【やさしく解説】10月1日「国勢調査」なぜやるの?◆5年ごと実施、日本に住む全員が対象

2025年09月20日11時00分

 5年に1度の「国勢調査」が2025年10月1日に行われます。その調査票などは9月20日から5000万超の国内の全世帯に配布されます。回答の対象は外国人を含む日本に住む全員です。そもそも国勢調査って何?なぜ国はそんな大規模な調査をやるの?封筒が届いたら、どうすればいいの?その答えを求め、東京・新宿の統計博物館を訪ねました。(時事ドットコム取材班 斉藤大

【過去の特集▶】時事ドットコム取材班

「国の勢い」ではなく…

 「国勢調査の基本はとにかく人を数えることです」。総務省国勢統計課の担当者がこう説明してくれた。同省第2庁舎敷地内にある博物館には、国勢調査をはじめとする統計の歴史や昔の集計機器などが展示されている。マニアックな内容ながら隠れた無料観光スポットで、外国人旅行客が見学に来ることもあるそうだ。

 国勢調査は統計法に基づき行われ、外国人も含めた日本国内の人口や世帯の実態を明らかにすることを目的としている。「国勢」の意味は「国の勢い」ではなく「全国の情勢」。明治時代に統計院を設立した大隈重信が国勢の言葉を使ったという。

 報道機関などが政権や政党への「支持」や社会の「意識」を調べる「世論調査」とは異なり、国勢調査の項目は全て、住民や世帯の「実態」について問う内容となっているのが特徴だ。

コンビニ出店にも活用 

 22回目となる今回(2025年)の国勢調査には、各世帯一人ひとりの性別や出生年月、世帯主との続柄、就業状態や仕事の種類など17項目の設問がある。そして、集計された回答は「社会や暮らしを支える重要なデータ」(担当者)になるという。 

 例えば、人口に応じて作成される衆院選小選挙区の区割りや、国から自治体に配られる地方交付税額の算出は国勢調査の結果を用いる。子育て施策や防災計画を決める際の基礎資料にもなる。調査結果は政府統計の総合窓口サイト(e-Stat)で公開されるため、学術研究やコンビニの出店計画など民間でも広く活用されている。

 今回は26年5月までに、人口速報集計(男女別人口と世帯数)が公表される予定。その後、それぞれの項目について順次公表されるが、集計完了までに2年程度掛かるものもある。

 人口の調査であれば、「住民基本台帳のデータでも良いのでは?」との疑問が湧く。ただ、住基台帳は自治体などが住民サービスを行う目的で作成されるため、限られた情報しか掲載されていない。そのため産業別・職業別の就業者数や、昼間と夜間の人口の差などは国勢調査で集計する必要がある。

 また、実家を離れて暮らす学生や老人ホーム入居者らは転出入の届けを提出していない場合もある。国勢調査は原則、調査員がそれぞれの住宅などに直接出向いて調査票を届けることから、より居住実態に即した結果が得られるという。

第1回は105年前、天候や農家に配慮 

 第1回の国勢調査は、国際的な人口調査への気運の高まりを受けて、1920(大正9)年10月1日に行われた。以来、必ず10月1日午前0時時点の情報が集計されている。第1回の報告書によると「暑くなく雪も降らず、人口の大半を占める農家の繁忙期でもない」という判断からこの日付に決まったそうだ。

 調査項目は現在よりかなり少なく8項目。現在は普段住んでいる住所を記録する「常住地方式」だが、第6回までは「現在地方式」だったため、旅行中の人は宿泊先の世帯員として数えられた。調査結果による当時の人口は5596万3053人。その後、2倍以上になった人口は2015年調査で初めて減少に転じ、前回の20年は1億2614万6099人だった。

 第1回の告知ポスターを見ると、「社会の実況を知る為に行うので課税の為でも犯罪を捜す為でもありません」との文言がある。「これは今も昔も変わりません。統計データの作成が目的なので、ありのままを回答して下さい」と担当者。別のポスターには「此の調べに漏れては国民の恥です」ともあった。「今ではそんなことは書けませんが、それぐらい力が入っていたのでしょう」

 ただ唯一、5年に1度の国勢調査が行われなかった年がある。戦況が悪化し敗戦に至った1945(昭和20)年だ。政府は同年2月に調査中止を決定した。戦後、日本の占領政策を担った連合国軍最高司令官のマッカーサー元帥は、農林省(当時)の食糧需給試算が大きく外れたとして、「日本の統計はデタラメだ」と指摘。これを受けて、吉田茂首相が統計制度改革に乗り出し、47年に臨時の国勢調査を実施することになったとされる。

