第15話 治療計画

2/3
前へ
/66ページ
次へ
治療計画の内容は、入院翌日にキシロカインという麻酔薬を筋肉に打ち込み、その2日後にアルコールとキシロカインを混ぜた物を筋肉に打ち込み、最後にボツリヌスを打ち込むという事だった。   計画の説明を受けた時は、どうしてキシロカインを打つのか、飲み込めなかったが、今思えばこれは、どの筋肉にどの程度薬を打つのかを特定するための試しみたいなものだったのだろう。   私はてっきり、様々な機材をつかって、どの筋肉が収縮しているのかを調べ上げ、それに基づいてボツリヌスを打つ筋肉と薬の量を決定していくものとばかり思っていた。入院も、その為にさせられたのだと思っていた。   しかし実際は、初日に健康診断をした以外、一切検査は無く、2日に1回キシロカインを打つために呼び出された事以外は、ただ部屋でじっとして過ごすだけだった。   ☆   打ち込む筋肉と薬の量については、これまでのノウハウ?からアタリをつけているようだったが、正直、どう見ても手探りでやってるようにしか見えなかった。   それでも、打ちこむ際は、インターネットで調べて知っていた通りに、筋電図モニターを使って正確に?目的の筋肉に打ち込んだ。   10分ほど休んだあと、スティックを握ってベッドの角を叩いてみた。   麻酔を打ち込む前よりもずっと楽に動かせた。   完璧では無かったものの、違和感がかなり和らぎ、手首が幾らかスナップした。   薬が効いてるわずか10数分の間であったが、ぎこちなくもドラムパットをまともに叩けてる自分の手を見て感動した。   これで、徐々に注射の精度を上げて行きさえすれば、きっとまたドラムを叩ける、期待と喜びに体が打ち震えた。   ☆   薬の効果はすぐに消え、また元のスティックを振れば固まる手に戻ってしまったが、気持ちは希望に満ち溢れていた。   ようやくここまで辿り着いたんだ。

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加