俺は小説を書きたかった。でも、小説なんか生まれてこの方まともに読んだ事は無かった。
というか、生まれた時からおかしかった。スカートってわかる?女の子が履く奴。
あれ、俺も履かなきゃいけないらしい。
でもめちゃくちゃ気持ち悪いんだけど。なんで?足の間がスースーするしフワフワした。
幼稚園の入園式の前の夜、体操服のズボンが最高にカッコよくて、「ぼくこれ履いてくから!」って張り切ってたのに。
履かされたのは、紺色の四角いひだが規則正しく付いてるスカートだった。
そこまでしか覚えてないんだけど、マミーに聞いたら、ずっと泣き喚いて大変だったと言っていた。
でもマミーは、そんな俺に愛想を尽かす事は無く、ウルトラマンのおもちゃを買ってくれた。今でもウルトラマンダイナとつるの剛士さんが大好き。仮面ライダーも大好き。戦隊も、ガンダムも。
クリスマスの朝に、仮面ライダークウガのクリスマスブーツが置いてあったのは一生の思い出だと思う。
カッコよければなんでも好きになれた。カッコイイはロマンだから。最強なんだ。
マミーも、オトンも、叔父ちゃんも、おじいちゃんも、おばあちゃんも、俺が好きな物は全部買ってくれた。
ある日、仮面ライダークウガの新しい絵本をねだったら、おじいちゃんに言われた事。
「○○ちゃん、大きくなったんだから、そろそろ仮面ライダーは卒業しようね。女の子なんだから」
ああそうか、俺って女の子なんだ。仮面ライダー好きなのはダメなんだ。
基本的に男の子と仲良くしてたし、たまに女の子がおままごとに入れてくれたけど、犬か猫かの役しかやらなかった。
せめて見た目だけは女の子らしくしようって事になって、特に希望の髪型も無かったから、適当に髪の毛を伸ばしてポニーテールにしてたんだよ。
で、水曜日の夜にONEPIECEがテレビで始まって、サンジが出てきた時に、俺は衝撃を受けた。
「髭を三つ編みにしてるこのオッサン、超かっけえ……!」
三つ編みはカッコイイ男のスタイルなんだ。だから頑張れた。だってあのゼフがやってるんだぜ?
人付き合いも悪かったからいじめにも遭ったけどどうでも良かった。だって俺にはゼフが居るし。
ゼフに会えなかったら、きっと俺は世界が嫌になっていたと思う。
小学校5年生の時にBLEACHがテレビでやるようになって、根暗な俺にも多少友達が出来た。
いやこっそりNARUTOも見てたけど。でも大っぴらには言えなかった。しかも好きだったの再不斬と白だったから余計に理解されないよね。
でもBLEACHはちゃんと黒崎一護が好きになれたから、ハブられる事は無かった。
6年生の時に漸く、BLEACHと抱き合わせる形で銀魂が始まった。
いつの間にかBLEACHよりハマってて周りに話してみたけど全然理解されなかった。空知英秋の高尚なギャグは子供には難しいんだ。ははは。
銀さんが天然パーマだと聞いて、同じ天然パーマだった俺は、とうとう三つ編みと別れる決意をした。
いきなり短くした髪の天然パーマは確かに大変だった。全然髪型が決まらない。でも良いんだ。銀さんも同じ思いをしているから。
中学校ってすげえな、漫画で読んだ通りにくっきりとカーストが分かれてる。
俺は当然カースト最下位だった。アニメオタクがスポーツ好きの不良に勝てる訳が無い。
オトンに詰められてテニス部に入ったけど、足の怪我が原因で辞めた。そもそも喘息があったのであまり練習に付いていけてなかった。
で、流れるように美術部に入ったんだけど、その前に、オタクって事で俺にも友達が居たんだよな。
しかも女の子の友達。銀魂ありがとう。空知英秋大先生ありがとう。
「あのさ、銀さんと土方って、付き合ってるよね」
え? 今なんて言った? 銀さんと土方が、付き合ってる?
