を持ってる」

 

「……アニとかが…偶に言ってるのを聞いたことがあるよ」

 

「…それも全力じゃねぇ…その気になればもっと馬鹿げた力を出せる。俺は…産まれた時から……()()()()()()()()ずっとこの力を持って生きてきた。 」

 

「………その前?」

 

「あぁ…気にしないでくれなんでも無い」

 

アベルはどこかバツが悪そうに目を逸らした。…多分これは言及しない方がいいやつなのだろう

 

「……俺は…この力のせいで幼い時から化け物扱いだった…母親は俺を気味悪がって放任したし…学k…友達も俺を虐げた……」

 

「……」

 

「俺は…最初この力がすげぇもんだと思ってたんだ。何かで一番になれば母親に褒められる…友達ができる…幼い俺はそうだと思ってた。だからこの力を思う存分運動で使って…特別な人間…1番になろうとした。」

 

「……それは」

 

「……けど行き過ぎた力は異常となった。さっき言った通り物の見事に化け物の誕生だ。同じ人間だと思われなくなった。

俺にとってはそう…呪いみてぇな悪魔の力だ。」

 

今まで知らなかったアベルの過去…特別な人間という言葉に私は反応してしまった。

 

「………俺はただ誰かに認められたかったんだ…誰かに求められたかった……んだ……」

 

「……アベル」

 

「……それから俺はもうこの力を大っぴらに使うことはなくなった。人を傷つける可能性もあるし,何より普通の人間でいることが一番平和に過ごせるからだ。」

 

「……なんで今まで言ってくれなかったの?」

 

「……また拒絶されたくなかったからだ。俺はここで出来た縁を…お前との縁を失いたくないって思っちまった。」

 

そうかそうだったんだ…アベルは……

 

「……ふふ…そっかアベルも意外と普通の人間だったんだね」

 

「……え?」

 

「……アベルの事私は何か特別な凄い人だと思ってた。けど…今の話を聞いて貴方は人並みに寂しがりで,繊細で,そして…優しい人間なんだね」

 

「……」

 

アベルはきっと私とそう変わらない…たった1人の人間。いや私が今まで勝手に不貞腐れてただけで訓練で成績上位の人達だって案外私と変わらない人間なんだと思う。

…皆…それぞれが色々な想いを持ってる人なんだ。そう思うとさっきまでの重い気持ちが嘘かのように軽くなった気がした。

 

「……俺は…だからお前に憧れた。なんの夢も無く,惰性で平凡を目指してる俺と比べて明確な夢を持って…そこに本気で向かってるお前に……」

 

「……」

 

「……だから申し訳なかった…こんな無気力で力を持ってても手を抜くような俺に着いてきているお前に…」

 

「…知ってたよ。何か理由があって手を抜いてるんだって」

 

そう知っていた。それに最初は腹が立った。でも今は……

 

「…だから私はもうアベルに着いていくのは辞めた」

 

「……そうか」

 

「…ふふ。なんでそんな悲しそうな顔をするの?」

 

「え?」

 

そう私はアベルに着いていくを辞める。これからは…

 

「……これからは同じ対等な友達としてアベルと一緒に居るよ!よろしくね?」

 

「……!!拒絶…しないのか?」

 

「……するわけないじゃん。アベルがどんな力を持ってようといくら手を抜いてようと今の私はアベルの力や才能を見て一緒にいるんじゃなくてたった一人の人間として好きだから一緒に居たいと思ってるんだもん。」

 

「……そ…うか」

 

「私の事心配して今日話してくれたんでしょ?…ありがとね。おかげで元気出たよ。優しいねアベル」

 

「……ありがとうなアイリス…」

 

何となく…今日明確にアベルとの仲が深まった気がした。

……これからももっと仲良くなれたらいいな。そしたらいつかはーーー

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

アルミンside

 

 

 

 

僕たち訓練兵団の中では1人とても不思議な人物がいる。

それはアベル・フィリアという兵士だ。彼は少し怖い風貌をしながらもかなり常識的で,意外にもノリが良かったり見た目とは裏腹に好印象な人物だ。…でも他の男の訓練兵からはそこまで良い印象を持たれてない。

 