「かたり調査」に要注意

 今回は9月20日から、非常勤の国家公務員として任命された調査員が各世帯を訪問し、調査票などの入った封筒を配布。複数回訪問し、住民と会えない場合は郵便受けなどに投函することもある。回答期限は10月8日。

 調査員は必ず顔写真付きの調査員証を携行しており、「調査票配布に必要な場合を除き個人情報を聞き取ることはありません」(担当者)。国勢調査を装いメールや電話などで情報を聞き出そうとしたり、偽サイトに誘導したりする「かたり調査」が発生することが懸念されるが、担当者は「不安だったり封筒が届かなかったりした場合は、市区町村の国勢調査担当部署に問い合わせてほしい」と話す。

ネット回答は3割台どまり

 時代とともに、配布や回答の方法も変化してきた。初回から長らく調査員が調査票の配布と回収を行ってきたが、2010年に郵送での提出が可能になり、15年からは全国でインターネット回答ができるようになった。総務省は投函などの手間が掛からず、5~10分程度で終わるネット回答を推奨している。マークシートの調査票は集計機で読み取りエラーが発生したり、出生年で「大正・50年」などと元号と西暦を混同してチェックしてしまう間違いが発生したりすることがあるからだという。ネットであれば入力漏れなどもその場で指摘してくれるので、データ送信を完了すれば確実に集計できる。

 20年調査では、郵送回答の割合は41.9%で、提出される調査票はおよそ2000万枚に上った。その全てが総務省第2庁舎に集まるため、5年ごとの集計の際は中庭に仮設の作業所が設けられるのだという。一方、ネット回答は15年が36.9%、20年が37.9%と微増にとどまっており、担当者は「できるだけネット回答を利用してほしい」と訴える。

「中卒未満90万人」調査で判明 

 末尾が0の年には質問項目を増やす「大規模調査」として実施される。前回2020年は「教育歴」などの項目があった。これを活用したのが基礎教育保障学会による「義務教育未修了者マップ」だ。

 20年10月1日時点で、全国の未就学者(在学歴がない、小学校を途中退学した人)は9万4455人、最終学歴が「小学校卒」は80万4293人。つまり中学校を卒業していない義務教育未修了者は全国に約90万人いたことになる。年代を見ると、多くが戦中戦後の時期に学校に通えなかった高齢者だが、若者や働き盛りの世代にも一定数いる。25年8月に公開したマップでは、各都道府県や市区町村ごとの未修了者の人数や割合を掲載。研究者らがまとめた都道府県の分析レポートもダウンロードできる。

 このプロジェクトリーダーを務めた福岡大の添田祥史教授は、国勢調査について「日本では識字調査が行われていないため、どれだけの人が基礎的な教育を受けているかが分かる唯一のデータだ」と説明。文部科学省は、いじめや貧困、家庭環境などさまざまな理由で義務教育を十分に受けられなかった人が通う「夜間中学」を各都道府県と政令市に最低1校設置する方針を示している。添田教授は「このマップを見て学び直しのニーズがどこにどれだけあるのか、未修了者らへの手当てが足りているのか考えるきっかけにしてもらいたい」と語る。

 【関連リンク▶】義務教育未修了者マップ 

「回収できず」16%に増加 

 日本の在住者に対する唯一の全数調査である国勢調査。そこから得られるデータは公的統計の中でも最も基礎的で、中核を成すものだ。このため、統計法は国勢調査を含む基幹統計調査への報告義務を課し、「報告を拒み、又は虚偽の報告をした者」に対して「50万円以下の罰金」を科すと規定している。また、調査員などには守秘義務が課され、違反すると「2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」の罰則が設けられている。

 ただ、近年はプライバシーや防犯意識の高まり、調査に不慣れな外国人世帯の増加などにより、回答を回収できない事例が増加している。調査員への提出・郵送・ネットのいずれの方法でも回収できず、近隣住民への「聞き取り調査」となった世帯の割合は、2000年の1.7%から20年の16.3%にまで拡大した。

 総務省は今回の調査で、コールセンターやチャットボットで疑問点に答える体制を拡充したほか、外国人向けに35言語による内容説明を用意。ネット回答も調査票と同封されているQRコードで簡単にログインできる仕組みを導入した。担当者は「以前に比べて回答の手間は掛からなくなっています。正確な統計を作るためにもご協力をお願いします」と呼び掛けている。 

斉藤大(時事ドットコム取材班)

 1984年、東京都生まれ。2010年入社。大阪支社、富山支局、本社内政部、社会部を経て23年10月から時事ドットコム取材班。これまで2度、都庁を担当し新型コロナや東京五輪で揺れる小池都政を取材してきました。

 趣味は映画やドラマを見ること、ラジオを聞くこと。写真を撮るのも好きです。

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