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拵の種類の見分け方 - ホームメイト

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太刀拵や打刀拵といった大まかな区分とは別に、鞘の塗り方や仕上げ方によって、拵にはいろいろな名前が付けられます。今回は拵の名前を見分けられるようになるために、拵の種類について調べました。

今回のテーマは拵!

こんにちは。刀剣ワールドのライターです。

今日は刀装具であるについて、種類を区別するための知識を調べてみました。

よく目にする拵というのは、このような真っ黒で艶のある物ではないでしょうか。

黒蝋色塗の打刀拵

黒蝋色塗の打刀拵

これは黒蝋色塗(くろろいろぬり)の打刀拵です。

江戸時代、幕府によって武士の風紀や身だしなみなどが統制されており、武士が日ごろ身に着ける拵も、様式がこのような物に指定されていました。特に公務の際は厳しく指定されたそうです。

一方で、全然違う形式の拵もあります。

赤くて段々が付いた不思議な形の拵

赤くて段々が付いた不思議な形の拵

色が違うだけでなく、形もなんだかボコボコしたです。これはなんと表現したら良いのか分かんないですよね。

それでは、いろんな種類の拵を観ながら、塗り方や形状についての名前を覚えていきたいと思います。

塗り

蝋色塗

まずは、最初にご紹介した蝋色塗(ろいろぬり)です。蝋色は「呂色」とも書きます。

漆を刷毛で塗ったあと、はけ目を研磨することで、鏡面のように仕上げます。木炭をつかって研ぎ出した塗り面に生漆をすりこみ、余分な漆をふき取ったあと、研磨剤と油を用いて磨きあげるのだそうです。

必ずしも黒だけということではなく、茶色の物もあったりします。

黒蝋色塗は、拵の様式としてはオーソドックスながら、こうしてみるととても手間のかかるお仕事だなと思いました。

黒蝋色鞘 打刀拵(刀 無銘 當麻)

黒蝋色鞘 打刀拵(刀 無銘 當麻)

石目地塗

石目地塗(いしめじぬり)は、石や岩の肌に似せた細かい砂状の粒子模様に仕上げた手法。蝋色塗と違って、艶を消した仕上がりになります。

遠目に観たり写真で観ると蝋色塗との違いが分かりにくいですが、比較して観ると違いは歴然です。

左側の、艶のないほうが石目地塗です。

石目地塗は黒だけでなく、朱色とか茶色の物もあります。

潤塗

潤塗(うるみぬり)は、黒漆に朱やべんがらを混合して、茶系に仕上げた物です。落ち着いた光沢が特徴。

茶系の蝋色塗と何が違うのかはよく分かりません。

弊社にもいくつかあるのですが、物によってはちょっと明るくて朱色に近い物もあるようです。

葵紋揃金具 潤塗 合口拵

葵紋揃金具 潤塗 合口拵

梨子地

我々刀の人間からすると、梨子地(なしじ)と言えば粟田口一派の梨子地肌を連想しますが、漆の技法でも、やはりこまかい塗りを指しているようです。

梨子地塗りは、金粉や銀粉を一面に蒔いたあとに透明の漆を上から塗り付けます。

当館所蔵品で言えばほとんどが金梨子地ですが、まれに銀梨子地や赤梨子地という物もあります。

金梨子地葵紋散蒔絵鞘糸巻太刀拵

金梨子地葵紋散蒔絵鞘糸巻太刀拵

沃懸地

金沃懸地鞘 毛抜形太刀拵 大切羽付鍔 (切付銘)表兼吉 兼吉

金沃懸地鞘 毛抜形太刀拵 大切羽付鍔(切付銘)表兼吉 兼吉

沃懸地(いかけじ)は、梨子地よりもさらに細かく金粉銀粉を一面に蒔いた物で、まるで金の塗料で塗っているかのようにも見えます。

  • 金沃懸地
    金沃懸地
  • 金梨子地
    金梨子地

笛巻塗

笛巻塗(黒角笛巻鞘 打刀拵)

笛巻塗
(黒角笛巻鞘 打刀拵)

笛巻塗(ふえまきぬり)は、引きの観方、照明のあて方によっては、ちょっと分かりにくいと思います。

一定の間隔で塗り分けて段模様にする塗り方で、竹笛の節に似ているから笛巻と呼ばれるそうです。

間隔が一定でない物は、「変わり笛巻」と言われます。

青貝微塵塗

青貝微塵塗鞘 半太刀拵

青貝微塵塗鞘 半太刀拵

青貝微塵塗

青貝微塵塗

青貝微塵塗(あおがいみじんぬり)は、その名の通り青く光るとても美しい塗り方です。

漆を塗って漆が半渇き状態の上にアワビなどの貝殻を細かく砕いた物を蒔き、乾燥後に艶のある漆を上塗りして、研き出して仕上げる手法。

説明を端折りましたが、各工程で使う漆の種類は異なっています。

ここに挙げているのは伊達家伝来品の刀に付属していた拵なのですが、他にも当館所蔵品で青貝微塵塗の拵と言うと、能勢氏伝来、有栖川宮家伝来など、由緒のしっかりした物が多いです。一般の武士が指すというよりは、大名家や公家、皇族が持つ物だったのかもしれませんね。