理由は単純彼はいつもクリスタ,ユミル,アイリスの女性3人のグループと仲良く行動してるからだ。その中にクリスタがいることから端的に言えば妬まれてるのだ。正直僕も結構羨まs…ゴホン……ただそんなアベルが不思議な人物と言われてるのは成績上位者の中では明白だった。なぜなら……

 

「………うーんやっぱりおかしいよね…」

 

「どうしたの?マルコ」

 

「……アベルってさ明らかに訓練で手を抜いてるよね。」

 

ある日アベルの事を気にかけてる1人であるマルコがそんなことを僕に言ってきた。

 

「………あーそれは何となくわかるぜあの野郎前に立体機動で一緒に組んだ時スピードも緩いし,標的に対しても積極的じゃねぇが立体機動自体はかなり安定してるし,補佐がかなり的確だった。正直癪だがやりやすかったぜ」

 

「……ジャンは最近アベルと仲良さそうにしてるよね」

 

「ふん…あの女好き野郎から女を堕とすコツのひとつやふたつ聞きたいと思ってるだけだ」

 

「…あはは……」

 

確かに…と僕は思った。アベルは基本的にアイリスと共に訓練していてスピードもそれに合わせている,それに標的の討伐もかなり消極的だけどよく見ると立体機動の動作や空中での身のこなしはかなり安定してるように思える。

 

「……つーか手抜きとか教官は何も言わねーのかよ」

 

「……うーん多分だけどアベルの手抜きのラインが際どいんだと思うよ。実際に本気を見たことがないから教官もそれを言及したところで意味が無いと思う。まぁ…偶に凄い厳しい目線でアベルを見てるけどね」

 

そう。アベルは基本的に訓練の最初から殆ど一定のラインの成績なのだ。というか恐らく周りの成長具合を見てそれに合わせて成績を真ん中辺りに調整している。

 

「……もしかしたらユミルとかクリスタ,アイリスに聞けば何かわかるかも。あの3人なら仲良いと思うし。」

 

「たしかに周りの人にアベルについて聞いてみてもいいかも」

 

マルコの提案に僕も賛成する。

 

「お前らなんでそんなアベルについてご熱心なんだよなんかあんのか?」

 

「いや。僕はあの適性検査の訓練の頃からアベルとは話したいと思ってたんだ。実質的に彼のおかげでエレンは上手く合格出来たわけだし」

 

「……僕もアルミンと一緒かなあの時の彼の指摘は僕には無い発想と視点だったから話してみたいと思ってる。」

 

「ほーん…まぁ頑張れよ…少なくとも俺もあの野郎はとんだ無気力野郎だと思ってるぜ」

 

そんな会話をするとジャンはこの場を去っていき,僕とマルコは早速周りの人達にアベルについて聞いて回ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……てことなんだけどアニはどう思う?」

 

「……はぁ?なんで私に…そんなのクリスタかアイリスに聞けばいいだろ」

 

「アニも偶に格闘術の訓練を一緒にやってるから…どう思ってるのかなって」

 

僕達はまずはアニに聞くことにした。アニは偶に対人格闘でアベルと組んでいるのを見ている。…これも驚きのひとつなんだけどアベルはこの訓練であのアニに最初勝っていたんだよね。訓練兵の中でもかなり話題になってた。今は手を抜いてるのかほとんど互角って感じだけど。

 

「………得体の知れない化け物。それが私のあいつへの評価だよ」

 

「……得体の知れない化け物?」

 

「……アンタらは知らないだろうけどあいつ…化け物じみた力を持ってるミカサなんか比じゃないくらいにね」

 

「……さすがにそれは言い過ぎじゃ…」

 

僕は幼なじみでミカサの強さを間近に見てきたから咄嗟に否定してしまう。そんなはずはないと

 

「……あぁ…言い方が悪かったねこの場合の力っていうのは単純に筋力の話をしてるんだよ。ミカサの場合は筋力は勿論多分身体操作とセンスが良いと思うけど…あいつはそういう技術とかじゃなくて純粋な筋力…力が馬鹿げてる。」

 

「……格闘術が優れてるアニから聞くと説得力があるね」

 

「そういうこと…アイツは技術やセンスなんてものは何も無いよ。純粋な馬鹿げた筋力とフィジカルを恐らく持ってる…そして何かしらの理由でそれを隠して手を抜いてる…私が何となく分かるのはそれくらいだよ。」

