「新疆ウイグル自治区」で潜入取材を試みた記者が、“リアルに死を意識した”出来事…「拷問器具の横で30時間以上拘束された」
「自分の家族」の話をしてくれたウイグル女性
——書籍では、西谷さんが現地の人から強制収容所に関する話を何とか聞き出そうとする姿も印象的でした。 西谷:かろうじて雑談に応じてくれ、自宅にも入れてくれたウイグル女性が「私の夫も学習するところ(強制収容所)に入れられて、亡くなったんです」とポロっと語った時に、この旅で初めて本当の話を直接聞くことができたと感じました。その女性はごく普通の一般庶民で、政府の批判をするわけでもなく、淡々と自分の家族の話として収容所の話をしてくれました。中国当局は「強制収容所は事実無根」と主張していますが、何らかの事情で大規模な拘束を行っていたことは明らかだと思います。
隣には拷問器具…一睡も許されない過酷な取り調べ
——そして、西谷さん自身も当局に拘束され、日本では拷問に当たる過酷な取り調べを受けました。 西谷:隣国のカザフスタンに出国する際に、中国では禁書になっている『新疆ウイグル自治区』(熊倉潤、中公新書)や、日本で行われた「反中デモ」の写真を持っていたことから30時間以上拘束されました。タイガーチェアという拷問器具が隣に置かれた状態で、深夜から一睡も許されずに取り調べを受けました。弁護士を呼ぶことも、日本大使館と連絡を取ることもできず、疲労と睡魔で感覚がマヒしていきました。しかし、「この状態が何年も続き、自分の人生はここで終わる」と死を覚悟したのは、はっきりと覚えています。リアルに死を意識したのは生まれて初めてでした。 ——書籍では「その渦中というのは意外なほど日常と地続きで、とても平凡な出来事のように思えた」と書かれていますね。 西谷:皆さんもいきなり「あなたは無期懲役です」と言われたら、「はあっ?」ってなりますよね。それに近い感覚かと。「国家安全危害罪で最高刑は無期懲役だ」と言われても、冗談だと思うじゃないですか。でも冗談ではなかった。何か効果音があるわけでも、決め台詞があるわけでもなく、淡々と事務作業のように取り調べが続き、いつになっても解放されず、横になることも許されない。日常と地続きのまま、いつの間にか変な世界に迷い込んでしまったような感覚でした。