螺鈿

螺鈿(飾太刀 金沃懸地花喰鳥文螺鈿飾剣)

螺鈿
(飾太刀 金沃懸地花喰鳥文螺鈿飾剣)

螺鈿(らでん)に関しては塗りというよりは装飾なんですが、青貝微塵塗に使うような貝の内側、虹色光沢を持った真珠層を貼り付けて使う物で、拵に限らず、漆器全般の技法です。

例えばこちらの拵では、花喰鳥の意匠を螺鈿で施しています。これも、金地に虹色が華やかでとてもきれいです。

鮫鞘

黒塗研出鮫鞘 肥後打刀拵

黒塗研出鮫鞘 肥後打刀拵

鮫鞘は、白い水玉のような模様が一面に出ています。白い部分が鮫皮で、黒い部分は漆です。

まず鮫皮を鞘全体に巻いて、上から漆を塗り、乾いたら砥石で研いでいく。そうすると、こんな風になるそうです。

梅花皮(かいらぎ)鮫という呼び方もあるそうです。

鮫鞘の制作イメージ

鮫鞘の制作イメージ

他にも変わった塗り方や模様の拵はありますが、大体これぐらいがよく見かけるのではないかなと思います。

鞘の形状

続いて、鞘の形について見ていきます。

一分刻鞘

黒漆塗一分刻鞘 打刀拵

黒漆塗一分刻鞘 打刀拵

一部刻鞘(いちぶきざみさや)は、一見すると普通の黒い拵ですが、よく観るととても細かく筋が入っています。

一分というのは3ミリほどの寸法ですが、その幅で刻み模様を付けています。

腰刻鞘

刀身の内、持ち手に近い方を腰と言いますが、鞘の腰の部分だけが刻んだ形になっている物は、腰刻鞘(こしきざみざや)というそうです。

腰刻鞘(茶漆塗腰刻鞘 打刀拵)

腰刻鞘(茶漆塗腰刻鞘 打刀拵)

印籠刻鞘

印籠って某時代劇でしか見たことない人も多いと思いますが、実は何段か重なった構造になっています。

印籠刻鞘(いんろうきざみざや)は、印籠のような段々を鞘にも付けた物です。

この拵だと、腰元部分だけなので腰印籠刻み、ということになります。

腰印籠刻錆朱留塗鞘 打刀拵

腰印籠刻錆朱留塗鞘 打刀拵

突兵拵

突兵拵(とっぺいこしらえ)は、先っぽ(右側)が丸くとがっています。

単に先が丸みを帯びているのは脇差拵で比較的よくありますが、丸くてさらにとがったかたちの物を突兵拵と言います。

突兵拵は、幕末に洋式訓練を取り入れるため、その洋式に合わせ実戦を目的としてよく作られたそうです。

黒刷毛目鞘 突兵拵

黒刷毛目鞘 突兵拵

蛭巻

黒漆塗朱に金蛭巻鞘 打刀拵

黒漆塗朱に金蛭巻鞘 打刀拵

巻き付けている分、少し盛り上がっている。

巻き付けている分、少し盛り上がっている。

蛭巻(ひるまき)は、柄・鞘などを細長い金属の板で螺旋に巻き続けた物。

寄ってみると、巻き付けているところはその分少し盛り上がっているのが分かります。

巻き付けた様子がヒルに似ているから名付けられたらしいですが、そんなに似てますかね・・(ヒルと言えばスタンド・バイ・ミーのあのシーンでしか見たことないんですけど)。

手法としては平安時代からあるようです。

他にもまだまだいろんな拵の技法はあるのですが、これぐらい覚えておくと大体分かるのではないでしょうか?

早速これからいろいろ観に行ってみようと思います。

おまけ

最後に、珍しい形状の拵をご紹介して終わります。

鯉形拵

朱塗鯉形鞘拵

朱塗鯉形鞘拵

これはどういうつもりで作ったのか分かりませんが、鯉の形をかたどった拵です。

カッコ良い、と思うかどうかは感想が分かれるような気がしますが、宴の席とかに持っていくとウケたのかもしれません。

龍笛

龍笛型拵

龍笛型拵

雅楽に使う龍笛(りゅうてき)をかたどった剣拵です。

中に剣が入っていますから、当然ながら吹くことはできませんね!