 

「なるほど…ありがとうアニ」

 

こうして僕たちはアニの元を去り,別の人の所へ行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ユミルはどう思ってる?」

 

「……私に話しかけてくるなんて珍しいと思ったら…そういう事か」

 

次に聞いたのはユミルだ。よくグループでアベルと一緒にいる1人であるユミルならかなり良いことを聞ける気がした。

 

「……アベルについてどう思うかねぇ……よく分からんが恐らく腕が立つ寂しがりな奴ってとこかな」

 

「寂しがり?そんなイメージはないけど…」

 

「はっ!そりゃアンタらには分からないだろう…よく考えてみろアイツは何気に腐れ縁の私やクリスタとなんやかんや一緒にいるし,アイリスに付き纏われてるように見えるが割と気にかけてたりしている。見た目に反して意外と優男なんだよアイツは…それに多分何かしら友人や仲間を大切にしてるタイプだ」

 

「……確かにアベルって冷たいような雰囲気だけど割と誰かと一緒にいるよね」

 

「……ユミルの言う通り…意外と人情深い…のかな?」

 

「ま。私から言えんのはそれだけだよもういいだろ?私は早くクリスタのところに行きたいんだ」

 

そう言うとユミルは僕達の元を去っていった。でもユミルのお陰でアベルの意外な1面を知れた気がした。やっぱり彼女は適当に見えて意外と洞察力があるんだと僕は思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……クリスタは…どうかな?」

 

「……うーんアベルについてかぁ……多分だけどアイリスの事は好きだと思うよ!」

 

「…え?そうなの?」

 

次に聞いたのはクリスタ。けどそんなクリスタからは意外な言葉が返ってきた。アベルがアイリスの事を好き?確かに付き合ってるって噂はあったけど……

 

「だってアベルはいっつも訓練でアイリスに合わせて補佐してあげてるし,この間だって休みの日に2人で出かけたりしてたよ?好きな人でもないのにそんなに仲良くするかなぁ…?」

 

「まぁ…それは確かに…」

 

「……それに最近何となくアベルのアイリスに対しての距離が縮まってる気がする!いいなぁ…私も憧れちゃうな…」

 

可愛い…じゃなくて!やっぱりアベルと一番仲良いのはアイリスなのかな…じゃあ多分彼女に聞けば一番アベルについて分かるかも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でアイリスに聞きに来たんだけど…どうかな?」

 

「…うーんでも聞いた感じ私から今までの人以上の答えは出ないと思うけどな」

 

「そうなの?」

 

そして最後にアイリスに聞きに来たけど…意外にもアイリスからは言うことはないらしい。

 

「…というかわざわざみんなに聞かないでアベルと直接話してみたら?」

 

「…い,いや……アベルはちょっと不思議な所が多いから…周りの人にある程度聞いてから話しかけてみようかなって…」

 

「あーまぁ…確かに何も知らず話しかけるには結構怖い風貌だよねアベル」

 

ただでさえ気弱な僕がなんの前情報も無しにアベルに話しかけるのは正直…難易度が高かった。申し訳ないけど…アベルの見た目は割と怖い印象が付く。多分マルコも似た考えだと思う。

 

「……まぁでもアベルは間違いなく良い人だよ意外と面白いし」

 

「そうだよな…やっぱり僕達から直接アベルと話してみようと思う」

 

「うん!それにアベルは私の馬鹿げた夢も馬鹿にせずに肯定してくれたし,今もその為に力を貸してくれてる。私から言えることがあるとすれば…アベルはどこまでも芯があって真っ直ぐな人だよ

 

「……なるほど」

 

何となくだけど…このアイリスの言葉は本当なんだろうなって感じた。

 

その後僕とマルコは2人でアベルに話しかけてみると皆が言う通り,訓練で意図的に手を抜いてたり力を隠してたり色々不思議な所はあるけど…見た目に反してとても親しみやすくて面白い人だった。何よりアベルの思考は僕やマルコとは別の角度からの見解が多いから,一緒に座学をするととても捗った。

……最初から自分たちで話しかけるべきだったなと少し後悔しながら,僕たちはアベルと仲が少し良くなった気がしたーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








予め言っとくとアベルくんはアッカーマンとかそういう種族な訳ではないです。
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