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CAIO / 山崎はずむ

人文学から得た「共感」をイネーブルメントに実装する。

人文学から得た「共感」をイネーブルメントに実装する。

撮影場所:WeWork 神谷町トラストタワー

CAIO 山崎はずむ
ex-Poetics

東京大学大学院総合文化研究科博士課程満期退学。ニューヨーク大学大学院特別研究員。商談解析AI「JamRoll」を提供するPoetics代表取締役に着任。 2025年、ナレッジワークにPoeticsを売却し、入社。ヨーロッパ最大級ピッチ・コンテスト、Pitch Your Startup 2018(ルクセンブルク)でアジア企業として初めて優勝するなど、国際的なピッチ・コンテストで 6度優勝。

学びへの渇望と学問への没頭

幼少期から「勉強したい」という気持ちを強く持っていたのを覚えています。小学生の頃、家でNBAの試合中継が流れていたのをきっかけに、英語に興味を持つようになりました。英語で話される内容を理解したくて、経済的に余裕がなかった家庭ではありましたが、懇願して英会話を続けさせてもらいました。近所にいたイギリス人のお兄さんの影響で海外の音楽や文化にも触れ、小学生のときに一度だけ親戚に連れて行ってもらったアメリカ旅行も、広い世界への憧れを強めた原体験のひとつです。

高校2年生の頃、「うちは大学に行かせられないかもしれない」と言われたのを機に、どうすれば学費をかけずに大学へ進学できるかを本気で調べ始めました。当時の東京大学には、一定の世帯収入以下であれば学費が免除される制度があり、「これしかない」と腹をくくって、逆算して受験勉強に取り組むようになりました。結果として一浪の末に合格し、比較文学比較文化というリベラルアーツを学ぶ学科へと進みました。前期課程で良い成績を取らなければ進学できない学科だったため、朝9時から夜9時まで図書館にこもって勉強する日々でした。勉強ができるということ自体が、純粋に嬉しかったのを覚えています。

その後、ニューヨーク大学への留学を経験します。はじめは、まわりの学生たちの優秀さに圧倒され、自分の無力さを痛感しましたが、授業のプレゼンや課題に食らいつきながら、少しずつ友人ができていき、研究テーマについて議論し合えるような関係性も築けるようになりました。

アメリカの大学では図書館が24時間空いているのが当たり前で、勉強はもちろん、翻訳の仕事をしたり、学校外のコミュニティで人と出会ったり、アートに触れたりと、学びに貪欲な毎日を送りました。貧しかったけれど、とても豊かな時間だったと感じています。当時は、将来的にアカデミアに残り、北米の大学院に進むことを本気で考えていました。

一方で、机に向かっている時間だけが学びではないとも思っていました。予備校の近くには古書店街やレコードショップがあり、帰り道にふらりと立ち寄って、書物や音楽に浸る時間も大切にしていました。下北沢のライブハウスに通ってバンド活動に打ち込んでいたこともありますし、文学や哲学、音楽を愛する人々が集うゴールデン街に入り浸っていた時期もありました。

なりたいと思っていた「研究者」と、今やっている「経営者」は、一見まったく異なる役割に見えるかもしれません。でも実際は、「誰のせいにもできない、自分の采配で決断・実行し、自分で責任をとる」という点で非常に似ていると思っています。こうしたこれまでの経験や背景は、いまビジネスの道に進んだ自分にとっても確実に活きていると感じています。

「共感」から生まれたプロダクト

かつて私が立ち上げたPoeticsというスタートアップでは、「共感」というテーマを大事にしていました。共感とは、その人のおかれている個別具体的な状況や、そこに至る歴史的な背景に配慮することだと考えています。

少し前に遡りますが、修士論文を書き始めたころ、文学研究の中に哲学の要素を取り入れ、「ノンフィクション・ノベル」というジャンルに関する研究をしていました。特に『冷血』という作品を通して、「事実とフィクションは区別可能なのか」という問いと格闘しました。結論として、何が事実であり何がフィクションであるかは、ある絶対的な指標で判定できるものではなく、その事象をとらえるコミュニティや社会の規範に依存する、という視点にたどり着きました。僕らは非常に柔らかく、不確かな状況の中で生きている。その曖昧さに目を向けることが、「共感」の第一歩になると考えるようになりました。

