Persona5 ーRevealedー   作:TATAL

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蓮が男だったら……マルキパレスにノータイムで殴り込みにいきそう

P5Xでジョーカーなんとか引けたので嬉しさのあまり勢いで書き上げました



Interlude -Alternative account-

「徹」

 

 背中にかけられた声に振り向けば、そこに立っていたのは癖のある黒髪をした彼。

 

「や、蓮。どうかしたかい?」

 

「見かけたから、声を掛けてみた」

 

 僕の言葉に柔らかく微笑んで隣に来た蓮。肩に担いだバッグから青い目がこちらをじっと見ていた。

 

「やっぱり嫌われてるのかな?」

 

「人見知りなだけだ」

 

 彼のバッグには相棒であるモルガナという猫がいる。猫が入っても余裕がある程度にはバッグに他の荷物は入っていないんだねと言えば、蓮は通学の時に読む本と筆記用具くらいだと言って笑った。それでこの前の定期考査では学年トップだというのだから、色々と彼が規格外なことが分かる。

 

「今日はバイトも無いのか?」

 

「そうだね、他に用事も無いし、少し駅前でも寄って帰ろうかと思ってたところだよ」

 

「それならちょうど良かった」

 

「ちょうど良い?」

 

「こっちも今はひと段落したところだ。お礼でもさせてくれ」

 

 そう言うと蓮は僕の返事も待たず、足取りも軽く前を歩く。僕はと言えば、お礼をされるようなことをしただろうかと内心首を傾げながら言われるがままに彼について行く。どこへ行くのかと思えば、彼に連れてこられたのはルブランだった。

 

「ただいま」

 

「おう、帰ったか……、っと、いらっしゃい」

 

「どうも、佐倉さん」

 

 扉を開ければ、入り口に取り付けられたベルが軽やかな音を立てて店主に来客を知らせる。その音に読んでいた新聞から顔を上げた佐倉さんが、僕を見ていつもの仏頂面で出迎えてくれた。

 

「荷物を置いてくる、座って待ってて」

 

 蓮に促されるままにカウンターに腰かける。どうやら今日は他にお客さんもいないようで、佐倉さんも少し暇を持て余しているようだった。

 

「アイツに連れてこられたな?」

 

「他に用事も無かったですし、それにここのコーヒーは美味しいですからね。呼ばれなくとも顔を出してたと思いますよ」

 

「へっ、ありがとよ。ま、今日は俺が淹れることは無ぇだろうがな」

 

「ん? そうなんですか?」

 

 豆を切らしてしまったのだろうか、もしそうだとしたら残念だ。そう思っていると、荷物を置いた蓮が下りてくる。何故かエプロンを身に着けて。

 

「お待たせ」

 

「大丈夫だよ。そのエプロンは?」

 

「最近、ようやく合格点を貰えてね」

 

 僕の問いに答えになっていない言葉を返しながら、蓮は僕の隣に座るのかと思いきやカウンターの向こう側、佐倉さんと同じ側に立つ。そして棚からコーヒー豆の入っている缶を取り出せば、僕の方へとちらりと視線を向けた。

 

「ご注文は?」

 

 その言葉に、僕は先ほどの佐倉さんの言わんとしていたことがようやく理解できた。蓮が今日、こうして僕を連れてくることを佐倉さんに伝えていたかどうかは定かじゃないけれど、こうすることは何となく分かっていたんだろう。

 

「そういうことね。それじゃ、おすすめで」

 

「了解」

 

 僕の言葉を聞いた蓮は、慣れたような手つきでミルに豆を入れると、丁寧に挽いていく。ほどなくして、香ばしい匂いが店内に漂い始めた。

 

「徹にはずっとお礼をしたいと思っていた」

 

「そんなに君に何か出来たとは思ってないけどね」

 

「まさか。転校初日のことも、怪盗団のことも、なにより獅童のことも。助かった」

 

「君だったら、僕が何もしなくたって乗り越えていけたさ」

 

「だが、俺だけじゃ明智は救えなかった」

 

 その言葉と共に、カウンターの向こう側から湯気の立つカップが差し出される。ありがたく受け取って口を付ければ、丁寧に淹れられたことが分かるふくよかな香りが鼻を擽った。

 

「……美味しい」

 

「それは何より。合格を貰えて良かった」

 

「佐倉さんの太鼓判があるんだから、自信を持っても良いと思うよ」

 

