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回収率減少と調査員のメンタル疲弊──国勢調査が迎える岐路
国勢調査を支える現場に広がる「見えない負担」
【出典】毎日新聞(2025年9月19日配信)
回収率減、擦り減る調査員のメンタル 岐路を迎える国勢調査
●「暇じゃねえんだよ」──拒絶される調査員たち
国勢調査は「国の最も重要な統計」と呼ばれ、日本に住むすべての人を対象に5年ごとに行われています。ところが現場を担う調査員は、住民から冷たい拒絶や疑いの目を向けられ、心身を擦り減らしているのが実態です。千葉県で調査員を務めた男性は「もう二度とやりたくない」と語りました。暴言や不信感にさらされる日々は、非常勤国家公務員という「肩書き」を簡単に無力化してしまうのです。
●崩れゆく「全数調査」の理想
調査票の未回収は深刻化しています。95年には0.5%だった「聞き取り率」が、15年には13.1%、直近では16.3%にまで上昇。特に東京都は回収率が7割に留まり、「全数調査」の名が揺らいでいます。オートロックの普及、単身世帯の増加、プライバシー意識の高まり。社会の変化が国勢調査の基盤を直撃しているのです。その結果、一部データが「不詳」となるケースが増え、政策立案の基礎資料としての信頼性が問われ始めています。
●擦り減る調査員のメンタル
調査員は約100軒を担当し、何度も訪問を繰り返し、相手の反応に耐えながら回収を試みます。「詐欺かもしれない」「答える義務はない」と突っぱねられる場面は少なくありません。その一方で、インターネット回答は前回で37.9%。総務省は今回50%への引き上げを目標に掲げ、郵送配布や郵便局での回答支援など新たな手法を試行しています。しかし「現場の人が心をすり減らす仕組み」は未だ改善されていません。
●雇用クリーンプランナーの視点から
この問題は統計制度の危機であると同時に、「現場で働く人のメンタルケア」の課題でもあります。
・社会的意義があっても、制度が労働者を守らなければ持続しない
・「やりがい」に頼る仕組みは長続きしない
・制度設計に労務リスクの視点を組み込む必要がある
雇用クリーンプランナー(KCP)の観点から言えば、「国の制度だから仕方ない」ではなく、「現場の人間が安全に働ける仕組みをどう作るか」が焦点です。ハラスメント防止と同じく、「声が上げにくい構造」を放置することは制度の崩壊につながります。
●まとめ──「制度疲労」を直視できるか
国勢調査は100年以上続いてきました。しかし、その礎を担う調査員が疲弊し、回収率が下がり続ける現状は「制度疲労」の表れです。あなたの職場でも同じ構造がありませんか。意義ある仕事でも、現場の人を守らなければ制度は続きません。「全数調査」の理想を守るには、まず現場の声を聞くことから始めるべきなのです。