Post

Conversation

シャインマスカットの海外ライセンスが話題となっていますが、かなりの事実誤認がある記事・投稿も多く、ぜひ事実を理解いただいたうえで、以下のような大事な問題について議論いただきたく思っています。 まず、今回の措置が「ニュージーランド(NZ)全体に対してライセンス生産を許容する」ものであるようなコメントがありますが、事実ではありません。 実際に検討されているのは、「ニュージーランドに子会社を持つ日本企業が、現地生産のシャインマスカットを、商標を使用して正規品として販売することを許諾する」ものです。 つまり、あくまでも個社(しかも日本企業の子会社)に対するライセンスです。 また、日本への出荷禁止や、日本からシャインマスカットが輸出されている国への出荷制限が課されるので、日本の生産者の利益を害するという批判も妥当ではありません。 さらに、ライセンスに際しては、流出防止措置を講じる条件がついており、NZで無秩序にシャインマスカットが生産される事態を防ぐための手当てがされています。 そして、なにより、このライセンスは、日本ブランドのシャインマスカットの国際競争力を向上させるための取組の一環なのです。 このようなライセンスが検討されることになった背景には、日本の農研機構により開発されたシャインマスカットが、海外で許諾なく無秩序に栽培されているという事態があります。 シャインマスカットが日本で品種登録された約20年前、シャインマスカットは海外では品種登録(育成権者を保護するための措置)がされませんでした。このため、その後に中国や韓国にシャインマスカットが流出・栽培されるようになっても、それらの海外での栽培を差し止める法的手段はありません(今からでは品種登録はできない)。 その結果、シャインマスカットの栽培面積は、中国では日本の約30倍、韓国では日本の2倍以上となり、安価・低品質な外国産シャインマスカットが広まって日本産シャインマスカットの国際競争力を損なっています(※1)。 そこで考えられたのが、日本の農研機構のライセンス許諾を受けて生産されたシャインマスカットを「正規品」として国際市場に売り出し、高品質な「日本ブランド」の産品を好む顧客層に対する競争力を向上させる戦略でした。 今回のNZの日本子会社へのライセンス許諾によって、たとえば日本からだと輸出が難しい国(※1)に対してや、(NZは季節が反対なので)日本からだと輸出が難しい時期に、日本ブランドのシャインマスカットを売り込むことが可能になり、「正規品」の国際競争力の向上が期待できます。 一方で、このようなNZからの輸出品と日本からの輸出品がバッティングして、日本の生産者の利益が害されることの無いよう、上記のような出荷制限がライセンスの条件として予定されています。 このような対応が必要になったのは、上記のとおり、シャインマスカットの開発時に、海外での無許可栽培の取り締まりのために必要な品種登録がされなかったことにあります。 当時は、シャインマスカットの海外輸出が想定されていなかったためでした。 今回の事案が示唆するのは、日本の美味しい農産品を国際的に保護し、その国際競争力を確保するためには、美味しいものを作るだけでは不十分で、知的財産などに関する国際ルールを上手に使っていく必要があるということです。 日本の高品質な農産品はもっともっと世界で勝負できます。そのためにルールを上手に活用するための取組を後押ししていきたいと思います。 ========= ※1 報道によれば、例えば中国ではシャインマスカットが380円で売られているとのことで、日本の損失は年間100億円以上との試算がある。 ※2 たとえば米国に対しては、米国の検疫規制上、日本からはシャインマスカットを輸出できないが、NZからであれば輸出できる。