「それでも、お客さんからの評価が一番大事だ」

 

 そう言う蓮の後ろで、佐倉さんが新聞に目を落としながらも満足そうな表情で小さく頷いていた。それを見れば、二人が強い絆で結ばれているのがよく分かる。蓮のことを噂や前科の話だけでなく、一人の人間として正面から見ていた佐倉さんと、それに蓮が応え続けたのだろうということが見て取れた。

 

「後継者が見つかったみたいですね、佐倉さん?」

 

「馬鹿言え。カレーはまだまだ合格点をやれねぇよ」

 

「それだって練習中だ。そのうち追い越す」

 

「生意気言いやがって」

 

 不敵に笑う蓮に佐倉さんはそう返すが、それだって楽しそうに口の端が笑っている。まるで本当の親子みたいだな、なんて思いながらコーヒーに舌鼓を打っていると、ポケットの中のスマホが震えた。誰かからの着信だ。佐倉さんと蓮に断ってからスマホを取り出して耳に当てる。

 

「もしもし?」

 

「やあ、今時間はあるかな?」

 

「相変わらず唐突だね、明智君」

 

「無駄な挨拶が必要な仲でも無いだろう?」

 

 電話口の向こうでクスクスと笑っている声が聞こえる。電話の第一声から用件に入るくらいならその無駄な挨拶を一つ挟んでくれても良いんじゃないかな。

 

「電話の相手は明智か」

 

「……その声、徹、君は今どこにいるんだい?」

 

 僕の電話相手を察した蓮の声を聞きつけたのか、電話口から聞こえる明智君の声のトーンが一段低くなった。

 

「ルブランにいるけど……?」

 

「コーヒーをご馳走していたところだ」

 

「そうか……、分かった」

 

 蓮がカウンターから少しだけ身を乗り出して電話に声が入るようにそう告げれば、明智君はそれだけ言って電話を切ってしまった。

 

「用件も言わずに切られちゃったんだけど」

 

「大丈夫だ。すぐに来る」

 

 電話が切れてしまったスマホをポケットにしまいながら呟けば、蓮は楽しそうに笑みを浮かべながら空になったカップを持ち上げる。

 

「お代わりを淹れようか?」

 

「……せっかくだから貰おうかな」

 

 蓮と明智君は、互いの考えていることを理解しているような振る舞いを時折見せる。明智君は絶対に否定するだろうけど、二人は正反対なようでどこか似ているんだろう。そんな蓮が、明智君がここに来ると言うのなら恐らくその言葉通りになる。それに僕の方は彼がどこにいるかも分からないんだし。

 そして僕が蓮と他愛もない雑談を交わしつつ、二杯目のコーヒーが空になる頃、再びルブランの入り口からベルの音が聞こえた。

 

「まったく、油断も隙も無いね」

 

 そこに立っていたのは眉間に深い皺が刻まれるくらいにしかめっ面をした明智君だった。ツカツカと僕の隣に来ると、どっかりと椅子に腰を下ろす。

 

「いらっしゃい。コーヒーでも?」

 

「ああ、頼むよ」

 

 楽しそうな蓮に、明智君はぶっきらぼうに返すと、不機嫌そうな目つきで蓮を睨みつけた。

 

「勝手に僕の助手を引き抜くのは止めてほしいね」

 

「大切な取引相手を労っていただけさ」

 

「人のものを盗ろうなんて、手癖が悪いよ」

 

「怪盗だからな」

 

 そして何故か僕を放って二人で静かにヒートアップし始める蓮と明智君。それを横目に見ていた佐倉さんが呆れたようにため息を吐いた。

 

「お代わり、いるかい?」

 

「ありがとうございます。頂きます」

 

「ったく、友達の取り合いたぁ、まだまだガキだな。女絡みの修羅場だけは勘弁してくれよな。男でこれだと、流石の俺もゾッとしねぇや」

 

「大丈夫ですよ。生憎と言うべきか幸いと言うべきか、そこまでモテた覚えはありませんから」

 

「……刺されねぇようにな。俺から言えるのはそれだけだ」

 

 


 

 

「君をここに閉じ込めることになったのは申し訳ないと思ってる」

 

 辺り一面が白に覆われた部屋。その中で、僕は曇った顔でこちらを見つめる丸喜先生と対峙していた。年が明けた直後、丸喜先生と顔を合わせたときに意識を失ってしまった僕は、気付けばこの空間へと連れてこられていた。