そんな描写アニメにあったっけ? もしかして漫画の方? でも俺漫画も全巻買ってたし、なんならジャンプも立ち読みして内容全部知ってたし……
でもその子が言うには、ちょっと意味が違うらしくて、後日家に遊びに行って、それを見せてもらった。
知らない世界がそこにあった。そんな目で一度も見た事無かったけど、その子の家で何冊も漫画を読んだ。サンホラも教えて貰った。
唐突過ぎる? 自分でもそう思う。そもそも中学生になると、性の欲求に抗えなくて仲良くしてた男友達をちょっと好きになってしまった。失恋したけど。
小学校の頃は、全く興味が無くて、話を合わせる為にクラスの男の子を好きなフリをして過ごしたりした。
彼女は中学校で初めて会ったつもりだったんだけど、実は小学校の陸上大会で会ってたらしくて、俺の事を覚えていた。
仮面ライダーの話をして、いつも一緒に居て、変な気持ちになっていて、「お前の事好きかも」は俺から言ったんだけど、「付き合ってください」は彼女からだった。
家に行ってセックスもした。やり方なんて知らなかったけど、そもそもモノが無いから関係無かった。
彼女もBLが好きだったから話が合った。彼女は銀魂を知らなくて、「なんで教えてくれなかったの!?」って怒られた。
彼女と同じ作品にハマって、彼女のオーダーでBLを書いたりした。俺は絵が上手くなかった。彼女はめちゃくちゃ絵が上手かった。羨ましかった。
BLを書いていれば彼女と繋がって居られた。彼女が勧めてくれた作品を見てまたBLを作った。楽しかった。それが俺の全てだった。
「海賊王に、俺はなる!」
そう言って拳を突き上げて自己紹介した男の子が居た。俺は彼に惹き込まれてしまった。
彼となんとか仲良くなりたくて、知らなかったBUMPやRADを聴いたりなんかした。
俺のギャグセンスをたまに面白いって言ってくれた彼が大好きだった。
その頃になって、彼女と話が合わなくなった。
というか、その頃格ゲーに再燃した。
家にはオトンが買ってきたセガサターンがあって、バーチャファイターとバーチャロンとファイティングバイパーズがあったんだよ。
小学校の頃は友達と遊ぶ日が少なかったから、めちゃくちゃ遊んでた。
KOFって分かる?昔はストリートファイターより人気あったんだよ。その頃俺は赤ちゃんだけど。
出会いは幼稚園の頃に従兄弟に借りた、ネオジオポケットの最強ファイターズだった。
銀魂で銀さんを担当している杉田智和さんも格ゲーが大好きだから、それもあったのかもしれない。
彼女から「好きじゃなくなっちゃった」ってお別れを言われて、失意の中、格ゲーに打ち込んで、草薙京と八神庵のBLをネットで探しまくった。
結局、BLに心を癒されている。
理由なんて分かってる。自分が女の子だから。結局自分は女の子で、だから海賊王の彼に惹かれて、大事な彼女に悪口を言ったり殴ったりしたんだ。
全部分かってる。でも、それなら格ゲーが好きな俺は誰? カッコイイキャラを使いたくて格ゲーに打ち込んでる俺は一体何?
男の子に憧れて、男の子になりたくて、自分の好きを追い求めてきた俺は女の子?