そうした研究で得た知見や視点を、現実の課題解決にも活かそうとしたのが、Poeticsで生まれ、現在はナレッジワークの中核プロダクトとして進化を続けている、「ナレッジワークAI商談記録(旧称:JamRoll)」です。このプロダクトは、「誰もが売れる営業になれる」ことを支援するツールとして開発しました。

「誰もが売れる営業」というのは非常にやっかいで誤解をうみやすい表現ですが、決して画一的な方法で営業業務を行っていくことを支援したいわけではありません。「共感」を前提とした営業を支援したいのです。

営業という営みの中で交わされる会話は、単なる情報伝達ではなく、歴史的な経緯や、個別具体的な状況に基づいて生まれるものです。そのコンテクストに対してどれだけ配慮できるか。それこそが、大切にしてきた「共感」のあり方でもあります。

だからこそ、「共感」を増幅させるため一次データを参照することに重きをおいていました。

「共感」とともに導く、イネーブルメントの可能性

現在「ナレッジワークAI商談記録」として展開している商談解析AIプロダクトは、かつて「JamRoll」という名で提供していました。この名称は、ジャズにおける即興演奏=ジャムセッションから着想を得たものです。一回性を大切にし、誰かとともに奏でることで生まれる唯一無二の時間。それが、営業という営みの本質にも通じると感じていました。「いまこの瞬間に、目の前のお客様と自分がいる」という二度と訪れない時間を、どれだけ豊かにできるか。まさにその感覚です。

一方で、営業の世界では、THE MODEL型の分業体制が広がるなかで、役割が“型化”されつつあります。もちろん、基本の型を効率よく学ぶことは不可欠ですが、営業一人ひとりが自分のパーソナリティを活かしながら、守破離のように型を超えて話せるようになる世界観をどう描くか。その問いを抱きながら、私は営業という営みを「共感」を基盤に再設計することを目指してきました。そのプロセス全体を支えるのが「イネーブルメント」という考え方です。だからこそ、ナレッジワークが掲げる「イネーブルメント(=成果の創出や能力の向上)」という思想には、深く共感しています。

現在、JamRollは「ナレッジワークAI商談記録」として、ナレッジワークの中核を担うプロダクトへと進化しました。このM&Aによって、ナレッジワークが提供していた商談前の資料作成や学習コンテンツと、Poeticsが担ってきた商談中・商談後の解析や入力自動化が接続され、営業活動のすべてを支援する体制が整いつつあります。

これは、従来の「人がソフトウェアに合わせる」SaaSではなく、「ソフトウェアが人に合わせる」セールスAIエージェントを実現するための重要な土台でもあります。各社の商談データや資料、学習コンテンツを組み合わせ、文脈に応じたセールスAIエージェントを構築できるようになる。このパーソナライズの深度こそが、「共感」を可能にし、「イネーブルメント」の質を大きく変えていくと信じています。

アカデミアとビジネスの垣根を超え、価値創造に挑む

そんな価値観のもと、今の自分を俯瞰してみると、自分のような文系アカデミア出身で、少し異質なパーソナリティを持つ人間がビジネスに挑戦していること自体に、意味があると感じています。

人工知能(AI)という領域自体、そもそもコンピューターサイエンス、言語学、心理学といった異分野の知がぶつかり合いながら育まれてきたもの。そうであればこそ、「なぜ事業を興すのか」「労働とは何か」「営業とは」「知性とは」といった根源的な問いを起点に全体像を描き、さらにビジネスが融合し、それを現実の経済活動へと落とし込むことがこれからますます重要になると考えています。

僕自身、将来的には、コンピューターサイエンスと人文科学、さらにはビジネスが融合し、プロダクトアウトできる組織、研究機関でもあるような場所を作りたいと思っています。大学のように学びを深める場でありながら、その研究成果を社会実装へとつなげる実践の場です。

このような形でアカデミアとビジネスの間を越境していきながら、自分なりの価値をナレッジワークで生み出していきたいです。

撮影場所:WeWork 神谷町トラストタワー

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