人生には「地図とコンパス」の両方が必要
いやあ、お陰様で今年(2025年)の1月に出版した「人生の経営戦略 ライフ・マネジメント・ストラテジー」がとてもよく売れておりまして、一時期はAmazonの書籍総合ランキングの3位まで上がっていました。今まで何度もベストセラーは出していますが、たぶん歴代最高位なんじゃないかな・・・?関係者の皆様に感謝!
このNOTEでは、本書の基本的なコンセプトになる考え方を何度か紹介してきましたので、NOTEをずっと読んでいただいている方からすると、本が出来上がっていく過程にお付き合いいただいたような感覚があるかもしれません。
あらためて紹介すれば、本書の基本的な着想は、これまでの人生論・キャリア論に対する違和感から生まれました。本書の抜粋を引きます。
昨今の人生論には二大潮流ともいうべき流派があるように思います。一方の流派のメッセージを端的に表現すれば
残酷な社会ゲームを冷徹に戦って生き残れ。経済的・社会的成功を手に入れろ !
という考え方です。
いかにもドライかつ現実主義的な主張で、本書ではこのような人生戦略の考え方を「目的達成のためには全ての手段は合理化される」と言った中世の政治学者、マキャベリにならって「マキャベリ的人生論」と命名しましょう。
昨今、このようなメッセージを訴える書籍は書店にごまんと並んでいますが、ふと横に目をやると、全く違う主張を展開している書籍群も目に入ります。これらの書籍が訴えているメッセージは
経済的・社会的成功の虚像に囚われるな。自分らしく生きて本当の豊かさを手に入れろ !
という考え方です。
いかにもナイーブかつ理想主義的な主張で、本書ではこのような人生戦略の考え方を「人間は本来善良なもの、個人の内面的道徳を重視せよ」と言った近世の思想家、ジャン・ジャック・ルソーにならって「ルソー的キャリア論」と命名しましょう。
「どっちもダメでしょ」が結論
両者は今日のキャリア論、人生論の二大派閥を形成しており、互いが互いを非難し合っている状況ですが、私は「選択肢がこの二つしかない」という状況にどうにも違和感が拭えないのです。
なぜなら、これら二つのアドバイスのどちらかに従って生きたとして、それが幸福な人生やキャリアを生み出すとは思えないからです。両者にはそれぞれどのような問題があるのでしょうか?
マキャベリ的キャリア論の問題点は「ゴールの設定」にあります。キャリアに関するこれまでの研究の多くは「経済的成功」や「社会的成功」が仮に実現できたとしても、それが必ずしも「幸福な人生」には直結しないことを明らかにしています。ゴール設定に失敗すればプロジェクトは必ず破綻します。そういう意味で、マキャベリ的キャリア論はそもそも「的外れ」なのです。
一方、ルソー的キャリア論の問題点は「プロセスの設計」にあります。確かに人生において「自分らしさ」は重要な指標でしょう。しかし「自分らしさ」という目標は、一定の経済的・社会的基盤があってこそ獲得できるものであり、それだけをナイーブに目指して得られるほど世界ゲームは容易ではありません。戦略的実現性を欠いた目標は単なる夢想にすぎません。そういう意味で、ルソー的キャリア論は「甘い」のです。
本書は、これらの二つのどちらの立場にも与しません。なぜなら、プロジェクトのデザインでは「ゴールの設定」と「プロセスの設計」の二つが決定的に重要であり、これは「人生というプロジェクト」についても同様に言えるからです。
ということで、ここで次の図表を示し、本書が基本的にとるポジションを、ルソー的人生論でも、マキャベリ的人生論でもない、アリストテレス的人生論として明確にしています。
ということで、書籍ではここまでの説明なのですが、実はこの記事のタイトルにもある「人生の地図とコンパス」に関する記述がこれに続いており、出版の際には字数をまとめるために削除してしまった箇所なのですが、NOTEで共有したいと思います。以下が、最終的に削除してしまった「人生の地図とコンパス」に関する記述です。
大事なのは「地図とコンパス」を持つこと
「自分らしさ」と「社会的成功」の二軸を同時に求める「第三のオプション」を目指すためにはキャリアにおける「地図」と「コンパス」の二つが必要になります。
人生を長い旅に例えて両者の意味を表現すれば
地図は、変化する世界を把握し、どこに目指すべき場所があり、どこに危険があるかを理解するために
コンパスは、自分にとっての「真北」がどちらかを知り、自分が正しい方向に向かっているかどうかを理解するために
必要になります。
前者の地図を作るためには市場分析や業界分析が必要です。これはアプローチとしては戦略論におけるポジショニング論に該当します。業界には栄枯盛衰のサイクルがあり、同じ場所に止まっていれば必ず停滞を迎えることになります。
したがって、経営においては「下げ潮」の場所から資源を引き上げて「上げ潮」の場所に再配分することが求めらるわけですが、この際、重要になるのが「地図=世界のどの場所が上げ潮・下げ潮なのかを俯瞰するための情報」が必要になります。
世界の場所は一様ではありません。非常に競争が厳しく、粉骨砕身して働いても利益が出せない場所もあれば、一方で競争が緩く、ほどほどのペースでもきちんと利益の出る場所もあります。最終的な「居場所の決定」を期待される利益だけで決定するかどうかは別の問題ですが、地図がなければそれこそ「ランダムにサイコロを振って出た場所」で生きていくのと同じであり、これでは「第三のオプション」を追求することは難しいでしょう。
一方で、後者のコンパスを持つためにはSWOT分析、パーソナリティや動機の明確化、価値観や自己ビジョンの考察が必要であり、アプローチとしては戦略論におけるコア・コンピタンス論に該当します。
自己の強みと弱みを分析することがSWOT分析の基礎になりますが、ことはそう簡単ではありません。本書で後ほど詳しく説明しますが、私たちの自己評価能力は多くの場合、大きく上振れしており、いい加減な自己分析に基づいてポジショニングを決めることはむしろ弊害の方が大きいことがわかっています。
加えてトリッキーなのは、価値観や動機は時間と共に変化していくことが通常であり、したがって一度バリューやビジョンを確定したからといって、それで一生を通じてやっていけるというものでもないのです。
つまり「地図」も「コンパス」も、定期的にレビューし、アップデートし続けなければならないのです。この点もまた経営との近似を感じさせる点です。
「感じる」と「考える」
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購入者のコメント
1学校 社会で若い時に皆が教育されるべき事柄ですね。