その頃オトンの不倫で家庭内環境は最悪で、予備校に通う相談なんて到底出来そうになかった。
それでも美大を受けようとしたのは、高校がデザイン系だったから。予備校に通わなくても、ワンチャン推薦で通る可能性があったからだ。
なんだかんだ彼女の居なくなった穴は大きくて、それを埋めようと必死だったのかもしれない。
俺と別れてからの彼女はクラスの人気者で、高校の課題もめちゃくちゃ評価されてたから。
推薦に落ちたら一般は無い。ギリギリの状態で俺は電車に乗って受験する大学に行った。
嬉しかった。母方のじっちゃんに電話した。泣かれた。「一族から大学出身者が出たぞ!」おいおいじっちゃん、これから入学だから。
でも、心はあまり晴れなかった。だって俺には才能が無い。海賊王のあいつも、俺を無視するようになった彼女も、全然俺より才能があるから。
落ちれば良かった、ってのは嘘だけど、才能がある人が、努力した人が評価されるなんて嘘だよ。俺は何の努力もしてない。
本気で努力してたなら、頭を下げて予備校に行かせて貰ってたし、しんどくてもバイトして入学費用を貯めてただろうし、課題だって真剣に向き合ってただろうし。
何もしてない。「流れで受験したら合格しただけの何か」がそこには居た。
申し訳無くて学校行くのが嫌だった。だって屑が一足先に受験終えて「頑張れ~」って言ってたら殺したくならない?
彼女とも仲直りする事は無かった。後海賊王の彼にも告白してちゃんと振られた。
二度と恋なんてしないって誓って、大学の門をくぐった年の秋の事。
また俺に、彼女ができた。
神様は狂ってるよ。なんで俺なんだ。やめてくれ。俺には何も無い。
何も無いから、落第寸前の単位を土下座でやり過ごしてるじゃないか。対して絵が描けないのに美大になんか行くからだよね。
それがなんで告白される側になるんだよ。
好きとか嫌いの以前に、断るのが怖くて、一ヶ月だけ付き合ってから振ろうと思った。いっぱいいっぱいだった。
孤独を埋める為に入ったサークルでピエロを演じてたら、なんかチヤホヤされて気を良くして、求められるままに貧乏クジを引き、頭の悪い言動をして先輩に怒られた。
飲めない酒を飲み、喘息なのにむせながらタバコを吸い、自分を埋めていた。
男で居たいのに、サークルの女の子達に話を合わせる為にまたBLを利用する。
遊戯王をやり始めたら後輩の男の子から告白されて、余計に感情がぐちゃぐちゃになっていく。
もうなんなんだ俺は。どうありたいんだ。
彼女と同棲する事になって、卒業単位ギリギリの3年生の時に、伝説のアニメが始まった。
「おそ松さん」だ。
一番好きなのはカラ松だった。青だし、革ジャンとサングラスがカッコイイし。
ナルシズムに浸っている時に一松が絡んでくるのが面白くて、カラ松と一松、「色松」って呼ばれてるこの二人の事が大好きになった。
文だけには自信があった。きっとウケると思った。
ただの一つもウケなかった。
嗚呼、こんな事なら、文学小説をたくさんたくさん読んでおくべきだった。
こんな文しか、俺には書けない。
女の人には分かるんだ、俺が男である事が。
見透かされているんだ。
曲がりなりにも女性に擬態して生きてきたんだ。それくらいは分かるさ。
安息の地なんて、何処にも無い。
今の彼女は俺を男として扱ってくれるけど、モノが無いからちゃんとセックスをしてやれない。
死にたくて堪らないよ。
イソップ童話の「鳥と獣とコウモリ」って分かるか?俺はそのコウモリなんだよ。
コウモリとして、一生理解されない孤独と向き合い続けながら生きていかなきゃならないんだ。
LGBTQ+? あんな概念は全部嘘だから。男は男、女は女としてじゃなきゃ生きていけないから。
俺はもう、どっちにもなれない。気付くのが遅すぎた。
海賊王のあいつに聞きたくても、あいつはもう、雲の上に居る。夢でしか会えない。
俺はお前を忘れない。愛してるよ、海賊王。
最後に、これを読んでくれている人、今までの文はどっちの声で聞こえた?
ごめんだけど自分の読解力がないのでAIにようやくしてもらった 幼少期から「女の子」として育てられながら、戦隊・仮面ライダーなど“カッコいい”ものに惹かれ、男の子に憧れ続...
知らんけど、こんなとこで愚痴こぼしてる暇あるなら小説でも書けばええのに。