パキスタン人急増の街で偏見なくしたい 奔走する学生と支える教育者

Be Ambitious!:12 ソバン・ファルークさん パキスタン→江別

 札幌市の隣にある江別市で、パキスタン出身の大学生ソバン・ファルークさん(21)が奔走している。市に住むパキスタン人の数は4年で倍以上に増えた。偏見をなくしたいという大志が、彼を走らせる。

 一家は、レストランと中古車輸出業を営む。ファルークさんは小学生で来日し、一度、パキスタンに戻ったが、日本で教育を受けたいと2021年に再来日した。

 当時、日本国籍を取得していたが、江別市内や札幌市内の高校からは断られた。

 諦めずに道立野幌高校(江別市元野幌)に電話で直談判すると「1回、来てみれ」。英語と数学は抜群の成績だったため、入学を許可された。

 夢をかなえたい。パッションを追い求めたい……。そんな思いで、海の向こうから北海道にやってきたYOUたち。最後に番外編で人口の3分の1が外国人の村、占冠村で共生を考えます。1月28日午後6時、配信予定です。

 放課後に居残りで日本語を学びながら、ラグビー部に所属。校内でイスラム教の礼拝ができる部屋も用意された。大学進学の際は、教諭がオープンキャンパスに付き添い、奨学金の計算もしてくれたという。

 進路指導をした関原文明教諭は「ソバンのおかげで在校生がイスラムや多文化共生を身近に感じることができた」と振り返る。一方、ファルークさんは「協力がなければ、日本で教育は受けられなかったし、大学にも行けなかった」と話す。

 江別国際センターによると、市内に住む外国人は約1千人。24年にパキスタン人が最多となった。20年は89人だったのが、24年11月には236人となった。

 市内に中古車オークション会場があることが要因だ。パキスタン人たちの目当ては、00年代以前のコンピューター制御がない中古車。古い車種だが、海外でも部品交換など修理が可能なため、パキスタン人には好まれる。道内は本州とは異なる中古車市場があり、パキスタン人業者が集まったという。

 ほとんどが自営で、母国から呼び寄せた家族親族など大人数で生活する。イスラム圏の女性は知人以外との接触を控えがちで、地域との関わりは薄い。一方、礼拝のためのモスクをつくるなど、コミュニティーの拡大は進んでいるという。

 北海道情報大に進んだファルークさんは昨年から、日本語が堪能な若いパキスタン人らとともにセミナーを始めた。イスラム教のこと、生活のこと。自分たちを理解して欲しい。市内のパキスタン料理店「アンモナイト・レストラン」で説明する。

 だが、その様子がテレビ番組で報道されると、ネット上には傷つくコメントが並んだ。

 「自動車窃盗をみると正直怖い」

 「日本に住み着いて日本文化を壊すのは迷惑」

 落ち込んだ。自分たちが悪い集団だと誤解されているのではないか。

 母校である野幌高校に相談に行った。教師は「気にしないでいい。ソバンはいいことをしているぞ」と励ましてくれた。ファルークさんは言う。「悪いことは大きく見えてしまう。でも、いいことはなかなか見えない」

 そして、誓った。「犯罪と国籍は関係ない。偏見がなくなるようにもっとがんばろう」

 将来の夢は決まっていないが、日本の役に立ちたいという思いは強く持っている。

 「僕はパキスタンで生まれたけど、いまは日本国籍を持つ日本人だから」

 ソバン・ファルーク、21歳。大志を抱く。 =おわり

パキスタン

 国名は「清浄なる国」という意。面積は日本の約2倍で、人口約2億4149万人。国教はイスラム教。北部にカラコルム山脈があり、世界第2位の高峰「K2」(標高8611メートル)がそびえる。紀元前にはインド、アフガニスタンとともに世界四大文明のひとつインダス文明が栄えた。

「デジタル版を試してみたい!」というお客様にまずは1カ月間無料体験