中国人観光客を逮捕 台湾の偽造運転免許証使い 日本で手続きか

中国からの観光客2人が手続きが簡単な台湾の偽造運転免許証を使って日本で車を運転する手続きを行ったなどとして警視庁に逮捕されました。2人は容疑を否認しているということです。

逮捕されたのは、中国籍で住所・職業不詳の高志洲容疑者(38)と※ゴン秀萍容疑者(47)の2人です。

警視庁によりますと、台湾の運転免許証を持つ人は、免許証を日本語に翻訳した書類を添付する手続きを取れば日本で車を運転することができますが、2人は、去年11月、それぞれ偽造された本人名義の台湾の免許証を使ってJAF=日本自動車連盟に対して不正な手続きを行った疑いが持たれています。

2人は中国の通販サイトを通じて台湾の偽造免許証の作成を依頼して手続きを行い、このうち高容疑者は日本でレンタカーを運転していたとみられ、警視庁は、無免許運転などの疑いもあるとみています。

また、警視庁はこの通販サイトで「台湾の免許証で日本で運転できる」などと広告を出して手続きを請け負っていたとみられる37歳の中国人についても逮捕状を取り、ICPO=国際刑事警察機構を通じて国際手配を行う方針で、事件の解明を進めています。

同様の手口でほかにも中国人観光客らが逮捕されていて、台湾の偽造免許による不正な手続きの摘発は今回が全国で初めてだということです。

調べに対し、高容疑者は「日本で車をレンタルしたくて人に頼んで台湾の免許を作ってもらったが、免許証が偽造であることは知らなかった」と供述し、※ゴン容疑者は「日本で運転したかったから運転免許証の作成を依頼した。日本語の翻訳文については分かりません」と供述し、いずれも容疑を否認しているということです。

※ゴンは「龍」の下に「共」

台湾の偽造免許証で手続き詳細は

今回の事件で悪用された疑いがあるのは、台湾の運転免許証と日本語に翻訳した書類を添付する手続きを取れば、日本で車の運転ができる制度でした。

警視庁によりますと、逮捕された中国人観光客2人は、去年10月ごろ、中国の通販サイトでおよそ16万円で「台湾の運転免許証で日本で運転できる」などとうたう広告を見つけ、台湾の偽造免許証やその翻訳書類を申請する手続きの代行を依頼したということです。

通販サイトで広告を出していた人物は、観光客2人の名義の偽造免許証を入手したうえ、他の仲間に指示しインターネットで、JAF=日本自動車連盟の申請フォームに偽造免許証の画像を添付して、翻訳書類の発行を申請させたとみられています。

そして、JAFから翻訳書類を発行する「印刷番号」を伝えられます。

その後、観光客2人は来日し、日本のコンビニエンスストアのコピー機で印刷番号を入力し、不正に翻訳書類を入手したといいます。

台湾の偽造免許証とこの翻訳書類、さらにパスポートなどをレンタカー会社に示せば、車を借りて日本で運転できるようになっていたのです。

今回の事件は、去年11月、JAFが同じ人物の名前で複数回の申請があったことを警察庁に相談したことがきっかけで明らかになりました。

調査したところ、少なくとも8件の申請に台湾の偽造免許証が使われ、うち6件で翻訳書類が発行されていたということです。

中国の運転免許証を持つ人が日本で車を運転するには、日本の教習所に通って免許試験に合格したり、外国で取得した運転免許証を日本の免許証に切り替える「外免切替」の手続きを行ったりして、日本の運転免許証を取得する必要があります。

「外免切替」の制度をめぐっては、国会で「日本に住民票がない観光客なども、ホテルなどの一時滞在場所を『居住地』として認めることは事故を起こしたときなど、取締りに影響が出るのではないか」とか、「知識確認のための問題が簡単すぎて、日本の交通ルールをよく理解していないのではないか」といった指摘が相次ぎ、警察庁は来月1日から制度を改正します。

改正により国籍にかかわらず、原則として住民票の写しで申請者の住所を確認し、観光客などの短期滞在者には認めないことになります。

手続きの際に日本の交通ルールの理解度を確認する「知識確認」についても、現在の10問から50問に増やしたうえで、90%以上の正答率を必要とし、車に乗車して行われる「技能確認」も採点を厳格化するということです。

一方、日本と同じような免許制度がある台湾やスイスなど6つの国や地域では、外国で取得した運転免許証に、領事機関やJAFなどの法人が発行する、免許証の記載内容を日本語に翻訳した書類を添付すれば、日本で運転することができ「外免切替」よりも時間がかからず手続きが簡単だということです。

専門家「偽造免許証ではないか確認する必要」

国際免許制度に詳しい「国際免許情報センター」の松島隆太郎代表理事は「偽造の運転免許証を使って運転することは無免許運転であり、犯罪にあたる。免許証は本人証明書としての位置づけもありほかの犯罪に悪用されるおそれもある」と指摘しています。

そのうえで、レンタカー事業者は外国人が車を借りるために免許証を示す際、日本国内で有効なものか正確に判断する必要があるとして「特に、パスポートと異なる国の国際免許証を持っている場合などは、免許証を取得した経緯をあわせて聞くなど、偽造免許証ではないか確認する必要がある。レンタカー業界全体として、判断のレベルを上げていくことが求められる」と話していました。

JAF「確認を確実に 翻訳書類の発行業務を行う」

海外の運転免許証の日本語の翻訳書類を発行しているJAF=日本自動車連盟によりますと、翻訳書類の発行件数は増加傾向にあり、JAFでは昨年度、5年前のおよそ1.8倍に当たる14万8091件の翻訳書類の発行を行ったということです。

JAFは「偽造された運転免許証の翻訳書類の作成申請がされたことについては、誠に遺憾です。台湾の免許証に関してチェック項目を増やすなど、確認を確実に行うこととしています。今後とも警察と密に連携を取り、翻訳書類の発行業務を行っていきます」とコメントしています。

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