 

「ここは僕の認知世界。今、現実は認知世界と融合を果たそうとしているんだ。大衆の認知に繋がっていない君があのまま現実に留まることは出来なかった。だけど安心してほしい、君がいないことによる混乱は最小限に抑えられているはずだ」

 

 聞けば、僕という存在の代替になるものが丸喜先生の手によって現実に配置されたらしい。それによって僕と関わりのある人間が記憶と認知の食い違いで混乱しないように。

 

「君の助けがあれば、僕の救いは完成するんだ。どうか僕の救いを受け入れて、そして協力してほしい」

 

「……その救いは、芳澤さんのような人を増やしてしまう世界じゃないんですか?」

 

「彼女のように救われる人が増える世界だ。君の言葉だけじゃ救えない人だって、僕の世界なら救える」

 

「夢を見続ける世界が、本当に救われる世界だと丸喜先生は言うんですか」

 

「言うよ。幸福であるなら、夢だとしてもそれこそを現実だと選ぶ人が多いはずだ。それに、現実と見分けがつかない夢を、誰が夢だと気付けると言うんだい?」

 

 そう言った丸喜先生は表情を失った能面のような顔をしていた。その顔を見て、彼が僕とどのような言葉を交わそうとも、自身の決めたことを覆すことは無いだろうと分かってしまった。もう思いとどまることが出来る場所はとっくに過ぎてしまったのだと、彼の表情が物語っていた。

 

「君には僕のような特別な力は無い。けれど、大衆の認知に接続できない特異性はある。だからこそ、僕は君に協力してほしいと思っているんだ」

 

「丸喜先生……僕は」

 

 その続きを口にすることは出来なかった。それより先に、部屋全体を震わせるような爆音が響いたからだ。思わずよろめいた僕と丸喜先生。丸喜先生は、先ほどとは打って変わって驚愕の色をその顔に浮かべていた。

 

「そんな馬鹿な!? 目覚めるにしても早すぎる……!」

 

 そう言いながら、唯一外に通じる扉から足早に出ていく丸喜先生。僕もそれを追いかけるように外に出て丸喜先生の後を追えば、辿り着いたのは中央に大きなモニターが設置されたホールのような場所。部屋の中央には呆然とした表情で立ち尽くす芳澤さんと、その傍らで周囲を囲む警備員の格好をした異形を次から次に手に持った拳銃で打ち抜く蓮と明智君がいた。

 

「徹!」

 

「早くここを出るぞ!」

 

 僕を見つけた二人は、そう言って僕に向かってこっちに来いと手を差し出すけれど、その前に丸喜先生が立ち塞がった。

 

「どうしてこんなにも早くここに辿り着けたんだい。君たちならもしかしたらとも思った。だけど、だからこそそうならないように僕も細心の注意を払っていたつもりだ」

 

「ハッ! 細心の注意? あんな紛い物を出しておいてよく言えたな」

 

「仲間を返してもらう」

 

 芳澤さんを庇うように前に出た明智君と蓮の二人は、そう言って丸喜先生を睨みつける。

 

「僕や他の人間の認知から作り上げたんだ。本物と遜色ないと、僕は思っていたけれどね」

 

「だとしたらその目はガラス玉にも劣るね。俺が徹を見間違えるわけがないだろ」

 

「何をしようとしてるのか知らないが、徹は巻き込むな」

 

「……悪いけれど、その頼みは聞いてあげられない。彼はこっちに居てもらわないと困るんだ」

 

 丸喜先生の言葉と共に、地面にいくつもの黒い水たまりのようなものが広がったかと思うと見る見るうちに盛り上がり、白衣を纏った異形に変わる。

 

「芳澤さんを置いて、今は帰ってくれないだろうか」

 

「ふざけろ」

 

「断る」

 

「……残念だよ。力づくは好きじゃないんだけど」

 

 そう言うと、丸喜先生の言葉に応えるように蓮と明智君を囲む異形の輪が縮んでいく。それを見渡しながらも、二人の戦意は衰えていない様子だった。

 

「いけるか、クロウ」

 

「誰に言ってやがる。お前がついてこい、ジョーカー。徹を連れてここを出るぞ」

 

「「ペルソナァ!」」

 

 二人の声が響くと同時、ホールを埋め尽くすような巨大な蛇の異形が出現した。

 

 

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