「新疆ウイグル自治区」で潜入取材を試みた記者が、“リアルに死を意識した”出来事…「拷問器具の横で30時間以上拘束された」
自分の目と耳で現地を見てみたかった
——当初はどんな旅にしたいと思っていましたか。 西谷:新疆ウイグルは14年に友人と旅行したことがあったので、どのように変化したのか興味がありました。現地の人がどんな物を食べ、どんな生活をしているのかじっくり見たかったですし、近年は日本や欧米で新疆綿(新疆ウイグル自治区産のコットン)をめぐる強制労働の報道もあったので、自分の目で実情を確かめてみたい気持ちもありました。 というのも、新疆ウイグルに関する既存の情報や報道は、あまりにも中国批判に偏っているように感じていたからです。中国に住んでいた時から中国には中国の価値観があり、日本や欧米の理屈では理解できないことは骨身にしみていました。だから伝聞ではなく、自分の目と耳で先入観を持たずに、現地を見てみたいと思いました。
身内すら信用できない監視社会は「現代のディストピア」
——しかし、現地の人と交流を楽しむような 普通の旅行にはなりませんでした。 西谷:そうなんです。最初の驚きは、現地の人が何もしゃべろうとしないことでした。中国人は非常におしゃべり好きですし、10年前に訪れた時はウイグルの人たちも割とおしゃべりな印象がありました。年配の方はウイグル語しか話せなくても、若者の多くは中国語ができるので、政治的な話は避けたとしても、いろいろな身の上話くらいは聞けるだろうなと考えていました。しかし、予想に反して、私が外国人というだけで雑談にも全く応じてくれず。びっくりしました。 ——街には武装警察官があふれ、至る所に監視カメラが張りめぐらされていたようですね。 西谷:はい。身内すら信用できない監視社会になっていたと言わざるを得ません。まるでジョージ・オーウェルの『一九八四』のような状況で、現代にディストピアを作り出すとしたら、こうなるのかと感じました。雑談すらできないほど、人が人を信じられない社会の恐ろしさに心が寒くなりました。現地では過去にテロや暴動が起きているので、中国当局からすれば、そうするしか統治できない状況なのかもしれません。 ウイグルの人たちに対する組織的な虐殺などは起きていないようでしたが、少なくとも大規模な拘束が行われ、漢族との同化政策によって固有の文化が薄まっているのは強く感じました。ギリギリの生存権だけを認めている植民地のような状況でした。それに対し、統治する側の漢族の人たちは、何も問題のないハッピーな世界になったと感じているようで、そのギャップがすさまじかったですね。