おむすび:神戸が主舞台の朝ドラはだいたいイマイチ
終盤を迎えて、朝ドラ史上最低視聴率になるのではないかといわれる『おむすび』。後出しにはなりますが、放映前から期待の割には……になるのではないかと思っていました。過去の事例を見ると「神戸が主舞台の朝ドラはだいたいイマイチ」だからです。
過去に神戸が主舞台なのは『風見鶏』『甘辛しゃん』『わかば』『べっぴんさん』の4作品。
『甘辛しゃん』と『わかば』は『おむすび』と同じく阪神大震災を描かなければいけないというので重くなりがち。東日本大震災を描いた作品では『あまちゃん』が大ヒットしたものの『おかえりモネ』は評価が分かれるところ。記憶に新しい大災害を扱うのは難しい。
『べっぴんさん』は1934〜1984年を描いたので震災は関係ない。実家の父(生瀬勝久)は戦前は会社経営者で貴族院議員だったと裕福で、戦後没落したとはいえヒロインが仕事を始める展開がぬるかった、というのが問題でしょうか。
神戸の実家が金持ち、というのは『カーネーション』もそうでした。ヒロイン母(麻生祐未)の実家は豪邸で舞踏会を開催する金持ち。同じようなパターンでは『ふたりっ子』のヒロイン母(手塚理美)の実家は神戸市の東隣、芦屋の豪邸でした。
祖父が金持ちというのはファンタジー味があるけど、父が金持ちというのはちょっと生々しい。その差は大きいような。
(ところで『カーネーション』でヒロイン祖父を演じたのは宝田明、『ふたりっ子』は高島忠夫と共に東宝映画で活躍した俳優。東宝と同じグループの阪急電鉄は神戸山の手のイメージが強いので、それを重ね合わせたキャスティングでしょうか?)
残るは神戸が舞台となった最初である『風見鶏』。この作品でよくいわれるのは「神戸北野の旧居留地を人気観光地にした」で、そのぐらいにはヒットしたようです。
前後の平均視聴率を見てみます。1975年から半年ごとに東京・大阪が半年交代で制作する現在のパターンになります。『おはようさん』は『うず潮』以来11年ぶりの大阪制作だから気合が入ったのか、田辺聖子原作の力か、前後の東京制作と同レベルの視聴率。しかし『火の国に』で失速。『いちばん星』でちょっと戻し『風見鶏』も微増させて、次の『おていちゃん』のヒットにつなげる、という流れ。数字的には合格点でしょう。
しかし個人的には『風見鶏』、ちょっとは見たけどがっつり見た記憶はありません。というのも、「裏」のポーラテレビ小説『文子とはつ』を見ていたからです。
ポーラテレビ小説には説明が必要でしょう。TBS系で本放送が昼の12:40〜13:00、再放送が朝の8:10〜8:30と朝昼逆ですが事実上の裏番組。
1968年に始まり、1969年の第二作『パンとあこがれ』は文学座の新人だった宇津宮雅代主演、新宿中村屋を創業した相馬黒光がモデルの一代記など内容も朝ドラに近い内容です。新人女優の登竜門だったのも同様で、岡江久美子、名取裕子、樋口可南子、宮崎美子、賀来千香子らを輩出しました。
1983年までは4〜9月と10〜3月の半年放送と同じタイミングだったので、朝ドラとポーラテレビ小説を見比べてどちらかを見るという人は多かった。自分もその一人でした。だから当時「『風見鶏』より『文子とはつ』がおもしろい」と思っていたはずです。
そんなこんなで「神戸が主舞台の朝ドラはイマイチ」。以前書いた
のようなことがあったので『おむすび』にも望みを抱いていたのですが残念な結果に。
それでも、また10年ぐらいしたら神戸舞台にチャレンジしてほしいですね。
取り上げてほしいのはコープこうべの前身、神戸購買組合と灘購買組合。組合員活動「家庭会」を始めた女性たちをモデルにして。
大正時代の米騒動後、悪徳業者排除をめざしてつくられ、御用聞きと宅配など現代に通じる要素多数。兵庫県から大阪府の一部まで、昔「購買さん」今は「コープさん」と親しまれる存在です。
五代友厚的なメンター役としてノーベル文学賞と平和賞の候補に推薦された社会活動家、賀川豊彦もいます。